モンローのような女

1964年 松竹

キャスト:真理明美(いち子)佐田啓二(水口)千之赫子(まさ枝)森光子(お鈴)笠智衆(源四郎)賀原夏子(お浅)山本圭(孝太郎)川津裕介(森本)加藤武(蜂屋)三上真一郎(吉村)長門勇(新庄)

監督:渋谷実

抜群のスタイルを誇る高校生のいち子の父の源四郎は踏切番でアル中気味、母のお浅は精神病で入院していた。源四郎の妹のお鈴は「新月」という飲み屋を経営していたが、不動産屋の蜂屋の妾となっており、お鈴の息子で医学部志望の孝太郎はお鈴と蜂屋に軽蔑のまなざしを送っていた。

お鈴は店のサービスとしてアベックに風呂を提供していた。二日酔いで寝込む源四郎を見舞うお鈴。「兄さんも酒をやらないともう少し出世できたのにね」「わしは悪いことをやって出世するよりも踏切番で一生をまっとうしたい」「でも底抜け貧乏じゃないの。姉さんはお金の苦労をしているうちに、オツムがおかしくなって入院してるし、いっちゃんは御年頃だというのにロクな化粧もできないし。こんなところに置いておくのは勿体ないわよ」「俺の目の黒いうちはおめえのところに働きに出さないよ。いち子は学校を卒業させて、二三年働かせて、嫁にやるんだ」「それがいいでしょうね」

精神病院でお浅と会ういち子。「お母さん。私学校やめて勤めるわ」「お母さんじゃありません。私お姫様です」学校をやめてどうするんだ、といち子に聞く孝太郎。「まさか、おふくろの口車に乗るんじゃないだろうな」「あんたのところの女中にはならないわ」「俺が心配しているのはもう一つの話だ。「新月」の常連の水口ってカメラマンが君のヌードを撮らしてくれ、とおふくろに言っていることさ」「冗談じゃないわ。ヌードなんて」

お鈴は「新月」に勤めるまさ枝に、いち子にヌードになるよう勧めてくれと頼む。「私はいっちゃんが裸になったって一円の得にもならないのよ。ただ姪の出世を願っているだけで。あんたもヌードになりたかったら、水口先生に頼んでもいいわよ」「本当?」

酒をのんですまない、といち子に詫びる源四郎。「この間、6号の踏切が自動化するって話を聞いたもんでよ。すると俺の8号も自動化になると俺はお払い箱になると思うと、飲まずにいられなくてなあ」車掌の森本はまだ学校を辞めたことを源四郎に言ってないのか、といち子に聞く。「それを知ると、また飲んだくれるわ」「でも、いつかはばれるぜ」

蜂屋は風呂に入るために風呂を作ったのにいつもアベックが使っている、とお鈴に文句を言う。源四郎はいち子が学校をやめたことを知って、まだ飲んだくれる。まさ枝はヌードをやれば、といち子をけしかける。

「裸って人間の真実をいっぱい写すと思うけどなあ」「……」「今夜、死んだマリリン・モンローの「ナイアガラ」を見てきたの。モンローははじめヌード写真で売り出したのよ。裸が嫌なら最初は水着でやればいいのよ」「水着だって恥ずかしいわ」「だってお金になるのよ」「……」

水口は助手の吉村をしっかりしろと怒鳴る。「今の若い男はみなカメラを持っている。その中からプロのカメラマンになるということは大変なことなんだよ」いち子がモデルになるのをOKしたと水口に連絡するお鈴。「まあ、最初からヌードでってわけにはいかないから水着で。それからいち子は友達を連れて行きたいというんです。彼女のように十七歳ってわけにはいかないけど」「いいですよ、僕は年増も好きだから」

その電話を聞いていた孝太郎はショックを受けて家出してしまう。水口は張り切っていち子の水着写真を撮りまくるが、まさ枝はまた今度と言われて、がっくりする。

次に水口の所に現れたまさ枝は、ミロのヴィーナスのように美しい人はみな裸だよ、と水口に言われてすぐヌードになる。蜂屋は水口の撮ったいち子の写真を見て、いいねえ、と感心するが、水口に写真を撮らせて謝礼をもらうより、「新月」の看板娘にしたほうが儲かる、とお鈴に言う。

いち子の水着写真を「新月」の壁に貼るお鈴は、孝太郎を探しに家を出る。まさ枝のヌード写真を見ながら風呂に入る蜂屋は、まさ枝に背中を流させる。そこに現れるクリーニング屋の小僧。「洗濯物持ってきました」洗濯屋帰れ、と怒鳴る蜂屋。

いち子と映画を見に行った森本は昨日「新月」に行ってきた、と話す。「君の写真がいっぱい貼ってあったぜ。でもビキニでないのは残念だな」「馬鹿」「君の身体はゼニのとれる身体なんだぜ。こうなったら徹底的にやったほうがいいよ」「そうかしら」

蜂屋はお鈴はひどい女だ、といち子に言う。「君を裸にして、店の看板娘にして一儲けしようとしてるんだ。悪いことはいわない。ムードだけはやめなさい。俺は芸術が好きでベントーベンなんかよく観にいったもんだ。いい絵だったねえ」「でも、あたし、お金がいるんです。お母さんの入院費」「いっちゃんぐらいの別嬪なら、いくらでも収入の道はあるよ。俺の友達がパッチリという目薬作っているんだ。そこのコンマーシャルに売り込んでやるよ」

友達の家にいた孝太郎を連れ戻しに行くお鈴。「不潔だよ。風呂にアベックを入れるなんて」「それもこれもあんたのためを思ってやってるんだよ。あんたに大学が入って医者になってほしいから、あんなことやってるんだ。でないと誰があんな商売するもんですか」「そんな浪花節には騙されないよ。いっちゃんを裸にしてピンハネしようってのも俺のためかよ」「いっちゃんは自分の意志で水着になったのよ」「嘘つけ」「そりゃあたしも進めたわよ。いくばしかお金になればと思ってね。私は一銭ももらってないのよ」「これからもらうんだろう」

叫ぶお鈴。「どうして私の言うことを信用しないのよ。あんた、いっちゃんが好きなの」「……」「だから、いっちゃんばかり贔屓にするのね。ねえ、お母さんの言うことを聞いて、家に帰ってきて」「嫌だよ。だって母親があんな助平たらしい男の妾なんて我慢できるわけないじゃないか。今のあんたは俺のおふくろじゃない。ばばあの淫売だよ」「わかった。別れるわ。あんな店、どうでもいいわ。あんたが帰ってくるなら店も蜂屋も清算するわ。あんたさえいてくれればいいのよ」

水口はいち子を美しくするよう熱血指導しはじめ、いち子のビキニ姿を激写する。自分に構ってくれないとむくれるまさ枝に吉村は新庄という最低のカメラマンがいると言う。「この間からいいヌードモデル紹介してくれたら金を弾むと言っているんですよ。ねえ、彼女の裸がいい加減な雑誌に出れば、おたくだってスカっとするんじゃない。先生の鼻をあかして」「あんたってワルねえ」

酔って帰った源四郎はいち子の勤めるカメラ会社に挨拶に行くと言う。あわててそんなことをしなくていいと言ういち子。まさ枝は水口の三倍のギャラで水着写真を撮りたいというカメラマンがいる、といち子に言う。「新月」で客に媚を売っているお鈴を見て、がっかりする孝太郎。

新庄のスタジオに行ったいち子は裸にされそうになるが、なんとか逃げだす。新庄のところにいち子が行ったことを知った水口はプライドが傷つけられたと、もうお前なんか会いたくない、といち子に門前払いを食らわせる。

傷心のいち子の前に現れる孝太郎。「俺は行くところがないんだ。俺は何をするかわからない。今夜だけでいいから一緒にいてくれ」ホテルの部屋で朝まで話し合う二人。おふくろはひどい嘘つきだ、と嘆く孝太郎。「約束を守ってくれない。女なんてみんな露出狂なんだ。君だってそうだ。裸の写真撮らしたじゃないか」「水着だけよ」「時間の問題だよ。君もそのうち裸になるんだ」「……」

「お願いだ。裸にならないでくれ。君の裸が雑誌に出て人の目にさらされるなんて耐えられない」「ならないわ。なりっこないじゃない」「それ聞いて安心したよ」「孝ちゃん。私を好きになったりならないで」「なぜ」「今は大学に行くことを考えるべきよ。あなたは立派な医者になるのよ」「君はあの森本って車掌が好きなんだろう」「好きよ。あのひとのこと」「……」「とにかく、おばさんに孝ちゃんのこと話してみるわ」「うん」

いち子が行方不明になったと聞いて、源四郎の家に行く森本。そこにはまさ枝がいた。「おじさん。いっちゃんを探しに行ったわよ」いち子に新庄を紹介して、いち子はヌードになったに違いない、と森本に話すまさ枝。「ひどいじゃないか。俺、いっちゃんと結婚する気だったんだぞ」「そんなに好きだったの。でも過ぎたことはしょうがないわ」「そんな無茶な。反省しろよ」「私だけが悪いなじゃないわ。いっちゃんだって悪いのよ。お金が欲しかったから」もつれあって抱き合う二人。

孝太郎のことを思って、店を畳んで、蜂屋と別れてくれ、とお鈴に頼むいち子。了承するお鈴。家に戻ったいち子は抱き合う森本とまさ枝を見てショックを受けて、精神病院にいるお浅のところに行く。

「私、頑固に裸にならないと言ってきたことが、このごろ無意味な気がしてきたの。恥ずかしいとか嫌らしいというのは、それを嫌っているんじゃなくて、実は心の中でそれを望んでいるなじゃないかと思うようになったの」「そうだよ」「私、とことんまでやってみるわ。なんでもやってみるわ。脱いでも平気よ」「若いうちはやりたいことをおやり」「そうねえ。モンローだってやりたいことやって死んだんだわ」「ああ、モンローさん。いい兵隊さんだったよ。終戦直後お前を抱えて闇市うろついてたら、チョコレートくれたわ」

料亭にいち子を呼び出す蜂屋。「僕はお鈴と別れるよ。それが孝太郎のためになるなら」「そう。よかったわ」「あの店は君にあげてもいい。僕は君に夢中なんだ」いち子に抱きつく蜂屋。「製薬会社の話、嘘なのね」「そう嘘なんだ。すまない」蜂屋を蹴飛ばして料亭から出るいち子。

いち子を白い眼で見る孝太郎。「蜂屋と寝てきたんだろう。クリーニング屋の小僧から聞いた。お前が真昼間からあいつと風呂に入っていたって」「なにそれ」「言い訳するな。どいつもこいつも裏切り者だ。もういいよ」お鈴に電話する孝太郎。「いち子はあんた自慢のアベック風呂で蜂屋といちゃついていたんだ。俺はこのことをみんなに言いふらしている。いち子の気違いおふくろにも言ってやったぜ。お姫様は「新月」に火をつける、と言ってたぞ」

いち子はとんでもない不良娘だと泥酔しながら、お鈴に言う源四郎。「そうよ。これもアメリカの影響よ。アメリカじゃ30秒ごとに交通事故、2分ごとに性犯罪、10分ごとに人殺しがあるの。資本主義のどん詰まりなのよ」「くそったれめ」「夜勤なんでしょう。そんなに飲んで平気?」

病院を抜け出したお浅は蜂屋に腹にナイフを突き刺す。泥酔して踏切操作を誤った源四郎は列車と車の衝突事故を起こしてしまう。水口のもとに現れるいち子。「お父さんが、事故を。もうダメ。お母さん、抜け出してきたの。でもまた長くなるわ。この世の破滅よ」「……」「あたし脱ぎます。今度こそ。今日から新しいあたしだわ。昔の私は今夜限りで消えるんだわ」水口の前で全てを脱ぐいち子。水口は夢中でシャッターを切るのであった。

★ロロモ映画評

抜群のスタイルを誇る高校生のいち子(真理明美)の父の源四郎(笠智衆)は踏切番でアル中気味、母のお浅(賀原夏子)は精神病で入院していた。源四郎の妹のお鈴(森光子)は「新月」という飲み屋を経営していたが、不動産屋の蜂屋(加藤武)の妾となっており、お鈴の息子で医学部志望の孝太郎(山本圭)はお鈴と蜂屋に軽蔑のまなざしを送っていた。

学校をやめてどうするんだ、といち子に聞く孝太郎。「俺が心配しているのは「新月」の常連の水口ってカメラマンが君のヌードを撮らしてくれ、とおふくろに言っていることさ」「冗談じゃないわ。ヌードなんて」お鈴は「新月」に勤めるまさ枝(千之赫子)に、いち子にヌードになるよう勧めてくれと頼む。車掌の森本(川津裕介)はまだ学校を辞めたことを源四郎に言ってないのか、といち子に聞く。「それを知ると、また飲んだくれるわ」

源四郎はいち子が学校をやめたことを知って、まだ飲んだくれる。まさ枝はヌードをやれば、といち子をけしかける。「今夜、死んだマリリン・モンローの「ナイアガラ」を見てきたの。モンローははじめヌード写真で売り出したのよ。裸が嫌なら最初は水着でやればいいのよ」水口(佐田啓二)は助手の吉村(三上真一郎)をしっかりしろと怒鳴る。「今の若い男はみなカメラを持っている。その中からプロのカメラマンになるということは大変なことなんだよ」いち子がモデルになるのをOKしたと水口に連絡するお鈴。その電話を聞いていた孝太郎はショックを受けて家出してしまう。水口は張り切っていち子の水着写真を撮りまくるが、まさ枝はまた今度と言われて、がっくりするのであった。

ロロモはこの映画のタイトルを聞いた時から一体どういう映画なのだろうと楽しみだったのですが、どうもこれは人間喜劇と言うかわけのわからない世界が展開され、むむむとロロモは唸ってしまい、全く面白くなかったかと言うとそうでもなく、どうにも泡を掴むような映画になってしまっていますが、アル中の笠智衆ややり手婆のような森光子と言うのはちょっと珍しい気もしますが、この映画の中で一番愉快なのは銭屋演じた加藤武と言うことになるかと思うわけです。

主役を演じた真理明美はこの映画で主役デビューし、その後「男の顔は履歴書」「網走番外地・悪への挑戦」「黄金の野郎ども」と言った映画に出ますが、テレビに活動の拠点を移し、1969年から始まった「プレイガール」で人気が出るようになりますが、1969年、映画監督の須川栄三と結婚し、プレイガールの撮影の多忙さと主婦業の仕事のため腎臓を患い番組を降板。彼女はレコードを出しており、自分が作詞した「忘れたいの」という曲を歌っていますが、これがロロモの好きな曲でありますが、彼女はシングル一枚しか歌っていないようですが、彼女がこの映画で主役デビューしたのがよかったのか悪かったのかよくわかりませんが、ロロモにはあまりモンローのような女には見えなかったのが残念に思うわけです。

ロロモ的には彼女よりもまさ枝の千之赫子の方が魅力的でありましたが、彼女は1952年に宝塚歌劇団に入団しますが、1958年に退団し、映画「蟻の街のマリア」に主演。この映画は主演映画「蟻の街のマリア」は、隅田川畔のバタヤ部落で奉仕活動に従事していたカトリック信者の北原怜子が、次第に胸を患い、ついに病没したという実話を元に製作された作品で、彼女は映画初出演の新人ながら、この悲劇のヒロインを熱演して、1958年度製作者協会新人賞を受賞したそうです。

女優として順調なスタートを切った彼女でありますが、結局この作品を超える作品には恵まれなかったようでありますが、これはデビュー戦が一番よかったと言うプロ野球選手のようなものかと思いますが、そういう選手と言えば、ロロモはどうしてもデビュー戦でノーヒットノーランをマークした中日の近藤真市を思い出してしまうのでありました。(2013年1月)

得点 50点

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