嘆きのテレーズ

1953年 フランス

キャスト:シモーヌ・シニョレ(テレーズ)ラフ・ヴァローネ(ローラン)ジャック・デュビー(カミーユ)ローラン・ルザッフル(水兵)シルヴィー(ラカン夫人)マリア・ビア・カジリオ(ジョゼット)

監督:マルセル・カルネ

リヨンの下町で生地店を経営するラカン夫人は息子のカミーユを溺愛し、カミーユの妻であるテレーズにはいつも冷たく当たっていた。早く湯たんぽを出してとテレーズに言うラカン夫人。「カミーユは病弱なのよ。肺炎になったらどうするの」「まだお湯が」「お湯も満足に沸かせないの?情けないね」夫の体にもっと気を使えとテレーズに言うラカン夫人。「それが妻の道だよ」気分はどうとカミーユに聞くテレーズ。「大丈夫だ。ママの気苦労だ」「何か用は?」「少し眠る」「……」

酒場で泥酔したカミーユはトラック運転手のローランに家まで送ってもらう。お前はいい奴だと繰り返し言うカミーユ。「木曜日に来てくれ。いいな」ずっと木曜日に来いと言ってるとテレーズに言うローレン。「何のことだ」「週に一回競馬ゲームをするの」

木曜日、友人たちと競馬ゲームをして勝った負けたと大騒ぎをするカミーユ。俺の親父は競馬通だったが当たったことがないとカミーユに言うローラン。「そうか。おい、お前、イカサマするな。それは失格だぞ。テレーズ、みんなの酒の準備を」無言で酒の用意をするテレーズを見つけるローラン。

翌日、生地店にやってくるローラン。「君一人か」「義母は二階に」「二度しか会ってないが心は通じ合ったはずだ」「……」「俺はトラックしかない風来坊だ。奥さんには病身の亭主がいる」「……」「決めてくれ。二人でイタリアに行こう。あんたはこのままでは不幸になる」「黙って去るなんて」「俺を信じろ」「両親の死後、伯母は私を引き取り」「息子の嫁にしたか」「いとこ同士だから自然に妻になれたわ」「それが自然か」「夫を病気から守ってきたのよ。もし私が去れば」「滅私奉公か」

木曜日、相変わらず競馬ゲームに熱中するカミーユ。私は朝が早いから帰ると言ってゲームから抜け出したローランは窓辺でたたずむテレーズを抱きしめる。

カフェで密会するテレーズとローラン。「君は踊れるのか」「全然。習わなかったし。できることは針仕事、看病、お金の計算」「気の毒に。この美しい体は踊るために。愛のためにある。帳場に座ったり看病するためにあるんじゃない」「それで当然と思ってたけど、あなたを知って」「これからどうする。お前なしでは生きられない」「私だって」

テレーズは自分の部屋にローランを呼ぶが、ローランはこんなこそこそしたことはしたくないと言う。「もっと堂々と愛し合いたい」「私もよ。でも夫と義母がいる限り」「カミーユに本当のことを言おう」「そんなことをしたらあの人は寝込んでしまうわ」「嘘はイヤだ。明日カミーユに話す」「お願い。あの人が興奮しても暴力はやめてね」

テレーズにローランから話を聞いたと言うカミーユ。「お前は俺の女房だぞ。法は俺の味方だ」「……」「運転手などと。あんな粗野な男と」「……」「僕はどうなる。幸せだったのに」「私は違うわ」「お前がいなかったら、僕は死んでいた」「もうやめて」「そうだ。パリのおばさんの家に行こう。お前ともう一度パリに行きたい。パリから戻ったら別れてもいい。明日の晩に行こう」明日テレーズとパリに行くとラカン夫人に告げるカミーユ。「おばさんの家に監禁してやる。思い知らせてやる」

ローランにカミーユとパリに行くと電話するテレーズ。「旅行が終わったら自由にしてやるって」「いつ行くんだ」「今夜の電車で」パリ行き夜行列車に乗るテレーズとカミーユ。すぐに疲れてうたた寝するカミーユ。客室の窓越に外に出ろとテレーズに合図するローラン。向かいの水兵が寝ているのを確認して、暑いからとカミーユに言って客室を出るテレーズ。「どうして来たの」「心配で」「別れると言ったわ」「信じられん。もうすぐシャロンだ。そこで降りて二人で消えてしまうんだ」「そんなの無理よ」

そこに現れるカミーユ。「どういうことだ」「カミーユ。偶然なのよ」俺たちはシャロンで降りると言うローランに法律は俺の味方だと言うカミーユ。「いい加減にしろ」「逃げてもダメだ。警察に頼むからな」怒ったローランはカミーユを電車から突き落す。「どうするの」「シャロンでは俺だけが降りる。そして自首する」

「降りるのはいいけど、自首なんかよして。誰も見てない。リヨンに戻って。後は何とかするわ」客室に戻るカミーユ。そこに改札に現れる車掌。「奥さん、切符は」「主人が通路に」「誰もいませんよ。出たのは?」「さあ、眠っていたのではっきりとは」水兵にあなたはどうですかと聞く車掌。「僕?僕も眠ってたから」

そしてカミーユはシャロン駅手前で死体となって発見される、ショックで全身不随となり目と耳は聞こえるが口がきけなくなってしまうラカン夫人。しばらく会わないようにしましょうとローランに言うテレーズ。「警察に疑われるかも」「調べても迷宮入りだ」「警察はしつこいわ。とにかく連絡するまで来ないで」

刑事がお前の写真を持ってきたとテレーズに言うローラン。「でも大丈夫さ。目撃者はいないからな」「……」「なぜ5週間も電話をくれなかった」「遺体を見てから食欲不振で。いっそ自首した方が気楽。殺すなんて」「初めから駈落ちしてりゃよかったんだ」「だから後悔してるわ。あの遺体が頭から離れなくて。それに義母が私をすごい目で見つめるの。もう別れたほうがいいわ」「俺を愛してないのか」「あなたはリヨンを離れたほうがいい。殺したのはあなたよ」「……」「あなたに会うと頭がおかしくなりそう」

ラカン夫人にその目は何と聞くテレーズ。「私に世話させといてまだ不足?」「……」「知りたいの?私は眠ってたのよ。何も知らないの」「……」「その目。信じないのね。結婚式の日は祝ってくれたくせに。私は夫の体を温めるためお床入り」「……」「そんな目をして。私を自分の子の看護婦にしたのは誰よ」「……」「あの人が殺されたとしたら、それは列車でなく、あの日よ。結婚行進曲が鳴ったあの日よ」「……」「食べて」「……」「お願い。目を閉じて」

テレーズを訪ねる水兵。「何の用?」「中古の自転車を開きたくてね。それには50万フランいる」「まるでチンピラね」「でも人は殺さない」「私は誰も殺さないわ」「女に殺せなくても、男なら突き落せる」「私は関係ないわ」「奥さんが亭主より先に車室を出るのを見たが、戻ったのは奥さんだけ」「……」

「50万フランくらいあるだろう」「ないわ」「夫は事故死よ」「今夜は用件を伝えに来た。あんたに出ろと顎でしゃくったあの男とよく相談するんだな」ホテルに戻りメイドに名前を聞く水兵。「ジョゼット」「恋人はどう呼んでくれる?」「からかわないで」「金持ちじゃないがチップをあげよう。今夜はいい気分だ」「100フランも」

50万フランを脅されたとローランに言うテレーズ。「金が切れるとまた来るかな」「きっとそうよ。死ぬまでね」「妙な縁だ。強請られてよりが戻るとは」「あなたに逃げてほしいの。愛してるわ」「力が湧いてきた。二人は一緒だ、すぐにその水兵に会おう。お前を連れて行く。最初の約束通りにイタリアに」

金は出ないぞと水兵に言うローラン。「密告して何になる」「自転車屋を開きたくてね」「金なんかない」「俺の首を絞めて列車から突き落とそうなんて考えない方がいいぜ」水兵を殴るローラン。「話の最中に無粋な手だな。50万フラン。急いでいる。殴られても割増なしだ」水兵を殴るローラン。「だいぶ荒っぽいね。俺を甘く見たようだが、食いついたら放さない」「金はない」「金曜日まで待ってやる」

いい知らせがはいったとラカン夫人に言うカミーユのゲーム仲間。「調査は終わって打ち切りになる」「……」「カミーユは結局事故死になって、責任は鉄道会社がとることになる。私は鉄道に顔がきくから、示談金の調整をしてやる。これでテレーズには大金が転げ込む」「……」「明日にもだ」「……」

リヨン裁判所の予審判事あての手紙を書いた水兵はジョゼットに頼みがあると言う。「白い靴が欲しいと言ってたね」「でもお金が」「はいるよ。細かい話は飛ばすが、5時までに帰らなかったらこれをポストに」「そしたら靴を買ってくれるのね」「そう」「5時ですね」

生地店に現れた水兵にお前との腐れ縁もこれまでにしたいと言うローラン。「金はできた。出所は言えないが」「尋ねないよ」「二度とつきまとわぬと一札入れてもらいたい」「わかったよ」一札を書いて金を受け取る水兵。「俺は子供のころからこき使われてついてなかった。やっと芽が出た。大事にするよ」「まあ、がんばってくれ」「そっちは俺より上さ。好きな女を手にしてさ」

水兵は急いでホテルに戻ろうとするが、暴走するトラックに轢かれてしまう。早く医者をとテレーズに叫ぶローラン。「手紙」と呻く水兵。「何の手紙だ」「手紙」「手紙がどうしたんだ」事切れる水兵。5時になってジョゼットは嬉しそうに手紙をポストに入れるのであった。

★ロロモ映画評

リヨンの下町で生地店を経営するラカン夫人は息子のカミーユを溺愛し、カミーユの妻であるテレーズにはいつも冷たく当たっていた。酒場で泥酔したカミーユはトラック運転手のローランに家まで送ってもらう。お前はいい奴だと繰り返し言うカミーユ。「木曜日に来てくれ。いいな」

ずっと木曜日に来いと言ってるとテレーズに言うローレン。「何のことだ」「週に一回競馬ゲームをするの」木曜日、友人たちと競馬ゲームをして勝った負けたと大騒ぎをするカミーユ。俺の親父は競馬通だったが当たったことがないとカミーユに言うローラン。「そうか。おい、お前、イカサマするな。それは失格だぞ。テレーズ、みんなの酒の準備を」無言で酒の用意をするテレーズを見つけるローラン。

翌日、生地店にやってくるローラン。「君一人か」「義母は二階に」「二度しか会ってないが心は通じ合ったはずだ」「……」「俺はトラックしかない風来坊だ。奥さんには病身の亭主がいる」「……」「決めてくれ。二人でイタリアに行こう。あんたはこのままでは不幸になる」「黙って去るなんて」「俺を信じろ」木曜日、相変わらず競馬ゲームに熱中するカミーユ。私は朝が早いから帰ると言ってゲームから抜け出したローランは窓辺でたたずむテレーズを抱きしめるのであった。

と言うことで横暴な姑と夫に支配された妻が不倫を犯してしまうと言うメロドラマが展開され、この展開はちょっと乱暴すぎると言うかテレーズがよろめくのは早すぎるだろうと文句を言いたくなりますが、なんかつまらないメロドラマだなあとロロモは鼻くそをほじくりながら呟きますが、列車殺人事件から映画はサスペンス調になって行き、それから映画はじわじわと面白くなっておくわけです。

この映画のヒロインのテレーズは虐げられた結婚生活を強いられた不幸な女、そのテレーズの旦那のカミーユは競馬ゲームに熱中するマザコンのダメ男、カミーユの母のラカン夫人は息子を愛することしか興味のない偏執的な老婆、ローランはトラックを運転するしか能のない一途な男と言うことでこの四人の性格ははっきりしているので、この四人だけでドラマを進めても膨らみが生まれませんが、そこに強請り屋の水兵さんが現れることでドラマは一気に潤いが湧き出てくるわけです。

この水兵さんは基本的に強請り屋なので悪い奴なのですが、憎み切れないろくでなしと言うか、なかなか魅力的なキャラでありますが、ちょっと気になったのは戦争のせいで俺が不幸になったとか戦争ネタをああだこうだと言うのがウザったいところでありまして、この映画は1953年作品と言うことで、戦争で酷い目に会ったというのが大事なポイントなのかもしれませんが、あんなことを言わない方がすっきりしたのではないかとロロモは感じたわけです。

この映画のクライマックスと言うか一番印象的なのは、水兵さんが「手紙」と言いながら死んでいくところでありまして、これで水兵さんが心の底から悪い人間でないことがわかりますが、わかってももうどうにもなりませんが、本来なら虚しさが残るはずですが、そういう虚無感があまりしないのは、このクライマックスに持っていくまでの展開が上手いからであって、この辺が監督の腕なのかなとロロモは思ったりするわけです。

ラカン夫人は息子の死にショックを受け、全身不随となり目と耳は聞こえるが口がきけなくなりますが、この映画に都合のいい全身不随はあるのかと思ったりもしますが、ラカン夫人は息子を殺されたと思っているのはどうかはっきりしないのも、なかなかミステリアスでよかったと思いますが、ロロモが気になるのはこの「嘆きのテレーズ」と言う題名でありまして、確かにテレーズは嘆かざるを得ない状況になりますが、それはローランもカミーユも水兵さんもラカン夫人も一緒で、幸せなのは白い靴はゲットできなかったけど100フランもらったジョゼットだけと言うことになりますが、テレーズの存在感は映画が進むにつれてどんどん薄れてしまうので、この題名はどうかと思われ、「嘆きの手紙」の方がカッコイイのではとロロモは思ったりするのでありました。(2014年7月)

得点 83点

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