殴られる男

1956年 アメリカ

キャスト:ハンフリー・ボガート(エディ)ロッド・スタイガー(ニック)ジャン・スターリング(ベス)マイク・レーン(トロ)マックス・ベア(ブラナン)ジェシー・ジョー・ウォルコット(ジョージ)ハロルド・J・ストーン(アート)カルロス・モンタルバン(アグランディ)

監督:マーク・ロブソン

スポーツ記者のエディは、ボクシングのプロモーターをしているニックに呼ばれる。「俺は君のコラムを愛読していた。新聞が廃刊になってがっかりしたよ」「いいから、本題にはいれ」「仕事がある。単なる広報係でなく、君にしかできん仕事だ。金ははずむぜ」そこにずば抜けた長身の男であるボクサーのトロが、マネージャーのアグランディとともにやってくる。トロとアグランディは南米から呼ばれていた。あまりのトロのでかさにあきれるエディ。

早速、トロはトレーナーのジョージとスパーリングを開始するが、トロがでくの坊であることが判明する。「どうしたらいい」「あれじゃ無理だね」「君を仲間に入れたのは、なんのためだ。メディアに顔がきくためだ。違うか」「本音が出たな。どんな相手でも、あれでは勝てん」「ヤツは巨人だ。それだけで記事になる。ヤツはスターになる天性の資質がある」「どうやってリングにあげる。試合を組むのか。ならば、俺は降りる」「ボクシングは所詮ショーなんだ」悩むエディに追い討ちをかけるニック。「自尊心じゃメシは食えんぞ」「わかった。君のしつこさに負けた」失職中のエディはニックと組むことに同意する。

早速、メディアと交渉するエディ。妻のベスは、あなたがボクサーの広報係なんて、と少しがっかりする。「ボクサーだろうとなんだろうと仕事は一緒さ」「でも、あなたにはふさわしくないわ」エディはトロを南米チャンピオンという触れ込みでマスコミに情報を流す。「彼の戦績はどこにも記録がないが」「38戦38勝。全部KO勝ちだ」「どんな長所が」「鋼鉄のアゴと鋼鉄の腹だ」「成功できるか」「絶対だ」ホラをふきまくるエディ。

試合は行なわれ、八百長の結果、トロが勝つが、あまりにひどい内容だったので、調査会が乗り出すという噂が流れる。焦ったニックはエディに収益の10%を与えるからなんとかしろと命令する。エディは旧友である記者のアートに八百長の記事を書かないでくれと頼む。「私に嘘をつけというのか」「私はただ不要なことを書かないでくれと言っているだけだ」渋々納得するアート。「委員会には公正な試合だったと証言しよう。君とはもうこれで最後にしよう」「私をそんな目で見るのはよせ」

トロは連戦連勝で、どんどん人気が上がっていく。しかし、ある対戦相手が八百長はいやだと言い出す。説得するエディ。「ボーナスを出すぞ」「カネより誇りのほうが大事だ」「金網をマウスピースに入れろ。君は出血して、すぐレフェリーストップだ。カネももらえるし、誇りも傷つかない」アグランディはトロに金を渡してくれとニックに頼むが、まだ赤字だ、とニックは拒否する。

ニックはトロを前チャンピオンのガスと闘わせる計画をたてる。ガスと戦うと、トロは殺されると心配するエディ。「ガスには買収はきかんぞ」しかしニックはガスと話をつけていた。ガスはチャンピオンとのブレナンとの試合で、強烈なパンチを受けていて、パンチドランカー状態であった。呆れるエディ。「ヤツはおしまいだ」「だからカネが必要だ」「八百長の取引を忘れたら」「そこまでイカれていない」

ニックはアグランディがうるさいのでクビにする、とエディに言う。「そんなことをしたら、トロが」「トロは君がいれば問題ない」「彼に金をやれ」「お前の取り分がへるぞ」「いいから、金をやれ」「何様のつもりだ。また失業したいのか。わかったよ、やつに5000ドルやろう」「ヘドが出る」「どうしてだ。俺ほど太っ腹な男はほかにいないぞ」金をもらったアグランディは国外追放となる。それを知ったトロも南米に帰りたいと騒ぎ出す。「いいか。トロ。もう少し辛抱すれば大金がはいる。南米初の世界ヘビー級チャンピオンだ」「わかった」

トロとガスの試合が行なわれるが、すでに体調に変調をきたしているガスはトロのパンチをくらってあっさりKO負けする。ニックはエディに指示する。「ガスの敗因がブラナン戦の後遺症だとわかるとまずい。ストーリーを考えろ」「ガスは強敵だったが、アンデスの怪人は見事彼を粉砕した、次はブラナンの番だ、こんな感じか」「いいねえ」「呆れた男だ。ガスは死にかけているんだぞ」ガスは脳内出血で死んでしまう。叫ぶニック。「トロと戦う相手は充分警戒が必要だぜ」

がっくりしてホテルに戻るエディにベスは聞く。「アートと話をしたの」「やつの名前を出すな。確かに立派なことをしているとは思わん」「だったら、なぜ」「6週間後にブレナン戦がある。それまではカネが入らん」「お金が全てなの?人の命が奪われたのよ」激怒するエディ。「私のせいだというのか」「いいえ。でも間違っているわ。仕事はほかにもあるわ」「お金がないと惨めなだけだ」

ニックはブラナンとのタイトルマッチが決まったと喜ぶ。「ガスが死んでくれたおかげで、彼にハクがついた。今や「殺し屋トロ」だ。いよいよ、大金が転がり込む。君のところに10%だ。よかったな」ため息をつくエディ。ブラナンはニックとエディに文句をいう。「ガスをやっつけたのは俺なのに、トロがやったことになっている。不満だ」「6ラウンドまで流す約束だ。映像権がかかっている」「カネより名誉だ。誰がガスを葬ったか証明してやる」「とにかく6ラウンドまで待て。そういう契約だ」「契約など知るか。トロを叩き潰す」勝ち誇るブラナン。

ニックは今度は八百長は無理だという。「トロが潰されてもいいのか」「俺にはどうにもできん」「なんとかしないと」「どうして、そこまで面倒みる」「俺を信頼している」「いいか。今は賭け率が1対5だ。君がトロの評判を煽れ。賭け率が1対2ぐらいになったら、ブラナンに大金を賭ける」そしてトロの母親はトロが人を殺したことを気にかけて、すぐに母国に帰れと手紙を出す。「エディ。僕は家に帰りたいんだ」「トロ。私を信じるか」

エディはそのことをニックに話すが、ニックは当然納得しないで、トロを説得する。「我々は君をチャンピオンにするために、あらゆる努力をした。金にためではない。君を王者に育てるのが夢だったのだ」しかしトロは母国に帰ると言い張る。ニックはエディに説得するよう命令する。

エディはトロに本当のことを言う決心をする。「君はガスを殺したと」「ああ、この拳で」「真実を教えよう。君の拳じゃ誰も殺せない。君のパンチは誰にも効かない」「俺は26人倒した」「全部イカサマだ。君は三流以下のボクサーだ」「僕は無敵だ」しかし53歳のジョージにあっさり殴り倒されるトロ。

真実を知って、落ち込むトロを慰めるエディ。「君は誰も殺せない。傷つく前にボクサーをやめて、国に帰ることだ」「僕はどうしたらいい」「このままでは君は一文なしだ。ブラナンと戦って帰れ」「また、イカサマを」「ブランナは買収できん」「負けるのか」「ブラナンは君を殴り殺す気でいる」「カネは必要だ」「だったら試合をしろ。ただし打ち合うな。君は自分のころだけを考えればいい」「わかったよ、エディ」

試合はブラナンのパンチを受けたトロはあっけなくKO負けとなる。なぜあんな無謀な試合を、と嘆くエディに、彼にもプライドがある、と答えるジョージ。ニックはトロをワインハウスという田舎のプロモーターに7万5000ドルで売ったとエディに言う。「3ヶ月は入院だ」「その間に宣伝できる」「なんの宣伝だ」「また巡業するんだ。今回は地元の選手に花を持たせるんだ」「彼はもう戦えん」「まだ、利用価値がある。名が売れているからな。もう最初の試合日程を組んだ」「彼は望んでいない」「奴等は死ぬまで戦うしか能がない」

なぜ、トロを売ったとニックに詰め寄るエディ。「ヤツは俺の持ち物だ。何をしようと俺の自由だ」「彼は人間だ」「屑さ」トロの取り分は契約によって、さまざまな経費を引かれて49ドルとなっていた。呆れるエディ。「彼はボロボロに殴られたんだぞ。ふざけるな。本当に愛想がつきたぜ」エディは入院しているトロをこっそり連れ出す。「やっと帰れる。金が見たい。そんなに多くはいらない。母に家を建て、父に靴を買ってあげたいだけだ」しょうがなく、エディは自分の取り分である2万6000ドルをトロに渡す。

ニックは血相を変えて、エディのところにやってくる。「トロはどうした」「もう空の上だ」「お前に7万5000ドルを払ってもらうぞ」「帰れ」「お前は俺の商品を盗んだ。弁償してもらうぞ」「いずれ返すさ」「どうやって」「君を主人公に連載記事を書く」「書きたければ書け。お前はただの落伍者だ」「私は君の全てを知っている」「俺たちの邪魔をしたら、タダじゃすまんぞ」「暴力では私の口はふさげん」「屑め」「私は悲惨な目にあった選手のために戦う」「君のような馬鹿はもう相手にせん」エディは原稿を作りはじめる。「わが国はボクシングを禁止すべきである」

★ロロモ映画評

失業中のスポーツ記者のエディ(ハンフリー・ボガート)は、ボクシングのプロモーターをしているニック(ロッド・スタイガー)に呼ばれる。「俺は君のコラムを愛読していた。新聞が廃刊になってがっかりしたよ」「いいから、本題にはいれ」「仕事がある。単なる広報係でなく、君にしかできん仕事だ。金ははずむぜ」そこにずば抜けた長身の男であるボクサーのトロが現われる。早速、トロはボクサーのジョージとスパーリングを開始するが、トロがでくの坊であることが判明する。「「あれじゃ無理だね」「ヤツは巨人だ。それだけで記事になる。ヤツはスターになる天性の資質がある」「試合を組むのか。ならば、俺は降りる」「ボクシングは所詮ショーなんだ」失職中のエディはニックと組むことに同意する。

早速、メディアと交渉するエディはトロを南米チャンピオンという触れ込みでマスコミに情報を流す。試合は行なわれ、八百長の結果、トロが勝つ。トロは連戦連勝で、どんどん人気が上がっていく。ニックはトロを前チャンピオンのガスと闘わせる計画をたてる。ガスと戦うと、トロは殺されると心配するエディであったが、ガスはチャンピオンとのブレナンとの試合で、強烈なパンチを受けていて、パンチドランカー状態であった。トロとガスの試合が行なわれるが、すでに体調に変調をきたしているガスはトロのパンチをくらってあっさりKO負けするのであった。

この映画は名優ハンフリー・ボガートの遺作となりましたが、「カサブランカ」や「三つ数えろ」や「マルタの鷹」と言った歴史に残る映画に出演した彼にしてはやや地味な作品が最後になってしまった感じもし、ボクシングは人間ドラマになりやすく、映画は数多く作られるテーマなのですが、この作品ではボクシングは八百長であるとロブソン監督は告発しているようで、ボクシングが八百長であるというのはよく映画で描かれますが、実際で世界戦レベルではちょっと考えられないとロロモは思いますが、判定ではおかしいなと思うことはよくあり、それが如実に示したのが、2012年のロンドン五輪でのバンダム級で銅メダルを獲得した清水聡のケースだったわけです。

1回戦に勝った彼は8月1日の2回戦では、アゼルバイジャンのマゴメド・アブドゥルハミドフと対戦。アブドゥルハミドフは6度キャンバスに倒れましたが、レフェリーは一度もカウントを取らないという物議を醸す判定をして、試合は清水の負けとなりました。清水は判定を不服として抗議。この抗議は認められ、判定を覆して清水の勝利となり、この勝利により、清水は結果として銅メダル獲得。レフェリーはトルメクニスタン人であり、国際アマチュアボクシング協会は、このトルクメニスタン人のレフェリーをロンドンオリンピックから直ちに追放する処分を発表。イギリスBBCは2011年、国際アマチュアボクシング協会が、アゼルバイジャンに金メダル2個を保証する見返りに1000万ドルの貸し付けを受けたとの買収疑惑を報じたわけです。

というわけで、アブドゥルハミドフは大会前からもしかしたら金メダルを約束されていたので、このトルメクニスタン人レフェリーは致し方なく清水を負けにせざるを得なかったのかもしれませんが、あまりにも試合が一方的になりすぎたのでこういう結果になったのかもしれないので、試合がどちらか勝つか微妙だったらアブドゥルハミドフは文句なく勝っていたのかと思うわけです。

気になるアゼルバイジャンの結果ですが、ヘビー級とスーパーヘビー級で銅メダル獲得となり、BBCの疑惑の結果となりませんでしたが、これも騒動の影響でそういう結果になってしまったのかもしれず、結果としてロンドン五輪で金メダル2個を獲得したのは地元のイギリスとウクライナとキューバでありまして、キューバが金メダル2個取るのはまあ妥当だと思うのですが、イギリスが2個取ったのにちょっとロロモは疑惑の影を感じるわけです。

とにかくボクシングはサッカーと並んで世界中で行われる人気競技なのでありますので、いろいろな利害が発生するのだろうとロロモは思い、これからもボクシングと疑惑は残念ながら切っても切れない関係を築くのではないかとロロモはこの映画を見ながら考えるのでありました。(2013年2月)

得点 67点

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