日本侠客伝 関東編

1965年 東映

キャスト:高倉健(緒方)南田洋子(栄)長門裕之(松夫)北島三郎(サブ)丹波哲郎(八十川)天津敏(郷田)遠藤辰雄(石津)鶴田浩二(勝治)

監督:マキノ雅弘

大正12年、関東大震災をきっかけとして魚市場は日本橋から築地に移動する。その翌年、東京魚市場協同組合の理事長の郷田は次々と魚市場の店を金と力で傘下に入れていたが、古くからの老舗である江戸一は組合入りを断固として拒んでいた。

江戸一の女主人の栄に時世を見たまえと諭す郷田。「震災で何もかも変わってしまったんだ。従来のようにバラバラで問屋が仕入れをするのをやめて、問屋を一つの協同組合にしようと言うんだ。こんな合理的な話のどこがイヤなんです」「郷田さん。私は組合がイヤってわけじゃないんです。ただ組合には暴力で入った人も大勢いると聞いてますから」「まあ、我々にタテを突いて損か得かよく考えるんだな」

小揚人足の松夫は船員の緒方と意気投合し、サブの寿司屋に連れていく。「いや、この船長はいい男でよ」「船長はやめろよ。俺はただの機関士だよ」「まあ、飲んでくれよ。なあ、この店長は6年前まではスッポンのサブって言われて、銀座界隈では相当顏が売れた兄さんでよ」「松ちゃん、やめてくれよ。今はすっかり真面目になったんだから」

水産局長になった寺岡に石津親分の手を借りて問屋の7割を手中に収めたと話す郷田。「じゃあ君が魚市場の実権を握る日も近いな」「そうなりゃ魚の値段は理事長の思いのままですからな」「まだ、厄介なことが。カビの生えた河岸の気風が残ってましてね」「江戸一派の反対か」「へえ、江戸一さえうんと言わせりゃ、あとはどうとでも」「まあ焦らずゆっくりやろうじゃないか」

寝坊で船に乗り遅れてしまった緒方は、江戸一で働きたいと栄に頼む。「再来月になったら船が来るんですよ。それまでここで」「どうしてウチを」「いや、松ちゃんがここがいいって言うし、男なら誰だって美人のそばにいたいし。それに女の人に使われるのは初めてだから、何か面白いことがあるんじゃないかと思って」

築地に戻ってきた勝治に震災の時はどこにと聞くサブ。「朝鮮で石炭を掘ってたんだ」「兄貴が炭鉱夫に」「ところで江戸一の旦那は亡くなったそうだな」「ええ。兄貴が旅に出た翌年でさあ。心臓発作で。知らせようにも兄貴の行方がわからなくて」「ガキの頃から世話のなりっぱなしで終わってしまった」「俺もこの店を作ってもらったきり恩返しができずじまいで。兄貴と一緒に江戸一の店に出入りした頃が、俺達の花でしたね」「うん、で、江戸一は」「お嬢さんが」「そうか。お栄ちゃんが」

勝治に淋しかったと言う栄。「父ちゃんが死んだ時、勝さんがいてくれたらなあと思って。ねえ、どうして急に姿を消したの」「俺は根っからのヤクザなんです。旅をしてる方が性に合ってるんです」「じゃあ、また」「お嬢さん。河岸のことは聞いてます。どんなお役にでもたちてえんですが、俺みたいな男がカタギの商売に口を出したくないんです。わかっておくんなせえ」「でも時々何もかも放り出して、お嫁に行きたいと思うけど。勝さん、まだ一人なの」「へえ」「売れ残りが二人そろったわけね」

カナダ船は香港にいる栄たちに説明する日南物産の森田。「今朝、香港の商社との交渉が破談になったので、どこでもいいからマグロを卸したいとうちに電報が入った。どうでしょう。ウチが仕入れますから買っていただけませんか」私は仕入れたいと言う栄。「ただあまりに大きな話なので皆さんと相談したいと思います」「思い切ってこの話に乗ってみようじゃないか」「このまま郷田の好きにさせとくわけにはいかない」森田によろしくお願いしますと言う栄。

カナダ船のマグロを買い付ける話は本当ですかと栄に聞く緒方。「ええ、本当よ」「俺はこの魚河岸に入って一週間足らずですが、この頃事情が呑み込めてきたんですよ。海の上から見てた魚河岸とは大違いで、とことん腐ってますね」「すいません、心配かけて。でも今度の話は森田さんって父の古くからの取り引き先のお話なの」「でもこれだけ大量に買い付ければ郷田は死に物狂いで妨害してくるでしょう」「……」「社長さん、男を甘く見ちゃいけませんよ」「緒方さん」「こんな状態なら、この話はやめたほうがいいんじゃないですか。探せばいくらでも」「お説教なら聞きたくないわ。父さんが死んでから、私は誰にも指を刺されず、江戸一の暖簾を守ってきたのよ」「……」「今更とやかく言われる覚えはないわ」

カナダ船は入港するが、寺岡は荷揚げは当分できないと栄に言う。「外国の水産物を勝手に業者が買い付けたりしたら、国内漁業に甚大な影響がありますからな。関係法規を検討した上で、ご返答いたします」「政府から入港は許可されてるんです」「入港と荷揚げは別問題です」「東京中のみんなが一円でも安い魚を待ってるんです」「詳しい事情は今夜ゆっくり話し合いましょう」

料亭に現れた栄に寺岡は来ないと言う郷田。「私が代わりに局長の言伝を持ってきた。カナダ船は諦めなさい」「あなたと局長とは」「特別懇意な間柄でね」「……」「どうだね。私と手を組んだ方が利口だと思うがね」「……」「とにかく、あんたがうんと言うまで帰しませんよ」そこに現われる緒方。「社長、お帰りください」「なんだと」「あんたも水産局長の代わりなら、私も社長の代わりでいいでしょう」一人残り、石津組のヤクザたちにボコボコにされる緒方。

結局マグロはカナダに運ばれることになり、松夫は石津を狙撃するが失敗する。逃走する松夫から銃を奪い、緒方に松夫に注意してくれと頼む勝治。「松さんがどうかしたんですかい」「わけは寿司屋のサブに聞いてくれ。俺はこれから旅に出なくちゃならなくなった。それから河岸の連中にくれぐれも短気を起こさないように言ってくれ。相手はヤクザなんだから」「……」「あんたもだぜ」「……」「江戸一の栄ちゃん、頼むぜ」

俺は自首すると言うサブに匿われてる松夫に、勝治さんのメンツはどうなると聞く緒方。「お前が自首すりゃそれでいいのかい。お前が自首したら江戸一はどうなるんだ。小揚の仲間はどうなる」「……」「河岸はこのままじゃ終わらせねえよ」「何かいい手でもあるのか」「俺は焼津で船に乗り損ねた時、網元頭の八十川さんと仲良くなった。話をしてみるよ」

焼津に行き八十川に船を出してくれと頼む緒方。「賭ける物は俺の命しかないんです」「わかったよ。お前の命を買おう」「ありがとうございます」「大船に乗った気で俺にまかせておけ。魚河岸の事情はお前が話さなくてもわかってるんだ。魚はこの俺が運んでやる」「……」「なんだ、お前。泣いてるのか」「大将、俺は嬉しいんだよ」

江戸一で嫌がらせをする石津組のヤクザたちを見かねて、サブは郷田の命を狙うが命を落とす。父の墓のそばにサブの骨を埋めたと言う栄に、石津を狙ったのは俺だと言う松夫。「そんな。あれは勝さんが」「かばってくれたんですよ。俺の身代わりになってくれたんですよ」「……」「俺はどうすりゃいいんだ。サブは立派に一人で死んでしまいやがった。サブ、勘弁してくれ」

栄にうまくいったと言う緒方。「焼津から魚が入りますよ」「ありがとう」「ただ、この魚を荷揚げさせねえとなると」郷田は寺岡に手を回して、焼津からの魚の荷揚げをストップさせる。何かあったなと八十川に聞かれ、何かあったんですと言う緒方。「とにかく早く荷揚げしないと、俺達の冷凍じゃ魚は持たないぜ」「大将、俺にまかせてくれ」

小揚人足たちに小売りの人たちはどうして安い魚を買えないんだと叫んでいたと話す緒方。「お前さんたち、河岸の人間としてこの問題にどう返答するんだよ。これは江戸一の問題じゃないんだ。河岸全部だよ。お前さんたちの問題なんだよ。あの魚さえ入ったら、郷田が作った気ちがい相場は一目瞭然になるんだ。そうすりゃ組合叩いて、河岸はキレイにできるんだ」

ヤクザ相手に河岸で大暴れする緒方や八十川や小揚人足。郷田を狙うと言う松夫にバカなことをやめろと言う勝治。「ヤクザ相手にケンカして命を落としていいのか」「勝さん。俺の好きにさせてくれよ。そうでないとサブのヤツに申し訳がたたねえ」「松さん、やめるんだ」協同組合事務所に乗り込み、命を落とす松夫。郷田と石津を叩き斬る勝治。

郷田も石津もカタをつけたと緒方に言う勝治。「あんたに頼まれてたのに、松さんを。すまん」栄にすまねえと言う勝治。「俺がそばにいながら取り返しのつかないことをしてしまった。大事な仕事を血で汚してしまって。ヤクザってヤツはいつもカタギさんに迷惑をかける。勘弁しておくんなさい」

緒方に手錠をかけようとする警官に待ってくれと言う勝治。「張本人はこの俺一人だ。この男には何の関係もねえ」「勝さん。あんたにだけつらい思いをさせたんじゃ、俺の立つ瀬がなくなるよ」「お前も付き合いのいい男だな。お嬢さん、こいつはすぐ帰ってきますよ。待ってやってくれますね」頷く栄。緒方と勝治は連行されるのであった。

★ロロモ映画評

この映画は2018年10月をもって豊洲市場に移転する築地市場が舞台となりますが、中央区の築地市場は都内に11市場が設置されている東京都中央卸売市場のうちの一つで、ほかには港区の食肉市場、大田区の大田市場、豊島区の豊島市場、新宿区の淀橋市場、足立区の足立市場、板橋区の板橋市場、世田谷区の世田谷市場、足立区の北足立市場、多摩市の多摩ニュータウン市場、江戸川区の葛西市場があるわけです。

築地市場で取り扱う品目は水産物、青果、鳥卵、漬物、各種加工品ですが、水産物の取り扱い規模は世界最大級であるため、ここでは水産物専門であるかのようなイメージがあり、この映画を見ているとそのイメージが増幅されることになりますが、青果は東京では大田市場に次ぐ第二位の取り扱いを誇っており、築地市場は水産物オンリーではないのですが、どうもそんな目で見られがちなのがロロモには何となく不満に思えたわけです。

この映画では高倉健と鶴田浩二が男を競い合いますが、高倉健が若さにまかせて剛速球を投げ込むタイプなのに対し、鶴田浩二は酸いも甘いも知り尽くしたベテラン投手と言った感じでこの新旧ダブルエースの投げ合いはなかなか見ごたえがあったなと言う感じですが、ロロモのイメージするエースとは20勝をマークする投手ですからダブルエースとは同一球団から20勝投手が二人出ることになりますが、そんなチームは1973年に阪神タイガースで江夏豊が24勝、上田二郎が22勝をマークして以来、もう45年も現れていないわけです。

と言うか20勝投手そのものが近年では珍しい存在となっており、1950年からプロ野球は2リーグ制になりますが、それから両リーグとも20勝投手を輩出しており、多い時では、セ・リーグでは1950年、1956年、1962年に8人、パ・リーグでは1964年に9人もの20勝投手が出現しますが、セ・リーグでは1971年、パ・リーグでは1974年に初めて20勝投手がいなくなります。

それでも両リーグにどちらかは20勝投手がいましたが、1983年に初めて両リーグで20勝投手はいなくなり、それからは1984年に阪急の今井雄太郎が21勝、1985年に阪急の佐藤義則が21勝、1989年に巨人の斎藤雅樹と中日の西本聖が20勝、1990年に巨人の斎藤雅樹が20勝、1999年に巨人の上原浩治が20勝。そして21世紀になってからは阪神の井川慶とダイエーの斉藤和巳が20勝、2008年に楽天の岩隈久志が21勝、2013年に楽天の田中将大が24勝と4人の20勝投手しか出ていないわけです。

大リーグでは1980年以降先発投手5人を100球前後で降板させ、中4日の日程で運営するローテーションが定着。大リーグは162試合制度ですから、一年間ローテーションを守ると32試合程度投げることになり、これだけ投げれれば20勝もマークすることはそう難しくなく、今年もレイズのブレイク・スネルが21勝、インディアンスのコーリー・グルーバーが20勝と2人の20勝投手が出ているわけです。

それに対し日本では。1980年代に中5日のローテーションを組むチームが多くなるにつれて、20勝投手が少なくなり、1990年代に一週間に一度の登板でいい中6日のローテーションが増えると、20勝投手は天然記念物のように希少価値となり、21世紀ではイリオモテヤマネコなみの存在となっていますが、中6日だと年間登板試合は25試合程度になってしまい、これで20勝は厳しいものがあるわけです。

この中6日はあまりにも過保護な気がしてせめて中5日でもいいのではと思いますが、日本のプロ野球は月曜休みの火曜から日曜まで6連戦の週休一日制のシフトが多く、火曜日に投げた投手は中5日だと月曜日となって試合がないので、日程上中6日にせざるを得ないことになり、ローテーションの編成上、各チームとも先発6人態勢になっているかと思われますが、水曜日以降登板する投手は中5日で投げれますから、もっと日本の先発投手は登板機会を増やして20勝にガンガンチャレンジしてほしいと思うのでありました。(2018年10月)

得点 38点

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