謎の金塊

1956年 日活

キャスト:河津清三郎(志津野)高知子(秀子)水島道太郎(浜崎)日高澄子(葉子)深見泰三(浅野)志賀夏江(トヨ)天草四郎(大賀)泉桂子(真紀子)

監督:野口博志

1955年、香港。「例の金塊の秘密は旧軍人の大賀が握っているという上海機関の情報は確実なんだ」「それから大賀と行動を一つにした裏切り者の写真情報も入っています」「よし。G指令の通りにやれ。東京での行動は私から浅野に指令する。目的は大賀から金塊の秘密を奪い取ることだ」

1956年、東京。栗田という元軍人が殺される事件が発生する。名探偵の志津野に週刊誌に面白い記事があったと話しかける助手の秀子。「セミョノフ将軍の金塊。ちょっとイケルじゃない」「セミョノフ将軍は革命の時、日本に亡命した将軍じゃないか」「あら、知ってるの。ねえ、金塊があると思う」「知らないな」

「セミョノフ将軍は日本の軍隊の力を借りて、帝政ロシアの再建を願って日本に亡命した」「それで1912年に病死したんだ」記事を読む秀子。「亡命したとき貨車二両分の金塊と宝石を、満州と日本のどこかに分けて埋めた。その埋めた場所を知っているのは軍関係者らしい。その関係者は日本に帰ってきているらしい」

秀子の話を半分聞き流して、大賀真紀子という若い娘から依頼を受ける志津野は。真紀子に会いに行く途中で美女とぶつかりそうになる。留守番する秀子に電話がかかる。「はい。志津野探偵事務所。所長はでかけております。え、戸田さんですか」「わしは殺されるような気がするんです」「わかりました、戸田徹さんですね。右手に黒ボストンでグリーンの眼鏡。今日の二時半に玉川遊園地のジェットコースターの前ですね。はい、所長に伝えます」

真紀子は父が帰ってこないと志津野に言う。「お父さんは翻訳の仕事をずっとしてたんですか」「もとは軍人でした。関東軍の参謀をしていました」「……」志津野と連絡がとれないので、しょうがなく玉川遊園地に行く秀子。しかし戸田はジェットコースターに乗って、顔の右半分が火傷の男に殺される。座席でイヤリングを拾った秀子は警視庁に行こうと車を探す。秀子は車を拾うことに成功するが、その車を運転するのは志津野がぶつかりそうになった美女であった。

警視庁で浜崎警部と会う秀子。殺された戸田が関東軍の憲兵大尉であることがわかる。「栗田という男も関東軍の将校だったな」志津野と秀子はレストランで食事をする。戸田のそばに落ちていたイヤリングを志津野に渡す秀子。そこに美女が現われる。挨拶する志津野と秀子。志津野は美女と名刺交換する。美女は樋貝葉子という名前の歯医者だった。

囚われの身となった大賀は、浅野の部下から拷問を受けていた。「参謀さん。金塊の隠し場所を教えてくれれば、お前は痛い目をしないで家で暢気に暮らせるんだぜ」「わしゃ何のことかしらん」「参謀さんは鞭が好きなようだ」拷問を受ける大賀。占い師のトヨに聞く浅野。「戸田の次は」「水谷だね」さらに大賀に拷問が加えられる。その様子を黙って見つめる葉子。

早速、志津野は葉子に虫歯の治療をしてもらう。その夜、志津野のもとを訪れる葉子。「出かけましょうか」「ええ」ダンスホールで踊る二人。葉子は志津野に好意を見せながら、好意をあらわにすることをためらう。「あなたのことを好きになってはいけないんです。自分の好きなことをしてはいけない運命なんです。親子二代にわたって」「お父さんも。お父さんはどういう人だったんです」「軍人でした」「ふうむ」

大賀真紀子は浅野の部下に誘拐されてしまう。真紀子をマークしていた志津野は真紀子を救出しようとするが失敗するが、葉子に命を救われる。現場で「竜発疫学会」のパンフレットを見つける志津野。浅野は真紀子を拷問して、大賀から金塊の隠し場所を聞こうとするが、大賀は「知らん」と答える。「このアホたれ」と激怒する浅野。「次は水谷だ。よく覚えておけ」トヨが志津野が真紀子を尾けてきたことを浅野に報告する。「で、志津野は殺ったのか」「いいや。誰かが助けた」「早く邪魔者は片付けろ」

どうして僕は助けられたんだろう、と浜崎に言う志津野。「僕を助けてくれた人は黒のビュイックに乗って現場を離れた」秀子は葉子が乗っていた車も黒のビュイックだと言う。関東軍の名簿をチェックする浜崎。「大賀新吾、関東軍参謀。戸田、栗田、水谷。これが大賀の部下だ」トヨに手相を見てもらう葉子。そこに現れる志津野。

「僕とあなたの相性を見てもらいたいですな。ははは」トヨから志津野を殺せと指令を受ける葉子。志津野と葉子はまたデートを楽しむ。なんとなくお互いに惹かれあうことを意識する二人。「志津野さん。今の瞬間だけを楽しみたいの。過去も未来もない。今だけなのよ」「僕はあなたを救ってあげたい。あなたの運命から」

志津野は葉子が落としたブローチを拾う。それは戸田の殺人現場に落ちていたイヤリングと同じデザインであった。考え込む葉子。(中国人である私の母は日本の軍人に殺されました。私は母を殺した日本人を憎みます。復讐の念に燃えた私は命令されるままに東京に来てしまいました。でも私の心のどこかに監視の目を逃れて、父と同じ日本人の愛する人の胸に抱かれたいという思いがあるのです。だけど、現実は冷酷に任務を遂行しなければならない。私は人を愛する資格はないのでしょうか)

浜崎は大賀を中心とする軍人グループとギャング団が金塊探しをめぐって仲間割れしたという情報を志津野に教える。秀子は代書屋をしている水谷の行方をつきとめるが、水谷は顔右半分火傷の男に殺される。志津野はビュイックの所有者に竜発易学会本部があることをつきとめる。秀子に竜発易学会本部に行くことを伝え、志津野は深夜本部に忍び込み、そこで葉子と会う。

「とうとうわかってしまったのね」「地獄へだって追いかけたかもしれませんよ。あなたの秘密を知りたかった」イヤリングとブローチを見せる志津野。「これをご存じですか」「父が買ってくれましたの」「この間、助けてくれたのはあなたですか」「ええ」「戸田や水谷を殺した火傷の男はあなたの部下ですか」「いいえ」「じゃあ、何者です」

そこで銃撃戦となり、葉子は志津野を助けようとするが、浅野の部下に捕まり地下室に投げ込まれる。そこには大賀親子がいた。わしはもうだめだ、とつぶやく大賀。葉子に覚悟にできてるな、という浅野。「ええ。私は監視される生活はもうたくさん。早く殺せばいいでしょう」「お前には任務が残っている。志津野を殺せ。お前には適役じゃないか」

大賀は死ぬ。地下室に顔右半分火傷の男が現われる。憎々しげに言う志津野。「お前が有名な殺し屋か。道理で地獄から来たみたいな顔をしてるぜ。大賀さんは死んだ。死ぬ前に金塊の秘密を俺にしゃべった。その秘密を言ってもいいが、それには条件がある。真紀子さんを自由にすることだ。早くボスを呼べ」

志津野からの連絡がないことを心配した秀子は浜崎とともに竜発易学会本部に行き、真紀子を救出し、浜崎はトヨを射殺する。伊豆に向かう車の中で志津野に聞く浅野。「金塊の場所は間違いないでしょう」「知らないと言ったらどうします。まあ、僕を信用するんだな」真紀子から一同が伊豆に向かったことを聞いた浜崎は現場の警察に連絡し、伊豆に向かう。志津野は浅野たちを伊豆の山中に連れ込む。金塊のありかなど知らない志津野は適当に一同を案内する。

そこに警官隊が現われ銃撃戦となるが、顔右半分火傷の男は志津野を助けて浅野を射殺するが、自らも弾丸を浴びる。倒れた顔右半分火傷の男を助け起こす志津野。顔右半分火傷の男は変装を解く。火傷の下に隠された素顔は葉子の顔であった。「志津野さん。私の父は日本人で母は中国人。混血児という運命のもとで、愛することも愛されることもなく、機械のように生きてきた」「しっかりしなさい」「もうだめです。とてもさみしかった。でもあなたに会えてうれしかった。強く抱いて」葉子は絶命するのであった。

★ロロモ映画評

栗田という元軍人が殺される事件が発生する。名探偵の志津野に週刊誌に面白い記事があったと話しかける助手の秀子。「セミョノフ将軍の金塊。ちょっとイケルじゃない」「セミョノフ将軍は革命の時、日本に亡命した将軍じゃないか」「セミョノフ将軍は日本の軍隊の力を借りて、帝政ロシアの再建を願って日本に亡命した」「それで1912年に病死したんだ」「亡命したとき貨車二両分の金塊と宝石を、満州と日本のどこかに分けて埋めた。その埋めた場所を知っているのは軍関係者らしい。その関係者は日本に帰ってきているらしい」

この映画を監督した野口博志は慶応大学文学部を中退し、1935年に日活に入社し,1939年に監督へ昇進し、初監督作「舗道の戦線」を野口博志の名で演出。1954年に製作再開した日活へと戻り、「俺の拳銃は素早い」で監督として再デビューし、1963年の「遊侠無頼」監督の際に野口晴康へ改名、1967年には日活唯一の怪獣映画である「大巨獣ガッパ」を演出。そして、次作「関東も広うござんす」製作中に、心筋梗塞のため54歳の若さで亡くなったわけです。

彼は1950年代に「俺の拳銃は素早い」「愛欲と銃弾」「落日の血闘」「大岡政談 人肌蝙蝠」「坊ちゃん記者」「地獄の接吻」「殺人計画完了」「浴槽の死美人」「謎の金塊」「最後の戦闘機」「泣け、日本国民」「地底の歌」「地獄の札束」「悪の報酬」「俺は犯人じゃない」「復讐は誰がやる」「女豹とならず者」「肉体の反抗」「狂った関係」「十代の罠」「肉体の悪夢」「太陽をぶち落とせ」「俺らは流しの人気者」「乳房と銃弾」「俺は情婦を殺す」「裸身の聖女」「悪魔の爪痕」「地獄の罠」「危険な群像」「銀座旋風児」「東京警部」「銀座旋風児 黒幕は誰だ」「0番街の狼」「昼下がりの暴力」「非情な銃弾」「傷つける野獣」「街が眠る時」といった作品を監督。

1960年代になると、「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」「俺は銀座の騎兵隊」「拳銃無頼帖 明日なき男」「幌馬車は行く」「俺は流れ星」「銀座旋風児 目撃者は彼奴だ」「拳銃無頼帖 電光石火の男」「拳銃無頼帖 抜き撃ちの竜」「海の情事に賭けろ」「大平原の男」「俺は地獄へ行く」「夜の挑戦者」「銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる」「赤い荒野」「三つの竜の刺青」「惜別の歌」「さすらい」「帰ってきた旋風児」「地獄の夜は真赤だぜ」「さすらいのトランペット」「灼熱の椅子」「風が呼んでる旋風児」「腰抜けガン・ファイター」といった作品を監督。

そして名前を野口晴康と改めて、「遊侠無頼」「間諜中野学校 国籍のない男」「噂の風来坊」「抜き撃ちの竜 拳銃の歌」「拳銃無頼帖 流れ者の群れ」「賭場の牝猫」「殴り込み関東政」「賭場の牝猫 素肌の壺振り」「大日本殺し屋伝」「必殺剣」「秩父水滸伝 必殺剣」「日本任侠伝 花の渡世人」「賭場の牝猫 捨て身の勝負」「夢は夜ひらく」「大巨獣ガッパ」という映画を監督したわけです。

彼の監督としての評価はおそらく黒澤明や小津安二郎らと比較されることがないほど低いものなのでしょうが、彼が日活の黄金時代の屋台骨を支えた監督であることは間違いなく、ロロモは彼の作品を体力の続く限り見たいと思いますが、彼の作品は芸術性の高いものはなく、見てるものが面白かったらそれでいいというポリシーを貫くもので、それはこの映画でも貫かれていますが、質より量を人生のポリシーに掲げるロロモとしては、野口作品に何かシンパシーを感じざるを得ないのでありました。(2013年3月)

得点 32点

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