渚にて

1959年 アメリカ

キャスト:グレゴリー・ペック(タワーズ)エバ・ガードナー(モイラ)フレッド・アステア(ジュリアン)アンソニー・パーキンス(ピーター)ドナ・アンダーソン(メアリー)

監督:スタンレー・クレイマー

アメリカ海軍の原子力潜水艦が、オーストラリアのメルボルンに寄港する。原子力戦争の後に発生した放射能のために、人類が生存しているのはオーストラリアだけとなっていた。オーストラリア海軍の大尉であるピーターは妻のメアリーと生まれたばかりの娘のために紅茶とミルクを作る。今度は艦長になれるのとピーターに聞くメアリー。「大尉じゃ無理だよ」「提督と会うんでしょ?交代勤務の要請なら直接会うこともないわ」「どうかな。最近ではわからん」

メルボルンでは石油不足のため、みな自転車か馬車を利用していた。連絡士官としてアメリカの原子力潜水艦に乗ってくれとピーターに頼む提督。「航海の目的は偵察だ。すぐ出港する。場所や期間はわからん。艦長に会え」「どれくらいで帰ってこれますか」「四か月くらいだ」「あれが来る時は家にいたんです。いつ来るでしょう」「科学者どもはいろいろ計算しているが、あと五か月だ。その前に帰れる」

艦長のタワーズと会うピーター。「今回の航海の目的をはっきり聞いてないんです」「わかっていることは来週末に出港して北に行く。何かわかったら教える」週末にタワーズを家に招いたとメアリーに話すピーター。「艦長に家族はいるの?」「アメリカに。子供もいた」「全滅ね。赤ちゃんの話はしないようにしないと」「別の部屋に置いておこう」「お相手が必要ね。モイラを招くわ」「10人くらい呼んでパーティにしよう」

パーティで酔っぱらって熱弁をふるう科学者のジュリアン。「この戦争は事故とは言ってない。技術的・感情的に計画したものだが、見事に失敗した。結局、我々の文明が破壊されたんだ。その元凶はわからん。我々は目の見えぬ破壊の技術者なんだ。科学者が原爆を爆発させた。お陰で我々は絶滅だ。こうなるとわかって警告したのに誰も止められなかった。原爆を作って戦争するか、ソ連と共存するか。選択の余地はあった。そして戦争は起こった。その結果、この部屋の放射能は去年の9倍に増えている。俺たちは皆死ぬ。飲んだくれて死ぬしかないんだ」やめてと叫ぶメアリー。「私は希望を持つわ。絶望なんてイヤよ」飲み過ぎたと反省するジュリアン。

タワーズに故郷はどこと聞くモイラ。「アイダホだ」「山の中だから海軍はないでしょう」「生まれたのがアイダホで、家はコネチカット」「あの時はどちらに」「海にいた。硫黄島の近くで浮上。空気は放射能で汚染。そこで潜航した。マニラに行ったがそこも汚染がひどく、オーストラリアに来た。他に行くところはない」「奥様は?」

「いる。シャロンだ。子供も二人。リチャードが八つで、ヘレンが五つだ。リチャードは海軍志向だが、そのうち考えが変わるだろう」「どうして何が起きるか予測しなかったの」「したさ」「不公平だわ。私も友達も何も知らなかった。フランスに行きたかったのに」モイラはあなたを慰めるつもりだったのにと涙する。「あなたが泣くと思ったのに」「時には泣く」

潜水艦に行き、昨夜は失礼したわとタワーズに詫びるモイラ。「誘惑するつもりが慰められた。恥ずかしいわ」ジュリアンは放射能の測定で潜水艦に乗るとモイラに言う。「危険な任務なのね」「どうだか」一昨日からサンディエゴから通信が入っているとタワーズに話す提督。「始めたり、やめたり。60時間もだ」「子供じゃないかな」「これまで2語ほど読めた。滅茶苦茶にキーを打っている。だが打電してることは確かだ。人類は絶滅してるはずなのに。サンディエゴに行ってくれないか。それまで羽を伸ばしたまえ」

モイラとヨット遊びに興じるタワーズ。医師に例の薬を飲むとどうなるのですかと聞くピーター。「最初は楽しい気持ちになって意識が朦朧として終わりだ」「もらえますか」「ダメだ。まだ早い」

しかし薬を手に入れたピーターはメアリーに話があると言う。「今度の航海は長くなる」「そんな話聞きたくないわ」「嫌でも聞いてくれ。これは特製の睡眠薬だ。持っていて正しく使ってほしい。放射能による病気はまず気分が悪くなって。嘔吐が続き、体が弱る」「これで治るの?」「治る薬はない。終わるんだ」「赤ちゃんは?」「一緒に飲むんだ」「赤ちゃんを殺せと言うの」「君が先に死んだら、赤ん坊はどうなる。一人で死ぬだけだ」「もうよしましょう。ヒリダーさんが言ってたわ。ここに来ないかもって」「……」

海軍にいると戦争中はいつ死ぬかわからないと思っていたとモイラに語るタワーズ。「その代り家にいる女房や子供は安全だと思っていた。それが死んだ。いろんな計画もシャロンと考えた。一緒に年をとって幸せになれるはずが、こんなことになってたまらないんだ」

ジュリアンに昔は私のことを愛してくれたわねと聞くモイラ。「ああ、そのせいでいまだに独身だ」「今でも私のことを好きなの?」「普通なら好きだけど、時間がないと価値観が変わる」「私ってバカね。昔は男はいっぱいいた。でも今は違う。怖いの。誰もいないんだもの」「艦長は?」「結婚してる。奥さんはシャロン。子供は二人。彼を愛する時間がないわ。想い出もない」

潜水艦は出港して北上する。いざと言う時は来た時の話をメアリーにしたとジュリアンに話すピーター。「彼女に現実を直視してほしい。でも赤ん坊に薬をやることを罪だと思っている。納得させないと。愛する者を殺すということを」「うらやましい」「僕が?」「愛する人がいる。女房に子供。心配する人がいる。心配しようにも誰もいない人がいる。モイラや俺だ。気が付いた時はもう遅い」

潜水艦は死の町となったサンフランシスコに到着する。サンフランシスコが故郷である艦員のスウェインは、潜水艦を抜け出して泳いで岸にたどり着く。スウェインはどれくらい生きられるとタワーズに聞かれ、長くて一週間と答えるジュリアン。スウェインを残して出発する潜水艦。このあと地球はどうなると話し合う艦員たち。「火星人が地球を支配する」「来る方法があっても放射能が残っている」

自分で自分を抹殺するほど人間が愚かだとはと呟くジュリアン。「平和を保つために武器を持とうと考える。使えば人類が滅亡する兵器を争って作る。確かに俺もそれに手を貸した。誰かが千分の一秒遅れたら自国が滅びるとボタンを押す。そして世界が狂う」潜水艦はサンディエゴに到着し、完全防備したジュリアンは、打電地点に赴くが、そこには誰もいず、ブラインドのヒモに引っかかった飲みかけのコーラ瓶が風に揺られて、信号を叩いていた。電源を切断して潜水艦に戻るジュリアン。

潜水艦はメルボルンに戻る。もうどこにも行かないでとタワーズに抱きつくモイラ。もう離れないよとメアリーを抱きしめるピーター。ジュリアンは子供の頃の夢だったカーレースに出て、見事優勝する。タワーズはモイラとマス釣りを楽しむ。次第に放射能に侵されて倒れる人間が出てきて、病院では市民に睡眠薬が配られるようになる。部下にこれからどうするか聞くタワーズ。「夜までに投票しろ」「艦長。投票しました。帰国です」

レースカーのエンジンをふかすジュリアン。モイラに帰国すると告げるタワーズ。「いよいよその時が来たのね。さよなら、あなた。とても楽しかったわ。でも怖い」「いろんなことがあったけど愛してるよ、モイラ」メアリーと赤ちゃんのために紅茶とミルクを作るピーター。「メアリー。愛している」「何だか変な気持ちだわ」

「最初会った時」「海岸だった」「君は夢に見た理想の女性だった。あれから毎日渚に行った」「もう昔の話ね」「君と一緒で幸せだった」「私も」「……」「あの子は愛を知らないで可哀相」「メアリー」「神様、お許しください。ピーター、あの紅茶を頂くわ」モイラは海の中に消えていく潜水艦を見つめるのであった。

★ロロモ映画評

アメリカ海軍の原子力潜水艦が、オーストラリアのメルボルンに寄港する。原子力戦争の後に発生した放射能のために、人類が生存しているのはオーストラリアだけとなっていた。連絡士官としてアメリカの原子力潜水艦に乗ってくれと海軍大尉のピーター(アンソニー・パーキンス)に頼む提督。「航海の目的は偵察だ。すぐ出港する」「どれくらいで帰ってこれますか」「四か月くらいだ」「あれが来る時は家にいたんです。いつ来るでしょう」「科学者どもはいろいろ計算しているが、あと五か月だ。その前に帰れる」

艦長のタワーズ(グレゴリー・ペック)と会うピーター。「今回の航海の目的をはっきり聞いてないんです」「わかっていることは来週末に出港して北に行く。何かわかったら教える」週末にタワーズを家に招いたと妻のメアリーに話すピーター。「艦長に家族はいるの?」「アメリカに。子供もいた」「全滅ね。赤ちゃんの話はしないようにしないと」「別の部屋に置いておこう」

パーティで酔っぱらって熱弁をふるう科学者のジュリアン(フレッド・アステア)。「この戦争は事故とは言ってない。技術的・感情的に計画したものだが、見事に失敗した。科学者が原爆を爆発させた。お陰で我々は絶滅だ。こうなるとわかって警告したのに誰も止められなかった。原爆を作って戦争するか、ソ連と共存するか。選択の余地はあった。そして戦争は起こった。その結果、この部屋の放射能は去年の9倍に増えている」

この映画は人類最後の日をテーマにしていますが、それをパニック映画にするのではなくメロドラマ仕立てに仕上げていますが、2時間以上の映画になってるのはメロドラマ部分が冗長なためで、ちょっと苦痛に思えるわけです。モイラ演じるエバ・ガードナーの顔立ちがロロモの好みでないというか、ちょっと下品な顔立ちに感じて、あまり美人に見えなかったので、彼女とグレゴリー・ペックのラブシーンが美しく見えないのが残念なところで、彼女の魅力のなさがこの映画を冗長に感じさせたのかなと思うわけです。

また科学者としてフレッド・アステアが出演していますが、クレイマー監督はアステアがダンサーとしての軽やかな動きをするのではないかと心配して、彼の脚に重りをつけることさえ考えていたそうですが、アステアが初めて挑んだダンス抜きのシリアスな演技は批評家から絶賛されたそうですが、ダンスを踊らないフレッド・アステアはなんだか違和感を覚えてしまうわけです。

第三次世界大戦が起こったら、全世界の人類は死んでもおかしくないほどの核兵器が現実に存在しているという恐怖と我々は背中合わせに生きているということをこの映画は実感させ、死ぬことがわかっているという状況で人々は何をするかというのは最大のサスペンスでありますが、ここでは誰もパニックになることなく淡々とXデイを迎えますが、まあ意外に最期はこういう心境になるのかとロロモも淡々と思ってしまうわけです。

この日に絶対死ぬとわかったらロロモは何をするかと考え、あと三日で必ず死ぬと言われたら、いっぱい悪いことをしてやろうだの、持っている金を全て使ってやろうだのと思うだけで、結局何もできないで死んでしまうのかもしれないのですが、もしロロモが地球最後の人類となったら何をするかと考えると、最後の人類にふさわしいことをしようと思うんじゃないかと考えるわけであります。

それはいったい何なのだろうと考えてまだわかりませんが、なんだか死ぬ時にはこれをやるんだと決めて生きる必要もあるんじゃないかとロロモはこの映画を見て感じ、そういうものを決めていれば人生もなんだか有意義に生きれそうな気もするのですが、とりあえず第三次世界大戦絶対反対で、国防軍反対と叫ぼうと思うのでありました。(2013年4月)

得点 51点

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