長崎ぶらぶら節

2001年 東映

キャスト:吉永小百合(愛八)渡哲也(古賀)藤村志保(冨美江)いしだあゆみ(艶子)尾上紫(雪千代)原田知世(梅次)

監督:深町幸男

大正11年。長崎の料亭「唐月楼」で海軍軍人や造船所の職員らの相手をする芸者歴30年の愛八。「愛八。土佐のために泣いてくれとるのか」「土佐は可哀相すぎますたい。去年、進水式をしたばっかりと言うのに。なして、海の藻屑ばせんといけんとですか」「悪いのはアメリカだ。俺は軍縮条約ってのが気に入らん。この弱虫外交。今こそ日本男児の意地ば見せんば」「所長さん。噂では土佐は呉で射撃演習の的にされるちゅうことですが」

「我々は世界一の軍艦を作ってしまった。国民の血税を集めて、数多くの殉職者を出して、世界一の軍艦をね。それを沈めろと言われてる。これも世界平和のためだと言われたら、我々は従うしかない」今夜は土佐のお通夜ですと言う愛八。「土佐の供養のつもりで作った歌と土俵入りを献上ばさせてもらいます」歌を歌った後、土俵入りをする愛八。

長崎港を出る土佐を涙ながら見送る愛八に、声をかける長崎一の大店である万屋の主人の古賀。「ほれ。土佐が引かれていくばい」「寂しか眺めですねえ」「あの歌は即興ね?」「旦那さんも唐月楼に来とったとね。その場で思いつきで気がついたら歌うとりました」「夕べの歌は泣かされた。土佐も本望やろうねえ」「うちらは歌うことぐらいしかできませんけえ」

旦那さんの遊びっぷりは尋常ではないと笑う愛八に、金は人間を粗末にすると言う古賀。「そやけん、こっちから思い切って縁を切ってやった。11代続いた万屋の身代を俺一人でキレイさっぱり使い果たしてやった」「……」「おいはよか時によか人に会うた。愛八」「はい」「おいと一緒に長崎の古か歌を探して歩かんか。この長崎は昔からよか歌がいっぱいあるのに、東京からの流行り歌に押しまくられて霧散してしもうとる。なくなる前に集めておこうかと」「……」「多分、一銭にもならん。天下国家のお役に立つとは思えんばってん、それでよかなら、手は貸さんね」

長崎の古い歌を次々と採譜する愛八と古賀。「どげんしたと」「珍しか蝶々が」「ああ。迷蝶たい。遠か南の島から風に乗って、ここまでたどり着いた蝶々たいね」「迷蝶さん。一人ぼっちでよう来んなったねえ。もう故郷へは帰れんとよねえ」「……」「うちは捨て子です。40年前にここに売られてきたんです」「愛八」

芸者のお美代が娘のお雪を遊郭「花月」に売って,幇間の捨八と駆け落ちする事件が発生し、花月の女将の冨美江にお雪は女郎にしないでくれと頼む愛八。「あの子は器量がよかけえ、よか舞妓になるでしょう」「芸はうちが仕込みますけえ、お女郎にだけは」「愛八さんにお任せしましょう。はよう金のなる木にしてや」

90歳を超える元芸者の菊千代から「長崎ぶらぶら節」と言う歌を採譜する愛八と古賀。「この歌は」「どげんしたと」「うちを40年前に売った女衒が口ずさんでた歌です」「ほんまか」「ぶらぶら節のおかげで40年前の昔に戻りました。うち、嬉しかです。お役に立って」「愛八」

歌探しはこれでおしまいにしようと愛八に言う古賀。「2年かけて、数えてみたら100曲ば越す歌を集めとった。これから先続けても、ぶらぶら節を超す歌に出会うことはなかろう」「ばってん、うちは時にはお会いしたかとです」「おいたちに先に道はなか」「うちには夢のごたる年月でした」「おいも楽しかった」「せめて今夜は添い寝ばしておせつかっせ」「よかよ」

朝になって古賀のいなくなってることに気づく愛八。<愛八。お前には随分迷惑をかけたばってん、今は金銭のお礼もでけん。代わりにと言うとおこがましかばってん、お前に詩を書いた。暇な時、歌うてくれんね>古賀が原稿用紙に書いた「浜節」と言う歌詞を見て、「長崎ぶらぶら節」のメロディに合わせて歌う愛八。

昭和5年夏。妹分の梅次と一緒にお雪に歌の稽古をする愛八。蛹が蝶になったと言う梅次に、愛八さんのおかげだと言う冨美江。しかし血を吐いて倒れ、肺病と診断されてしまうお雪。自分の年では十分なお雪の入院費を稼ぐことはできないと悩む愛八に、今夜は東京から常客が来たと言う冨美江。「西條八十ちゅう有名な歌の先生ですけえね。先生は長崎一番の歌い手を呼んでほしいちゅうんで、あんたを呼んだんよ」「でも、うち、流行り歌なんて何も」「適当に歌うたらええんよ」長崎の歌がいいんだと言う西條に、「長崎ぶらぶら節」を歌う愛八。

昭和6年。愛八の「長崎ぶらぶら節」はレコード化されて大ヒットし、その印税でお雪に高額治療を受けさせて退院させる愛八を尋ねる古賀の妻の艶子。「「長崎市史・風俗編」。これば先生がお一人で?」「御自分が手渡されたらよかとにと言うても、お前が届けろと言うて」「わざわざお届けいただきましてありがとうございます」「今日、伺うたとはもう一つ預かりもんがございまして」

東京のレコード会社から200円送られてきたと言う艶子。「これは「長崎ぶらぶら節」のB面に収められた「浜節」の印税ちゅうことで。古賀がこの金を全部あんたにちゅうことで」「いえ、うちはいただくことはできません」「はい。愛八はあん気性じゃけえ、きっと断るやろうって」「……」「そん時はこう言えって。自分のために使えとは言わん。誰か他人様の為に使えばよかろうって。どんげんですか?」「はあ。ようそんな人の心を見透かしたごたることを」「愛八さんのことは何でもわかるって自慢するとですよ。似た者同士って」「似た者同士?」「うちはそんげんこと、いっぺんも言うてもろうたことございません」「……」

雪千代のお披露目に「浜節」を選んでくれてと冨美江に感謝する愛八。「あとはお披露目のお金ば出してくれしゃる旦那様を見つけんとよねえ」「そんことで、これに200円入っとります。立派なお披露目ばしてやってつけなさい」「どっからこがな大金?」「今流れとる歌が作ったお方からですたい」「古賀先生。先生にお礼ばせんと」

雪千代のお披露目の席に古賀が来ると聞いて、私は出ないと梅次に言う愛八。「古先生とは何年ぶりかでしょう」「うちは花月には行かんよ。お礼参りに行ってくる拳」「また、そんな依怙地ば張って。うちにはわかっとる。姐さんが古賀先生ば好いとるの。古賀先生だって」「よかね。一度会わんと決めた人とは二度と会うたらいけんと。あの方には雪千代が会うてくれるたい。雪千代はうちの身代わりですたい。雪千代ならわかってくれる。古賀先生ならわかってくんなる」

古賀の前で梅次の歌う「浜節」に乗って踊る雪千代。愛八は心臓の発作で参詣した天神の境内であの世に旅立つのであった。

★ロロモ映画評

この映画の冒頭に出て来る「土佐」のお話ですが、この戦艦は日本海軍における戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を保有するという「八八艦隊」計画の中で長崎の三菱造船所に発注され、大正10年12月18日に進水。しかし、同時に進行中であったワシントン軍縮会議において英・米・日の主力艦隊保有率が「5:5:3」と決定されたため、「八八艦隊案」は中止となり、大正11年2月5日、土佐は廃艦となり、8月1日、造船所全職員に見守られながら、曳船に曳かれて、「土佐」は長崎を出航し、呉で実験に従事し、大正14年2月9日、艦名の由来となった高知県の沖の島西方約10海里地点にて自沈したわけです。

この「土佐」の悲しい運命を知ってるか知らないかでこの映画に対する集中度が違ってくるかと思われますが、当然ロロモは知らないので、集中力を欠いたままこの映画を見てしまうことになり、吉永小百合の土俵入りは見たいような見たくないような気になってしまいますが、やはりこの映画は長崎市にかなりの思い入れがないと厳しい映画と言うか、もしかしたら長崎市民限定の映画なのかなと思うわけです。

広島市で生まれ被爆2世であるロロモにとって、長崎市は兄弟都市と言うか特別の感慨を持たせる市でありますが、現在広島カープには高校時代からのライバルである長崎日大高校出身の大瀬良大地と清峰高校出身の今村猛と言う長崎出身の二人の投手がいるのは何とも嬉しいことですが、残念ながら大瀬良は大村市、今村は佐世保市出身ということで長崎市出身ではないわけです。

現在の長崎市出身のプロ野球選手と言えば、ソフトバンクの増田珠だけのようですが、中学までは長崎市で過ごした彼は、高校は野球の超名門校横浜高校に進学して、1年生の夏から」レギュラーとなり、3位年生の夏には、神奈川県予選において、大会新記録タイとなる4戦連発を含む5本塁打を記録し、2017年ドラフト会議でソフトバンクで3位指名で入団。 ルーキーイヤーとなった2018年は3軍からスタートを切り、9月23日に行われたウエスタンリーグ公式戦のオリックス戦で、「9番サード」で公式戦初のスタメンに抜擢され初安打を記録。高校時代から注目された彼ですが、なかなかプロの途は厳しそうだなあと思わせるわけです。

そんなこんなで長崎市ファンには嬉しいこの映画の原作小説は作詞家として有名ななかにし礼で、この原作は第122回直木賞を受賞。と言うことは原作はかなり面白いのでしょうが、彼の妻はこの映画にも出ているいしだあゆみの妹の石田ゆりでありますが、彼女はなかにし礼作詞による「悲しみのアリア」「愛ある限り」「愛を知ったから」「いつも二人」と言う4枚のシングルを発表した後に、なかにし礼と結婚したために芸能界を引退しましたが、彼女のデビュー曲の「悲しみのアリア」はクリスタル感覚の名曲で、ロロモがなかにし礼ベスト10を選べば入る必ず入る名曲であると断言できるわけです。

この映画で吉永小百合と渡哲也は長崎の歌を集めて、「長崎ぶらぶら節」が長崎の歌ナンバーワンと断定しますが、ここでロロモの選ぶ長崎の歌ベスト10を発表。10位は小畑実「長崎のザボン売り」、9位は原田糸子「ヘイジー・ポート・ナガサキ」、8位は渚ゆう子「長崎慕情」、7位は瀬川瑛子「長崎の夜はむらさき」、6位は藤山一郎「長崎の鐘」、5位は春日八郎「長崎の女」、4位は渚一郎とルナジェーナ「夜の銀座と長崎と」、3位は五木ひろし「長崎から船に乗って」、2位は青江三奈「長崎ブルース」、1位は内山田洋とクールファイブ「長崎は今日も雨だった」となるのでありました。(2018年12月)

得点 27点

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