南国土佐を後にして

1959年 日活

キャスト:小林旭(譲治)浅丘ルリ子(春江)中原早苗(麻子)南田洋子(はま子)二本柳寛(会津)西村晃(寛)内田良平(北村)金子信雄(大川)高野由美(のぶ)ペギー葉山(ペギー葉山)

監督:斎藤武市

出所した譲司を迎える会津と寛。「ともかく乾杯と行こう。当分、何も心配しないでもらいたい」「会津さん。お出迎えはありがたいが、実は迷惑だ。俺が出て来たのを本当に喜ぶ気持ちがあるなら、ほっといてくれ」「それでどうするんだ」「故郷に帰るんだ」「土佐か」「ああ。もう兄貴にも会うことはないだろう」去っていく譲治を追おうとする寛にほっとけと言う会津。「奴は必ず戻ってくる。前科者はどこまで行っても前科から逃げられない」

よさこい祭りでにぎわう高知で東京でモデルをしている麻子と会う譲治。「ところで、はま子さんは?」「はま子姉さんも東京に出て、料亭をやってます。私、はま子姉さんの所に下宿してますの」「そう」

家に戻り、母ののぶに帰ってきたと言う譲治。「ただいま」「よくお帰りになったね。譲治」兄の義之の遺影に手を合わせる譲治。(兄さん。俺はとうとう帰ってきたよ。刑務所であの歌を聞いた時、俺は東京を引き払って、母さんと地道に暮らそうと決めたんだ)

刑務所の慰問で「南国土佐を後にして」を歌うペギー葉山。(その歌は14年前、兄さんが出撃する基地で、あの人が兄さんのために歌ったよさこい節にそっくりだったよ。兄さん、俺は再起するぜ。たとえ、どんなに貧しくたってまともに暮らすよ。兄さんの代わりになって、俺が母さんを幸せにするよ)お前が東京で何をしたか知らないと譲治に言うのぶ。「母さん」「なんでもいい。これからお前が真面目にやってくれれば」「やるよ。今度こそ」

春江に俺との約束を忘れてないだろうなと聞く北村。「どんなことがあっても、譲治とは会わないって約束を」「……」譲治は職探しをするが、前科が邪魔をして見つけることができず苦慮する。

春江に会わせろと言う譲治に、春江は俺の女房になる女だと言う北村。「そんなはずはない」「昔はどうだか知らないが、話は半年前から決まっているんだ」「あんたは本当に春江に惚れているのか」「惚れたもはれたもねえ。春江の親父には100万も貸したまま死なれているんだ」

俺が甘かったとのぶに言う譲治。「俺みたいな人間に職があると思ったり、春江がいつまでも待ってくれると思ったり」「お前」「でも大丈夫だ、母さん。俺はこんなことでくじけやしないよ」譲治は酒屋の配達や港湾労働にいそしむが、北村の子分に嫌がらせを受ける。

海を見つめる譲治。(兄さん。やっぱりダメだ。俺は東京に帰るよ。ここにいると、俺はますます悪くなりそうだ。兄さん、また俺は母さんを独りぼっちにしてしまう。でも俺がいれば母さんをますます苦しめるだけだ)

そこに現れる春江。「譲治さん。これにはわけが」「話は聞いた。あんたは何も悪くない」「私は今でもあなたを。どんなことがあっても、あなたと一緒に。春江を愛してると言って」「遅いよ。俺さえ監獄に入ってないと」「譲治さん。私を連れて逃げて」

そこに子分を引き連れて現れる北村。「譲治。春江は俺の女房になる女と言ってあるはずだ。痛い目に会ってもらうぜ」北村の子分を殴り飛ばし、賭場でのもめ事で傷害事件を起こして刑務所行きになったことを思い出す譲治。「どうした、やらないのか」ボコボコにされる譲治。「おい、奴の指を詰めてやんな」

そこに現れる会津と寛。「譲治の指に傷をつけてみろ。てめえのどてっ腹に穴が開くぞ」「なんだ、お前らは」「東京からわざわざついてきた譲治のお守り神様よ」「早く消えろ」銃をぶっ放す寛に恐れおののいて去っていく北村たち。

「譲治、しばらくだったな」「会津さん。俺はこの指を詰められた方がよっぽどよかったんだ」「そうはいかないよ。譲治がよくても、こっちの都合がね。まあ当分陰ながら守らせてもらうよ。ねえ、兄貴」春江に東京に出ると言う譲治。「さっき言ったことが本当なら、俺が迎えに来るまで待っててくれ」「きっと待ってるわ」

高知はどうだったと麻子に聞くはま子。「お祭りは面白かったわ。それで姉さんに素敵なお土産があるの。譲治さん、おはいりになって」「え。譲治さん?」はま子にお久しぶりですと挨拶する譲治。「譲治さん、こんなに大きくなって。さあ、どうぞ」義之の写真を見つめる譲治。

「まるで義之さんが生きて帰ってきたみたい」「ええ。おふくろもそんなことを言ってました」「お母さん、お元気?」「ええ、でも、おばあちゃんになってました」「あら、おばあちゃんは私の方よ。もう土佐を出て10年になるんですもの。あなたが中学生の時だわね。義之さんが特攻隊で出撃した時のことを覚えてる?」「ええ。忘れるもんですか。あなたの歌も」

譲治は職探しをするが、やはり前科が邪魔をして苦悩する。落ち込む譲治をナイトクラブに誘う麻子。「元気がないのね」「疲れてるんです」ペギー葉山と街角で出くわす譲治。「あなたは今どこにお勤めに」「はあ、それが、まだ」「そう。大変だわね。でも負けてはダメよ。一つ負けたら、三つも四つも負けてしまうわ」「人間の社会ってやつは」「難しいわね。キレイに生きるってことは」「……」「あなたに立派に生きていだかないと、私もつらいですわ」

あまり長居はできないと言う譲治に、私は義之さんと結婚するはずだった女よと言うはま子。「いわばお姉さんでしょう。遠慮せずにいたらいいんだわ」春江さんから手紙が来たわと譲治に言う麻子。「土佐の恋人から」「……」「私、フェアプレーで行くわ。だから譲治さんに恋人がいても平気。自信があるの」私の気持ちは決して変わらないと書かれた春江の手紙を読む譲二。<一日も早くよい仕事を見つけて、お母様や私を迎えに来てください>

寛にいつまで俺につきまとうんだと聞く譲治。「会津の兄貴も待ってるぜ」「俺はあんたたちに無駄骨を折らせたくないんだ」「俺たちはあきらめないよ」譲治は前科の履歴を隠して職探しをするが、どこでも断られる。「先ほど電話であなたが前科があることを知らせる電話がありましてね」落ち込む譲治に春江さんの手紙を読んだと言う麻子。「私はあなたが好きなの。お願い、抱いて」「麻子さん。僕はそれどころじゃないんだ。部屋に戻ってください」「譲治さん」「あなたが出て行かないなら、僕が出て行きますよ」

僕は出ると言う譲治に、私を姉さんと思ってと言うはま子。「きっと就職も見つかるわ」「はま子さん、実は僕は前科者なんです。だから就職が決まらないんです」「譲治さん」「すいません。このことだけはあなたに黙っていようと思っていたんです」「過去は忘れるのよ。その代わり、私が新しい働き口を探してあげる」「え」「姉が弟の就職を心配するのは当たり前でしょう」

はははと笑う大川証券の社長の大川。「君がママの義弟なら何をか言わん。青年の頃なら大いに冒険すべきだよ。過去などわしは問わん。明日から出社したまえ」「ありがとうございます」はま子に感謝する譲治。「おかげで仕事が決まりました」

入社は取り消しだと譲治に言う大川。「やっぱり前科者はいけないんですか」「そういう問題じゃない。人間としての道徳の問題だ」「なんのことですか」「とぼけちゃいかん。わが社は料亭の女将のヒモになっているような弱い男は社員にできんのだ」「え」「そういう電話が掛って来たんだ」

飲んだくれて麻子と踊る譲治。証券会社をダメにしたのはお前かと寛に聞く会津。「いえ、あそこの社長は譲治の前科を承知に採用したんだって」「じゃあ誰かな。まあ、どっちにしても譲治が俺たちの仲間に戻る日もそう遠くなさそうだ」

デマかいと言う大川に話にならないわと言うはま子。「いくら私が独り身で寂しいからと言って、そんな疑いをかけられたら、譲治さんが可哀そうですわ」「じゃあ、電話を掛けたのは誰かな」あなたが姉さんと何も関係ないことを証明すればいいんでしょうと譲治に言う麻子。「私にまかせといて」「わかった。電話をかけたのは君だな」「しょうがなかったのよ。お姉さんの世話で就職すれば、譲治さん、きっと、お姉さんが好きになる」「……」

譲治に会いに上京する春江。「どうしてここへ」「北村さんから逃げてきたんです。これ以上、高知にいたら」「僕がだらしないばかりに苦労をかけるな」早く出て行ってと譲治と春江に言う麻子。「あなたたちを見ると気分が悪くなるわ」「春江さん。出よう」

はま子にお世話になりましたと言って春江と出て行く譲治。どうしたのと麻子に聞くはま子。「お姉さんだって、あの人に昔の恋人の面影を見てるから親切なんだわ。春江さんなんて人が現れない方がいいと思ってるんだわ。あたしだって譲治さんが好きだから」

譲治と春江を取り囲む北村たち。「譲治。久しぶりだな。人の女房に手を出す気か」「春江さんはお前の女房になる気はない」「そんなでかい口叩けるんなら、春江の親父の貸した100万を返してみろ」「……」「どうだ。料亭の居候のお前にそんな金ができるか。俺は何も春江を暴力で連れていこうと言うほどずれてはいないんだ」「よし。100万作ろうじゃないか」「なに」「そう驚くことはねえよ。金さえ作れば文句はないんだろう。ただし明日の晩まで待ってくれ」

春江をはま子に預けて会津と寛に会う譲治。「じゃあいいんですね」「心配するな。お前の腕だ。一晩あれば軽く100万くらい叩き出せる」「今晩一晩だけの約束です」「わかった。早速手配する」はははと笑う大川。「そうか。いたずらの犯人は麻子ちゃんだったのか」「でもあっさり振られちゃった。ねえ、私、憂鬱なの。どっかに連れてって。うんと面白いとこ」

地下賭博に麻子を連れて行く大川はそこでダイスを振る譲治を見て驚く。「君にこんな特殊技能があるとは知らなかった」「勝負しますか」「いいだろう」私は体を賭けると言う麻子。譲治はダイスを振ろうとするが、そこにペギー葉山の「南国土佐を後にして」が流れる。「あの歌をやめさせてくれ」「……」「あの歌をやめさせてくれ」ペギー葉山に頼んで歌をやめさせる寛。オールエースを出して、大川との勝負に勝つ譲治。「あんたの体をもらったってしょうがねえ。これに懲りてナマを言うんじゃないぜ。アバよ」

北村に100万を差し出す譲治。「これでカタはついたな。せっかく東京に来たんだ。土産にいいものを持たせてやるよ」思う存分、北村たちをボコボコにする譲治。「譲治さん」「春江。俺はもう一度出直してくる。そうしなければ俺の気がすまない。それまでに母さんを頼むよ」「わかってます」私も力になると言うはま子。「春江さんとお母さんのことは私に任せて」「姉さん」譲治は春江とはま子に見送られて警視庁に向かうのであった。

★ロロモ映画評

出所した譲司(小林旭)を迎える会津(二本柳寛)と寛(西村晃)。「ともかく乾杯と行こう。当分、何も心配しないでもらいたい」「会津さん。お出迎えはありがたいが、実は迷惑だ。俺が出て来たのを本当に喜ぶ気持ちがあるなら、ほっといてくれ」「それでどうするんだ」「故郷に帰るんだ」「土佐か」「ああ。もう兄貴にも会うことはないだろう」去っていく譲治を追おうとする寛にほっとけと言う会津。「奴は必ず戻ってくる。前科者はどこまで行っても前科から逃げられない」

この映画はペギー葉山の大ヒット曲「南国土佐を後にして」を元にして作られた歌で、日中戦争時に高知県出身者で編成された鯨部隊が戦地で歌った望郷の歌が原曲とされており、曲に盛り込まれる「よさこい節」が絶妙な効果をあげている名曲でありまして、高知県出身の人間でなくても田舎を持つ人にはグッとくるものがありますが、ロロモ世代で民謡が挿入される歌謡曲と言えば、小柳ルミ子の「漁火恋唄」が思い出されるわけです。

この映画は後の小林旭の代名詞となる「渡り鳥シリーズ」の前触れとなる作品として有名で、この映画で女にもててしょうがないと言う小林旭のキャラは確立したと思えますが、まだ浅丘ルリ子とのやりとりがあうんの呼吸になっていないのは致し方ないところでありますが、この映画では高知の浅丘ルリ子より東京の南田洋子や中原早苗が目立ってしまうのは、まだ小林・浅丘コンビに不安を感じる製作者の意図のようなものをロロモは感じ取りますが、見終わると、明らかに浅丘ルリ子の方が中原早苗より小林旭の相手役にしっくりくることに気づくわけです。

この映画では宍戸錠のような小林旭のよきライバルはでてきませんが、悪役は二本柳寛と西村晃と内田良平と金子信雄の合計4人で演じられますが、小林旭につきまとう二本柳寛と西村晃はいったい何をして食っているのは心配になりますが、金子信雄は悪役とは言い切れぬ悪役を演じて、これが後の山守親分のルーツかと思ったりもしますが、この作品で小林旭の方向性がほぼ決まったと言うことで、この映画は小林旭ファンにとっては忘れることのできない作品ではないかとロロモは思ったりするのでありました。(2016年1月)

得点 52点

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