南海の狼火

1960年 日活

キャスト:小林旭(野村浩次)浅丘ルリ子(清子)宍戸錠(坊主の政)白木マリ(ジェニィ)岡田真澄(辻井)金子信雄(黒田)菅井一郎(力蔵)内田良平(日下部)中田博久(秀一)

監督:山崎徳次郎

宇和島市。船に乗って野村はやってくる。闘牛用の立派な牛を見て、サングラスの下の目を細める野村。この牛は荒岩といって祭り用に九州から呼び戻されたのであった。「祭り?」「なんだ。あんた出稼ぎじゃないのか」「いや。ただ、何となく、ってやつさ」荒岩を運ぶトラックがチンピラたちが襲う。チンピラたちに石を投げる海女たち。そこへ坊主崩れの政が現れ、チンピラたちを蹴散らす。

海女の一人が政に礼をいう。「ありがとう」政は海女を押し倒す。「東京から着いたばかりなんだ。もてなしてくれよ」そこへ野村が。「あまりガツガツするなよ」若い者から事情を聞く野村。「せめて秀一さんが生きていたなら。オヤジさんの息子さんなんですがね。三ヶ月前の嵐の日に船を出して、行方不明になっちまって。船はなくなる、養殖はやられる、秀一さんはいなくなるで、オヤジさん、すっかりがっかりしちまって。でも今度の祭りの闘牛大会で荒岩が優勝すれば1500万で買ってもらうことになっているんですよ」

野村は養殖屋の親父である力蔵に会いに行く。力蔵は金を野村に渡す。「パラダイスというキャバレーがある。そこで遊ぶがいい」力蔵の娘・清子が力蔵の非礼を詫びる。「父は頑固者でして」「俺もそのキャバレーの一味と思われたんだな」「東京の人間はみんなああだと思っているんです。亡くなった兄さんはあの店の踊子に夢中になって、大変な借金をしたんです。その返済に父は今でも困っているんです。こんな話、余計でしたかしら」「聞いては損はない話だ。その踊子の名前は」

その踊子はジェニィであった。酒をあおるジェニィにパラダイスに現れた政がチョッカイを出す。「あんた、大分荒れてるな」「ほれぬいた男が死んだんだ。当たり前だろ」政はパラダイスで大暴れ。そこへ野村が。「ツラ洗って出直してこい」清子は仕事でパラダイスに行く。清子を一目見たパラダイスの支配人・黒田は清子のあまりの美しさに一目ぼれしてしまう。

「あんたさえよかったら東京へ連れて行ってやる」「私、そんな女じゃありません」そこへ政が。逃げる清子。「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」「何だ、お前」「あまり興奮しないほうがいいですよ。もっと驚く者を見せてあげますよ」

真珠を見せる政。「こいつには恨みがこもっているんだぜ」「何を言ってるんだ」「あんた、俺の弟のシゲに海に捨てた不良真珠を拾わせて猫糞したそうだな。そして弟は一ヶ月前に帰ってきた。こんな姿になってな」位牌を見せる錠。「俺は弟の仕送りで食っていたんだ。食い扶持がわりに用心棒として雇ってもらうぜ」

死んだはずの秀一が戻ってきた、という噂が流れる。それを確めに野村はパラダイスに。用心棒となった政が野村に喧嘩を売る。一発触発というところに日下部という流れ者が現れる。「来るそうそうハジキが飛んでくるとは物騒な町じゃねえか」

しらけて野村と政は喧嘩をやめる。その様子をマジックミラーで見ていた黒田。そばには死んだはずの秀一がいた。秀一は黒田にそそのかされて借金を払うため、自分の家の船を沈めて東京に逃げていたがジェニィが忘れられず戻ってきていた。「俺はジェニィが好きなんだ。一緒になりたいんだ」「そのためには金がいるな」

ジェニィと秀一は再会する。「生きていたの。秀ちゃん」ジェニィに惚れているパラダイスのマネージャー・辻井は面白くない。秀一は実家に忍び込み金を盗んで逃げる。追いかける清子は邪魔をされる。そこへ野村が。「あのお金は8月分の給料なんです。私、どうしていいかわからない」「とんでもない兄さんだな」「昔は優しい兄さんだったのに」「俺が何とかしよう」「でもどうしてこんなに親切にしてくれるんです」「困っている人を見てると助けたくなる性分でな。つまりお節介ってやつだ」

辻井は借金のカタに力蔵から荒岩を取り上げようとする。「待ってくれ。今度の祭りで荒岩が優勝すれば金の工面はつくんだ」「ほう。うちの社長の錦風に勝つというわけですな。まあいいでしょう。荒岩が負ければうちの社長が望んでいるものをもらっていきますぜ」政が付け加える。「娘さんのことですよ」パラダイスで「ツーレロ節」を独唱して気分の乗った野村は、辻井がイカサマ賭博をやっているのを見抜き、秀一が盗んだ金を取戻す。

しかし、力蔵はその金を受け取らない。「どうやってその金を稼いだんだ。そんな金は受け取れん。うちには荒岩がいる」しかし野村がいなくなると力蔵は清子に告げる。「秀一もあれくらいの人だったらなあ」野村は清子に告げる。「あんたには気の毒だが、三ヶ月前の兄さんの事件を調べれば調べるほど、あんたの兄さんは不利になる」「明日の闘牛、是非見にきてください」「何故」「訳は言えません。その時にならないと」「行くよ」

辻井は秀一に拳銃を渡す。「男を一人消してほしいんだ」「やるよ」秀ちゃん、とつぶやくジェニィ。「俺はどうせ罪を犯しているんだ。俺はただお前と二人きりで真珠を取って暮らしたいだけなんだ」祭りの日となり、野村は闘牛を見にいこうとするが、秀一からの呼び出しの手紙をもらう。

辻井は秀一と野村をまとめて消すつもりであった。秀一と会う野村。「俺の殺しを頼まれたのか。親父さんと妹さんがどんな苦労しているのかわからないのか。踊子なんかにウツツを抜かしやがって」「俺はジェニィに惚れているんだ。みんな黒田と辻井が仕組んだんだ」

そこへ政が。秀一は辻井の部下に襲われて川に転落する。「お前、何しにここに」「お前にくたばってもらうと、俺が困るんだ。俺の念仏でお前を地獄に送ってやるんだからな。それから言っておくが、今日の勝負は荒岩の負けだ。注射を打たれたのさ。黒田は借金のカタに清子をいただこうって腹づもりなのさ」

辻井はジェニィを口説く。「秀一が帰ってから、俺がどんな思いをしたのかお前にはわからないのか。秀一は死んだ。俺と東京に行ってくれ」「いやよ。誰があんたなんかと」「じゃあ、殺す」拳銃をつきつける辻井。そこへ野村が。「秀一は生きている。ダムに落ちたが岸辺まで泳いだのを確認している」

黒田は軟禁していた清子を襲う。そこへ野村が。「イカサマ賭博、呼び出しの手紙、牛に注射、随分シケタ真似するじゃねえか」そこへずぶ濡れになった秀一が。「俺は自首する。俺がオヤジの船をぶちこわしたんだ」

もはやこれまでと黒田は隠していた秘蔵の真珠を持って逃げようとする。しかし辻井は拳銃を黒田につきつける。「いつまでも、あんたの下で働いているつもりはないぜ」そこへ政が。「俺はこいつが欲しくてここまで苦労したんだ。弟なんて大嘘さ。ちょいとネタをつかんでひと稼ぎにやってきたんだ」そこへ野村が。「そいつはサツに届けるんだな」「俺の苦労はどうなる」「まともに稼げよ」そこへ日下部が。「海難調査保険会社のものだ」真珠は日下部の下へ。

事件は解決し、祭りの中、野村と清子は語る。「私、ずっと待っていたんです」「何故」「あなたがこのままどこかへ行ってしまいそうな気がして」「渡り鳥は一つどころにはいられないんだよ」「お願い。お父さんの相談相手になってあげて。お父さんもそのつもりなの」しかし野村は祭りのドサクサにまぎれて、清子の前から姿を消すのであった。

★ロロモ映画評

流れ者の野村(小林旭)は船に乗って宇和島にやってくる。養殖業者の力蔵(菅井一郎)は息子の秀一が船に乗って行方不明になって以来落ち込んでいたが、闘牛大会で自分の持ち牛が優勝すれば1500万円ゲットできることになっていた。力蔵の娘の清子(浅丘ルリ子)は兄の秀一はキャバレー「パラダイス」の踊り子に夢中になって借金を作り、その借金返済に父は困っていると話す。その踊り子のジェニィ(白木マリ)にちょっかいを出す坊主の政(宍戸錠)。そして「パラダイス」の経営者黒田(金子信雄)は清子に一目ぼれするのであった。

そして秀一(中田博久)は生きていて、宇和島に舞い戻り、ジェニィといちゃつくので、ジェニィに惚れる「パラダイス」のマネージャー辻井(岡田真澄)は不機嫌になり、宇和島に新たに流れ者の日下部(内田良平)が現われたりしますが、最後は収まるところに収まって、流れ者の小林旭は浅丘ルリ子を振り切ってまた旅に出るということになり、いろいろな登場人物が現われますが、坊主の政を演じる宍戸錠がこういう役が俺が一番あっているんだと言わんばかりにイキイキ演じているのが一番目立つ感じになっているわけです。

ロロモが宇和島で思い出すのは宇和島東高校であり、その宇和島東を甲子園に導いた上甲正典監督となりますが、宇和島東出身の彼は、大学卒業後に地元に戻り、1977年に宇和島東野球部監督に就任。1987年夏の甲子園大会で甲子園初出場を果たし、翌1988年センバツで初出場初優勝に導き、その後も宇和島東を何度も甲子園に導きますが、2001年6月に妻を亡くして、そのショックから監督業に身が入らなくなったと言われ、宇和島東の監督を辞任します。

しかし妻が生前話していた「監督をやっている時の夫の顔が一番好き」「夫から野球を取ったら何が残る」などと言う言葉から一年奮起し、以前から勧誘を受けていた松山市の済美高校の監督に就任。2004年センバツで初出場初優勝に導き、夏の大会でも駒大苫小牧に決勝で10対13で負けるものの準優勝に導くわけです。

彼が有名なのは「上甲スマイル」でこれは試合中にいつもニコニコしているところからついた異名でありますが、彼は練習中は鬼のような形相してほとんど笑わないそうで、ロロモは彼が名将であることは認めるのですが試合中だけニコニコしているという話を聞いて、どうも違和感を持ってしまい、どうせなら試合中も鬼の形相でいたほうがいいのではないかと思ったりしますが、高校野球の名監督と言うのは、練習中が鬼で、試合中が仏と言う人が多いようなのでありました。(2012年12月)

得点 49点

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