南郷次郎探偵帳 影なき殺人者

1961年 新東宝

キャスト:天知茂(南郷次郎)水原ユカ(京子)三原葉子(宝城寺竜子)坂本武(板津)宮浩一(山口)細川俊夫(本田)沖竜次(佐藤)晴海勇三(神崎)吉田昌代(東野文江)鳴門洋二(東野大八)宮田文子(グランプリのマダム)林寛(藤縄)ヴァージル・ハートン(グレゴリー)

監督:石川義寛

刑務所から出所した麻薬王と呼ばれる神崎は迎えに来た車に乗り込む。その車を尾行しようとする警視庁の板津部長刑事と山口刑事であったが、藤縄建設のトラックに邪魔されて、車を見失う。やがて神崎は死体で発見される。板津から電話を受ける南郷法律事務所の南郷。「やあ、神崎のことだろう。名刑事も今度は失敗ってところだな」「図星ですよ」「やっぱり、奴はボスじゃなかったんだな。僕が弁護を引き受けた時からそう思っていたんだがね。できるかぎり材料は提供するよ」

南郷に東野文江と言う女から電話がかかってくる。「ご相談したいことがあるんです。私、殺されるんです。すぐ来てください。場所は東京麻布ホテルの383号室です」しかし、その部屋に駆けつけた南郷が見たのは、女の絞殺死体であった。ホテルのクロークに行った南郷は板津に連絡した後、女がクロークに預けた貴重品をチェックする。「鍵に印鑑。それにロマンスカーの切符か」

南郷は銀行の貸金庫に預けてあった麻薬のはいったカバンを板津に渡すよう、助手の京子に指示して、箱根行きのロマンスカーに乗り込む。推理する板津。「ホテルの女が神崎の印鑑を持ってたとすると、あの女は神崎の情婦だな。やつはパクられる前に、この麻薬を隠していた。昔の仲間はそれを取り上げようとしたが、奴は持ってなかった。奴は殺された。続いて女も」

ロマンスカーに乗り込んだ南郷の隣に若い男が座る。箱根湯本で降りた若い男は車に乗り込む。それを追おうとする南郷はマダム風の女に呼び止められる。「どうも御苦労さま、次の仕事が待ってます。芦ノ湖で42号のボートに乗って、なるべく遠くに出てほしいんです」芦ノ湖でボートに乗る南郷は、猛スピードで突っ込むモーターボートに襲われ、溺死しそうになるが、謎の美女に救われる。

ホテルで乾杯する二人。「すっかりお世話になったのに、まだお互い名前も聞いてませんでしたね。僕は弁護士の南郷次郎」「私の名前は言いたくないわ。名前も言わずに別れるなんていいムードでしょう」「あなたにお礼するために名前がわからないと」「またお会いすることがあったら、その時お返ししていただくわ、じゃあ、さよなら。あまり冒険しないことよ、泣く女性がいっぱいいるでしょうから」「君だけに泣いてもらいたいね」

南郷の隣席になった若い男が死体で発見される。若い男のポケットから奇妙な模様のカードが発見される。南郷を救った女は芦ノ湖に年数回顔を見せることがわかる。「あの別荘に来るらしいよ」その別荘の表札が「本田」であることを確認する南郷は、麻薬患者専用の総合病院に行く。

「東野文江という女がここに入院してませんでしたか」「はい。してました」「身寄りは誰かいなかったんですか」「弟さんが二、三回、見えました」南郷は文江と弟が一緒に写った写真を見せられる。その弟は南郷の隣席になった若い男であった。「弟さんの勤め先は北多摩の藤縄建設です」

病院に現れる板津と会う南郷。「また出しぬかれましたな」「いや、麻薬と聞いて、なんとなく気になったんで。とにかく今夜打ち合わせしよう」「また出かけるんですか」「殺された女の弟が藤縄建設に勤めていることがわかったんでね」「藤縄建設?神崎を追いかけようとしたとき、邪魔したトラックの会社だ」「ほう、面白くなってきたな」藤縄建設に乗り込む南郷。「東野大八は二年前に会社をやめまして、姉の勤めている新宿のグランプリというバーに転がり込んだそうです」

大八のポケットから出てきたカードを南郷に見せる板津。「ふうむ。桃色クラブの会員証かな」「麻薬に関係あるんでしょうか」興味津々でそのカードをのぞきこむ京子。「君みたいな子供が見てもわからないの」「失礼しちゃうわ」グランプリに乗り込んだ南郷はそこのマダムが芦ノ湖に行けと命令した女であることを知る。「芦ノ湖の水は冷たかったぜ」「お話があるなら奥の部屋でうかがいます」

自分の推理をマダムに披露する南郷。「東野文江とその弟は、神崎が出所したのをきっかけに、預かっていた大量の麻薬を処分して足を洗おうとした。ところが、そいつがばれて、三人とも殺された。お前たちの仲間がやったんだ。仲間の名前を言うんだ」しかし南郷は殺し屋に拳銃で頭を殴られて失神する。意識を取り戻した南郷は、自分のかたわらにマダムの射殺死体があるのを発見し、マダムの握りしめている電話帳を奪いとる。

事務所に戻った南条は京子に命令する。「新宿に宝城寺商会という女性専用の金融業者がある。マダムの電話帳にこの名前があった。どうもこの事件に関係があるらしい。探りを入れてくれないか」「まかしてださい」宝城寺商会に行った京子は十五万、無担保で貸してくれという。「今夜10時にスリーBに下着を綺麗にしてきて、佐藤という男と会ってください」

京子は南郷にスリーBに行くと言うが、南郷は危険だからやめろと忠告する。「すぐに子供扱いするんだから」南郷に黙ってスリーBに行った京子は、佐藤から奇妙な模様のカードを受け取る。南郷に電話する京子。「今、スリーBにいます。ここでもらったカードが板津さんの持ってきたカードと同じなんです」

京子が南郷に電話したことをボスに知らせる佐藤。「南郷は大八のカードを持ってきっとここに来るな。いい機会だ。彼女にやらせよう」スリーBにやってきた南郷は自分を助けてくれた女と再会する。「こんなところで会うなんて」「あなたは、宝城寺竜子ですか」「そんなことどうでもいいじゃない」

「そうはいかない。今日こそは名前を聞かせてもらおう。それとこの秘密クラブの目的も」「ただのセックス社交場よ」「違う。本当は麻薬の取引をやっているんだ」「とにかくあまり深入りしないことね。命が欲しかったら」「嬉しいことを言ってくれるね。本気かい」「本気よ」口づけをかわす南郷と竜子。「あたし、とんでもない男を助けたみたい」

クラブを出た竜子を追おうとした南郷は、藤縄建設のダンプカーに車をぶつけられて崖下に転落する。入院した南郷を見舞う板津。「この写真はどうです。スリーBに踏み込んで手に入れたんです」その写真には東野姉弟と竜子が写っていた。「三人とも生まれは沼津です」

ゴルフを楽しむ代議士の本田と竜子とグレゴリーと藤縄。グレゴリーは麻薬製造業者で、本田は藤縄を使って、麻薬を密輸していた。麻薬を隠したゴルフクラブを佐藤に渡すグレゴリー。「これを竜子さんにね」佐藤は殺し屋で、神崎、東野姉弟、グランプリのマダムをあの世に送ったのは、すべて佐藤のやった仕事であった。

竜子がゴルフを楽しんだ後、沼津に向かったことを聞いた南郷は病身を押して、沼津に赴き、宝城寺家の墓参りをする竜子と会う。「よく無事だったわね。勝手についてきたあなたが悪いのよ」「自首する気にならないか」「私が何をしたっていうの」東野姉弟と竜子が写っている写真を見せる南郷。「君たちが同じ麻薬団仲間で知り合いだったということだ。僕は君に助けてもらったお礼で少しでも罪を軽くしたいんだ。君は完全に悪人になれないタイプだ」富士山をバックに海岸でラブシーンを展開する二人。これが最後のランデブーだ、と言う竜子。

本田は竜子に麻薬取引は当分中止だという。「君が南郷とうつつを抜かしている間に、捜査の包囲網は厳重になってきた。藤縄は外国に飛ばせた。君も香港に行ってもらい、ほとぼりをさましてもらう。飛行場に行ってくれ」しかし竜子を飛行場で待ち受けていたのは板津だった。

竜子は逃走し、本田の別荘に逃げ込む。そこに現れる南郷。「とうとう逃げそこなったな。俺は板野さんと一緒に飛行場にいたんだ。君のボスは誰なんだ」「そんなこと言えないわ」「君はボスに裏切られたんだ。君を飛行場にやって、板野さんに売った男だ。その男はこの別荘の持ち主だろう」「言えないわ。私をここまでにしてくれた恩人だから」

そこに現れた本田は竜子に遺書を書け、と命令する。「さっきいいことを言ってたな。俺が恩人だと。これが最後の恩返しだ。南郷と仲良く地獄に送ってやるぜ」しかし踏み込んできた板野によって本田は逮捕される。潜んでいた佐藤も山口が逮捕する。板野は竜子に南郷に弁護してもらえ、とアドバイスする。「私に同情しなくていいわ」「素直になるんだ」またラブシーンを展開する南郷と竜子なのであった。

★ロロモ映画評

刑務所から出所した麻薬王と呼ばれる神崎は迎えに来た車に乗り込む。その車を尾行しようとする警視庁の板津部長刑事であったが、藤縄建設のトラックに邪魔されて、車を見失う。やがて神崎は死体で発見される。板津から電話を受ける南郷法律事務所の南郷。「「やっぱり、奴はボスじゃなかったんだな。僕が弁護を引き受けた時からそう思っていたんだがね。できるかぎり材料は提供するよ」南郷に東野文江と言う女から電話がかかってくる。「ご相談したいことがあるんです。私、殺されるんです。すぐ来てください。場所は東京麻布ホテルの383号室です」しかし、その部屋に駆けつけた南郷が見たのは、女の絞殺死体なのであった。

この映画はいかにも新東宝映画らしい胡散臭さに満ち溢れたムードサスペンスでありまして、まあ話の筋はわかったようなわからないものですが、結局天知茂扮する南郷次郎と三原葉子扮する宝城寺竜子がキスばかりしてる映画であると言う印象が残るわけです。

竜子と言う名前はなかなかカッコいいのですが、北海道旭川出身で水田竜子という演歌歌手がいて、これまでに「土佐のおんな節」「北海一番船」「ご機嫌ななめ」「お立ち酒」「じょんがら恋唄」「夢宵酔」「酒に書いた詫び状」「哀しみのエアポート」「酔っぱらっちゃった」「トーキョー舞踏曲」「天までとどけ御柱」「宗谷遥かに」「北山崎」「角館哀歌」「紅花の宿」「風の宿」「伊根の舟屋」「国東みれん」「霧の土讃線」「女の色気はないけれど」「野付水道」「余市の女」「雪の細道」「平戸雨情」「噂の港」といったシングルを出しているようでありますが、今のところは大ヒットには結びついていないようであります。

この映画の主人公である南郷次郎は推理小説家島田一男の生み出した探偵のような弁護士でありますが、南郷があれば北郷も西郷も東郷もありますが、西郷隆盛や西郷輝彦や東郷平八郎や東郷青児に比べて、北郷や南郷という名の有名人はいないようでありますが、東郷と言って忘れてはならないのが、雑民党党首だった東郷健となるわけです。

彼は銀行行員、ガソリンスタンド経営を経て、ブロイラー養鶏場経営しますが、養鶏場の経営失敗により、多額の負債を負います。返済のため、1963年に姫路市でゲイバー「るどん」を経営しますが、行政との度重なるトラブルにて廃業します。姫路から単身東京に出て、銀座のゲイバー「青江」にてゲイボーイとして働き、1968年ゲイバー「とうごうけん」経営。ゲイ雑誌「The Gay」「ザ・ケン」編集長、ゲイビデオ制作、ゲイのための診療所開設、ゲイ・ゲームズ支援、ゲイバー経営などを手掛けますが、2012年4月1日に前立腺がんにより79年の生涯を終えたわけです。

彼は雑民党党首として、参議院議員選挙、衆議院議員選挙、東京都知事選挙に立候補し、いずれも落選。政見放送で、「ゲイ」「ホモ」「同性愛」「おかま」「射精」「チンチン」などの語を多用したことが、印象に残っており、ロロモも彼は選挙に出てると「ああ、また出てるな」という感じがして、彼が出るのを密かに楽しみにしていましたが、女装タレントが頑張っている現状を見ると、彼は少し生まれて来るのが早すぎたのかなと思ってしまうのでありました。(2015年5月)

得点 27点

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