流されて

1974年 イタリア

キャスト:ジャンカルロ・ジャンニーニ(ジェナリーノ)マリアンジェラ・メラート(ラファエラ)

監督:リナ・ウェルトミューラー

地中海の豪華ヨットの上で喚きちらすラファエラ。「イタリアも高度成長とか言ってるけど、人口が1億になるとどうなると思う?地中海が下水になってしまうわ」「陸だって地獄よ。飢えた人間が蠢いて」「共産主義者と教会が妥協したから悪いのよ」「ソ連の経済は一体どうなってるのよ」「私は共産主義なんてまっぴらよ」

ラファエラをにらむ料理人のジェナリーノ。「まあ、怖い顔。彼もきっと党員よ。私たち資本家を恨んでいるわ。私たちは搾取者ですかなね」あんなイヤな女は見たことないと呟くジェナリーナ。大声で共産党批判をするラファエラはジェナリーノの料理がまずいと文句を言い、ジェナリーノのシャツが臭いと文句を言う。

洞窟で泳ぎたいからボートを出してとジェナリーノに命令するラファエラ。「潮の流れが早いです」「いいから。私の言う通りにして」ボートのエンジンは故障してしまい、ボートは動かなくなってしまう。「くそバッテリーめ」「どうしたの」「私にもわからないんですよ。エンジンが」「壊れたの?今日は泳ぐなってこと?なんとかしてと」「だから今直そうと」

エンジンを直すジェナリーノに随分かかるのねと言うラファエラ。「器用な男ならすぐ直せるのに」「……」「流されてるわ」「風向きが変わりましたから」「早く直して」「難しいです」「修理できないの?ついてないわね。何も見えないわ。そのうち誰か来るかしら」「さあね」「私たちが帰らなければ探しに来るわよ」「まあね」「そんな気のない返事をしないで」

助けに来るかわからないと言うジェナリーノ。「海は広いし、流れも強いから」「何とかしてよ。あなたが悪いのよ。船乗りはあなたなのよ。信号弾はないの?」「ありません」「今に助けが来るわ」「どうかな」「来るわよ」

誰も助けに来ないわと呟くラファエラ。「陸地も全く見えないし。困っちゃうわね。あのバカたちと来たら。なぜ探しに来ないの。あのヨットには海図もあるのに。まったく能無しなんだから」「……」「直せないなら悪あがきはやめなさい。あら、直ったの。意外だったわね。急いで走らせて。喉が渇いたから」

どの方角ですと聞くジェナリーノに私に聞くのと答えるラファエラ。「責任は取りたくありません」「船乗りはあなたよ。責任転嫁してどうするの?私にわかるわけないでしょう。船乗りなら方角くらいわかるはずよ。太陽の位置で、何とかしてよ。着いたらアフリカなんていやよ」「さあね」「何がさあねよ。わかったわ。私が方向を指示する。だから気の抜けた返事をしないで」

ジェリアーノはイワシを捕まえてラファエラに食わそうとするが、ラファエラは気持ち悪いと海に捨ててしまう。「何も捨てることはないでしょう。3時間もかけて素手で捕まえたのに」「断食も体にいいそうだわ。痩せられるし、血をキレイにするそうよ」「私はいつも貧乏で断食してますよ」「あら、そう」

ガソリンのなくなったボートは波任せで漂流するが、陸地にたどりつく。「ここはどこかしら」「様子を見てきます」「ジェナリーノ。一人にしないで。はぐれたら心細いじゃないの。レストランかホテルを見つけて。ドライブインでもいいわ。やっと助かったわね。冷たいコーヒーが飲みたいわ」

コーヒーを飲むのは難しいとラファエラに言うジェナリーノ。「どうして」「どうやら無人島のようです」「そんなバカな」「家も人も見えません」「ここな地中海よ。南太平洋じゃないんだから」「確かに無人島です」「信じられないわ。あなたなんて何の役も立たない。バカで薄ノロのカボチャよ」「何です?」「何でもないわ」「今、何て言ったんですか」「その口の利き方は何?薄ノロのカボチャと言ったわ」

俺は怒ったと言うジェナリーノ。「いいかい。ラファエラさんよ。これからは俺の勝手にするからな。何様だと思ってるんだ。くそくらえ」「何よ」「くそくらえ」「下品ね」「くそくらえ」「帰ったら思い知らせてやるわ」「豚め」「もう許せないわ」「口うるさい売女のクソッタレ」「失礼だわ。不潔で役立たずの癖に。大馬鹿のゲス野郎」「汚らわしい雌豚め。今まで我慢してたんだ。言いたいことを言わせてもらうぜ」「男の腐ったヤツだわ。貧乏人はこれだからイヤだわ。人の弱みにつけこんで」「ガタガタ言うな。奥さん、これからどうなるか楽しみだぜ」「奴隷の反乱だわ」

ジェナリーノは海に飛び込んで伊勢エビを捕まえて貪り食う。あなたは男らしくないと言うラファエラ。「弱いものを助けないのは犯罪だわ。自分だけ食べたりして」「もしそうなら、世界中の金持ちはムショ入りだ。そういう法律があればいいな」「共産主義の犬。プロレタリアートが権力を握ったら、卑劣なことばかりするんだから」「はははは」「私は頭を下げないわ。それくらいなら飢え死にするわ」

あなたの方が有利なのは認めると言うラファエラ。「食べ物をいくらで売ってくれるの」「……」「いくら欲しいのよ」「……」「空腹で死にそうよ。50万リラ出すわ」「うるせえな。俺の獲物は売らねえぜ」「人殺し」「違うよ。俺は能無しのカボチャだ。人殺しってのはお前さんたちだ」「……」

今から言うことをよく来けと怒鳴るジェナリーノ。「教訓その1。これは金じゃ売らねえ。欲しけりゃ働くんだ。俺のズボンを洗え」スボンを洗うラファエラ。「早く食い物をちょうだいよ」「まだだ。お願いしますと言え」「お願い。ジェナリーノ」「ジェナリーノだと。ジェナリーノ様だろ」「ジェナリーノ様」「ほらよ」「卑劣じゃないの」「ここには洗濯女がいないから、誰かに洗ってもらうしかないのさ。今まで経験がなかっただろう。金持ちだから」

お前は召使いだと怒鳴るジェナリーノ。「女は男の世話をするようにできてるんだ。俺がご主人様なんだぞ。威張り腐ったブルジョア女め」「あなたは鬼よ」ラファエラを殴るジェナリーノ。「教訓その2。今後、悪態をついたら許さねえ。黙って俺の言う通りにしろ。俺のために働くんだ」

ヨットで言いたい放題だったなと言うジェナリーノ。「俺はお前に腹を立てていたんだ」「やめて、ジェリアーノ」「なれなれしく呼ぶな。ご主人様だぞ」「……」「ヨットでお前たちは裸で日光浴をしてたな」「……」「本当は俺たちを意識してたに違いねえ。裸を見せつけて面白がってたんだろ」「……」「今、裸になれ」「……」「脱げ」「ケダモノ」「威張り腐った罰だ」「誰か助けて」「いくら騒いだって、誰も来やしねねぜ」「やめて」「やめるもんか」

ラファエラを殴るジェナリーナ。「これはインフレと不況の腹いせだ。スイスに預金なんかしやがって」ラファエラを殴るジェナリーナ。「これは金持ちしか入れない病院がどんどんできている腹いせだ」ラファエラを殴るジェナリーナ。「これは食品や運賃やガソリン代が値上がりしたはらいせだ」ラファエラを殴りまくるジェナリーノ。「逃げるな。これから一番いいことが始まるんだ」ラファエラを抱くジェナリーノ。「男の強さを教えてやる。本当の男を知るまい」

ジェナリーノに抱かれるようになるラファエラ。「かわいい子豚だ」「あなたのものよ」「俺をご主人様と呼べ」「ご主人様。どうぞ私を好きなようにしてください」「よく言った」「あなたといるだけで私は満足なのよ。あなたは?」「俺もいい気分さ。お前は俺の慰み者だ。お前は最高の娼婦だ」「嬉しいわ」

ヨットが来たけど助けを呼ばずに隠れたと言うラファエラ。「正気か?」「ええ。なぜかって、あなたに夢中だからよ。今の幸せを終わらせたくないからよ。どうしようもならないくらい好き」「いいか。船が本当に来たら、すぐに報告するんだ。主人は俺だぞ。船を呼ぶかどうかは俺が決める」「わかったわ」「何でも決めるのは俺だ。俺だけだぞ」

ヨットが来たとラファエラに言うジェナリーノ。「焚火をたくんだ」「森の奥に隠れましょう」「俺を本当に愛しているか」「信じないの?私たちは一生ここで暮らすのよ。外の世界は汚いわ。私たちのほかに何もいらない」「証拠が見たい。お前の気持ちが本当かどうか」「私にはあなただけ」「だからこそ証拠が欲しい」ジェナリーノは焚火をたき、二人は救出される。

ありがとうとジェナリーナに感謝するラファエラの夫。子供たちと心配したとジェナリーナに泣きつくジェナリーナの妻。ラファエラに電話するジェナリーナ。「サンタ・ロザリア号の船長に話をつけた。その船があの島に俺たちを連れてってくれる。30分後に出航だ。船で待っている」しかしラファエラは夫ともにヘリコプターに乗って去ってしまう。ジェナリーナは妻の元に戻るのであった。

★ロロモ映画評

地中海の豪華ヨットの上で喚きちらすラファエラ。「イタリアも高度成長とか言ってるけど、人口が1億になるとどうなると思う?地中海が下水になってしまうわ」「陸だって地獄よ。飢えた人間が蠢いて」「共産主義者と教会が妥協したから悪いのよ」「ソ連の経済は一体どうなってるのよ」「私は共産主義なんてまっぴらよ」

ラファエラをにらむ料理人のジェナリーノ。「まあ、怖い顔。彼もきっと党員よ。私たち資本家を恨んでいるわ。私たちは搾取者ですかなね」あんなイヤな女は見たことないと呟くジェナリーナ。大声で共産党批判をするラファエラはジェナリーノの料理がまずいと文句を言い、ジェナリーノのシャツが臭いと文句を言う。

洞窟で泳ぎたいからボートを出してとジェナリーノに命令するラファエラ。「潮の流れが早いです」「いいから。私の言う通りにして」ボートのエンジンは故障してしまい、ボートは動かなくなってしまう。「くそバッテリーめ」「どうしたの」「私にもわからないんですよ。エンジンが」「壊れたの?今日は泳ぐなってこと?なんとかしてと」「だから今直そうと」

こうしてブルジョワ女は貧乏男を圧倒しますが、無人島に流されて、貧乏男を薄ノロのカボチャと言った時から立場が逆転しますが、やはり男のロロモとしては貧乏男に肩入れすると言うか、その逆転ぶりの鮮やかさにグッときますが、最後にまた再逆転を食らうのがなんともいえないものがあり、野球でいえば前半大量リードされますが、中盤から反撃に出て、同点に追いつき、終盤で勝ち越しますが、9回裏に逆転サヨナラホームランを食らったと言う感じになり、こういう負けが一番答えるのかなあと思ってしまうわけです。

男と女が無人島に流されたら、それまでの男と女の関係がどうであろうと、女が男の奴隷状態になってしまうのかとロロモはこの映画を見て思ってしまい、やはり男に生まれてよかったとほっと胸をなでおろしますが、この映画のラファエラのような高飛車なブルジョワ女と言うのに巡り合う機会が人生で今までなく、おそらくこれからもないかと思いますが、こういう女を屈服させえるのが男の醍醐味としたら、ロロモはその味を知らないで死ぬことになりそうですが、他にもいろんな味を知ることなく死ぬのかとやや寂しくなるわけです。

ところで高慢で生意気なことを「高飛車」と言いますが、高飛車は将棋用語で、飛車を自陣の前方に高く進める戦法のことで、 高飛車は敵陣を威圧する攻撃的な陣形のため、江戸時代末期頃から、将棋以外でも「高圧的」の意味として使われるようになったそうですが、「高飛車な男」よりも「高飛車な女」と言う方がしっくりくるのは、バブル時代にそんな生意気な女のことを「タカビー」と呼ぶようになったからでありますが、デフレになった21世紀では「タカビー」はどうやら死語になってしまったわけです。

あと高飛車は2011年7月より開業した富士急ハイランドのローラーコースターの名称であり、高所からの落下では最大落下角度が121度あり、落下角度が世界一のローラーコースター」としギネスに認定。このローラーコースターは「フジヤマ」「ドドンパ」「ええじゃないか」と共に同園4大コースターの一つとなっていているそうですが、世の中には国内ジェットコースター怖さランキングなるものがあり、高飛車は堂々9位に選出されているわけです。

そのベスト10は10位が「ホワイトサイクロン(ナガシマスパーランド)」、9位が高飛車、8位は「サターン(スペースワールド)」、7位は「ビッグバーンコースター(那須ハイランドパーク)」、6位は「サンダードルフィン(東京ドームシティ)」、5位は「ドドンパ(富士急ハイランド)」、4位は「ピレネー(志摩スペイン村)」、3位は「フジヤマ(富士急ハイランド)」、2位は「スチールドラゴン2000(ナガシマスパーランド)」、1位は「ええじゃないか(富士急ハイランド)となっており、富士急ハイランドの4大コースターはベスト10入りをする快挙を達成しているのは凄いと感心するわけです。

そしてベスト10ついでに、将棋に由来する慣用表現ベスト10も発表。10位は「歩のない将棋は負け将棋」9位は「雪隠詰」、8位は「詰んでいる」、7位は「捨て駒」、6位は「持ち駒」、5位は「将棋倒し」、4位は「飛車角落ち」、3位は「高飛車」、2位は「成金」、1位は「王手」となりますが、10位は北島三郎の「歩」と言う歌の歌詞の一節でもありますので、それを入れると、村田英雄の「王将」の歌詞の一節である「吹けば飛ぶような将棋の駒に、賭けた命を笑わば笑え」もベスト10に入れなくてはいけないのかと思ってしまうのでありました。(2016年11月)

得点 47点

なに戻る