モスラ

1961年 東宝

キャスト:フランキー堺(福田)小泉博(中条)香川京子(ミチ)ザ・ピーナッツ(小美人)上原謙(原田)志村喬(天野)平田昭彦(院長)ジェリー伊藤(ネルソン)

監督:本多猪四郎

第二玄洋丸はインファント島の近くで台風に弄ばされ座礁する。「畜生。台風と放射能とのサンドイッチか」乗務員はボートにのって退船する。一夜明けて救援に向かう救援隊。「放射能の上を飛ぶのは気持のいいもんじゃないな」とぼやくヘリコプターの操縦士。インファント島には4人の生存者がいた。生存者の原爆症が心配されたが、放射能の汚染状況はまったく発見されなかった。

医師の原田博士や核センター院長が生存者に聞く。「何かだるいところはありませんか。関節に痛みがあるとか」医師の格好に扮して、日東新聞の記者の福田とカメラマンのミチがまぎれこんでいた。「300万読者のために事実が知りたいだけなんですよ。放射能の墓場として有名なインファント島から奇跡の生還をとげた。その秘密をね」「赤いジュースのせいかもしれません。原住民が飲ましてくれたんですよ」「ちょっと待った。インファント島は無人島のはずですぜ」

インファント島は無人島であることを確認して原水爆実験を行なった、とロリシカ国は声明を出していた。福田とミチは言語学者である中条の家に行く。「どうしてロリシカ国は合同調査をしようなどと言い出してきたんでしょうね」「わかりませんね。でもポリネシアの島々はアトランティス大陸のように地続きだったという伝説がありましてね」

ロリシカと日本の合同調査隊がインファント島に向かい、日本側のリーダーは原田博士、ロリシカ側のリーダーはネルソンであった。中条もインファント島に向かい、報道関係はシャットアウトであったが、ボーイに変装して福田も調査隊のメンバーに紛れ込む。

原田は中条に愚痴をこぼす。「どうもネルソンの態度は不愉快だ。調査資料は全てネルソンの目を通すことになっているんだ」「学術的に純粋・自由というのが調査団のモットーでしょう。ネルソンは秘密組織のメンバーかもしれませんね」調査団はインファント島に到着し、福田たちの目の前に緑の森が広がる。ネルソンは古い地図のようなものを見ながら何かを探す。中条は巨大なカビのようなもののはえた洞穴で奇妙な碑文を発見する。

「このカビから取れた液体を第二玄洋丸の生存者は飲んだに違いない」中条は吸血植物に襲われる。薄れ行く意識の中で二人の小美人の姿が目に写る。中条の出した警報を聞いてかけつけた福田に救出される中条。「そうだ。僕を助けてくれたのはひどく小さな人間だった。身長30センチ。双子の小美人だった」「ねえ。小美人はどうして現われたんです」「うん、わかった」「何が」「じゃあ、お休み」「こっちはちっともわかりませんよ」

再び警報を鳴らす中条「昨夜、彼女達が音に対して非常に敏感であることがわかったんです。だから警報を鳴らしたんです」小美人たちが現われる。甲高い声で何かを訴える小美人。「何を言っているんでしょう」「どうも島を荒らさないで欲しい、と言っているようだ」

ネルソンは小美人を鷲づかみにする。「得がたい資料だから持っていくことにする」調査団はあっという間に原住民に囲まれてしまう。原田はネルソンに小美人を解放するよう要求する。二人を自由にすると原住民たちは消えてしまう。福田は中条に言う。「ねえ。先生。ロマンにかぶれたわけではありませんが、こういう島はそっとしておきたいですねえ」

調査団は何の成果をあがることなく帰国する。話しあう福田と中条。「クラーク・ネルソン。経歴・出身地、一切不明。1954年アマゾンで有尾人の探検を行なって以来、探検家ということになっているがね」「僕は古美術ブローカーと思ったんですよ。やつが変な古文書を眺めているのを見かけたもんでね」「あの島は大変な島ですよ。僕は洞穴で碑文を発見して、その写しを書いておきました。ぼくなりに解読しているんですが」「このよくでてくる記号は」「モスラ」「どういう意味です」「わからん」

ネルソンは再びインファント島をこっそり訪れ、小美人をおびき出す事に成功する。「かわいいお嬢さんたち。またお目にかかりましたよ」小美人を捕えて高笑いを浮かべるネルソンは原住民に取り囲まれるが、拳銃をぶっぱなしてその場を逃れる。生き残った原住民は「モスラ」と叫んで倒れる。山が崩れ巨大な卵が出現する。

日東新聞の編集長・天野はネルソンと小美人の写っている写真を見て、福田に怒鳴り散らす。「君はインファント島でこの小美人と会ったんだろう。なぜ記事にしなかった」「はあ、そっとしておきたかったんです。あの島に行った人はみんな小美人のことを知っていますが、誰もそのことを漏らさなかったでしょう」「新聞記者魂というものがあるだろう」「新聞記者である前に人間ですからね。人間として当然のことをしただけです」「わしだって人間だ」

ネルソンは小美人を見世物として利用する。「今は原子力の時代ですが、奇跡は昔の物語でしょうか。いや、奇跡も神秘も現代にもあるのです。私が南海の孤島で発見した可愛い妖精をご紹介しましょう」小美人はモスラの歌を朗々と歌う。その歌は遠いインファント島に届く。卵の前で激しく踊る原住民。

福田たちはネルソンに抗議を申し込む。「非人道的な行為は止めて、二人を島へ帰してくれませんか」「妖精たちは人間じゃない。品物だ」「新聞では非難の声が高まっているんだぜ。二人に会わしてくれないか」「よかろう。三分間だけ会わしてやろう」

福田は小美人に話し掛ける。「あのね、希望は捨てないでね」「ありがとう。私達は希望を捨てません」「私達の言葉がわかるのか」「言葉だけじゃありません。私達の気持を遠い所へ伝える事もできるのです」「テレパシーですね」「私達は島に必ず戻ります。でも」「でも?」「私達が助かるためにこの国の人たちに大きな不幸が起こります」「どうしてです」「モスラが来ます。私達を助けるために」

卵はひび割れてモスラの幼虫がその雄姿をあらわす。小美人を求めて、海を渡りひたすら日本に向かうモスラ。タンカーのオリオン丸はモスラに巻き込まれて沈没する。「モスラが小美人を求めて東京に向かってるんだ。お前のせいで被害がでているんだ」「僕には関係ない」「早く小美人を解放するんだ」「うるさい」

ネルソンは福田たちの相手をしない。中条は小美人を説得する。「このままでは何の罪の無い人が不幸になります。あなたたちの力でなんとかなりませんか」「モスラには善悪の区別がつきません。私達を連れ戻すことしか考えていないのです。私達も悲しいです。でもどうすることもできません」

中条はテレパシーを遮断することはできないか、と原田に相談する。「この遮断装置で囲めば、モスラは小美人の居所はわからなくなるわけだ」ひたすら東京に向かうモスラに攻撃を加える自衛隊。とりあえず姿を消すモスラ。福田は遮断装置をネルソンに渡す。「君の欲望のおかげで大勢の人が不幸になる。彼女たちのテレパシーを遮断するのは君のためじゃないんだ」

ロリシカ国は事態を重く見てネルソンの見世物を中止させることにする。姿を消していたモスラは第三ダムに姿を現し、一路東京に向かう。ネルソンは小美人を連れて行方をくらます。モスラは東京タワーを折り曲げて、糸をふきつけて繭を作る。「モスラが成虫となり空を飛ぶとえらいことです。早くあの小美人たちをインファント島へ連れて帰るべきです」しかしネルソンは外交官になりすまし、ロリシカ国行きの飛行機に乗る。

ロリシカ国は事態を重く見て、原子熱線砲の提供を申し出る。10時に攻撃開始。激しく燃え上がる繭。農場に逃げ込んだネルソンはラジオがモスラ死すのニュースを流すのを聞いて狂喜乱舞する。「さあ、好きなだけ歌え。いくら歌ってもモスラはもう来ないぞ」小美人の歌声に反応して繭が動き始め、モスラは成虫化し、突風を巻き起こしながら空を飛ぶ。「見ろ。モスラはロリシカに向かって飛んでいくぞ」「やっぱりネルソンはロリシカにいるんだな」

中条、福田、ミチの三人はロリシカに行くことになる。「ぼくたちは小美人と話のできる唯一の人間ということでロリシカに招待されているわけさ」ニューカークシティに現われたモスラはニューカークに壊滅的な打撃を与える。暴徒と化した市民はネルソンを射殺する。ニューカークに悲しみの鐘の音が鳴り響く。「あの鐘の音は、あの娘たちの歌声に似ているわ」「あの十字架は碑文のモスラの記号に似ているな」

中条はニューカークの警察に頼み、空港に巨大なモスラの記号を書き、3時に一斉に鐘の音を鳴らすよう要請する。3時になり教会の鐘の音が鳴り響き、モスラは空港の記号の上に静かに舞い降りる。「ありがとう。皆さん。私達は世界に平和がくるよう祈ります」「「私達もインファント島の平和を乱さないよう努力します」「ありがとう。モスラが待っています。さようなら」「さようなら」「さようなら」

★ロロモ映画評

台風により日本の貨物船が沈没し、ロリシカ国の水爆実験場であるインファント島に漂着した4人の乗組員が救助されたが、放射能障害が見られなかった。乗組員たちが収容された病院で医師の原田博士(上原謙)や核センター院長(平田昭彦)が生存者に質問するが、その場に日東新聞の記者の福田(フランキー堺)とカメラマンのミチ(香川京子)がまぎれこんでいた。

「300万読者のために事実が知りたいだけなんですよ。放射能の墓場として有名なインファント島から奇跡の生還をとげた。その秘密をね」「赤いジュースのせいかもしれません。原住民が飲ましてくれたんですよ」「ちょっと待った。インファント島は無人島のはずですぜ」

インファント島は無人島であることを確認して原水爆実験を行なった、とロリシカ国は声明を出していた。ロリシカと日本の合同調査隊がインファント島に行くことになり、日本側のリーダー原田博士、ロリシカ側のリーダーはネルソン(ジェリー伊藤)であった。言語学者の中条(小泉博)もメンバーに加わり、ボーイに変装して福田も調査隊のメンバーに紛れ込む。調査団はインファント島に到着。中条は巨大なカビのようなもののはえた洞穴で奇妙な碑文を発見する。「このカビから取れた液体を第二玄洋丸の生存者は飲んだに違いない」

中条らの前に小美人たちが現われ、甲高い声で何かを訴える。ネルソンは小美人を鷲づかみにする。「得がたい資料だから持っていくことにする」調査団はあっという間に原住民に囲まれてしまう。原田はネルソンに小美人を解放するよう要求する。二人を自由にすると原住民たちは消えてしまう。福田は中条に言う。「ねえ。先生。ロマンにかぶれたわけではありませんが、こういう島はそっとしておきたいですねえ」調査団は何の成果をあがることなく帰国するのであった。

しかしネルソンはこっそりインファト島に行き、小美人を捕まえたためにモスラが目覚めて日本とロリシカ国は大変な騒ぎとなり、全くネルソンがいなかったらこんな騒ぎにならなかったのに、という思いがする映画になっていますが、この映画は特撮映画を隠れ蓑にした反戦映画であることは間違いなく、平和への祈りが濃厚に立ち込めており、特撮と反戦が握手しているだけで素晴らしい映画と言えるわけです。

その平和のシンボルが小美人でありますが、やはりこういうファンタスティックなヒロインを考え出したアイデアが素晴らしくで、彼女たちの歌声を聞いて、モスラの卵が孵化するというアイデアも素晴らしく、いったん孵化したモスラはもう小美人を救うことしか考えないという設定も又素晴らしく、モスラが死んだと思って喜んでネルソンが小美人を自由にしますが、小美人の歌声で繭の中からモスラが成虫になって羽ばたくシーンは、日本特撮史上に残る名シーンと言えるわけです。

この映画は特撮映画ですから、特撮の見せ場も必要であって、東京タワーにモスラの幼虫が東京タワーを折り曲げて、糸をふきつけて繭を作るシーンは、これまた日本特撮史上に残るシーンでありまして、卵から孵化、幼虫から繭を作ってその中で蛹になって成虫になるという昆虫の変態は、特撮映画にぴったりのアイテムでありまして、この映画はそれを巧みに利用しているわけです。

そんな見せ場を作りながらも平和への願いを切実に込められたこの映画は大人から子供まで楽しめる特撮映画となっており、日本の映画人は21世紀もこういう特撮映画を作ってほしいとロロモは切望しますが、やはり21世紀で怪獣特撮映画と言うものは時代遅れと言うか時代の波に乗れないのかと思うのでありました。(2013年1月)

得点 89点

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