ナチョ・リブレ 覆面の神様

2006年 アメリカ

キャスト:ジャック・ブラック(イグナシオ)アナ・デ・ラ・レゲラ(シスター)セサール・ゴンザレス(ラムセス)

監督:ジャレッド・ヘス

メキシコの寒村の修道院で給仕係を務めるイグナシオは子供の頃からルチャリブレのレスラーになることを夢見る男であった。イグナシオのいる修道院にシスターが孤児の教師として赴任し、イグナシオはシスターの美しさに心打たれる。町に買い物に行ったイグナシオはスーパースターのレスラーのラムセスの華やかなオーラに圧倒される。

俺はここでの生活が気に入ってるとシスターに話すイグナシオ。「俺は孤児たちが大好きだ。大事にしている。でもブラザーたちは調理係の俺にいい食材を買わせない。今日、町である男を見た。みんなが彼に花束や贈り物を渡していた。あんな男になりたい」「それは誰です?」「実を言うとレスラーだ」「レスリングは罪ですよ。レスラーは偽の英雄にすぎません」「かもね」「我慢するの。タダの気の迷いよ」

しかしブラザーに最低の給仕係と罵倒されたイグナシオは、修道院を飛び出してレスラーになる決意を固めるが、子供たちやシスターのことも忘れられないために、覆面レスラーのナチョとしてリングに上がり、レスラーと給仕係の二足の草鞋を履くようになる。イグナシオは試合には負け続けるが、ファイトマネーで子供たちにまともな食事を与えられるようになる。

プロレスごっこに興じる子供たちに何をしてるのと怒るシスターを諫めるイグナシオ。「この子たちはエネルギーを発散させてるだけだ」「神聖な場所でレスリングはダメです」「よし。お前たち、イグナシオの話を聞け。レスリングは最高。パイルドライバーや顔面への強いパンチ。でも絶対やるな。レスラーたちは美女に大モテで、いい服を着られて化粧品だってもらえる。でも俺はやらない。俺は今の生活に満足してるんだ。いつも朝5時に起きて、まずスープを作る。理想の生活さ。大好きだ」

いつまでも負け続けるイグナシオはプロに学んで強くなることを思いつく。(もう金なんかいらない。ラムセスに学ぼう。彼や彼の仲間と親しくなって技を学ぶんだ)しかしラムセスはイグナシオが町に連れて来た孤児たちにサインすることを拒み、ラムセスのマネージャーはパーティーに来たイグナシオを二流レスラー扱いにして相手にしない。

ガッカリして修道院に戻るイグナシオに今までどこに行ってたのと責めるシスター。「あなたの代わりに私が朝食を作っています」「すいません」「あなたには子供への責任があります」「わかってる」「それでは今までどこに」「最近、修道院関係の用事が多くて。修道院の外でね」「どんな?昨夜はどこにいたの」

「正直に言うと、レスリングの試合に行った。ルチャリブレに」「レスリングの試合を見に?」「まあね」「ルチャリブレは罪深いスポーツです」「でも、どうして」「虚栄心のための闘いだから。お金や自惚れのためのね」「本当にひどいもんだ。でも戦うのは罪かな?」「いいえ。尊い目的のためや人を助けるための闘いなら、神は人々を祝福してくれます」

神に問うイグナシオ。(神よ。なぜ俺をプロレス好きにして、弱っちい選手にしたんです?待てよ。俺を戦わせるのは、孤児たちにファイトマネーでいい生活をさせるため?多分そうだ。今夜バトルロイヤルに勝てば、神は俺を戦う修道士にしてくれる)

シスターと孤児たちにレスラーであることを告白するイグナシオ。「リング名はナチョ。ルチャドールだ」「……」「今夜闘う7人は町でも強豪の連中だ。でも神がついてくれるから、俺はきっと勝てる。賞金は1万ペソだ。その金でバスを買って、ここの子供たちを遠足に連れて行く」

バトルロイヤルを勝ち抜いたイグナシオはシスターに手紙を渡す。<今夜、最強のレスラー、ラムセスと戦う。ファイトマネーは全て修道士の子供たちへ。今、ここに君を愛していると書いておく。追伸。俺たちが独身主義を誓わないのなら、結婚して家庭を持ち、子供たちを育てよう。イヤなら仕方ないけど>

イグナシオは完璧なレスラーであるラムセスに圧倒され、マスクを剥がされてしまう。絶体絶命のピンチに陥るイグナシオであったが、会場にシスターとマスクをかぶった孤児たちが現れたのを見て、ラムセスを見事にノックアウトして勝利を収める。そしてイグナシオはシスターと孤児たちを乗せたバスを運転して、遠足に向かうのであった。

★ロロモ映画評

メキシコの寒村の修道院で給仕係を務めるイグナシオは子供の頃からルチャリブレのレスラーになることを夢見る男であった。イグナシオのいる修道院にシスターが孤児の教師として赴任し、イグナシオはシスターの美しさに心打たれる。町に買い物に行ったイグナシオはスーパースターのレスラーのラムセスの華やかなオーラに圧倒され、レスラーになる決意を固めるのであった。

こうして覆面レスラーになったイグナシオはラムセスにも勝ち、シスターの愛も得て、めでたしめでたしと言う映画でありますが、かなり脱力感の漂う映画でありまして、それが侘しいメキシコのプロレスの世界にあっていると言えばあってますが、ロロモ的にはゴージャスな雰囲気の漂うアメリカ映画「カリフォルニア・ドールズ」のようなプロレス映画の方が好みかなと思ったりするわけです。

イグナシオは孤児とシスターのためにレスラーと給仕係の二足の草鞋を履くことになりますが、この設定は漫画「タイガーマスク」に影響を受けていると思いますが、身分を隠すために覆面レスラーになると言うのは韓国映画「反則王」を連想させ、また長嶋一茂が覆面投手として阪神タイガースの抑えの切り札として活躍する日本映画「ミスター・ルーキー」も連想させるわけです。

この映画の舞台となるルチャリブレとはメキシコのプロレスのことであり、選手のことを男性はルチャドール、女性はルチャドーラと呼び、この映画のイグナシオのようにマスクマンが多く、日本では空中殺法でお馴染みのミル・マスカラスがルチャドールの代表選手として扱われますが、本国メキシコで伝説的な存在として語られているのが、白銀のマスクをトレードマークにしたエル・サントなるレスラーになるわけです。

1940年代にルチャリブレ界のスーパースターとなった彼は、1950年代になると漫画の主人公となり、1950年代後半になると、プロレスラー兼俳優フェルナンド・オセスの誘いによって、サントは映画界へと足を踏み入れ、1958年に「サント対悪の頭脳」と「サント対地獄人間」が公開。

その後もエル・サント主役の映画は50本近く作られ、「サント対犯罪王」「サント対絞殺者」「サント対悪霊」「サント対火星人の侵入」「サント対リングの悪徒」「サント対首狩り人」「サント対恐怖の騎手たち」「サント対悪徳のマフィア」「サント対異星からの暗殺者」「サント対フランケンシュタインの娘」「サント対黒魔術」「サント対誘拐犯人」「サント対狼女たち」なるエル・サント映画が作られたわけです。

どの映画も正義のヒーローであるエル・サントが悪を叩きのめすと言う勧善懲悪ものの映画のようでありますが、仮面のレスラーが主人公と言うことで日本で言えばエル・サントは仮面ライダーに近いものがあるかと思いますが、彼の場合は実際のレスラーとしても活躍していたので、そのヒーローぶりがメキシコ国民によりリアルに伝わったのではないかと想像できますが、このエル・サント映画は一本だけでいいからちょっと見てみたいとロロモは思うのでありました。(2017年10月)

得点 15点

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