七つボタン

1955年 日活

キャスト:長門裕之(吉武)三国連太郎(足立)市村博(佐田)野口一雄(野添)新珠三千代(麗子)芦川いづみ(みどり)安部徹(香川)三橋達也(大川)金子信雄(志賀)東野英治郎(感化院院長)加東大介(吉武の父)

監督:古川卓巳

昭和20年、戦地で足を負傷した足立上曹は、西浦海軍航空隊第一班の班長となる。足立に挨拶する第一班の練習生の吉武と佐田と野添と島。面会日に両親と弟と会う吉武。立派になったと吉武を褒める両親。佐田にお前は面会室に行かないのかと聞く足立。自分には面会に来る人はいないと答える佐田。

「感化院におったのか」「はい」「おふくろさんは」「嫁に行きました」「お前を捨ててか」「はい」久しぶりに一杯行くかと言う香川一曹に内地にはまだそんな余裕があるのかと答える足立は空を見上げる。「ほう。まだゼロ戦がいるのかい。誰が操縦してるんだ」「飛行長の大川大尉だ」「ほう。うまいな」

今飛んでいるのは大川大尉ですと言う吉武。「町内の大川さんの若旦那かい」「ええ」「俺はお前があんな風に飛ぶのをいっぺん見て、わしも行きたかった」「え」「おとっつあん、この年になってまた兵隊さんだよ」みどりは挺身隊で来られないと吉武に言う弟。夜中、みどりの写真を見つめる吉武。佐田は野添に何か差し入れがあっただろうと詰め寄る。「そんなものはない。持ち込みは禁止だ」「嘘をつけ」野添を殴る佐田を制する吉武。「みんな疲れてるんだ、静かにしろ」「ふん。面会に行った奴は疲れてるだろう。食いすぎでな」

足立の厳しい指導のもと、激しい訓練の日々を過ごす練習生たち。佐田に面会に来る感化院院長。「佐田。立派になったな」「院長さん。みんな元気にやってますか」「うん。お前がここに入ってから、みんな見違えるように変わったばい」佐田に腕時計を渡す院長。「お前の後輩が先輩が時計なしに入隊したから、さぞかし引け目を感じとるじゃろうと、みんなで紙張りして貯金して買うたとじゃ」

島にお前の持ち物の中からラブレターが出てきたと言う足立。「大声で読んでみろ」「はい」あなたの反対を押し切って入った予科練は僕の思った楽しいものではなく、新しい教官は鬼のような人ですと読む島。俺は貴様たちを立派な帝国軍人に仕上げるためにあらゆる努力を惜しまんと言う足立。「お前たちはただ生き抜いて奉公あるのみだ。そのためにも訓練よりほかはない。ラブレターなんか書いてる場合じゃないんだ」

夜中、みどりの写真を見ながら、みどりに大空を飛びたいために予科練を行くことを告げたことを思い出す吉武は、教練休憩中にこのままでいいのかと野添に聞く。「俺たちは何のために生まれたんだろうって。なあ、軍人はどうして女の人を好きになってはいけないんだ」「え」「この間、島が班長にラブレターを読まされて、みんな笑ったろう。でも俺だけはどうしても笑うことができなかった。俺たちは子供じゃないんだ」「だが、俺たちは死ぬんだぜ。好きになっても仕方ないじゃないか」

校庭で子供たちに音楽を教える麗子に挨拶する足立。「あの、何か」「いや、この近くで演習に来ておるものですから」感化院に出す手紙を書けと言う佐田にそんなものは自分で書けと言う吉武。「何を、この野郎」取っ組み合いの喧嘩をする二人を制する足立。

さらに練習生たちに激しい訓練を施す足立。佐田は砂糖を倉庫から持ち出したことが発覚し、足立に制裁を受ける。そして短艇競争に無理して出場した佐田は競技中に倒れてしまう。吉武に今までのことを勘弁してくれと詫びる佐田。「何とも思ってないよ」「俺だって立派な飛行兵になろうと思って入ったんだぜ。だけど馬鹿馬鹿しくなったんだ。お前は班内で一番真面目な奴だ。自分でもわからないが無性にお前に腹が立ったんだ。俺は羨ましかったのかもしれない」

今後手荒い制裁はしないようにと足立に言う軍医長の志賀大尉。「制裁も一つの訓練です。班の教育は私が預かっております。軍規を乱した者はあくまでも」「だがね、程度問題だよ」「私は若い兵士が訓練の不足で戦場で倒れていくのが一番悲しいことだと思っています」「俺は軍医だ。訓練のことは知らん。だがその訓練のつけを全部こっちに持ってくるから困るんだ。いいか、兵隊も人間だ。しかも彼らは若い雛鳥だ」「若い兵隊です。だから死なせたくないんです」

俺はみなしごだったと香川に言う足立。「そんなみなしごを軍隊だけは平等に扱ってくれる場所だった。俺は死ぬ気で頑張った。だが今の若い奴らにそんな気迫があるか。軍隊の経験を生かして一人前の兵士にしようとすることのどこがいけないんだ」「……」「俺はあの時、思い切って敵の中に突っ込んでしまえばよかったんだ」飛行機に乗る時に、この腕時計を持っていってくれと吉武に託し「おっかさん」と呟いて死ぬ佐田。

吉武は優勝すれば二日間の外出許可の貰えるモールス通信競技の代表に選ばれる。私はみなしごですと麗子に言う足立。「やっぱり。あなたはお寂しそうですわ」「そうですか」みどりからの手紙を読む吉武。<工場で怪我をして私はびっこになりました。こんな醜い姿を見られたくないと思いながらも、私はあなたに会いたいのです>吉武から手紙とみどりの写真を没収する足立。「どういう関係だ」「小学校の時、同級でありました」手紙と写真を燃やす足立。

吉武にお前の母から手紙をもらったと言う大川。「びっくりするなよ。お前のお父さんは戦死したそうだ」「え」「朝鮮半島に向かう親父さんの乗っていた輸送船が撃沈されたそうだが、おっかさんはお前の気がくじけてはいかんと思って、俺に頼んできた。おりを見て話してくれと書いてあったが、今夜を逃すと機会がないからな」「……」「俺も出陣だ。特攻で沖縄に出る」「……」「お前も早く一人前の飛行機乗りになれよ」腕時計を大川に渡す吉武。「戦友に飛行機と一緒に乗せてくれと頼まれましたが、もし飛行機に乗れないと悪いと思いまして」「わかった。親父さんの仇を討ってやる」

吉武はモールス通信競技に出場するが2位に終わる。思い悩んだ吉武は訓練所を脱走して母に会いに行くが、母に足立が来たと言われる。「今帰れば許してくれるそうだ。早く戻ってお父さんのような立派な兵隊になっておくれ」

みどりと会う吉武。「足の怪我は大丈夫なの」「あなた、大変なことをしたのね」「夢中だったんだ。これから隊に帰るよ」「ねえ、死なないでね。私もこんな足になって死のうかと思ったけど、あなたのことを考えて思い留まったの。戦争ってよくわからないけど、生きてればきっと。待ちましょうよ。私たちが本当の大人になるまで生きていれば。だから死なないと約束して」「……」「ねえ、約束してくれないの」「俺たちは特攻隊として」「……」

訓練所に戻った吉武は懲罰房行きとなる。訓練生たちに言う訓練所所長。「お前たちが空を飛びたい気持ちはわかる。しかし戦局は日に日に厳しくなっている。訓練もしてないお前たちを特攻機に乗せるわけにはいかない。従ってお前たちはほかの任務についてもらう」俺たちは水中特攻に行くそうだと吉武に言う野添。「海中から船に向かって行くそうだ。海と空では月とスッポンだ」

訓練所が爆撃され、足立は爆死する。足立の持っていた手紙を読む野添。「足立様。近頃少しもお見えになりませんね。それでお手紙をお届けします。麗子はあなたをお慕いしています。今度の日曜日にはきっといらしてくださいね」そして吉武の出陣の日となるが、その日が8月15日であったため、吉武は命拾いし、母とみどりの待つ故郷に向かうのであった。

★ロロモ映画評

この映画のタイトルとなっている「七つボタン」とは海軍飛行予科練習生の制服のことであり、この制服には7個のボタンが付いていたため「七つボタン」と言えば海軍飛行予科練習生こと「予科練」を表す言葉となりますが、海軍飛行予科練習生は、大日本帝国海軍における航空兵養成制度の一つで、戦前に予科練を卒業した練習生は、太平洋戦争勃発と共に下士官として航空機搭乗員の中核を占めたために戦死率も非常に高く、また昭和19年に入ると特攻の搭乗員の中核として命を落とします。昭和19年夏以降は飛練教育も停滞し、この時期以降に予科練を修了した者は航空機に乗れないものが多く、航空機搭乗員になる事を夢見て入隊したものの、人間魚雷回天等の航空機以外の特攻兵器に回された者もいたわけです。

この映画は昭和20年の予科練を描いたものですから、もはや戦争も末期中の末期で、長門裕之ら練習生は飛行機を触るどころか、ろくに武器にも触らないで肉体訓練に励む日々を送っており、こんなはずではないのにと言うもどかしさが画面のあちこちからそこはかとなく流れ、映像で飛行機が飛ぶのは三橋達也の操縦するゼロ戦だけ言う地味な映画になっていますが、このボンボンの三橋達也の役はなかなか美味しい役だったと言えるわけです。

それに比べて教官役の三国連太郎は最初は日本軍人の典型のような男で、次第に脱軍人化していくようでありますが、その辺があやふやで新珠三千代とのロマンスもどうも水面下に進行したいたのかと思ったりもし、主役の長門裕之のロマンス相手はロロモの好きな芦川いづみですが、戦争中では彼女の魅力を十分発揮することができないようですが、どうやら最後は二人は結ばれるということになったようでホッとするわけです。

予科練と言えば第二次大戦の戦争の悲劇の象徴としてとらえられますが、予科練は海軍による少年飛行兵の訓練所の訓練生ですが、陸軍による飛行兵の訓練所もあり、そこの訓練生は「少飛」と呼ばれますが、海軍飛行予科練習生こと「予科練」はメジャーなのに対し、陸軍少年飛行兵である「少飛」はマイナーで、それは海軍の戦闘機の「ゼロ戦」がメジャーなのに対し、陸軍の戦闘機の「隼」がマイナーなのと同じことなのかと思い、ひいては昔の軍隊において、海軍がメジャーで陸軍がマイナーなのかと思ったりもしますが、この辺の海軍や陸軍や空軍の関係がロロモにはよく理解できないのですが、それは軍隊に関心がないと言うことで素晴らしいことではないかと思ったりするのでありました。(2014年11月)

得点 33点

なに戻る