猛吹雪の死闘

1959年 新東宝

キャスト:宇津井健(粕谷)三原葉子(昭子)菅原文太(菅野)大友純(大平)宗方祐二(峰山)星輝美(千春)

監督:石井輝男         

粕谷はスキーの名手で、日本選手権に優勝した腕前の持ち主であったが、恋人の千代子を雪崩で失って以来、雪山で暮らす毎日を送り、その雪山の小屋で暮らす千春はそんな粕谷の心を慰めてくれる存在だった。ある日、スキーハウスに菅野、大平、峰山という三人組が昭子という女を連れて、鍔黒山越えのガイドを頼んでくる。昭子がかつての恋人の千代子と瓜二つなのに驚く粕谷。

粕谷、菅野、大平、峰山、昭子、千春の六人は粕谷のスキー小屋に宿泊する。菅野は粕谷や昭子に酒を薦めるが、冷たく断られて、「ひがみますよ」とすねた素振りをする。千春は明るく「雪の降る町」を熱唱する。ダンスを甘く踊る粕谷と昭子。それをひがみっぽく見つめる菅野。へへへと笑う若僧の峰山。渋い顔をする中年男の大平。

翌朝、昭子はスキー小屋から消えていた。粕谷は昭子を捜索しに行くといい、千春に捜索隊を要請するために伝書鳩を飛ばせ、と命令するが、その命令の破棄を命じる菅野はピストルを粕谷に突きつける。「とにかく女を探して来い。変なマネはしないほうがいいぜ。この子は人質で預かっておく」一時までに帰らないと、千春の命はないと凄む大平。

粕谷は凍死寸前で倒れている昭子を見つけ、山小屋に連れて行く。菅野に絡む峰山。「女連れのほうが目立たないとか言いながら、女に逃げられるようじゃザマあねえや。とにかく宝石を分けてもらおうじゃねえか」「峰山。そう荒れるなよ。サツにはどうせ気づかれていたんだ。サツの目をくらますには、いったん汽車から降りたほうがいいと思ったんだ」「能書きはいい。とにかく宝石を分けてくれ」大平も峰山の意見に同意する。苦渋の表情を浮かべる菅野。「宝石はないんだ。パクられたときのことを心配して、昭子に預けたんだ」取っ組み合いの喧嘩を始める菅野と峰山。

それを冷ややかに見つめる大平。「そんなことをしても、誰も木戸銭払ってくれねえぜ。思い出してみろ、網走の刑務所のこと。鉄格子の窓から雪山が見えたっけなあ。親兄弟から見放された俺たちは、網走を出てからも兄弟付き合いをしていこうと堅い約束をしたはずだ。その俺たちが同じような雪山の中で殴り合いか」昭子のことは俺にまかしてもらおう、とうめく菅野。

山小屋で意識を取り戻す昭子に質問する粕谷。「君はあの男たちとどういう関係があるんだ。どうして逃げようとしたんだ」「あの三人が私の勤めているクラブに来たの。そして大事な取引があるから一緒に北海道に来てくれ、と汽車に乗せられたの。莫大なお礼をするからと言われ、私は一緒に行くことにしたの。でも三人は宝石店強盗だと言うことが新聞の記事でわかったの」「……」

「私は逃げようとしたが監視されてできなかった。三人はスキー客に紛れて警察の目をごまかすことにしたの。そしてスキーハウスの麓で、あなたが鍔黒山のガイドをしていることを知ったの。あなたの小屋なら人目につかないし、しばらく身を隠してから、屏風岩越えで宮城県の小名川港に抜けることに相談が決まったの。私はこのことをあなたに伝えようとしたけど、監視が厳しくてダメだったわ」

「それで逃げ出したんだね」「ねえ、早く手配しないと」「ダメなんだ。千春ちゃんが人質になっている。一時までに君と帰らないといけないんだ」「でも、あたしは帰ると殺されるわ」「僕が命がけで守る」

俺は一人で宮城県に行くと言い出す菅野に、やめとけという大平。「あの男がいないと屏風越えはできないぜ」「あの男ができるなら、俺だってできるさ」「そうか、どうしても行くというなら置いていってもらおうか」「な、何をだよ」「おい、菅野」「何だよ、オヤジ、難しい顔をして」「お前に聞きたいことがある」

そこに粕谷が昭子を連れて戻ってくる。宝石を出せ、と詰め寄る峰山に、なんのこと、と冷たく突き放す昭子。昭子の始末は俺がつける、という菅野に、宝石を出せ、と命令する大平。「な、何のことだ、オヤジ」「峰山、奴の懐を探ってみろ」菅野の懐から宝石が出てくる。

俺にはわかっていたとうそぶく大平。「女を口封じして、女が宝石を盗んだことにして、宝石を独り占めする腹だったのさ」俺が悪かった、と大平と峰山に泣きつく菅野。「頼む。殺さないでくれ。宝石はお前たちで分けてくれ。仲間じゃねえか。頼む。殺さないでくれ」菅野を殺すのをやめて、宝石を二等分する大平と峰山。

隙を見て、千春は逃走する。残された五人は屏風岩越え目指して出発する。山を降りた千春は事情を説明する。中年男の大平は疲れて休憩する。そんな大平に声をかける菅野。「オヤジ、大丈夫かい」「ああ、年は争えねえ」「オヤジ、お前にはこの山は無理だ。宝石を出すんだ」

菅野は大平の宝石を奪って、大平を崖下に突き落とす。それを見た昭子はあんたは人でなし、と菅野をなじる。開き直る菅野。「どうせ、あいつは先のない命だ。惜しがることはないだ。いいか、皆にはあいつは足を滑らせて落ちたと言うんだぞ。つまらない告げ口をすると、お前も大平みたいになるぜ。そのかわり、山を降りたら、お前をたっぷり可愛がってやるぜ。ははははは」

粕谷と昭子と峰山は屏風岩越えを果たすが、菅野はもたつく。昭子は菅野を滑落死させればいい、と粕谷に言う。「あいつは大平をクレパスに落として殺したのよ」それを聞いた峰山はザイルを切ろうとするが、粕谷は力強く制する。峰山をなぜ制したのと、粕谷に聞く昭子。「ザイルは切れないんだ」「あたし、恐ろしいことを考えていたのね。あたし、鬼のような女ね」「そんなことはない。君はあまりにも恐ろしいことや醜いことに出会い過ぎたんだよ」

黙々と雪山を歩く四人であったが、猛吹雪に襲われる。雪を掘って雪洞を作って避難する四人。こんな美しい山の中で死ねるなら本望、と譫言のように言う昭子。歌を歌ってみんなに眠るな、と励ます粕谷。吹雪がおさまって元気になった菅野と峰山はもうお前に用はない、と粕谷に襲いかかるが、断崖に足を踏み外して滑落する。粕谷と昭子は千春の連れてきた捜索隊により、無事救出される。

昭子は山の美しさを改めてしみじみと知る。ヤッホーと叫ぶ千春。ヤッホー、千春ちゃん、と叫ぶ粕谷。「昭子さん。君も叫んでごらん。力いっぱいの声で」「ええ」ヤッホー、千春ちゃんと叫ぶ昭子。「さあ、みんなで歌いながら帰ろう」三人は「雪の降る町を」を元気よく歌いながら、山を降りるのであった。

★ロロモ映画評

粕谷(宇津井健)はスキーの名手で、日本選手権に優勝した腕前の持ち主であったが、恋人の千代子を雪崩で失って以来、雪山で暮らす毎日を送っており、その雪山の小屋で暮らす千春(星輝美)はそんな粕谷の心を慰めてくれる存在だった。ある日、スキーハウスに菅野(菅原文太)、大平(大友純)、峰山(宗方祐二)という三人組が昭子(三原葉子)という女を連れて、鍔黒山越えのガイドを頼んでくる。昭子がかつての恋人の千代子と瓜二つなのに驚く粕谷。

粕谷、菅野、大平、峰山、昭子、千春の六人は粕谷のスキー小屋に宿泊する。菅野は粕谷や昭子に酒を薦めるが、冷たく断られて、「ひがみますよ」とすねた素振りをする。千春は明るく「雪の降る町」を熱唱する。ダンスを甘く踊る粕谷と昭子。それをひがみっぽく見つめる菅野。へへへと笑う若僧の峰山。渋い顔をする中年男の大平なのであった。

この映画は映画自体の出来はまあどうってことないと言うか、はっきり言ってたいした作品とはどうしても思えませんが、どうしようもない悪役を演じるのがあの菅原文太ということでポイントの上がるという映画になっていて、ここでの菅原文太は本当に何一ついいところがないという男を演じ切ってまして、この路線が定着すると彼は悪役人生を突っ走ってしまったんじゃないかと思うわけです。

しかし、幸いにもこの映画がヒットしなかったためか、この路線を走ることはなく、次第に高倉健とは別路線の男の中の男を演じるようになっていくことになり、そういう意味では情けない菅原文太の姿を拝めることはそうはなく、そんな姿がたっぷり拝めるこの映画はある意味貴重な映画となっているわけです。

この映画で菅原文太は菅野という悪人を演じていますが、1970年代に活躍した俳優に菅野直行という俳優がいて、彼は1970年代に「爆発!暴走遊戯」「華麗なる追跡」「任侠花一輪」「衝撃!売春都市」「従軍慰安婦」「穴場あらし」「十七才の成人式」「モナリザお京」「成熟」「女子学園 おとなの遊び」といった映画に出ていますが、ロロモにとっては「0課の女 赤い手錠」で演じた野呂が強烈な印象に残っているわけです。

刑務所を出た仲原を出迎える関と野呂と稲葉。「これで横須賀の玉ころがしが勢ぞろいってわけだ」車の中で若い男と女が愛し合うが、顔をストッキングで隠した仲原たちが現われ、男を蹴っ飛ばして失神され、女を草むらに連れ込んで輪姦する。そこに男が現われ、仲原の弟に義明に襲いかかり、義明のストッキングを奪う。

怒った仲原は男を滅多切りにして殺す。仲原たちは女を加津子が経営するスナック「マンハッタン」に連れ込む。ラーメンと丼を貪り食いながら、女を見て上玉じゃないか、とつぶやく加津子は週刊誌を引っ張り出す。そこには次期総裁候補に南雲善悟の娘の杏子が鳩村前総裁の令息と結婚するという記事が出ている。えへへへへ、と笑う仲原。

警視庁に行き、警視総監の谷と刑事の日下に会う南雲。「要求通り三千万払えば、娘が戻ってくるわけじゃないんだね」「そうです。犯人たちはお嬢さんに顔を見られていると思われます。金さえ入れば用済みということで消される可能性があります」一切は極秘に処理せよと命令する南雲。

独房に入れられている零に会いに行く日下。「俺はお前に頼みたいことがあってここにやってきた。お前がうまく処理すれば交換条件として、お前が殺した一件をお蔵入りにして、お前を自由にしてやる」ヤマは誘拐だ、と話す日下。「人質は生きて連れ戻すこと。犯人は射殺しようが好きにしろ」「人質の名前は」「南雲杏子。南雲善悟の娘だ」「そうかい。それで大体裏の筋書が読めたよ。お前さんたちの薄汚い目論みもね」

三千万円の身代金を受け取りに来た仲原はバッグを奪って逃走するが、三人の刑事に取り押さえられる。そこに現れた零は三人の顔をナイフで切り裂く。仲原と零は「マンハッタン」に逃げ込む。零を見て顔色を変える加津子。バッグの中身は紙屑であった。娘の命はなんとも思ってないのか、と呟く仲原に聞く稲葉。「あのスケは罠かもしれねえぜ」いっちょ痛めるか、と答える野呂。稲葉と野呂と関は零を屋根裏部屋に連れ込み、手錠をかけて暴行を加えて凌辱する。

ということで郷悪非道な横浜の玉ころがしカルテットの一人を菅野直行は演じますが、ただその極悪非道ぶりが仲原演じる郷^治が100だとすると、荒木一郎演じる関が80、遠藤征慈演じる稲葉が70なのに対し、菅野直行演じる野呂は50くらいのパワーしかなく、あっさり殺されてしまうことになり、眼鏡をかけて気弱そうな彼に横浜の玉ころがしのメンバーを務めるのは荷が重かったような気がロロモは思いますが、やっぱり「0課の女 赤い手錠」を勝る映画はそうないだろうとロロモは改めて思ったりするのでありました。(2013年2月)

得点 61点

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