流れる

1956年 東宝

キャスト:田中絹代(梨花)山田五十鈴(つた奴)高峰秀子(勝代)中北千枝子(米子)杉村春子(染香)岡田茉莉子(なな子)賀原夏子(おとよ)栗島すみ子(お浜)泉千代(なみ江)宮口精二(岩瀬)仲谷昇(佐伯)

監督:成瀬巳喜男

芸者置屋・つたの屋で芸妓のなみ江をなじる勝代。「なみ江さんが伝票のどうのこうのと。つまり私たちがなみ江さんの稼ぎを誤魔化していると言うのよ。不愉快だな、まったく」「……」「あんたってそんなことを言えた義理かしら。千葉の田舎からやってきてさ、頭はしらみだらけ。手足は真っ黒け」そうそうと言う米子。「あんたは伊達巻も知らなくてさ」あらいやだと笑う芸妓のなな子。ぶすっとむくれて、つたの屋を出るなみ江。

あまり騒がないでと勝代に文句を言うつたの屋の女将のつた奴。「この頃はあまり眠れないんだ。昼間は静かにしておくれ」「だってなみ江の奴が」「知らん顔してりゃいいのよ」「晩のおかずは」「米子おばさんと相談しなさい。何もしないんだからね、あの人」

つたの家にやってくる梨花。「職業安定所の紹介で来ました。ここの女中にと」梨花って珍しいわねと言う米子に、呼びにくいわねと言うなな子。私は独り者ですとつた奴に言う梨花。「あらそう。まあどっちかと言うと、あんたみたいな年寄りの方がいいんだけどね」年寄りなんて悪いわと言う勝代に、30になれば誰でもばばあよと言う米子。どちらに行っても年寄りだと言われると言う梨花。「どうぞ、よろしくお願いします」「まあ、やってみれば」

家の中を適当に梨花に案内する米子。米子は女将さんの妹だと梨花に言うなな子。「あの人、てんで無精なの。もう一人の方は一人娘の勝代さん。しっかりしてるわよ」梨花は呼びにくいからお春さんにすると梨花に言うつた奴。「いいでしょう」「はい。なんとでもお呼びくださって」芸妓の染香を梨花に紹介するつた奴。「染香さんは近くのアパートにいるのよ」「どうぞよろしく」この家は建築法違反らしいわと梨花に言う染香。買物に行った梨花はつたの家の内情が極めて苦しいことを知る。

夜になってなみ江はどこに行ったのと聞くつた奴。「お座敷が二つもあるのに」それでも稼ぎ足りなくてどっかに行ったんじゃないですかと言うなな子。いくら若くてもよく体が続くわと言う染香。お座敷に出かけるなな子。おとよがつたの家に現れ台所に逃げ込む染香。「私が借金で追われてる人。女将さんの一番上のお姉さんで鬼子母神にいるの」「へえ」「このうちだってとっくに抵当に取られてるのよ」

大阪から便りはあったのとつた奴に聞くおとよ。「あるはずないじゃございませんか。すっかり切れてしまったんだから」「花山先生を袖にするほどの男じゃなかったね。あの男にいくらつぎこんだのよ」「話って私へのお小言ですか」「どういたしまして。あんたに会わせたい人がいるのよ。鉄鋼会社の重役さんの村松さん。一緒に芝居でも観ようってんだけど」

おとよに挨拶する梨花。「いらっしゃいませ」「よろしく頼みますよ。ここの家の人は少しずつ何か足りないんだから」「どうぞよろしくお願いいたします」鉄鋼会社は景気がいいよと言うおとよにその人からお金を借りろと言うことなのと聞くつた奴。「そりゃあんたの腕次第だよ」染香に利子だけでも返してと言い、米子に働いたらどうと言って、つたの家を出るおとよ。娘の不二子と花火遊びをする米子。

勝代さんは芸者さんはお嫌いですかと聞く梨花。「性に合わないのね。あたし、誰彼かまわず機嫌とるってことができないのよ。お母さんもそれで随分損してるけど、芸があるでしょう」なみ江さんの叔父さんて人が来てると勝代に言うなな子。「下でごてごて文句を並べてるの」

なみ江の叔父の岩瀬と会う梨花。「あんた誰だね」「女中です」「御主人に会いたいんだがね」「たった今出かけました」「一度や二度の居留守は覚悟してたんだ。うちの姪にさんざん無理な稼ぎをさせて、そして上前をはねるなんて。出るところに出る気があると言っておいてください」

食堂で村松につた奴は私たち姉妹の中でただ一人芸者になったと説明するおとよ。「器量もよし、芸もよしで」「私は以前、つた奴さんの歌を聞いたことがありますよ」食堂に料理屋・水野の女将でつた奴の先輩芸妓だったお浜とお浜の甥の佐伯を見て席を立つつた奴。つたの家に戻ったつた奴に大変だったのよと言う勝代。「なみ江の叔父だって男が怒鳴り込んできてさ」カフェで話しあうなな子と染香。「女将さんも可哀そうね。鬼子母神にすっかり首根っこを押さえられてるし」「好いた男には騙されるし。つたの家も落ち目だね」

なんのためにお膳立てしたのと電話でつた奴に文句を言うおとよ。「二十歳の小娘じゃあるまいし」「二十歳の小娘じゃないから帰ったんです。水野のお浜さんの前でみっともなくて。もう少し自分でなんとかやってみます」「ほかにあてはあるの」「そんなものがあれば苦労しませんよ。まあふがいない妹で申し訳ないけど、もう少し長い目で見てくださいな」つた奴を見つめる勝代。だらしなく寝転がる米子にしょうがないねえと言うつた奴。

岩瀬から30万円払えという手紙が来て、嫌なことばっかりと呟くつた奴。払うことないよと言う勝代に図々しいもんねえと言う米子。村松がもう一度会いたがっていると言うおとよにお金を借りてる身分で大きなことは言えないが、気の進まない人とは会いたくないと言うつた奴。「そうかい。あんたと米子はよく似てるよ。なにさ、男のための借金に家まで抵当に入れて」「ふん。その借金もお金持ちの姉さんからね」「あんた、あたしを恨んでるの。お門違いよ」

水野に行き、お浜と会うつた奴。「いろいろすいません」「いいのよ。あんたの紹介で佐伯も花山先生の秘書になれたんだから。ねえ、私は佐伯を勝代さんの婿にと思ってるの」「あら」「ねえ、あんた先生に一度会ってみたら。時々先生はあんたのことを言ってるらしいのよ」「さんざん不義理して今更」「でもあんたが佐伯に会いたいってのは佐伯の知恵を借りたいってだけじゃないんでしょう。この急場を先生に助けてもらいたい。それが本音じゃない」「……」「やあねえ、おつたさん。私も二十歳の小娘じゃないんだから、それくらいわかりますよ」

つたの家に戻ったつた奴は不二子が熱を出して寝込んでいるのを知る。「勝代、それで米子は」「ぷいと出かけちゃったの」「しょうがないねえ」戻ってきた米子にどこに行ってたのと聞くつた奴。「あの人を探しに行ったけど、どこにもいなくて」「みっともないと思わない。捨てられた男の後を追って」「でも子供が病気ならしょうがないでしょう。なんてたって親ですもん」「なにさ。子供を女に押し付けて知らん顔してるような男なんて」「あら、そんなら勝代さんのお父さんだって」「……」「私は芸者にもなれず、不二子の母親でいるのがやっとこさ。おまけに親子でここに転がり込んできて」

二人の話を聞いていた勝代はお父さんって人に会ってきたいとつた奴に言う。「いけない?」「……」「お母さんがお父さんって人とどうして別れたかしらないけど、お母さんを見てられないんです」「心配しないでよ。そのうち、佐伯さんが来るからね。映画でも一緒に見にいきなよ」「……」「お父さんのところなんかうろうろしないでよ」お座敷に出かけるなな子。不意のお座敷でもいいからお願いしますと電話する染香。

女子職業安定所に行く勝代。つたの家に現れたお浜に挨拶する梨花。「おつたはお参りに行ったんだって?」「はい。今日は面倒なお客様が来ると言うことで」「じゃあ、おつたさんが帰ってきたら、これを渡してちょうだい。10万円あるの。話はまた会った時に詳しくしますから」そこに現れた岩瀬と応対するお浜。「いつも居留守を使おうたってダメだ。あんた誰だ」「ここの組合の役員です」「うちの姪は人権を蹂躙されたんだ。組合ではどういう態度に出るんですかい」

つたの家に戻ってきたつた奴に10万円を渡す梨花。その10万円は花山先生から出たとつた奴に言うお浜。「どうもすいません」「あんた、その金全部取られないようにしてよ」激怒する岩瀬に静かにしてくださいと言うつた奴。「病人がいるんですから」「ふん」金を出さないと帰らないと言う岩瀬に酒を飲ませて5万円を渡すつた奴。「なんだ。これっぽっちか」「これだけしかないんですよ」

酔っぱらった岩瀬を車に乗せるつた奴。今日変なのが来たみたいねと梨花に言うなな子。「よくご存じで」「早耳は芸のうちよ。染香姉さんは?」「今日はお早くお帰りになりました」「知ってる?染香姉さんね、アパートで10も若い男と同棲してんのよ」

履歴書を書く勝代。借金を返せなくてすいませんと言うつた奴に商売替えしたらどうと聞くおとよ。「旅館をしたいって人がいるの。共同出資者を探してるの。このうちをいい値で売って、私の借金を返してもらい、浮いた金で旅館につぎこむ」「誰かこの家を買い取りたい人がいるんですか」「水野のお浜さんがもう一度芸者屋をやりたいらしいよ」「お浜ねえさんが?」

つた奴はお浜に会うが、お浜は水野だけで精いっぱいだと言う。「おとよさんが何を言ったかしらないけど」「そうですか」そこにやってきた佐伯に今夜あたりに花山を呼び出せないかと聞くお浜。「今、おつたさんがとても困って相談したいことがあると言えば、嫌とは言わないわね。今夜七時に。いいわね」

鼻歌を口ずさんで出かける準備をするつた奴に高校時代の友達に会ってきたと言う勝代。「それでミシンの下請けの話を聞いてきたの。だって、こうやってうちにいるの、なんだか肩身が狭くってしょうがないの」「そんなみみっちい仕事、よしてちょうだいよ」おねえさんはどこに行ったのと米子に聞く染香。「さあ、知らないわ」「でも珍しく機嫌がよさそうね」

私のせいでお母さんは苦しんでるのと梨花に言う勝代。「でも、私はなみ江が大嫌いだったの。私はお金払うことはないと思うの。私だったら黙殺しちゃうけど、お母さんじゃ無理だろうな。気が弱いのよ。それで私のお父さんって言う人と別れることになっちゃって」お座敷の口がかかって喜ぶ染香に、いい人に怒られるわよと言う米子。「なにさ、あんなの」「ははは」料亭に現れた佐伯を見て、おひとりなのと聞くつた奴。「はあ。申し訳ありません。どうしても今日は御都合が悪いそうです」「いいえ。いらしていただくのが虫がいいんです。あなたのせいじゃありません」

またつたの家に来た岩瀬に出るとこに出て話をしましょうよと言う勝代。「こうたびたび来られてはかなわないわ」「あんたは誰だね」「私はここの娘です」私の方こそ騙されたと岩瀬に言うつた奴。「だってあの子は年を二つも誤魔化してたんですもの」とにかくなみ江が嫌いだったという勝代。「私より年が若いのにどうしてあんなことができるかと思うと」どうにも話が決着がつかないと言うことで警察に行くことになるつた奴と勝代と岩瀬。

警察署から染香に電話するつた奴。「今夜、水野さんに頼まれてお座敷に出ることになってるの。あんた、代わりに出てくれない」「まあ、私がですか。ありがとうございます。まあおねえさんの代わりだなんて一世一代の光栄ですわ」

警察を出たつた奴はこの家を買ってくれないかとお浜に言う。「どうして」「今度の騒ぎでこの家の看板も潰れたようなもんですわ。段々格が落ちるのを見てるより、いっそこのへんでさっぱり」「そう。まあ、佐伯と相談してみますけどね。実は言い出せなくて言えなかったけど、花山先生からの10万円、あれはこれっきりってことだったのよ」「もうおっしゃらないで。たいていそんなことだと。私もこの辺で男と縁を切れと言うことなんですねえ」

警察に連れていかれるなんてとんだ恥さらしだと言うおとよにこの家を売って借金の始末をつけたいと話すつた奴。「じゃあ、私のいつか言った旅館を」「いいえ。ここで芸者をします。今更芸者以外のことは。水野のねえさんがそれがいいと言うんです。つまりねえさんが買ってくれて、私に貸してくれると」「そんな大事な話がいつ決まったの」「昨夜です。これで姉さんの長い間の借金が返せるんですわ」

佐伯さんと岩瀬さんが警察から戻りましたとつた奴に告げる梨花。なるほどねと呟くおとよ。「水野のおかみさんが金を出すと見せかけて、実は花山先生とよりが戻ったってこと。いい腕だ」「いいえ。決してそんなことは」「わからないわ。あんたたちのすることは。表と裏がちゃんと違うんだもん。芸者とはよく言ったもんだ」

示談になってあなたもいいじゃないですかと岩瀬に言う佐伯。「もうちょっとのところで脅迫罪になったところです」「ちぇ。とにかくなみ江の荷物を持って帰るよ。でもお前さんはなかなかしっかりしてるな。こういう女ばかりの家にはなくてはならないだろう」

会社に戻ると言う佐伯をバス停まで送る勝代。「佐伯さんは母がずっと芸者をやることに賛成なんですか」「……」「私はこの際やめてほしいのよ。あなたから言ってもらえば」「そんな僭越なことはできないなあ。お姉さんは芸者という仕事が一番向いていると思うと叔母は言ってますよ」「可哀そうね、お母さんって」

「勝代さん、結婚はどうなんです」「考えてないわ。具合が悪くなってる芸者屋で、そこに持って来て私は稼ぎがなくて。そんなところに誰が来てくれるかしら。うまくいって、芸者屋の亭主でしょう。今時、誰が芸者屋の亭主になるのかしら」「それは少し考えが狭すぎませんか」「しょうがないわ。今のままじゃ嫁に行くにも肩身が狭いわ。玄人の家で生まれて素人みたいに育ってるでしょう。身体が半分半分色が違う感じ。おさまりようがないのよ。結婚よりもどうやって暮らしていくかが心配よ」

私の男は故郷に帰ったとつた奴に言う染香。「あんた、酔っぱらってるのね」「私といてもうだつがあがらないと思ったんでしょう。これまでさんざん尽くしたのに」「そのほうがあんたにいいんじゃない。そんなことより姉の借金を片付けて。私はこの家を売ってさばさばしてるの」「私が売るのは三味線の芸だけ。それでは借金は返せませんよ。でもちゃんと伝票どおりのお金がもらえれば返せますよ。ねえ、なな子さん」

大きな声を出すと外まで聞こえるわよと染香に言う勝代。「そりゃあねえ、お母さんには落ち度があるかもしれないけど、どこだってあることじゃないの」じゃあ伝票に不正があることを認めるんですかと言うなな子に、なみ江と同じことを言ってると言うつた奴。

芸者なんかやめればいいと言う勝代に、私はここを出ると言う染香。「なな子さん、行きましょう。芸者置屋はここだけじゃありません。ねえさんにはお世話になりましたけど、積もる恨みもあります」恨みがあるなら出て行ってと言う勝代に涙が出るけど出て行くと言う染香。「これはあんたの見事な挨拶に泣いたんじゃないんです。人を恋しいと思うから出る涙。男を知らないあんたなんかにわかるもんか」「男を知ってることがどうして自慢になるのよ」「大変なことをおっしゃいましたよ、このお嬢さんは。女に男がいらないって本当ですか。はははは」

若い娘に三味線を教えるつた奴。そこに現れる染香。「先日は酔っていたとはいえ大変な不調法。なんとお詫びしていいか」「いやあね。染香さん」「おねえさん、またここに置かせてくださいね」「私も新規まき直しのつもりでね」「ねえ、おねえさん、憎らしいじゃありませんか。なな子さんは事もあろうにつた屋さんのところから出てるんですよ」「まあいいさ」「勝代さんは?」「二階でミシンをやってるわ」

おつたさんにいつまでもあの家にいてもらってもと梨花に言うお浜。「それでどいてもらって小料理屋でもやろうかと思うの。この家の支店ってわけね」「あそこで。では皆さんは」「芸者屋をやっていくんなら川向うにでも行けばいいんじゃない。でもおつたさんが仕込んでいるのはロクなのいないねえ。あれは全部なみ江になりますよ」「……」

「ねえ、私はあんたって人をただの女中さんにしておくには惜しいと思うの。勝代と言う手もあるけど、どうもあの子は愛嬌がなくてね。だからあんたにやってもらおうかと」「……」「ねえどう」「はあ。私にはとても務まりそうもありませんので、折角ですが」「そう。じゃあ、おつたさんには黙っててね」「はい。ではこれで失礼させていただきます」

つた奴の三味線と歌にあわせて踊る不二子。不二子ちゃんは上手になったねえと米子に言う染香。「そうかねえ」「楽しみねえ」ミシン仕事をする勝代にお偉いですねえと言う梨花。「あら。偉いなんて。ただ何かやらないといけないって気持ち。私はお母さんの仕事は継がないんだもん。いざとなったら親子食っていける仕事は身に着けておきたいと思うの」「左様でございますね」「でもね、お春さんがずっとうちにいてくれたら、何かと相談相手になってくれると嬉しいんだけど」「はい。私もできればそうさせていただきたいのですけれど」「そう。そうね。あなたはこういうところに長くいる人じゃないかもしれないわね」「いいえ。ちょっと田舎に帰ろうかと思いまして」「そう」三味線を弾くつた奴と染香を梨花は見つめるのであった。

★ロロモ映画評

この映画は女優の女優による女優のための映画でありまして、女優の演技合戦を楽しむという映画でしか味わえない楽しさがあり、ちょうど女優も9人出ていることから、この9人でスターティングメンバーを組んでみたいとロロモは思うわけです。1番・遊撃手はなな子演じる岡田茉莉子でありまして、いかにも俊足で相手チームをかき回しそうというイキのよさがトップバッターにぴったりであります。2番・中堅手は染香演じる杉村春子でありまして、もう私はどんな役でもこなせますという曲者ぶりはまさに2番バッターにぴったりであります。

3番・一塁手は梨花演じる田中絹代。彼女は外国人助っ人のように途中からつたの家ファミリーに参加すしますが、普通外国人助っ人と言うと長打連発の派手な選手となるのですが、彼女の場合は常に腰が低くて、その腰の低さが逆にポイントとなる珍しい助っ人でありまして、ロロモ的には1975年の広島カープ優勝時に常に医学書を読むジェントルマンでありながら、勝負強い打撃を披露したゲイル・ホプキンスを連想させるわけです。

そして4番・三塁手はつた奴演じる山田五十鈴でありまして、まさにつたの家の顔である彼女は長嶋茂雄のような存在でありまして、いろいろな女優たちがそれぞれの持ち味を発揮できるのも4番バッターである彼女がいるからこそでありまして、彼女の存在感の大きさがこの映画を下支えしているわけです。5番・捕手はお浜演じる栗島すみ子。彼女は1920年代の日本映画界初期の人気女優でしたが、この映画に19年ぶりの映画出演。これは古くからのつきあいである成瀬巳喜男監督のたっての願いで実現したそうで、セリフを一切覚えずに現場入りしたというさすがの貫禄はこの映画では随所に見られるわけです。

6番・左翼手は米子演じる中北千枝子。ここでの彼女のだらしなさはどことなくパリーグの昭和時代の外野手を思わせ、「私は打つことは打つけど守るのはいい加減よ」と言うダメオーラが見るものを楽しませるわけです。7番・二塁手はおとよ演じる賀原夏子。2番を打つ杉原春子同様いぶし銀の味を見せますが、彼女ほどの小回りは効かない感じがするわけです。8番・右翼手は8番・右翼手はなみ江演じる泉千代。多くの凄い女優に囲まれて、しかもすぐに映画から退場してしまう彼女は8番ライトはいたしかたないところでしょう。

そして9番・投手は勝代演じる高峰秀子でありまして、ストレートも速く変化球のキレもよくしかもコントロールもいいという三拍子そろったエースっぷりは見てて楽しく、彼女がエースで山田五十鈴が4番というチームならどんなチームと当たっても負けることはないだろうと思わせるわけです。

この女優オールスターズを率いる監督は当然成瀬巳喜男。これだけのスター選手を集めると監督は何をしなくてもいいと言う声を聞こえそうでありますが、やはり成瀬監督の名采配でこの映画がどの映画にも負けないものになったのは間違いないところですが、気になるのは養成選手の不二子でありまして、彼女がつたの家の将来を担う選手になれたのか心配でありますが、まあこれほど俳優力のみで見せる映画と言うのはそうないのではとロロモは感心するのでありました。(2014年6月)

得点 99点

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