なみだ川

1967年 大映

キャスト藤村志保(おしず)若柳菊(おたか)細川俊之(貞二郎)藤原釜足(新七)安部徹(鶴村)戸浦六宏(栄二)塩崎純男(友吉)

監督:三隅研次

彫金師の新七には長唄の師匠をするうっかり者のおしずと仕立屋のしっかり者のおたかという二人の姉妹がいた。江戸一番の名人と言われた新七であったが神経痛のため仕事がでない状態が続いていて、姉妹が一家の生計を支えていた。おしずは簪職人の貞二郎を憎からず思っていたが、貞二郎はまったく相手にしなかった。おたかは信濃屋の若旦那の友吉という恋人がいたが、おたかが信濃屋から持ち込まれた縁談を断ったと聞いて驚くおしず。「おたかちゃん。あんたを差しおいて悪いと思ってるんじゃないかしら」

なぜ縁談を断るのか、とおたかに聞く友吉。「どうしてもダメなのよ」「水臭いじゃないか。訳を言ってくれよ」「時節が来たら言います」二年ぶりに現れる兄の栄二を追い出すおたか。「前科者の兄さんのおかげで妹たちは嫁に行かずに苦しんでいるのよ」おしずを鰻屋に連れて行く栄二。「なあ、十両ばかり都合つけてくれよ」「また、天下のため、貧乏人のためね」「ちゃんとわかってくれるから、俺はお前が好きなんだ」「十両なんてお金できないわ」「できる。お前はおたかと違って、おっかさん似の気立ての優しい子だ」十両で縁を切ってくれ、と栄二に頼むおしず。「ひどい妹と思うかもしれないけど、おたかちゃんだけは幸せにしてあげたいの」「その話はお前が十両を持ってきてからにしようじゃないか」

おしずは、家のことは心配しなくていいから、友吉と一緒になれ、とおたかに言う。栄二のことや姉さんのことがあるので、嫁に行けないと言うおたか。「私は友吉さんのこと好きよ。でも、私たち、やもめのお父さんを一生面倒見ようと約束したじゃないの。二人で苦労してきたのに、姉さんを一人置いて、私だけ幸せになれると思うの。私がお嫁に行くのは、兄さんのことが片付いて、姉さんにこれはという人が出来てからよ」

おしずは長唄の弟子で材木商の鶴村におたかの支度金として十両用立ててくれと頼む。鶴村はおたかが自分の妾になるなら十両出していいと言う。「私の世話を受けるんだな」「おたかちゃんが片付くまで待ってください」「きっとだぜ」鶴村から預かった十両を栄二に渡すおしず。「これっきりでお前たちと会わないよ。そうだ。なんなら一札書いてやろうか」「そうしてくれると嬉しいわ。これっきりこれっきりでお兄さんは何度も来たんだもの」もう二度と新七一家とは会わないという誓約書をおしずに渡す栄二。

おしずはやくざな兄とは手を切ったので、おたかと友吉を一緒にさせてくれ、と信濃屋に頼む。「兄さんも可哀相ですけど、もう会いません。兄さんは本当は悪い人じゃないんです」信濃屋はおたかを嫁にすることを同意する。私にもちょっとした人ができた、とおたかに言うおしず。「その人はうちに来てもいいというけど、あんたが身を固めてくれないとダメだと言うの」「姉さん、その話、本当なの。だったら私は嫁に行ってもいいけど。でも、私、断ったのよ」「大丈夫。私がしっかり話をつけてあるの」「私たちにもこんな日が来たのね」

貞二郎に会いに行くおたか。「嘘だっていうの」「当たり前だ。根も葉もないことだ。俺とおしずさんは、とっくり話したこともねえ。誰がそんなことを」「姉さんなの」「困ったな」「貞二郎さん。姉さんはあなたが好きなのよ。姉さんに会ってくれない」「会ってどうするんだい」「姉さんと話をすれば、貞二郎さん、きっと好きになるわ」「お前さん、俺のことを知っているのかい」「もとは御家人の出で、お酒好き」「俺は女に性が悪いんだ。誰彼なく手を付けて、捨ててきた。こんな男だ」「……」「よし、会ってやろう。どういうことになっても知らないぞ」

おしずを呼び出す貞二郎。「一度、あんたがどういう人か会ってみたかったんだ」「私、泣き出しそうだわ。私、飲むわ。私、叱られると思ったの」「なぜ」「ある人とちょっとしたことがあって、その人は家に来ても言ってるから、お前は邪魔だ。そう言って、実は妹を嫁に出したかったの。そのことがあなたにばれて、呼び出されたと思ったの。ごめんなさい、嘘をついて。堪忍してください」「そうと聞いたら、勘忍ならねえ」おしずを抱きしめる貞二郎。

おたかに私のちょっとした人は貞二郎だと自慢するおしずは、新七に自分の祝言はおたかのあとで来年になると報告する。俺には何も言うことはないと言う新七。「お前とおたかには本当に苦労のかけっぱなしだった。もう栄二の奴が来ないと言うなら、もう何も言うことはない」おしずは結婚が決まったと鶴村に言う。「その話、嘘だろうね」「拝借したお金、大変助かりました。でも家のモノを洗いざらい売りつくしましたが、七両しかできません。残りは必ず返しますから、もうしばらく待ってくださいな」「あの話はないって言うんじゃないんだろうな」「すいません」「冗談じゃないよ。お前さんがいかに世間知らずでも、そう世の中を甘く見ちゃいけないよ。相手は貞二郎だね」「はい」

貞二郎に会いに行く鶴村。「御家人崩れのやくざだったお前を助けてやったのは、確か俺だったな」「へえ」「お前は俺の長唄の師匠と一緒になると約束したそうじゃねえか」「誰がそう言ったんです」「当の師匠がそう言ったんだ」「もう、そんなこと言ったんですか」「嘘じゃないんだろう」「だけど、それが旦那とどういう関係に」「俺はあの子を可愛がっているんだ。十両をポンとやったんだ」「……」「だからあきらめてくれよ。あの子のことを」「はははは、旦那、猿芝居なんです。あの子の妹に頼まれて、心にもない猿芝居の片棒を担いでいるんです。一緒になる気はありませんよ」「そうか。わっはっはっは」

貞二郎はおしずと一緒になる気はないとおたかに言う。さめざめと泣くおたか。「あなた、姉さんに手をつけたでしょう」「……」「姉さんをだましたのね。姉さんは来年の春、祝言だとあんなに喜んでいるのに」「じゃあ言おう。お前の姉さんは鶴村の旦那の色女なんだぞ」「嘘よ。そんなこと。出鱈目よ」「じゃあ、旦那が十両渡したというのも出鱈目か」「その十両は兄さんのために借りたんだわ」「兄さん?」「私たちにはしょうもない兄さんがいたのよ。私たちをさんざ苦しめた」「……」

栄二から「十月十日に行く。二十両用意せよ」という文が、おしずとおたかのところに届く。「十日と言えば結納の来る日よ。姉さんは何度騙されば気が済むの。二度と寄り付かないということで信濃屋さんも私の縁談をお許しになったんでしょう。でも、もうだめよ」「まあ、待ちなさい」「待ちなさいって、二十両なんてお金できるわけないじゃない」「だから、うまい手を考えるのよ。このこと、おとっつあんに言っちゃダメよ」結納前夜、おしずは短刀を買い、仕事場の貞二郎を訪れる。「仕事をしている貞二郎さんはなんだか怖いけど好きよ」「つまらないことを言わないでくれ。俺は仕事中に声をかけられるのが嫌いなんだ」「わかったわ。さようなら」

おたかの結納が終わったころ、姿を見せる栄二。「今日はおたかちゃんの結納だったのよ」「へえ、それは知らなかったな。おしず、頼んでいた金、出してくれよ」「何のお金」「なんだって。手紙よこしたろう」「知らない」「二十両用意するよう手紙を出したはずだ」「そんな金あるわけないじゃない」「金がないなら、それに見合うものを出してくれ」「今日は言うこと聞かないわ」これを忘れたの、と誓約書を出すおしずであったが、こんなものいくらでも書くさ、と誓約書をびりびりに破る栄二。そこにやってくる貞二郎。

「俺は天下国家のために悪い政治で苦しんでいる人たちのために金がいるんだ」「そんな人がどうして親の面倒ぐらいみないの。苦しんでいる妹たちを助けないの」「うるさい。それじゃあ信濃屋さんとやらのところに行くとしようか」おしずは隠し持っていた短刀で、栄二を刺そうとする。「あんたも殺して私も死ぬわ」わかったよ、という栄二。「もう金輪際来ないよ」家を出ようとする栄二は貞二郎と出くわす。「お前は誰だ」「おしずの婿だ」「そうか。おしずも婿を取るのか。おしず、幸せにな」家を出ていく栄二に「兄さん」と呼びかけるおしず。あばよ、と答え消えていく栄二。泣きじゃくるおしずを抱きしめる貞二郎。

おしずを知って、初めて人の気持ちの温かさを知った、と新七に言う貞二郎。「親方の仕事場の隣にあっしの仕事場を作らせておくんなさい。お願いします」「ああ、いいとも。礼を言うぜ」「この娘さんがた、親方の仕事より上出来なんじゃないですかね」「馬鹿を言うな。はっはっは」そして、おたかは婚礼の日、新七とおしずと定次郎に挨拶をして、信濃屋に向かうのであった。

★ロロモ映画評

彫金師の新七には長唄の師匠をするうっかり者のおしずと仕立屋のしっかり者のおたかという二人の姉妹がいた。おしずは簪職人の貞二郎を憎からず思い、たかは信濃屋の若旦那の友吉という恋人がいた。二年ぶりに現れる兄の栄二を追い出すおたか。「前科者の兄さんのおかげで妹たちは嫁に行かずに苦しんでいるのよ」おしずは長唄の弟子で材木商の鶴村におたかの支度金として十両用立ててくれと頼む。鶴村はおたかが自分の妾になるなら十両出していいと言う。鶴村から預かった十両を栄二に渡すおしずはやくざな兄とは手を切ったので、おたかと友吉を一緒にさせてくれ、と信濃屋に頼むのであった。

ロロモは藤村志保という女優が好きなのですが、この映画は彼女の魅力が全開という映画でありまして、彼女は妹思いですがどこかピンとのずれている女を演じていますが、その天然ぶりが何とも言えずにいとおしいというかロロモの琴線に触れ、こういう女性が本当にいてくれたらいいなあとしみじみと思わせるますが、藤村志保は1961年大映演技研究所に入所し、1962年に「破戒」に出演し、各種新人賞を受賞。芸名は、デビュー作「破戒」の役名「志保」とその作品の原作者島崎藤村に由来しているわけです。

この映画が公開された1967年にビーバーズがレコードデビュー。1966年に結成された「ジ・アウトロウズ」が前身で、ジャズ喫茶などで活動し、1967年6月にバンド名を「ザ・ビーバーズ」と改名し、7月20日にキングレコードのセブンシーズレーベルからシングル「初恋の丘」でデビュー。その後「君なき世界」「君、好きだよ」「愛しのサンタマリア」「泣かないで泣かないで」とシングル4枚をリリースしましたが、1969年に解散したわけです。

実力派のGSだったビーバーズは大ブレークはできませんでしたが、ロロモは「君なき世界」というナンバーが好きでありまして、作曲したの醐樹弦(ごきげん)はかまやつひろしのペンネームで、さすが彼は才人だなと思いますが、ロロモの好きなGSベスト81位から120位まで発表。81位カーナビーツ「好きさ好きさ好きさ」、82位ビーバーズ「君なき世界」、83位クーガーズ「可愛い悪魔」、84位タイガース「モナリザの微笑み」、85位バニーズ「太陽野郎」、86位シャープホークス「ついておいで」、87位タックスマン「嘆きのキング」、88位ピーコックス「恋のピーコック」。89位スパイダース「真珠の涙」、90位アウトキャスト「ふたりの秘密」。

91位タイガース「君だけに愛を」、92位オックス「スワンの涙」、93位スパイダース「青春ア・ゴー・ゴー」、94位ブルーコメッツ「すみれ色の涙」、95位ゴールデンカップス「愛する君に」、96位フローラル「水平線のバラ」、97位ピーターズ「キャンディ・ガール」、98位タイガース「銀河のロマンス」、99位テンプターズ「おかあさん」、100位テンプターズ「今日を生きよう」。

101位4・9・1「星空を君に」、102位ピーコックス「妖精の森の物語」。103位スピリッツ「人魚の涙」、104位ブルーコメッツ「青い瞳」、105位テンプターズ「雨よ降らないで」、106位ブルーコメッツ「ブルー・シャトゥ」、107位スウィングアンドウエスト「雨のバラード」、108位ルビーズ「さよならナタリー」、109位シャープホークス「レット・ミー・ゴー」、110位エドワーズ「恋の日記」。

111位オックス「オックス・クライ」、112位ブルーコメッツ「北国の二人」、113位ゴールデンカップス「長い髪の少女」、114位フローラル「涙は花びら」、115位ヤンガーズ「マイラブ・マイラブ」。116位ブルーコメッツ「さよならのあとで」、117位キングス「真昼の星のように」、118位ズーニーヴー「白いサンゴ礁」、110位アダムス「旧約聖書」、120位マミーズ「二人のブーガルー」となるのでありました。(2013年5月)

得点 74点

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