ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

1968年 アメリカ

キャスト:デュアン・ジョーンズ(ベン)ジュディス・オーディア(バーブラ)ラッセル・ストライカー(ジョニー)カール・ハードマン(ハリー)マリリン・イーストマン(ヘレン)キース・ウェイン(トム)ジュディス・リドリー(ジュディ)カイラ・ション(カレン)

監督:ジョージ・A・ロメロ

父の墓参りに墓地にやってきたジョージは車を停めて、妹のバーブラに愚痴を言う。「花輪を飾る5分にために往復6時間だぜ。家にいる母親のために320キロの墓参りさ」「でも着いたわ」父の墓の前でバーブラはゆったりした動きの大男に襲われる。ジョニーは妹を救おうとするが、大男に殴り倒される。バーブラは車に乗って逃げようとするが、車を木にぶつけてしまう。

大男に追われたバーブラは一軒家に逃げ込む。バーブラは二階に行くが、そこで血まみれの女性の死体を発見し、一軒家を飛び出そうとするが、そこに車に乗った黒人男性のベンが現われる。バーブラを家に戻すベン。「大丈夫だ。俺が何とかする。ガス欠になった。給油機の鍵は?」「……」「ガソリンが必要なんだ」「……」「君の家か?」「……」二階に行き、女性の死体を見て、「ひどい」と呟くベン。「人のいるところまで逃げないと。食糧がいるな。探してみる」「どういうことなの。説明してよ」

家の周りにふらふらした動きの人間がたくさんいるのを見て、気づかれたとバーブラに言うベン。「木でも板でもいいから何か打ちつけるものを」「……」「いいか。君が怖いのはわかる。俺だって怖い。入口を塞ぐんだ。助けを待てばいい。君の協力が必要なんだ」窓やドアに板を釘で打ちつけるベン。「ビーグマンの食堂を知ってるか。俺はそこで奴らに襲われた。生存者はこの俺と無数の生きる屍だけだ。俺は奴らの間を車で走った。奴らは虫のように飛び散った」

兄と墓参りに行ったのと言うバーブラ。「そして、兄はあの男に。私は恐ろしくなって逃げ出したの。兄とはそれっきり」「冷静になるんだ」「兄を探しに行きましょう」「……」「聞こえないの。ジョニーを見つけなきゃ」「ピクニックじゃないんだ」「兄を探さないと」「死んでるさ」「いいえ。私の兄は生きてるわ」ヒステリーになるバーブラを殴って、バーブラを失神させるベン。

ベンはラジオのスイッチを入れて、ドアや窓に板を打ちつける。<事件が続発し、市民生活が脅威にさらされているため、24時間放送に切り替えます。現時点でわかってるのは、謎の暗殺集団によって大量殺人が行われたことのみ。犯行パターンや動機は不明。大量殺戮ブームの様相です。今の時点では対応策はありません。相手は怪物です。関係者から出されたメッセージはただ一つ。「一般市民は家に入って鍵をかけること」どんな理由があっても外に出ないでください」

銃と弾丸と食糧を発見したと気づいたバーブラに話すベン。「ラジオもある。打ちつけも終わった。いずれ誰かが助けに来る」ニュースを伝えるラジオ。<治安維持局は被害者の遺体がむさぼり食われていたことを発表しました。殺人鬼たちは人の肉を食らうのです>二階の死体を窓から捨てるベン。

地下室からハリーという中年男とトムという若者が現われる。銃を構えるベンに撃つなと叫ぶトム。「僕たちは町から来た」俺たちはラジオの音が聞こえたんで出てきたとベンに言うハリー。「板を打ちつける音は聞こえなかったのか。娘が叫ぶ声も」「俺たちは安全なところに隠れていたんだ。運よく隠れられたのに命をかけて助けに行けと?」「その通りだ」ここは穏便にと言うトム。

俺は地下室に戻ると言うハリー。「こんな板きれで奴らを防げるか」ハリーの子供は怪我していると言うトム。俺はここに残るとハリーに言うベン。「皆で力を合わせれば奴らを防げるはずだ」「窓が何枚あると思う。その全てを補強できると?」「奴らは非力だ。動きも遅い」「何人いるかわからない。地下室はドア一つだ。そのドアを守ればいい。ここは窓が多すぎる」地下室には逃げ場がないとハリーに言うトム。「入ってこられたら一巻の終わりです。ここなら窓から外の様子を観察できます」

家のまわりは数多くの生きる屍に囲まれる。侵入しようとする生きる屍を銃で追い払うベン。地下に逃げるべきだと主張するハリーに俺は残ると宣言するベン。「俺はラジオや食糧を守るために戦っているんだ」「子供がいるんだ。小さな女の子に耐えられる環境じゃない」「地下で死ぬのは勝手だが、道連れは御免だ。さっさと地下に潜れ。ここのボスは俺だ」

トムはガールフレンドのジュディを地下室から呼び出す。地下に戻って娘のカレンを看病する妻のヘレンにトムたちは上に行ったと話すハリー。「ほかに二人いる。何者かわからない人間を助ける義理はない。カレンの具合は?」「熱を出してるわ」ヘレンは上にはラジオがあると聞き、ここを出たいとハリーに言う。「地下では状況がつかめないわ」「上には怪物がうようよしている」

テレビが見つかったとハリーに叫ぶトム。ジュディにカレンの看護をまかせて、地下室から出るハリーとヘレン。テレビを映すベン。<集団ヒステリーではありません。殺人の波を起こしているのは犠牲者の肉を食う野獣です。ワシントンからの発表です。殺人を犯しているのは、最近死亡し息を吹き返した人々であることが判明>

<ラジオとテレビは家に入って鍵をかけるよう指示しましたが、状況が変わった今、避難の手順をお知らせします。治安維持機構は救援所を設置し、食糧や医療を供給。最寄りの救援所に早く避難してください。NASAの発表によると、金星に向けて打ち上げられた観測衛星を高レベルの放射能を帯びたため爆破。その放射能が死者に突然変異を起こした可能性があります>

テレビによって、救援所は30キロ先のウィラードに設置されたことを知るベンたち。早く行きましょうと言うヘレン。「そこにいけばカレンも治療を受けられるわ」ウィラードは僕とジュディの地元だと言うトム。「湖に行く途中で怪物に襲われた。この家に逃げ込んだら女性が死んでいた。そしてハリーたちが来て僕たちは地下室に逃げ込んだ」テレビで力説するグライムズ博士。<遺体はすぐに焼くべきです。死体は単なる肉。危険です>

給油機の鍵を発見するトム。火炎瓶を二階から投げて、怪物たちがひるんだ隙に車に給油して逃走しようと提案するベン。作戦は実行され、ハリーが火炎瓶を投げる間に、ベンとトムは車を給油機のところまで運転させようとするが、生きる屍に取り囲まれる。ジュディはトムを救いに行くが、ガソリンに引火したため、トムとジュディは車に乗ったまま炎に包まれる。ベンは一軒家に戻るが、ハリーは入れようとしない。なんとかドアを蹴破って家に戻ったベンはハリーを殴り倒す。「お前を奴らの餌にするぞ」

トムとジュディの焼死体をむさぼり食う生きる屍。お前の娘はどうして怪我をしたとハリーに聞くベン。「俺たちはモーテルに向かっていて、奴らに車をひっくり返された。その時、奴らに噛まれた」「奴らは伝染病を持っている。早く娘さんを救援所に連れていかないと」「娘は歩けない」「俺が背負う」「ここから2キロも離れている」

テレビで語るキャスター。<放射能レベルは上昇しているとのこと。政府は現状を打破しない限り、死体は怪物に変身し続けると警告。今回の事件で亡くなった人も生き返り、人肉を求めるでしょう。遺体を焼却すれば問題ありません。国防総省の発表によれば、怪物は殺すことは可能とのこと。当局は死体の脳が放射能により活性化したと説明。したがって脳を破壊すれば殺人鬼は死にます>

生きる屍たちは一軒家を襲撃する。ベンはハリーに板を打ちつけろと命令するが、ハリーはベンに銃をつきつけ、ヘレンに地下室に行けと命令する。「お前は勝手にここで戦え」激怒したベンはハリーから銃を奪い、ハリーを撃つ。瀕死の状態で地下室に逃げ込み、そこで死ぬハリー。生きる屍たちと必死になって戦うベン。地下室に戻ったヘレンは、カレンがハリーの死体をむさぼり食っているのを見て驚愕する。「やめてよ。ベイビー」

包丁でヘレンをめった刺しにするカレン。群れになって家に入ってくる生きる屍たち。バーブラは生きる屍となったジョニーにさらわれ、生きる屍の群れの中に消えていく。ジョニーは襲ってくるカレンを振り払って地下室に逃げ込み、生きる屍となって復活するハリーとヘレンの脳に銃弾を撃ちこむ。地下室に入れないとあきらめて一軒家を去っていく生きる屍たち。

朝になり、警官と州兵らは生きる屍退治を進めていく。パトカーのサイレンで目覚めたベンは、地下室を出る。着々と生きる屍の脳に銃弾を撃ちこむ警官と州兵。「死体の山を築け。火の中に放り込むんだ」「あの家を調べよう。物音が聞こえた」窓から顔を出したベンの目と目の間に銃弾が撃ち込まれる。即死するベン。「グッドショット。あいつも燃やすんだ」生きる屍と間違われたベンは、たくさんの生きる屍と一緒に燃やされてしまうのであった。

★ロロモ映画評

この映画は世界史上初のゾンビ映画として有名な作品でありまして、この映画からホラー映画の新しい歴史が始まったと言える記念的映画となり、ホラー映画ファンはジョージ・A・ロメロ監督に足を向けて眠れないと言ったところでありますが、それほどのホラーマニアでないロロモは彼の家がどこにあるのか知りませんが、そんなことは気にしないで寝れるわけです。

ロメロ監督は、幼少時からの映画好きで、彼が中学生の時に父親から買ってもらった8ミリカメラで8ミリ映画を製作。この作品の撮影の際、火を点けた人形をビルから落として警察に大目玉をくらったという逸話があります、ピッツバーグのカーネギー・メロン大学在学中の1959年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」の撮影現場でアルバイトをしますが、効率性重視なハリウッド流の映画製作に疑問を抱くようになり、大学卒業後、地元ピッツバーグで1963年に友人とラテント・イメージという映像製作会社を設立し、1968年に「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を製作します。

1977年製作の現代吸血鬼もの「マーティン/呪われた吸血少年」がヨーロッパで話題を呼び、ロメロの才能に気付いたイタリアンホラーの監督ダリオ・アルジェントが共同出資を申し出て1978年に「ゾンビ」を完成。「ゾンビ」は世界中で大ヒットし、ロメロは単なるホラー映画監督の殻からの脱皮を図るべく、社会派ドラマやラブ・ストーリーなども監督しますが、成功には至っていないわけです。

彼の作品はほかに「悪魔の儀式」「ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖」「クリープショー」「死霊のえじき」「ランド・オブ・ザ・デッド」「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」「サバイバル・オブ・ザ・デッド」といったもので、「ゾンビ」の原題が「ドーン・オブ・ザ・デッド」、「死霊のえじき」の原題が「デイ・オブ・ザ・デッド」ですから、ロメロ監督は「オブ・ザ・デッド監督」と言えますが、そんな彼の代表作がこの「ナイト・オブ・ザ・リビンフデッド」と「ゾンビ」であることは世間の誰もが認めるところとなっているわけです。

世界初のゾンビ映画となったこの作品をロメロ監督は「1968年の映画を撮影していた段階ではゾンビではなくグールと呼んでいた」とコメント。あのゾンビのゆらゆらした動きを考え付いたのは最高のアイデアで、そのアイデアの素晴らしさだけでこの映画は評価されますが、ロロモはモノクロならではの怖さと言うか、クラシックな恐怖映画の怖さと現代的ゾンビ映画の怖さがリンクしているのがこの映画の凄いところと言うか斬新だったのではないかと思うわけです。

またこの映画で主人公となるのは黒人のベンでありまして、残りはゾンビも含めて白人だけというのは公開当時の人種差別問題の根深さと関連するのかロロモは思い、ベンとハリーの争いが結構クローズアップされるのは、傲慢な白人と誠実な黒人といった図式なのかとも考えさせらますが、バーブラの役立たずぶりも際立って入り、バーブラ演じたジュディス・オーティアののっぺりした額の広い顔がなぜか印象に残るわけです。

そしてこの映画はラスト10分が恐ろしく、カレンがハリーを食べるシーン、カレンがヘレンを包丁でめった刺しにするシーンはかなりショッキングでありまして、いくらゾンビだとは言え、子供が親を食べたり殺したりするのは衝撃的でありまして、続いてバーブラは兄ゾンビに殺されて、やっと戦いが終わったかと思うと、最後はショッキングなラストというか、黒人も白人もへったくれもないわいというラストが待っていて、ホラー映画にはあまり興味のないロロモでも最後の10分はまいったというかやられたという思いが強くし、あの10分と最初のゾンビ映画ということでこの映画は高評価なのもむべなるかなと思うのでありました。(2013年4月)

得点 89点

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