もだえ

1944年 スウェーデン

キャスト:スチーグ・イェレル(カリギュラ)アルフ・チェリン(ヤーン)マイ・ゼッタリング(ベッタ)スティグ・オーリン(サンドマン)

監督:アルフ・シューベルイ

ヤーンは八年生高校の最上級生でもうすぐ高校を卒業しようとしていた。高校にはカリギュラと綽名されるラテン語の教師バーンがいて、その厳格な態度とサディスティックな性格は生徒たちの恐怖の的になっていた。カリギュラは授業中に生徒たちをいたぶるのを楽しむような態度をとり、ヤーンに君はカンニングしたなと責める。カリギュラの授業が終わって叫ぶヤーンの友人のサンドマン。「早く卒業して、一生食って寝ていたいよ。ヤーン、煙草を仕入れに行こう」

雑貨屋に行ったサンドマンは雑貨屋の娘のベッタに、学生には煙草は売れないの、と言われる。そこにカリギュラが現われたため、サンドマンは慌てて新聞を買う。ハバナ葉巻をベッタに注文するカリギュラ。

家に帰ったヤーンはカンニングしたなと両親に責められる。「どうしてそれを」「ラテン語の教師から電話がかかってきた」「誤解だ。誰かが書いた答えを消し忘れたんだ」「これで卒業がフイになるかもしれない」「大丈夫だよ」「少しは反省しろ。母さんも私もすごく心配しているんだ。一生汚点がついてまわる」

サンドマンと食事を楽しむヤーン。「僕は一生酒を飲んで女と遊んで暮らすぞ」「僕は違う。毎日文章を書いて、バイオリンを弾いて過ごす。恋人も欲しいけど」「今は相手がいないのか」「ああ」「汚れなき乙女が欲しいのか」「ああ」「そんな乙女はいない。ニーチェが言ってる。女は魔性の存在だと」

カリギュラについて話すヤーンとサンドマン。「あいつは怪物だ」「そうかな。確かに変人だけど」「石の裏にくっついている気味わるい虫だ」「悪人じゃないだろう」「お前は青いな、ヤーン。世の中は腐っている。何もかもだ。じゃあな」「ぽくが馬鹿だと」「違うよ。お前は大事な友達だ。でも女に理想を抱くのはやめたほうがいい」

家路につく途中で泥酔しているベッダを見つけるヤーン。「どうしたんだ」「放っといてよ」「放っておけない」ベッダのアパートまでベッダを送るヤーン。ベッドで号泣するベッダ。「もう帰るよ」「帰らないで。一人にしないで。彼が来るかもしれない。私怖いの」「誰が怖いんだ」「言えないわ。彼に知られる。私を見張っている。見張っているだけじゃない。ここに入ってきて。あの男は私を苦しめていたぶって楽しんでいる」

ここにいて、と言うベッダに、両親が心配するし宿題もあるから、と答えるヤーン。「それに君を愛してない」「それが大事なの?」「……」「私が怖いの?」「……」「怖くなんかないのよ」ベッダを抱いてしまうヤーン。帰ろうとするヤーンにまた来てねと頼むベッダ。「きっとよ」

老教師はカリギュラに生徒にもっと優しく接したらどうかねと聞く。「苛めるな。確かに怠け者どもだが、みんないい子だよ」「……」「教えると言う仕事は複雑なものだ。生徒をわかってやらねば。生徒の敵になってはいかん」「……」「なぜ君ほどの頭のいい男が、やみくもに服従と威厳を求める」「関係ないでしょう」「大ありだ。彼らは私の生徒でもある。一部の生徒は君を脅え、脅えてない生徒は君を笑っているぞ」「証拠でも」

「生徒を見ればわかる。君は生徒を恐れている。まるで戦っているようだ。学問の素養だけでは、本物の教師になれん。思いやりと理解が必要だ」「……」「君のような人間は他の社会にもいる。みんな世の中を悪くしている人間だ」「聞いてください。ずっと神経をやられて病気なんです。だが仕事はこなした。少々神経を病んだからと弱気にはならない。絶対に」

ベッダにバイオリンを聞かせるヤーン。「昔から夢だった。女の子の部屋でうまいクッキーを。このまま時が止まればいい」「ねえ。私のことは少しは好き?」「ベッダ。今も怖いのかい」「いつもそうよ」「何を恐れているんだ。教えてくれ」「怖くて言えないわ。ドアをガタガタする。外を歩いてもつけられてる気がするわ」「友達のサンドマンは女は汚いと言うけど、僕はそうは思わない。僕の考えは子供っぽいと思う?」「思わないわ。誰よりも優しいもの」「大勢の男とつきあったのかい」「何人か。でも遊びよ。本気じゃなかった」

卒業試験を終えたヤーンはベッダのところに行くが、ベッダは酔っぱらっていた。「ベッダ。何があったんだ」「……」「黙ってないで何か言えよ」「……」「聞こえないのか」「……」「君が好きだ。なのに君は遊びだったのか。僕に飽きたのか」「……」「真面目な恋は似合わないか。もうおしまいか」「そうおしまいよ。あいつがナイフを弄り回しながらネチネチ話すの。凄くいらやしいひどい事ばかり」「もういい。そんな話は聞きたくない」「私のこと嫌いになった?」「君とは結局赤の他人だったんだ」

私は病気で頭の中に妙な考えが浮かんで脅えるんだ、とベッタに話すカリギュラ。「だから君を脅かすことにした」「……」「もっと飲むかい」「……」「昔、死の恐怖を感じた。原因は何だと思う。猫だよ。猫が好きだった。家の前にいる猫の背中を撫でようとしたら突然咬まれた。私は頭が真っ白になった。近くにあった水桶に猫を放り込んだ。猫は溺れたよ。今でもその噛み傷が残っている。見るかい」「やめて」「それが人生さ。やられたらやりかえせ」

ベッダはヤーンに話があるのと言うが、ヤーンはとりあわず歩き去る。ヤーンに追いついて聞くカリギュラ。「あの娘は煙草屋の娘のようだけど、君と知り合いなのかね」「ええ、少しだけ」ヤーンはベッダのアパートに行くが、ベッダはベッドの中で死んでいて、アパートの隅でカリギュラが「私がやったんじゃない」と呟いているのを見て、あわててアパートから飛び出す。

通報されると呟いて警察に電話するカリギュラは、やってきた警官に「やってない」と呟く。「私は虫一匹殺さないんだ。恐ろしい。病気なんだ。怖がらせないでくれ。やってないんだ」

検死が行われ、ベッダの死因は酒の飲み過ぎでの心臓発作と発表され、カリギュラは釈放される。校長室に呼ばれるヤーン。「君の行為について重要な報告が来ている。バーン先生は君がベッダといるところを目撃した。バーン先生は彼女の悪評を知っていたので、部屋を訪ねて君と別れるよう言った。彼女は先生をあざ笑い酒をあおってひどい悪態をついた。そして突然胸をかきむしり倒れて息絶えた。バーン先生が呆然と立ち尽くしていると君が来た。死体を見て先生が殺したと思い込み逃げ出した。言いたいことがあるかね」「確かに僕は身持ちの悪い娘と付き合ってました」「退学処分の理由には十分だ」「どうぞ。ご自由に」

校長室に現れるカリギュラ。「君はこの件に関して何か言うことはないかね」「学校のためでないと、私があんなところに行くわけがありません」何が学校のためだ、と怒鳴るヤーン。「彼女をいたぶって殺した癖に。僕らを苛めたように彼女も苦しめ抜いた。退学だと?僕より前に追い出すべき奴がいる。貴様だ」思い切りカリギュラを殴るヤーン。それを見てどちらが悪いのかと呟く校長。

退学になったヤーンを嘆く両親。「何があったんだ。おかげでいい恥をかいた」「いつも父さんはそうだ。恥をかいた、がっかりだ。僕の気持ちは考えてくれない。もう恥をかかなくていいように僕は出て行く。それで満足だろ」行かないでという母を振り切って出て行くヤーン。

卒業帽をかぶったサンドマンにベッダのアパートに行くと告げるヤーン。「ほかに行くところがない。彼女が可哀相で」「わかるよ」「本当に?」「前に言ったろ。ニーチェか何かが言った。女は魔性だって。でも考えが変わった。お前のおかげで」「サンドマン、卒業おめでとう。じゃあな」

ベッダのアパートで煙草を吸うヤーンに話しかける校長。「サンドマン君が君がここにいると教わった。君と話がしたかった。君は学校が嫌いだった。くつろげる場所じゃなかっただろう。我々のやり方も少し厳しすぎた」「何のために来られたんですか」「家に戻りなさい。ご両親が心配なさっている」「……」

「私は君をなんとか助けたいが、君の心の悩みは君が解決するしかない。君の退学は取り消せんが、君が心を閉ざした原因は学校にもある。なんとか力になりたい」「ありがとうございます」「いつか全てを笑って振り返れる時が来る。時間が解決する。どんなつらい出来事にもいい面があるものなのだ」

ベッダのアパートを出ようとしたヤーンはカリギュラと出くわす。「何をしてる」「校長が来たな。何の話をした」「関係ない」「私のことを話したな。こんなことになるとは思わなかった。話を聞いてくれ。私は今も病気だ。神経をやんでいる。わざとやったんじゃない。孤独だった。誰も私に気をかけない」「もう行くよ」「皆が嫌っている。嘲るか、避けるか。誰からも怖がられて、今では自分が怖い」「……」「行かないでくれ。お願いだ」

ベッダのアパートを出たヤーンは明日に向かって生きる決意を固め、口元にかすかな笑みを浮かべると力強く歩き出すのであった。

★ロロモ映画評

ヤーンは八年生高校の最上級生でもうすぐ高校を卒業しようとしていた。高校にはカリギュラと綽名されるラテン語の教師がいて、その厳格な態度とサディスティックな性格は生徒たちの恐怖の的になっていた。家路につく途中で泥酔している雑貨屋の娘のベッダを見つけるヤーン。「どうしたんだ」「放っといてよ」「放っておけない」ベッダのアパートまでベッダを送るヤーン。ここにいて、と言うベッダに、両親が心配するし宿題もあるから、と答えるヤーン。「私が怖いの」「……」「怖くなんかないのよ」ベッダを抱いてしまうヤーン。

卒業試験を終えて、ヤーンはベッダのところに行くが、ベッダは酔っぱらっていた。「ベッダ。何があったんだ」「……」「君が好きだ。なのに君は遊びだったのか。僕に飽きたのか」私は病気で頭の中に妙な考えが浮かんで脅えるんだ、とベッタに話すカリギュラ。「だから君を脅かすことにした」ヤーンはベッダのアパートに行くが、ベッダはベッドの中で死んでいて、アパートの隅でカリギュラが「私がやったんじゃない」と呟いているのを見て、あわててアパートから飛び出すのであった。

この映画はいったい何が言いたのだろうとロロモは5分間だけ考えたのですが、あまりそういうことを考えて時間を無駄にするのはよくないと考えて、カリギュラという綽名は凄いとか「もだえ」というタイトルはいやらしいと考えることに切り替えますが、「もだえ」は漢字で書くと「悶え」とさらにいやらしくなり、「宇能鴻一郎の濡れて悶える」だの「若妻日記 悶える」だの「真夏の夜の情事 悶え」だの「禁断・制服の悶え」だの「看護婦(秘)カルテ 白い制服の悶え」だの「スウェーデン・ポルノ 陰獣の悶え」だのというポルノ映画のタイトルを見ると、さらにさらにいやらしくなりますが、「もだえ」でロロモが思い出すのはマリア四郎という歌手のことになるわけです。

本名は宮崎幹夫のマリア四郎は聖母マリアと天草四郎のイメージの融合から芸名をつけ、1968年1月25日に発売されたデビューシングル「傷恋」はオリコンで最高72位を記録し、結局、日本コロムビアからは3枚のレコードを発売。1970年代に入ってからは、本名を平仮名表記にしたみやざきみきお名義として作詞家としても活躍し、ボネ「泣かないでママ」、ザ・ランブラーズ「愛の祈り」、藤井明美「運命」、亀淵友香「ひとりぼっちのトランプ」と言った楽曲を提供し、1973年2月には自身も「シクラメン・ブルース」で歌手として再デビュー。このレコードのジャケット写真は本人のオールヌードであり、彼はテレビでオールヌードで歌ったそうです。

というわけで、彼は日本コロンビアで3枚のシングルを出しましたが、最大のヒットとなった「傷恋」のB面だったのが「もだえ」でありまして、これは一回聞いただけで何か聞いてはいけないものを聞いてしまったような背徳的な気持ちになってしまうナンバーでありまして、それはマリア四郎の独特の舌づかいと言うか喉づかいから発せられるまとわりつくような歌声が耳にまとわりついてくるわけです。

彼の歌うナンバーは全てすっきりしない残尿感のような味わいが残りますが、特にこの「もだえ」のまとわり感は抜群で、ロロモはたまらなく好きであり、こういう歌がもてはやされるようになると日本はおしまいだとロロモは思い、幸いもてはやされずに済みましたが、こういうナンバーがたまらなく好きだというロロモはやはり心の曲がった男なのだなあ、と思わずにいられないのでありました。(2013年2月)

得点 3点

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