殴り込み艦隊

1960年 東映

キャスト:高倉健(石山)田崎潤(剛田)中山昭二(酒井)安倍徹(熊本)殿山泰司(北村)花澤徳衛(寺田)水木襄(和田)神田隆(永野)久保菜穂子(タカ)

監督:島津昇一

昭和17年末。日米開戦後、わずか一年にして日本海軍の華々しい戦果はすでに夢、南方ソロモン戦線はガタルカナルの攻防をめぐって、次第に米軍の膨大な物量に圧倒されつつあった。駆逐艦黒雲に配属された石山中尉を迎える和田二水。「自分は初めての従兵なのでよろしくお願いします」「俺だって初めての実戦勤務だ。お前からいろいろ教えてもらうことがある」

水雷長の酒井大尉、砲術長の熊本大尉、軍医長の北村中尉、機関長の寺田大尉に挨拶する石山。「よろしくお願いします」「機関長付。ホテルからの転勤じゃ本艦はつらいぞ」「え」大和ホテルに武蔵旅館と戦艦大和と武蔵のことを我々は呼んでいると説明する酒井。しかし石山は一カ月でホテルから追い出された男だそうだと言う熊本。「きっと見込みのある男だろう」戦艦大和なんて鉄屑の山だと言う北村に、大和の悪口を言っても現状はよくならないと言う石山。

黙れと怒鳴る熊本。「駆逐艦が怠けているとでも言うのか。このごろじゃ我々駆逐艦は輸送船代わりに物資補給までやっている。今じゃこのソロモンは駆逐艦のアリジゴクだぞ」「わかっております」「貴様、真赤な小便を出したことがあるか。何週間もぶっつづけに空襲に砲撃。そんな体験はあるまい」「我々軍人は戦局がそれを命じればやむをえないと思っています」「俺たちだって生身の人間だ。作戦部の無能は貴様にはわかっておらんよ」「わかっております。嫌と言うほど。だから私は」

館長の剛田に挨拶する石山。「石山中尉は駆逐艦は初めてか」「はっ」「この駆逐艦は居心地いいぞ」「はっ。しかし規律が少したるんでいるように思われます」「はは。たるんでるかどうかはおいおいわかる。しかし君はなんでこんな駆逐艦に飛び込んで来たんだ」「実戦勤務はかねてからの私の希望でした」「嘘をつけ。飛ばされてきたんだろう。大和ではたびたび上官と衝突したと聞いている」「……」

「まあいい。なんで前線に来たいと言う気を起こしたんだ」「私は軍港に居て、目の当たりに参謀や高級士官の腐敗堕落ぶりを見せつけられて。この調子では戦争に勝つどころか、戦争を続けることさえ難しいと思います」「君が訴えてもどうにもならんよ」「そうであります。しかし自分は軍人である。軍人の道に徹すべきであると思い、体当たりで国を守る真実を追求すべきと思います。そのためには厳しい統制と厳粛なる規律を」「貴様の言うことはよくわかる。しかしまだ若い。戦争は理屈じゃない。生身でぶつかるしかない。裸になれ。実戦のカタログはどこにも売っちゃおらんからな」

黒雲では一切の喧嘩が禁じられ、懲罰は「金太郎訓練」と呼ばれる懲罰が行われ、喧嘩をした兵士は金太郎に扮した太った兵隊を背中に乗せて艦内を回って競争させられる羽目になっていた。そんな金太郎訓練が行われてる最中に、黒雲は敵機の襲撃を受ける。応戦する黒雲であったが、和田は戦死してしまう。和田の死に顔を見て、裸になれと言われた意味がわかった気がすると剛田に言う石山。「実戦は理屈じゃない。悲しいが厳しい現実があると言うことは」「戦争は厳しい。今日の戦闘など実戦のうちに入っておらん」

出航した黒雲は早速敵潜水艦の攻撃を受けるが、石山の冷静な判断で敵潜水艦を爆沈させる。石山の初陣を祝って乾杯する剛田たち。黒雲はラバウルに到着する。ラバウルで敵機に襲撃された石山は防空壕に逃げ込み、呉の料亭の娘のタカと再会する。「いやあ、こんなところで会うなんて」「私、あなたがいなくなってどれだけ会いたかったか。ちょっとビールでも飲まない」「いやあ、そうもしてられないんですよ。公用なんで。じゃあまた」「私、ここに二、三日しかられないのよ。是日遊びに来て」「はあ。時間ができたら。じゃあ、さよなら」そして寺田は内地に帰ることになる早雲の機関長となったため、石山は黒雲の機関長に昇格する。

昭和十九年、北ボルネオ・ブルネイ。タカからの手紙を受け取る石山。<結局あなたに会えなくて寂しかった。内地でお会いすることを楽しみにしてます>タカの手紙を破って海に捨てる石山。剛田は敵の真ん中に突っ込む殴り込み作戦を実施すると石山たちに告げる。そんな無茶苦茶な命令しかで司令部は出せないんですかと言う石山に、ここが今度の戦争の天王山だと答える剛田。殴り込み作戦を敢行する黒雲はなんとか敵艦隊の中を強行突破することに成功する。

黒雲は一時内地に帰還する。昭和二十年四月、神奈川県日吉にある連合艦隊司令部で菊水特攻作戦について説明する司令官。「各艦沖縄に突入の上、海上より味方部隊の掩護射撃を行うのである」反対する剛田。「敵空軍絶対的制圧下にある沖縄で、このような作戦が成功すると司令部は本気で考えているのですか。特攻も結構ですが、敵に一撃も打撃を与えられないような作戦は私は同意できません。連合艦隊の全滅は明らかです」しかし多数決により菊水特攻作戦は実行されることになる。

呉でタカと会う石山。「やっとお目に」「いつも手紙もらいっぱなしですいません」「この日をどんなにお待ちしていたか。まるで夢みたい」「生きて帰ってきて、是非もう一度お目にかかるつもりです。じゃあお元気で」「御無事で」「ありがとう。あなたも」黒雲を降りることになったと石山に告げる剛田。「なんですって」「俺は降りたくないがやむを得ない」別れの乾杯を交わす剛田たち。「君たちはまだ若い。やらねばならんことがある、今度の作戦は全滅覚悟の作戦だ。しかし連合艦隊は全滅してはならぬのだ」

昭和二十年四月、沖縄海域で戦闘が行われ、黒雲は漂流していた剛田を救出する。この船で死ねるなら本望だと石山に言う剛田。新艦長となった永野は全員に退艦命令を出す。「昨夜からの諸君の努力によって、本艦はここまで持ちこたえてきた。だが万策尽きて、ここに最後の時が来たようである。諸君全員に退艦を命じる」

剛田が奇跡的に回復したと石山に告げる北村。退艦命令は待ってくださいと永野に言う石山。「剛田大佐は不死身の人です。この艦も不死身のはずです。みんな、もうひと踏ん張り頑張ってみようじゃないか」おおと答える一同。みな配置につけと命令する永野。

窮地を脱する黒雲は呉に向かうが、四国沖にある敵巡洋艦と駆逐艦を邀撃せよとの無電がはいる。質問する永野。「機関長。油は」「はい。まだ余力はあります」「魚雷は」「あまだ三発残っています」「よろしい。返電。黒雲いまだ健在なり。ただちに敵撃滅に向かう」もうひと踏ん張りだと士気を高める一同。「こうなったら殴り込みだ」

★ロロモ映画評

昭和17年末。日米開戦後、わずか一年にして日本海軍の華々しい戦果はすでに夢となり、南方ソロモン戦線は次第に米軍の膨大な物量に圧倒されつつあった。駆逐艦黒雲に配属された石山中尉(高倉健)を迎える水雷長の酒井大尉(中山昭二)、砲術長の熊本大尉(安部徹)、軍医長の北村中尉(殿山泰司)、機関長の寺田大尉(花澤徳衛)。

「よろしくお願いします」「機関長付。ホテルからの転勤じゃ本艦はつらいぞ」「え」大和ホテルに武蔵旅館と戦艦大和と武蔵のことを我々は呼んでいると説明する酒井。しかし石山は一カ月でホテルから追い出された男だそうだと言う熊本。

館長の剛田(田崎潤)に挨拶する石山。「石山中尉は駆逐艦は初めてか」「はっ」「君はなんでこんな駆逐艦に飛び込んで来たんだ」「実戦勤務はかねてからの私の希望でした」「嘘をつけ。飛ばされてきたんだろう。大和ではたびたび上官と衝突したと聞いている」「……」「まあいい。なんで前線に来たいと言う気を起こしたんだ」

「私は軍港に居て、目の当たりに参謀や高級士官の腐敗堕落ぶりを見せつけられて。この調子では戦争に勝つどころか、戦争を続けることさえ難しいと思います」「貴様の言うことはよくわかる。しかしまだ若い。戦争は理屈じゃない。生身でぶつかるしかない。裸になれ。実戦のカタログはどこにも売っちゃおらんからな」

こうして石山は実戦を通じて戦争は理屈でないことを知っていきますが、この映画は反戦映画でも好戦映画でもなく、もうこれは戦争映画としか言いようのない映画で、最初は戦艦がエリートで駆逐艦が雑草で、荒くれ海軍兵と戦争慣れした人間臭い将校たちの雑草魂が炸裂するのかと思うとそうでもなく、高倉健と久保菜穂子のロマンスはわざとつまらなくしたのかと思うほど、高倉健は無意味にハードボイルドを貫き通し、結局、日本人は一生懸命戦争をしましたという記録映画のような趣になってしまったのかとロロモは感じるわけです。

ということでこの映画は健さんの凛々しい軍服姿くらいしか見どころがないようなので、この映画が公開された1960年に行われたローマ五輪での日本選手の活躍ぶりを見てみると、金メダルが、体操男子団体、体操男子跳馬と体操男子鉄棒の小野喬、体操男子床運動の相原信行の4つ。銀メダルは競泳男子400メートル自由形の山中毅、競泳男子200メートル平泳ぎの大崎剛彦、競泳男子800メートルリレー、レスリングフリースタイル男子フライ級松原正之、ウエイトリフティング男子バンタム級の三宅義信、体操男子個人総合の小野喬、体操男子鉄棒の竹本正男の7つ。

そして銅メダルは、競泳女子100メートル背泳ぎの田中聡子、競泳男子400メートルメドレーリレー、体操男子平行棒と体操男つり輪の小野と、体操男子あん馬の鶴見修治、ボクシング男子フライ級の田辺清、射撃男子フリーピストルの吉川貴久の7つという結果になっています。こうして見ると今も昔も日本人の得意種目というのはあまり変わっていない気がするわけですが、ローマ五輪から60年後に開かれる東京五輪では、メダル総数50個の壁を突破してほしいと思うのでありました。(2013年10月)

得点 10点

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