涙をありがとう

1965年 日活

キャスト:高橋英樹(英也)西郷輝彦(輝夫)和泉雅子(マユミ)菅井一郎(結城)山本陽子(俊枝)中村歌門(倉橋)二本柳寛(沢島)藤岡重慶(時野)久保菜穂子(美知子)平田大三郎(伍郎)郷^治(高木)

監督:森永健次郎

貨物船から降りた英也に車に乗らないかと言う輝夫。「安くしとくよ」「ひでえ車だな」「工場の修理中の車なんだ」「お前の頭も修理する必要があるな」「そのうち金ができたら、兄さんにでっかい船を乗らせてやるよ」「夢だけは大きいじゃないか」「……」「どうしたい」「似てるなあ。そっくりだぜ」あらすか丸が港に入りましたよと言われる刑事の倉橋。「英也君の乗ってる船ですよ」「せがれの話はやめてください」

バー・コンドルで流しをする輝夫はシマ荒らしをするなと沢島組のチンピラにどつかれるが、英也に助けられる。「兄さん、ありがとう」「昼は白タクで夜は流し。そんなに稼いでどうするんだい」「遊んじゃいられませんよ」英也に店を荒らしやがってと怒鳴るマスターの結城。「英也。三年ぶりだな」「御無沙汰してます」

なぜ親父さんと逢わんと英也を叱る結城。「親父さんもええ年や。最近はめっきり老け込んで。来年は定年で警察を辞める。そんな親父さんをまだ憎んでるのか」「……」「お前が家を飛び出して七年だ。俺と倉島さんは二十年一緒に働いた。せがれのお前より俺の方が付き合いが長いんや」

俺のおふくろは親父に見殺しにされたと言う英也。「俺が17の時、危篤のおふくろを残して、親父はつまらん事件のために北海道に出張に行った。その間におふくろは死んだ。不平一つ言わずに、俺の手を握って」「倉島さんはおふくろさんが死んだと聞いた時、暑い暑い言うて、雪の中に顔を突っ込んだんや。それは俺に涙を見せたくなかったからや」

「あの親父が泣くわけない」「お前は本当は親父に会いたいんや」「違う」「本当は親父が好きなんや」「違う」倉島は張り込み中に射殺されてしまう。許してくれと泣く英也。「本当は俺は父さんと暮らすつもりで船を降りたんだ。いったい誰が父さんをやったんだ」

修理工場にトライアンフを乗りつけるマユミにすげえ車だなと言う輝夫。「なんだか調子が出ないのよ」「ひでえな。ラジエーターに穴があいてるぜ」修理をした輝夫は車に乗せてくれと言う。「いいの?勤務中よ」「いいんだ。あんなところ辞める気でいたんだ」

トライアンフをブッ飛ばす輝夫。「明日からどうするの」「明日は明日。俺は金を稼がなきゃならないんだ。死んだ兄貴の代わりに船を出すんだ」「お兄さん、船乗りだったの」「ううん。漁師だ。5年前のシケで死んだんだ」

倉島は拳銃の密輸捜査のために張り込んでいたと聞かされる英也。「これが倉島さんの体にあった銃弾です。拳銃はワルサーです。それが見つかれば犯人が逮捕できるんです」「ワルサー」「倉島さんは自分の拳銃でホシに一発撃っています。付近に弾痕のないところからホシの身体にあるはずです。今全員で病院関係を当たっています」

輝夫は沢島組のチンピラに沢島邸の倉庫に入れられる。ひどいわと姉の美知子に言うマユミ。「あの車は本当にここの家の車なの」「勿論よ」「だったら私が乗って文句を言われることはないわ」「あなたは早くアパートに帰って」「姉さん。どうして私たちは一緒に暮らせないの。どうして私はアパートなんかに」「不自由しないだけお金を渡してあるんでしょう。沢島がうるさいのよ」「変わったわ、姉さん」

沢島にあの車はまずいですと言う子分の時野。「あの車には倉島の撃った弾が入っています。あのチンピラはなんとか押えましたが、マユミさんがトライアンフに乗ったと聞いた時にはゾッとしました」「死人に口なしだ。倉島は処分した」

妹を呼ぶなと言っただろうと言う沢島にあの子たちは車の秘密は知りませんと言う美知子。「お願いだから私の言う通りにしてちょうだい」みんなはあなたのことを自動車泥棒だと思ったのと輝夫に言う美知子。「あなたは何をしてるの」「さっきクビになったばっかりだ」「じゃあ沢島興行の運転手にならない」「いい給料もらえるならなんでもやるぜ」

与太者に扮した英也は沢島組がワルサーを扱っていることを知る。英也は結城に沢島を襲わせて、結城をぶちのめすことで沢島の信頼を得て、沢島の用心棒となる。姉の俊枝にドイツ製の新薬を渡す輝夫。「これを親父に飲ませてくれよ」「あんた、沢島組なんかに入って伍郎さんみたいに刑務所に入りたいの」「俺は伍郎さんと約束したんだ。伍郎さんが出てくるまでに船を買うと。そして姉さんは伍郎さんと結婚して、俺と父さんと伍郎さんで船に乗るんだ」「どうして地道に工場に行けないの」「俺は絶対船を買うんだ。姉ちゃん、俺は死んだ兄さんにそっくりな男と出会ったんだ。とってもイカスんだ。今度、姉ちゃんにも会わせてやるよ」

英也にここから出て行ってと言う美知子。「あなたは何を好んで危険に近づくの」「危険かどうか触ってみないとわからない」輝夫に沢島組から出ろと言う英也。「お前は車の修理もできる。歌だって歌えるじゃないか」「俺は初めて会ったときから、兄貴が本当の兄貴のような気がしてならないんだ」

高木とは今は争いたくないと時野に言う沢島。「もうすぐ大きい取引がある。あまり騒ぎを起こしたくない」「でも高木はこっちの根城をうかがってますぜ」この前に私を襲った奴は高木が雇った奴だろうと英也に言う沢島。「高木を始末してくれ。ワルサーを渡す」

ワルサーを試し撃ちした英也はその銃弾を結城に渡すが、結城は鑑識の結果、その銃は倉島を撃った銃ではないと言う。高木興行に乗り込み高木をボコボコにする英也。「沢島の縄張りが欲しかったらこの手で奪いに来るんだな」

ワルサーを沢島に返す英也。「使う必要はありませんでした」「よくやった。これで高木も当分静かになるだろう」伍郎が明後日出所すると聞いて、それを俊枝に知らせに行く輝夫。「よかったな、姉さん。三年も待ったんだぜ」

あなたの身代わりに入った伍郎が出所するのよと沢島に言う美知子。「三年前、それを条件で足を洗わせてくれと伍郎さんは言ったわ。あの子、好きな子がいるみたいなのよ」「私は約束を守る男だ。それが自分の利益になる場合は」

これ以上深入りするなと言う結城に、俺が親父を殺した犯人を捜し出すと言う英也。二人を見つめる高木。俺は沢島組を辞めると英也に言う輝夫。「それはよかったな」「明日姉さんの恋人が出てくる。俺たちは船に乗るんだ。親父は底引き網の名手でさ。兄貴も一緒に乗らないか」「気が向いたらな」

出所した伍郎は時野に事故死に見せかけて殺される。号泣する俊枝にきっと伍郎は殺されたと言う輝夫。「俺が姉ちゃんの仇を取ってやるよ」泥酔する輝夫に伍郎を殺ったのは英也だと言う時野。「なに」「なんせ社長の用心棒だからな。元用心棒が出て来たらクビだからな」ヤケクソになった輝夫は金とトライアンフを奪って逃走して、俊枝に金を渡そうとする。

そこに現れる英也。「姉さん。こいつは伍郎さんを殺して、俺を殺しに来たんだ」確かに俺はお前を殺せと言われたと言う英也。「だが伍郎さんを殺したのは俺じゃない。時野たちだ」「……」「信じてくれ。お前はここにいては危ない。すぐ逃げるんだ」「すまねえ、兄貴」輝夫が銃弾のペンダントをしていることに気づく英也。「これは」「俺のマスコットなんだ。トライアンフのラジエーターを修理していた時にこいつが出てきたんだ」

輝夫をマユミのアパートに連れて行く英也。「マユミさんに匿ってもらうんだ。ここなら灯台下暗しでわからない。俺が沢島の始末をつけてやる。このペンダントは預かるぞ」沢島に輝夫は始末したと報告する英也。

沢島にいい情報が入ったと言う高木。「英也は殺された倉橋ってデカの息子だ」「なんだと」怒り心頭に達した沢島は英也を殺すように命令する。そんな沢島に銃をつきつける美知子。「お前は気でも狂ったのか」「狂ってるのはあなたよ。あなたのせいで何人が死んでると思ってるの」時野に狙撃されて倒れる美知子。

ペンダントの銃弾は倉橋の拳銃から発射されたものと判明する。あとは警察に任せるんだと英也に言う結城。「あの弾はどこにあったんや。誰からもらったんや」「誰の手も借りない。俺がこの手で親父の敵討ちをする」

倉橋邸に行った英也は虫の息の美知子を見つける。「おい、しっかりしろ」ベッドの下からワルサーを取り出す美知子。「これは」「このワルサーで沢島はあなたのお父さんを」「沢島はどこだ」「別荘で取引を。妹をお願いします」事切れる美知子。沢島の別荘で大暴れした英也は父を殺したワルサーで沢島のとどめを刺そうとするが思い留まる。

父の墓前に報告する英也。(父さん。全ては終わったよ。父さんを殺した沢島は逮捕された。父さん。俺は行くよ。寂しくないよな)兄貴は遅いなと言う輝夫に英也はもう来たと言う結城。「あの墓の前を見ろ」銃弾のペンダントがあることに気づく輝夫とマユミ。「奴はもう海に帰りよった」「兄貴は海へ」輝夫は海に向かって「兄貴」と絶叫するのであった。

★ロロモ映画評

貨物船から降りた英也(高橋英樹)に車に乗らないかと言う輝夫(西郷輝彦)。「安くしとくよ」「ひでえ車だな」「工場の修理中の車なんだ」「お前の頭も修理する必要があるな」バー「コンドル」で流しをする輝夫はシマ荒らしをするなと沢島組のチンピラにどつかれるが、英也に助けられる。「兄さん、ありがとう」「昼は白タクで夜は流し。そんなに稼いでどうするんだい」「遊んじゃいられませんよ」英也に店を荒らしやがってと怒鳴るマスターの結城(菅井一郎)。「英也。三年ぶりだな」「御無沙汰してます」なぜ親父さんと逢わんと英也を叱る結城。「親父さんもええ年や。最近はめっきり老け込んで。来年は定年で警察を辞める。そんな親父さんをまだ憎んでるのか」

俺のおふくろは親父に見殺しにされたと言う英也。「俺が17の時、危篤のおふくろを残して、親父はつまらん事件のために北海道に出張に行った。その間におふくろは死んだ。不平一つ言わずに、俺の手を握って」「倉島さんはおふくろさんが死んだと聞いた時、暑い暑い言うて、雪の中に顔を突っ込んだんや。それは俺に涙を見せたくなかったからや」倉島(中村歌門)は張り込み中に射殺されてしまう。許してくれと泣く英也。「本当は俺は父さんと暮らすつもりで船を降りたんだ。いったい誰が父さんをやったんだ」

修理工場にトライアンフを乗りつけるマユミ(和泉雅子)にすげえ車だなと言う輝夫。「なんだか調子が出ないのよ」「ひでえな。ラジエーターに穴があいてるぜ」修理をした輝夫は車に乗せてくれと言う。「いいの?勤務中よ」「いいんだ。あんなところ辞める気でいたんだ」トライアンフをブッ飛ばす輝夫。「明日からどうするの」「明日は明日。俺は金を稼がなきゃならないんだ。死んだ兄貴の代わりに船を出すんだ」「お兄さん、船乗りだったの」「ううん。漁師だ。5年前のシケで死んだんだ」

この映画は1960年代に数多く作られた日活歌謡映画の典型的作品でありまして、西郷輝彦は数多くのナンバーを歌いまくりますが、ロロモが気になるのが主題歌の「涙をありがとう」でありまして、この曲は雑誌「平凡」の歌詞募集当選歌で、歌詞は一般読者によるものでありますが、「兄貴」という絶叫で始まるこの歌の歌詞は「呼んでも帰らぬ兄貴だけれど、こんな時には、さみしい時は泣きにくるんだ、兄貴のそばへ。涙を、涙をありがとう。どこかでやさしい声がする」という内容になっているわけです。

実は西郷輝彦には兄がいてデビュー前に海で事故死しており、この映画でも兄は漁師で5年前のシケで死んだと言う設定になっており、それは事実に即しているのかもしれませんが、そういう身内の不幸を歌詞募集で歌ったり、こういうアクション映画に出ると言うのにどうもロロモはひっかかるものがあり、そこまで商魂たくましくしなくてもいいだろうと言う気になり、二番の歌詞は「なぐさめはげましかばってくれた。強い兄貴を奪った海をじっとにらんで、墓標を抱けば。涙を、涙をありがとう。どこかで兄貴の声がする」と言うものでありまして、どうもロロモはこの「涙をありがとう」と言う部分がピンと来ないものがある、いったい何に感謝しているんだろうと思うわけであります。

そして映画の方も西郷輝彦は死んだ兄のことは忘れてはいないのですが、死んだ兄貴そっくりの高橋英樹に心酔してしまい、どうもその辺もロロモ的には納得がいかず、この映画は内容がどうのこうのと言うことより「涙をありがとう」という曲の背景が気になってしまったのでありました。(2014年6月)

得点 27点

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