ならず者

1964年 東映

キャスト:高倉健(南条)丹波哲郎(蒋)杉浦直樹(広上)江原真二郎(ヤン)安部徹(毛)鹿内タカシ(周)三原葉子(明蘭)高見理紗(小紅)南田洋子(秋子)加賀まりこ(マリ)高城丈二(千田)赤木春恵(女将)

監督:石井輝男

香港に赴いた殺し屋の南条は仕事を片付けて、ホテルに帰るが、そこに全裸の女の死体が横たわっているのに驚く。(ギャラの代わりに女の死体をプレゼントか。とにかくここを早くずらかることだ)ホテルを出た南条は黄色い花を買い、それを胸につけて賭け場に行き、見事に賭けに勝って、大量の景品を手にする。

景品を持って歩く南条に、声をかける明蘭という女。「御荷物お邪魔みたいですね。私どもお荷物をお金に換えることもできますのよ」(そうだ。この女は逃亡用のアクセサリーにうってつけの女かもしれない)「換えてもいいぜ」南条に鍵を渡し、南条の胸から花をとる明蘭。「この花は本当に罪な花だわ」立ち去る明蘭。(黄色い花をつけた男が目印だったわけか。するとこの景品は何だ)

酒店で景品の缶詰の中に麻薬が入っていることを確認した南条は、酒店で働く小紅にこの店はホテルもやってるのだろう、と聞く。「一晩泊まらせてもらおうか」部屋に案内した小紅に景品をプレゼントする南条。「どうもありがとう」「頼みがあるけど、これを預かってくれ。大事なものなんで、誰にも見せないで」「私の部屋なんか誰も来やしない。物置だもの」缶詰を小紅に渡す南条。

小紅は激しくせき込む秋子に、大丈夫か、と声をかける。秋子は体を売って生計をたてる女であった。私はマカオに行く予定よ、と小紅に言う秋子。「じゃんじゃん稼いで、また戻ってくるわよ」新聞を見て、南条は自分が殺した男が風紀取締長官で、ホテルにいた全裸の女がその娘であることを知る。ホテルで明蘭と会う南条。「で、これからどうなるんです」「鍵のある部屋で男と女が二人きり。やることは決まってるわ」

明蘭は南条を誘惑するが、南条は昼間から女がベッドに寝ているのを見ると、ジンマシンが出るタチでね、と断る。「じゃあ、何がしたいの」「簡単なことですよ。あんたたちの組織を使って、ちょっと調べてほしいことがあるんです。ボスに会わせてくれ」「もし、私が断ったら」「あの景品はあんたたちの手に戻らないだろうし、あんなにうまいヤクの中継基地もオシャカってことになるだろうな」

南条をボスの蒋に会わせる明蘭。「どういうご用件ですか」「昨日、陳という男が射殺されました。そいつが死んで喜ぶ男の正体を調べたい」「なんのために調べるんです」「私が殺した男は暗黒街でも鼻つまみの男と聞いていた。ところがまっとうな男でした。ホテルに戻ると金が待っているかわりに、私が消した男の娘の死体があった」「いたれりつくせりってわけですな」「お礼をせずにいられませんよ」「調べがつき次第、ヤクと引き換えに情報を渡すってことでどうでしょう。あなたと私が立会の上で交換しましょう。連絡は明蘭にしてください」

周に大きな仕事があるわ、と言う明蘭。「どのくらい」「5億は固いわね」「5億?やばいんだろうな」「しくじったら命はないわ。でも簡単な仕事よ」「命が危ないんだろうな」「じゃあ頼まないわ」「そう急くな。俺はいつももったいぶる癖があるんだ」「悪い癖ね」事情を周に話す明蘭。「じゃあ間違って男に渡された景品と、男が欲しがっている情報と交換することになったんだ。でもヤクを手に入れても、君がさばげばボスにばれてしまうぜ」「……」

南条に調べがついたわ、とメモを見せる明蘭。「あなたの持ってるものと交換するわ」「ボスが立ち会うんじゃなかったのか」「ボスは旅行中よ。急がないとあなたの探している男、高飛びする気配があるのよ」メモを明蘭から貰う南条。「毛大来。九竜城地下五号」

しかし南条が九竜城地下五号に行ってみると、毛はすでに横浜に向かった後だった。明蘭に電話する南条。「あんたのメモは役だったぜ。俺は急いでるんで、あんたに会ってるヒマはない。例のヤクは酒店の小紅という娘に預けてある」「すぐ行くことにするわ」「その子は何を預かっているか知らないんで、迷惑かけたくないんだ。泊まり代くらい奮発してやれよ」「わかったわ」「娘は三階の物置小屋で寝ている。特別なノックの仕方でないとドアをあけないことになっている」

特別なドアのノックの仕方で小紅の部屋に入る明蘭と周。「心配しなくていいわ。私たち、南条の使いなの。預けてある品物を渡してほしいの」「そんなもの知らないわ」騒ぐ小紅を周は絞め殺してしまう。天井裏にあるヤクを見つける明蘭。そこに入ってくる女将。「騒ぎは御免だよ」「俺たちはこの娘に預けた品物を取りに来ただけさ」

「夜中に小娘を脅かしてね。何かいわくのある品物のようだね。わざわざ泊まって、夜中に取りに来るなんて」「……」「黙ってて欲しいなら10万元貰うわ。うちの大事な娘の葬式代も入っているんだからね」指輪を女将に渡す明蘭。「これであなたの欲しい金以上になるわ。その代わり後始末をお願いするわ」「うちは一流店さ。信用第一ってのが店の信条さ」

南条は横浜に行き、コールガールのマリに組織のボスについて話してくれと頼む。「言ってもいいけど、私の安全を保証してくれる?前につまらないこと喋ってハマから消えた友達がいるの」「消されたってわけか」「そんな生易しいもんじゃないわ、うちのボスは。稼げるうちは徹底的に稼がせる主義なのよ。香港かマカオに飛ばされたって聞いたわ」「香港やマカオに組織があるのか」「そこまでは知らないけど、女を買いに来るそうよ。何しろ日本の女は外人にもてるからね」「俺の出方ひとつで、君も香港かマカオ行きになるかもしれないぜ。日本にいたければ、俺に協力することだな」「クラブ・リビエラの支配人が私たちのボスよ」

リビエラに行き支配人の千田と会う毛は、女を10人送ってくれ、と頼む。「じゃあ、私はこれで」「再見」リビエラに行き千田と会う南条。「あんたの取引相手に毛という男がいるだろう。奴に会いたいんだが」「奴はうちの女を10人買った。その女たちについていけば会えるだろう」10人の女とともに香港に舞い戻った南条は、新聞で小紅が殺されたことを知って、酒店に行き、女将を物置小屋に連れ込む。

「私みたいな老いぼれを脅してどうするんだい」「それだけ生きれば十分さ。花のつぼみで散った可哀相な娘もいるんだ」「……」「女将。お前はあの娘をこきつかっていた。お前は何か知っているな。小紅を眠らしたのは誰だ」「あの女と連れの男に殺されたんだ」「婆あ、どうせお前は口止め料もらったんだろう。小紅はここで殺されたのか。どうなんだ」激高のあまり、女将を殺してしまう南条。

マカオに行きギャンブラーのヤンと勝負する南条は、自分が勝った賭け金全部で情報を売ってくれと頼む。「昨日の夜、ここに女が10人入った。あの女を持っている男が必要なんです」「ここで儲けた紳士たちを狙って、女たちに荒稼ぎをさせる男のことですね。だったらお金はいりません。その毛と言う男は海岸通りの新号大酒店がアジトです」「なぜお金がいらないんです」「さあ、女の生血を吸ってぶくぶく太っている男が気に入らないのかもしれません」

賭博場で蒋と会った南条は、あんな小娘殺しやがって、と罵る。「それでもお前は人からボスと呼ばれる男なのか」「小娘を殺した?気が狂ったのか、お前は。俺のヤクを持ち逃げしたくせに」「ヤクを持ち逃げ?どういうことだい。ヤクは明蘭が持っているはずだ。娘に事情を話さなかったのは俺のミスだが、とにかく娘を殺したことは許せねえ」

「そうか。じゃあ、明蘭が裏切ったんだな。彼女はお前がヤクを持ち逃げしたと言って、お前に監禁されていると言って姿を消した。我々はお前を探したが見つからなかった」「日本に行ってたからな」「ところが明蘭らしい女がマカオにいたという情報が入ったんで、ここにやってきたんだ」「どうやら騙されたのは、俺とあんたらしいな」

ホテルのベッドで抱き合う明蘭と周。そこに現れる蒋。「明蘭。しばらくだな」「ボス。私はこの人に助けられたんです。私は南条に捕まっていたんです」「そうか。明蘭がお世話になりましたね。お礼は十分させてもらいますよ」明蘭と周を射殺する蒋。広上という男が南条の後を追い回す。

「あんた横浜でも見たな。俺はあんたたちの商売を邪魔する気はないぜ。だから俺の後を追い回すのはやめてくれないかな」「あんた何か誤解してるんじゃないかな」広上をまいてしまおうとマカオの街を彷徨い歩く南条は、秋子のいる部屋に入る。せき込む秋子に大丈夫かと聞く南条。

そこに現れた広上は、血を吐く秋子の背中をさする。「このままほうっておけばオシャカだぜ。血が咽喉に引っかかっている」秋子に口づけし、咽喉に引っかかる血を吸いだす南条。俺はこういう人たちを売買している野郎の面の皮をひっぺがす仕事をしていると話す広上。「そうか。あんたは売春Gメンだったのか」「俺は勘違いしたらしい。ここは日本じゃないから、あんたを逮捕する権利がないってことを」「いいことを思い出してくれたな」「だが、酒店の老婆殺しの容疑者として、マカオ警察はお前を必死で探しているぞ」

商売に出かけるという秋子に、そんな体で出て行くのは死ににいくもんだぜ、という南条。「そう、じゃあ、あんたが買ってくれるの」「……」「ふふ。気持ち悪いんでしょう。言っておくけど恵んでもらうのはイヤよ」「借りはイヤだってわけかい」「あんたに借りたもんは多すぎてね」「借りなんてねえよ。あんた、殺人犯の俺に宿貸してくれてるんだから。お互い様じゃねえか」

「ああ。ここが日本だったらなあ。帰りたいわ。やっぱり、日本で死にたいなあ」「そのうち帰れるさ。そう悪いことばっかり続かねえよ」せき込む秋子の背中をさする南条。「俺はならず者だ。俺に近づく人間はみんな不幸になるんだ」「今の私なら平気よ。これ以上不幸になりっこないもの」秋子に時計を渡す南条。「明日の夕方、香港行きの船着き場で待っていてくれ。日本に連れて帰ってやるよ。そう悪いことばっかり続かねえよ」

蒋と街の雑踏の中で会う南条。「今朝の新聞で見たよ。あんたこんなところをうろうろしてていいのか」「慌てても仕方ない。ここは四方を海に囲まれている」「どうするんだい」「そんなことより、自分のことを考えろ。毛と5時にシーサイドホテルのC8号室で商談することにしてある。私の代わりに行けば、望み通り彼に会える」「世話になるな」

「じゃあ、うまくやれよ。俺はあの女が死んでもうどうでもよくなったのかもしれない。今まで好き放題生きてきたからな」「あんた、あの女に惚れてたのかい」「そうかもしれんし、そうでないかもしれん。もう今となってはどうでもいいことだ」二人はマカオ警察に追われるが、蒋は囮になって南条を逃がし、自分は警官の銃弾を浴びて死ぬ。

スラム街に逃げ込む南条の前に現れる広上。「楽しませてもらったよ。なかなか面白いアトラクションだった。ちょっと散歩でもしねえか」「あんたには借りはないはずだぜ」「同胞を見ると懐かしくてね」南条を安全な場所に逃がす広上。5時にシーサイドホテルのC8号室に現れ、毛と会いにいく南条は、毛の用心棒に腹を刺されるが、なんとか用心棒を倒し、毛に銃を突きつける。

あれにはいろいろ訳があったんだと言う毛。「話し合いをしようではないか。私はあなたを探していたんだ。このとんでもない手違いの償いをしようと思ってね」「子供だましはやめろよ。もう騙されないぞ。俺はあんたみたいな紳士じゃねえ。だから嘘ついたり、騙したりできない」「私はあなたのために三万ドル用意してる」「そんなのあんたに目くそじゃねえか」

「百万ドル出そう。いや、一千万ドル出す。私はあなたの好きなところに逃がしてやる」「やかましい、この野郎。何でもゼニで買えると思ったら大間違いだ。ここまで来たら、お前の命はゼニじゃ買えねえぞ。てめえとお前とは悪党の質が違うんだ。あのまっとうな風紀取締長官を殺して、いくらもうけた。おまけに女の死体のプレゼントか。てめえのやり口はいつもそれだよ。最後の一滴まで搾り取るとぼろきれのように捨ててしまうんだ。俺の弾にはいろんな人間の恨みや憎しみが混じっているんだ」毛を射殺する南条。

ホテルを出て力尽きて倒れる抱き起し、車に乗せる広上。あの女をと言って死ぬ南条。船着き場では来るはずもない南条を秋子は待つのであった。

★ロロモ映画評

香港に赴いた殺し屋の南条(高倉健)は仕事を片付けて、ホテルに帰ると全裸の女の死体が横たわっているのに驚く。ホテルを出た南条は黄色い花をつけて賭け事で大量の景品をゲットするが、明蘭(三原葉子)という女が接近してくる。景品の中に麻薬が入っているのを確認した南条は、明蘭のボスの蒋(丹波哲郎)に麻薬と交換で、自分を罠に陥れた黒幕の正体を探ってくれと頼むのであった。

香港・横浜・マカオを舞台にした日本ギャング映画の秀作で、どこかフランスのギャング映画の香りがするのも魅力的ですが、主人公の高倉と丹波はハードボイルドの香りの似合う男で、二人はどんな役をやらしても似合ってしまう稀有な俳優であることがこの映画でわかり、二人とも自分のためなら何でもやるというクールな男で本当の男はわかりあえるので、この二人の間に友情が湧くのは当然と言えば当然なわけです。

この映画はちょっと詰め込み過ぎの感じがあるだけに登場人物が多岐に渡すので整理するのが大変でありますが、売春Gメンの広上(杉浦直樹)は高倉に奇妙な友情を感じ、マカオのギャンブラーのヤン(江原真二郎)は女の生血を吸ってぶくぶく太っている男が気に入らない男であり、明蘭の愛人である周(鹿内タカシ)はいつももったいぶる癖がある男であり、悪の権化である毛(安部徹)はとことん悪い奴であり、横浜コールガールのボスの千田(高城丈二)は稼げるうちは徹底的に稼がせる主義の男となっています。

女たちも多種多様で、娼婦の秋子(南田洋子)は日本に帰ることを望み、明蘭は尻軽で嘘つきで性悪な女で丹波に殺される女であり、コールガールのマリ(加賀まりこ)はおしゃべりな女であり、小紅(高見理沙)は物置のような部屋に住み花のつぼみで散った可哀相な娘で、女将(赤木春恵)は性悪で高倉に殺される女であります。

こんな映画が成立したのも舞台を主に香港とマカオにしたため異国情緒が自然に出たためで、これが日本ロケのみだったら、ここまでムーディにはならなかったのかもしれず、こういう映画は真夜中に水割りを飲みながら真夜中にひっそりと観るのが似合うのではなかと、ベビースターラーメンをむさぼり食いながらロロモは思うのでありました。(2012年12月)

得点 66点

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