最も危険な遊戯

1978年 東映

キャスト:松田優作(鳴海)田坂圭子(杏子)荒木一郎(桂木)内田朝雄(小日向)草野大悟(土橋)見明凡太郎(足立)市地洋子(綾乃)名和宏(居郷)入江政徳(南条)

監督:村川透

財界人が誘拐されるという事件が発生し、人質の一人が射殺体となって発見される。東日電気社長の南条が誘拐され、東日電気会長の小日向は秘書の土橋を通じて、鳴海という男と接触する。「用件は」「この間誘拐されたわしの娘婿の南条を生きて救い出してほしい。謝礼は五千万だ」「知っていることは全部喋ってもらいましょうか」「この間から財界人が次々と誘拐されておるが、金を目当てのギャングの仕業だと世間は思っている。それは違う。奴らの目的は東日グループをある国家的プロジェクトから引きずりおろすことなのだ」

それが証拠に一連の誘拐事件で殺されたのは東日重工の社長の河野だけだ、という小日向。「二人目の死体が出るとすれば南条だ。誘拐騒ぎなどカモフラージュに過ぎんのだ」「……」「国家的プロジェクトとは国防省の第五次防衛計画の防空システムのことで、これをめぐって東日グループと五代コンツェルンがしのぎを削っておったが、うちが勝って国防省の内定を得た。この防空システムの総工費は約五千億。戦闘機や潜水艦など目じゃない。それだけに五代コンツェルンもあきらめるわけにいかん。そこでなんとかうちの内諾を白紙に戻そうとして様々な工作をしている。そこに登場するのが足立だ」「……」

「日本の黒幕と言われる足立と五代コンツェルンが手を結んだ。足立はこのプロジェクトを進めるのにどうしても必要な河野を殺した。次が南条だ。暗にわしに手を引けと言っておるのだ」「誘拐グループを陰で操っているのが足立だと」「そうだ。なんとしても南条を救ってほしい」誘拐団を動かしているのは、足立の懐刀の居郷だと話す小日向。一千万の手付金をもらって仕事を引き受ける鳴海。

鳴海は居郷の愛人である杏子のマンションに忍び込む。「居郷はどこに行ったの。いいおっぱいしてるねえ。小さいけど。あの助平男には勿体ないよ」杏子のところに電話をかける居郷。電話に出る鳴海。「俺はこの女と元の亭主だ。あんた立たないんだってねえ。俺がたっぷり可愛がるから、まあ聞いてなよ、ねえ」鳴海は激しく杏子を抱く。思わずうめき声を出す杏子。「居郷。聞こえるか。本物はやっぱり気持ちいいんだってよ」

鳴海は自分のアジトに杏子を連れ込み、杏子から南条が監禁されている精神病院を聞き、杏子に金を渡す。「これは謝礼だ。一時間たったら出ていけ」「あんたなんか居郷にぶっ殺されたらいいんだわ」杏子に平手打ちを浴びせる鳴海。「自惚れんなよ、お前」精神病院に単身潜入した鳴海は、凄まじい射撃の腕を見せて居郷をはじめとして誘拐団を皆殺しにして、南条を救出しようとするが、何者かに狙撃され、南条も射殺されてしまう。

大量出血しながらアジトに戻って応急処置をする鳴海は、そこに杏子がいるのを知って激怒する。「なんでここにいるんだ。一時間たったら出ていけと言っただろうが」「ひどい傷ね」「俺にかまうな」「あんた死ぬ気なの。この傷じゃちゃんと手当しなきゃダメよ」「わかったよ。ジン持ってこい。居郷は死んだよ」「あんたが」「ああ、俺がやった」ジンをカブのみして、杏子に出ていけと怒鳴る鳴海。杏子は鳴海からもらった金を鳴海に投げつけて出ていく。

しかし杏子はまた鳴海のアジトに戻ってくる。なんなんだ、お前、と毒づく鳴海。「一回寝たくらいで女房づらされちゃたまらんぜ」新聞を鳴海に渡す杏子。「南条さんの死体、あんたがゴミ処理場に捨てたの」「……」「私は居郷を裏切った。あいつらの仲間が全部死んだとしても、私は安全と言えないわ」「何がお前は怖いんだ。まあ大体察しはつくけどね。居郷たちの死体が上がらない裏をお前知ってるからだろう」「居郷たちの住む世界は得体が知れないのよ」「それが馬鹿馬鹿しいって言ってるんだよ」

南条を殺されたことを小日向に詫びる鳴海。「金は返しますよ」「まあ待ちなさい。南条救出の不可能なことはわしにもわかっておった」「じゃあなんで俺を雇ったんだ」「君の力を試したと言ったらいいのかな。そして見事に期待に応えた。居郷をはじめとした誘拐団を全滅させたじゃないか」「おいちょっと待てよ。どうしてそのことを知っているんだ」「まあいいだろう。どうだ、改めてわしと契約せんか。謝礼は改めて五千万」「何を殺らしてくれるの」「足立だ。今度の問題の解決には奴を消す以外にない。どうかね」

足立を狙って行動を開始する鳴海であったが、城西署の桂木警部たちに連れ去られ、地下室で拷問を受ける。「俺たちの暴力は法律で守られているんだ」「ああ、そう」鳴海に今回の事件から手を引いてくれという桂木。「警察が手を引けだと。事前に逮捕したらどうなんだい。市民を守るのがあんたらの役目だろう」「返事はどうなんだ」「桂木さん。あんたとはどこかでお会いしましたね。確か病院でしたね」「病巣になって切ってもいいだけどね。できればばい菌の入る前に抑えるのが俺たちの役目なんだ」「……」「もういいよ。帰りたまえ」「どうもありがとうございました」 

鳴海は足立の愛人で銀座クラブのママ綾乃を襲う。「足立の居場所を知らないかねえ」「知らないわ」「小さなおっぱいなんだねえ。ここんとこ刺すけど」「麻布の正立寺別院にいるわ」「何やってるの」「毎日読経しているそうよ」

足立殺害をやめて、と鳴海に訴える杏子。「あなたは相手がどんな恐ろしい男かわかってないのよ。無茶だわ。現職の刑事とギャングを敵に回して、あなた勝てると思ってるの」「……」「ねえ聞いて、桂木は裏の事情を知っている私をきっとどうにかしようと思うに決まっているわ。あなたには私を守る責任があるのよ」「……」「お願い、やめて。行かないで」

鳴海はビルの屋上から足立の狙撃に成功するが、ヘリコプターに乗って指示する桂木率いうる警官隊に取り囲まれて、一斉射撃を受けるが、なんとか逃走してアジトに逃げ込む。その時ちょうど杏子は桂木たちに連れ去られようとしていた。車で逃走する桂木たちを全速力で走って追いかける鳴海。車は波止場に行き、追いかけてきた鳴海を轢き殺そうとするが、鳴海は超人的な射撃の腕を見せ、桂木たちを皆殺しにして、杏子にキスすると波止場を全速力で駆け去る。

綾乃のマンションに行き、綾乃の首を締め上げる鳴海。「足立の居場所を教えてもらおうか」「あなたが撃ったんじゃないの」「とぼけるなよ、この野郎。あれは替え玉だろうが」「……」「おい。足立と小日向はつるんでるな」「そうよ。警察を敵に回してはとても勝ち目がないと思ったのね。あなたを罠にかけて」「なるほどね。足立はどこだ。どこだ。どこだって聞いているんだ」

足立の居場所を聞いた鳴海は、囲碁を打っている足立と小日向の前に現れる。「足立さんですね。あんたに別に恨みはないが、そこの小日向さんに頼まれて、約束を果たさせてもらいます」「ま、待ってくれ」

足立の脳天に銃弾をぶちこんだ鳴海は小日向に話しかける。「終わったよ。金は振り込んでくれたんだろうねえ」「ああ、振り込んだよ。御苦労だったな」「はい。次はプライベートな問題だ。あんたちょっと悪乗りしすぎだったよ」「待て。撃つな。君に言うのが遅れたが、国防省の防空システムはうちと五代コンツェルンで二分することで決まったんだ。現実は仕方ないんだよ。撃つな。金はやる。殺さないでくれ」小日向の右脚を撃つ鳴海。「今のは約束手形です。これからもよろしく。素敵なゲームありがとう」

翌日の新聞には、東京港で暴力団員らしき身元不明の射殺体が発見された事、防空システムについては東日グループと五大コンツェルンとが共同受注をする事、そして足立が心不全で死亡した事などの記事が記載される。ヌードスタジオでヌード嬢に馬鹿にされて外に出た鳴海は、車の助手席で男に寄りかかっている杏子を見て、慌てて車を追いかける。「おい、待ってくれよ、杏子ちゃん。こんなことになるなら恰好つけないで、綾乃も杏子ちゃんもやってればよかったんだよ。おーい、待ってくれ」

★ロロモ映画評

財界人が誘拐されるという事件が発生し、人質の一人が射殺体となって発見される。東日電気社長の南条が誘拐され、東日電気会長の小日向は鳴海(松田優作)という男と接触する。「用件は」「この間誘拐されたわしの娘婿の南条を生きて救い出してほしい。謝礼は五千万だ。奴らの目的は東日グループをある国家的プロジェクトから引きずりおろすことなのだ」「国家的プロジェクトとは国防省の第五次防衛計画の防空システムのことで、これをめぐって東日グループと五代コンツェルンがしのぎを削っておったが、うちが勝って国防省の内定を得た。この防空システムの総工費は約五千億。それだけに五代コンツェルンもあきらめるわけにいかん。そこでなんとかうちの内諾を白紙に戻そうとして様々な工作をしている」一千万の手付金をもらって仕事を引き受ける鳴海なのであった。

松田優作の遊戯シリーズ第一作となる本作は優作のカッコよさを堪能しなさいと見る者に命令する映画でありますが、ロロモは「探偵物語」の松田優作が好きでありますから、この映画の優作が、いろんな優作映画の中でも一番しっくりくかなと思われ、男はユーモラスなハードボイルドな男に誰でも憧れて、結局どっちにもなれない中途半端な男のままで死んで行くパターンに陥りますが、ここでの優作は男の理想形を見せつけてくれ、おっぱいの小さい田坂圭子はなかなか魅力的な女優でありますが、この映画一本で芸能界から消えたようでありますが、消えたと言えば、フィクサーの足立を演じた見明凡太郎もこの映画を最後に芸能界から消えてしまい、消息不明となったそうです。

この映画が公開された1978年にかるた名人の西郷直樹が生まれています。早稲田大学教育学部に進学し、早稲田大学かるた会に所属。「小学一年生の時、百人一首の好きな三歳上の兄と遊んでいるうちに、かるた百枚の札を全部覚えてしまいました」その後は小学・中学・高校・大学生選手権とすべての世代戦で優勝を果たし、1999年、当時大学3年生で出場した百人一首競技かるた名人戦で史上最年少名人となり、以後、2012年まで史上最長となる14期連続での名人位防衛を果たしましたが、2012年10月、2013年度の名人戦への出場辞退を表明。これにより、連続名人位在位記録は14年で途絶えることとなったわけです。

「百人一首競技の面白さはスピードを競い合うところです」集中力、記憶力、瞬発力、そして最後は体力で勝敗が決まるというこの競技は格闘技に近いものがあり、正月になるとその決勝戦の模様などがニュースで流れますが、はっきり言って凡人のロロモには何が行われているかわからない世界となっていますが、確かに体力の使いそうな競技であって、将棋や囲碁とはなんだか違うなというオーラが漂っているわけです。

西郷名人がなぜ名人戦出場を辞退したのか不明ですが、彼もこの競技で食っているようではないので、いろいろと大人の事情があるのかなあと思ったりしますが、ロロモはこの競技かるたは何だか面白そうなのでいつかは大ブレークするのではないかと期待しているのですが、なかなかブレークしないので、西郷名人はそれに嫌気がさして引退したのかとも思うわけです。

なお彼の一番好きな歌は、崇徳院の「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思う」だそうですが、ロロモの一番好きな百人一首は何かとつらつら考えてみると、蝉丸の「これやこの 行くも帰るも わかれては しるもしらぬも 逢坂の関」もなかなか渋いかなと思いますが、猿丸太夫の「奥山に もみぢふみわけ なく鹿の 声聞く時ぞ 秋はかなしき」の哀愁も捨てがたいかなと思いますが、歌の素晴らしさよりも読み手の名前の方が好きなのかなあと思ったりするのでありました。(2013年3月)

得点 80点

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