情無用の罠

1961年 東宝

キャスト:佐藤允(二宮)中谷一郎(井崎)水野久美(正子)草川直也(俊夫)平田昭彦(森島)田中邦衛(白水)中丸忠雄(土方)向井淳一郎(溝江)

監督:福田純

森島土建のM2号トラックを運転する二宮に接近する刑事の井崎。「詐欺、恐喝、傷害。いずれも不起訴になっているところを見ると、お前はヤクザでも小物のほうだな」「俺はとっくに足を洗ってますよ」「本当に真面目にその気で働いているんだろうな」「勘弁してくださいよ、いったい何だって言うんです」二宮にトラックのミニチュアを見せる井崎。「君の指紋がはっきり出てきた」「そりゃそうさ。俺が女にくれてやったんだから」「名前は」「橋本」「菊江か」「さあ」

昨日は仕事四時に終えて六時に女と会って、月山ホテルに云ったと話す二宮。「女とは酒場で知り合った。俺はカタギになって、初めて惚れた女だった。いつも女の方から誘い出したが、女は名前は教えてくれなかった。俺はコートのネームで橋本って名前と知ったんだ」「別れたのは何時だい」「十時すぎ。ホテルで別れました」

警察に行き、橋本というネームの書いたコートを溝江課長に見せられる二宮。「これはどういうことかね」「さあ」「君がホテルにいたという午後九時、女は鈍器で頭を殴られて殺されている」「別の女に決まっているぜ」「じゃあホトケの顔を拝んでもらおう」女の死に顔を見て、これは違う、と喜ぶ二宮。「君の女は生きていると言うんだね」「当たり前だ。あんな女とは違う」「今度はいつ会う」「さあ、居所聞いてないんで。連絡を待つしかないでしょう」

もしあの女が死体で見つかったら、犯人を叩き殺すつもりだった、と井崎に言う二宮。「本当によかったよ」「早くその女を見つけるんだな」「ああ」「いずれまた出頭してもらうかも」「俺じゃねえったら」女を探したいという二宮に、あまりあせるなとアドバイスする森島土建社長の森島。「誰も相手にしないお前を拾ってやったのはこの俺だぞ」「ええ」「それだけに俺はお前が可愛いんだ。心配するな。相談にのろうじゃないか」

状況証拠は二宮が犯人だと示していると刑事連に説明する溝江。「被害者橋本菊江はアパートの建築主で、あのホテルの近くでアパートを建てていた。その建築資金をどうやって手に入れたか不明である。だが二宮は有力な容疑者であることに変わりない」二宮に会って証拠はお前をクロだと言っていると話す井崎。「と言って、お前の言っていることの全部出鱈目とも思えない」「そうか」

二宮は街中で女と会う。「やっぱりあんただ。探したぜ。井崎さん、この人だ」「私、何のことか」「何を言うんだ。一昨日の晩、俺と六時から十時まで月山ホテルで」「人違いじゃありません」井崎に二宮なんか知らないと言い張り、車に乗って去る女は、車を運転する黒手袋の男から金を渡される。「うまいことやったな。後はボスに聞け」

俺は逃げる、という二宮に、下手な悪あがきをしてはいかん、と言う森島。「おやじさん。女ってのはどいつもこいつもあんなモノですかね。畜生」女に脊髄カリエスで寝たきりの夫の俊夫が話しかける。「正子。家政婦の仕事は大変だろう」「そんなことないわ」「僕は思うんだ。三年も寝たきりの僕のために、お前をいつまでも妻の座に縛り付けていいのだろうか、と」「何も考えずにおやすみになっていればいいのよ」

橋本菊江が柳瀬という男とつきあい、菊枝の生活費を北沼商事が面倒みていたことがわかり、北沼商事の常務の土方と会う井崎。土方は菊江は自分の情婦だったと言う。「もう別れましたがね」「アパートの建築資金を渡したんですか」「まあ、手切れ金とでもいいますか」「莫大な金ですな」「男としての責任を感じただけです」「菊江のまわりを柳瀬という男が出入りしていたことをご存知ですか」「知らん」「偶然でしょうが、三か月前に工業局の係長で柳瀬という役人が自殺しています。北沼商事はロケット燃料の輸入を扱ってらっしゃる。割り当ての関係で、北沼商事は工業局と当然関係があった」

汚職が絡んでいると断言する溝江。「橋本菊江は北沼商事お抱えの高級売春婦。柳瀬が自殺したのはあてがわれた女に深入りして身動きできなくなったからだ。女は秘密をつかみ、それを楯に強請る。アパートの建築資金がそれだ。そして女は邪魔になって殺された。女を殺す黒幕は別にいるのしても、直接手を下したのは二宮なのかもしれない」

外出しようとする正子を制する黒手袋の男の白水。「どこに行くんだい。まさか二宮に会おうってんじゃないだろうな」「……」「まさか、あいつに惚れたんじゃないだろうな」「……」「変なことをすると、亭主にバラスぞ。女房がコールガールしてます、って」

M2号を運転する二宮に銃を突きつける白水。「いつかは女に会って取り逃がして残念だったな。だいぶヤバくなったんでお前には死んでもらうぜ」白水は二宮をトラック事故に見せかけて殺そうとするが失敗し、二宮に拳銃を奪われて逃走する。どいつもこいつも、と呻く二宮。「俺が何をしたと言うんだ。畜生」

拳銃を持っている二宮を見て、そんな物騒なものは持たずに警察に行くんだ、という森島。「嫌だ。どうせ前科者の俺を警察は信用しない。こいつで俺を陥れようとする奴をぶっ放すんだ。そうすれば俺も殺人犯で納得するんだ」「馬鹿なことをするんじゃない。俺の気持ちがわからんのか。俺は今日までお前を本当の弟のつもりで面倒みてきたんだ」「おやじさん」拳銃の不法所持で逮捕される二宮。

二宮逮捕を新聞で読んで外出しようとした正子を拉致して、「金月」という料亭に連れ込む白水。森島と会う井崎。「二宮はあなたに随分なついているようですね」「ええ。いろいろ面倒みてますから」「ところで二宮が持っていた拳銃は橋本菊江殺しに使われたものです。二宮は黒手袋の男から奪ったと言ってますが、森島さんに心当たりは」「いえ、一向に。では失礼します。外出する用があるもんで」

森島は「金月」に行き、白水を叱る。「お前がドジを踏むから話がややこしくなるんだ。外で見張ってろ」二人きりになり正子を抱き寄せる森島。「もう二宮も出てこれんだろう。久しぶりに抱いてやる」「お願いです。今夜だけは帰らせてください。今日は結婚五年目の記念日なんです」「甘やかすといい気になりやがって」「触らないで。触ると死ぬわ」「そうしてもらいたいな。たった一人の生き証人が死ぬんだから」「……」「悪いようにはしないよ」結局、森島に抱かれる正子。

「金月」に行き、森島と会う土方。「はっきりしておきたい。私は橋本菊江を殺してくれと頼んだ覚えはない」「土方さん。頼むと言われれば私が何をする男かあんたも知っているはずだ。終戦からの付き合いで今さら水臭いじゃないですか」「まあ、いざという時は汚職の責任はとるつもりだ」

「えらく弱気になったもんだなあ」「そのかわり殺人事件のほうはそっちのほうで。充分謝礼は出したつもりだ」「わかりました。何もかもひっかぶれというなら、今の倍は出してもらいましょう」「君」「北沼商事が栄えるにはあんな女死んでもいいでしょう。もともと世の中には生きていても仕方ない人間であふれかえっているんだ」

釈放された二宮を迎える森島。「まあこれで一杯飲んでくるんだな」「ありがとう、おやじさん」「よく釈放されたな」「おやじさん。俺はあの女をどうしても見つけるぜ」白水がガソリンスタンドで停車している隙に、タクシーに乗って逃走した正子はM2号を運転する二宮と会う。

「やっと会えたな。苦労をかけやがって」「私も会いたかったの」「この前、なぜ嘘をついたんだ」「全部聞いてもらいたいの」全てを告白する正子。「なんとか、白水から逃れて家に戻ったら、夫は死んでいた。私、夫の後を追って死のうと思った。このままでは女として、妻として。でも死ねなかった。あなたにお会いするまでは」「そうだったのか」「あなたから貰ったミニチュアを白水に渡した。白水を操っているのは森島よ」畜生、と怒鳴る二宮。「やけに親切だと思ったが、俺を雇ったのは最初から俺を利用するためだったのか」

正子の胸倉を掴む二宮。「よくもグルになって俺を騙しやがったな」「許して。でも、私はあなたを愛してしまったのよ。お願い、それだけは信じて」頭を抱える二宮。悄然と歩く正子は白水の運転する車に轢かれる。二宮の腕の中で死ぬ正子。白水は二宮を殴り倒し、M2号に二宮を乗せ、M2号ごと川の中に突き落とす。森島土建に行った白水は森島に高飛びの資金を渡される。そこによろよろと現れる二宮。「よくもてめえ」格闘の末、森島と白水をぶちのめす二宮。

井崎に「女は死んじまった」と嘆く二宮。「お前もひどい目にあったな」「俺よりもっとひどい目にあったやつがいるんだ」「歪んだ世の中のとばっちりを食うのはいつも善良な人たちなんだなあ」「どっこい俺は生きてやるぞ」「さあ行こう」

★ロロモ映画評

元ヤクザで、森島土建のM2号トラックを運転する二宮(佐藤允)は名も知らぬ女に惚れて、ホテルで密会するが、その女が死体で発見されたと刑事の井崎(中谷一郎)から聞いて驚くが、死んだ女が別の女と知って喜ぶ。しかしその女を殺した犯人だと疑われた二宮は、自分がホテルで会っていた女を探しだすが、その女(水野久美)は人違いではないかと逃げ出すのであった。

そして事件の背後にはロケット燃料の輸入に絡む汚職事件があり、二宮を殺人犯に仕立て上げようというからくりはなかなか複雑でありますが、二宮は男の執念で無実を晴らそうとしていき、やがて情無用の真実にたどり着くわけです。この二宮を演じたのがロロモの大好きな佐藤允で、前科者の俺に世間は冷たい嘆く彼に、彼を雇った森島(平田昭彦)は、お前を弟のつもりで面倒みてきたんだと優しくしますが、実は森島は最初から二宮を犯人に仕立てるために面倒見てきた巨悪の根源で、それを知った二宮は森島をぶちのめし、それでも俺は生きていくぞと力強く宣言するわけです。

二宮はこれから力強く生きていくからいいのですが、可哀相なのが水野久美で、彼女には三年も脊髄カリエスで寝たきりの夫がいて、夫には家政婦の仕事をしていると言いますが本当はコールガールで夫の治療費を稼いでいます。そして彼女は森島の情婦になり、殺人犯に仕立て上げるために二宮に接近するように命令され、二宮を虜にすることに成功しますが、夫は世をはかなんで自殺し、二宮に本当はあなたのことを愛していたと告白して、最後は森島の殺し屋白水(田中邦衛)に殺されるという悲惨な役を演じています。

まさに「情無用」の世界が展開されましたが、この「情無用」というフレーズに日本映画関係者はグッとくるようで、これまで「情無用の戦士」、「情無用のコルト」。「情無用のならず者」、「情無用のジャンゴ」、「情無用の拳銃」、「情無用の街」といった情無用映画が日本で公開されているようですが、」ロロモは「情無用の恋」というハードボイルド恋愛映画を見たいものだと思ったりするわけです。

この映画が公開された1961年にロロモは生まれていますが、カープで活躍した長嶋清幸もこの年に生まれています。静岡の自動車工業から1979年にドラフト外でカープに入団し、1983年からレギュラーになり、1984年9月15日、16日と巨人の西本聖と江川卓から2試合連続サヨナラ本塁打を放ち、1984年の日本シリーズでは7試合で3本塁打10打点の活躍で日本一に貢献し、日本シリーズMVPに輝きます。

その後も勝負強い打撃と4度ダイヤモンドグラブを獲得する守備力で、カープにとってかかせない外野手として活躍しますが、1988年頃から成績が落ちはじめ、1991年に中日に移籍。その後、ロッテ、阪神と移籍を繰り返しますが、カープ時代の輝きを取り戻すことなく、1997年限りで現役引退となったわけです。

彼を語る上で、必ず語られるのが日本で初めて背番号0をつけた選手ということでありまして、彼は66という背番号をつけていましたが、1982年のナ・リーグの首位打者になったモントリオール・エクスポスのアル・オリバーが背番号0であることを知った長嶋は古葉竹識監督に「背番号0をつけたいんじゃ」と訴え、カープの1983年のキャッチフレーズは「ゼロからの出発」であったこともあり、古葉は「ええよ」と快諾。1983年から背番号0となった長嶋はこの年からレギュラーになったわけです。

背番号はプロ野球選手にとって名刺のようなものですから、かなり重要な意味を持ちますが、この背番号0に似た背番号に「00」がありまして、これを初めて日本球界でつけたのは、1988年に阪神に1年だけ在籍したルパート・ジョーンズのようでありますが、これは「背番号ゼロゼロ」と読みますが、これはちょっと反則技のような気がして、あまりロロモ的には好きでない背番号なのでありました。(2012年12月)

得点 82点

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