泣かせるぜ

1965年 日活

キャスト:石原裕次郎(響)渡哲也(白石)浅丘ルリ子(千加)大坂志郎(山路)名古屋章(兵頭)花沢徳衛(源さん)青木富夫(松吉)桂小金次(渋川)

監督:松尾昭典

静岡県清水市。白川丸の二等航海士・白石は船長の山路に訴える。「どうして、こう船員が不足するのか、僕は不思議でしょうがないんです。こんな魅力的な仕事なのに」「なんとかなるさ」山路に第五黒潮丸の情報が入ってくる。「これはやめたほうがいい。海の愚連隊です」「貨物船にあぶれて小さな漁船に乗っている連中だ。でもこういう連中に夢を与えるのも立派な仕事だ」

山路と白石は第五黒潮丸に行く。下品な船員たちにうんざりする白石。そこに現れる第五黒潮丸の船長・響は山路に帰ってくれ、と言う。「話は船主の渋川さんから聞きましたが、きっぱり断ってきました」「響君。君に来てもらったら一等航海士をやってもらいたんだが。君の資格なら何もこんな100トンの漁船の船長をやらなくても」「余計なお世話ですね」響の無礼な態度にかっとなる白石。「なんだ。山路さんは君のことを思っているのに。失敬なやつだ」「それが余計なお世話だと言ってるんだ」

すごすごと帰る山路と白石。山路の綽名は模範船長で船長歴30年で無事故、保険会社も山路の名を聞けばぐっと保険金を張り込むので有名だった。俺は落第船長だ、と自虐する響に怒鳴る源さん。「それは違う。開星丸のときだって、ちゃんとあんたが」「まあいい。人のことは気にしないでいこうぜ」

飲み屋で山路にまた失礼な態度をとった響に、白石の怒りの鉄拳が炸裂する。「効いたぜ」殴り合いを始める二人。豚箱にぶちこまれる響。気を失った白石はバー「サルビア」のマダム千加に助けられる。「どうしたんです。喧嘩ですか」「ええ。くだらんことです」

翌日出航する第五黒潮丸。サルビアにやってくる白石。「昨日のお礼です」千加に花を渡した白石は、飾られている港の絵に着目する。「これ神戸ですね。あなたが描いたんですか」「ええ」「いい船だなあ。サルビア号。この店の名前と同じだ。この船からとったんですね。何か想い出があるんですか。誰か乗ってたんですね」表情をこわばらす千加。第五黒潮丸は調理室が謎の大爆発を起し、乗組員は全員助かるが、船は沈没してしまう。響のことを噂する港の人々。「あいつは前にも沈めたことがあるそうだぜ」「沈没船長か」

響軍団は渋川から全員クビを申し渡される。千加は山路が響に一等航海士の席をあけている、と聞き山路に会いにいき、響が白川丸に乗れるよう頼む。「失礼ですが、響さんの奥さんですか」「いいえ」

二人の会話を聞いた白石は千加に詰め寄る。「僕は知りたい。響はあなたにとってどういう男なんですか」「答えられませんわ」「好きなんですか」「ええ」「あなたがあんな男を好きになるわけない」「一人で決めてしまうんですね。昔、そんな人がいましたわ」

白石から千加が一等航海士の仕事を山路に頼んでいると聞いた響は、白石を殴り倒して、千加に詰め寄る。「なぜそんなことをする」「なぜ山路船長の誘いを断ったの」「虫が好かない。それだけだ」「あなた、意地になってるんだわ」「意地?」「三年前に船を沈めてから、どうしてそんなに変わってしまったの」「……」

「私もあの時は世間が憎かった。開星丸が沈んだとき、何の罪もないあなたを物笑いにして、一年間の船長免許取り上げ。でも、私はあなたが船長に戻ることを楽しみにしていた。でも、あなたはこの清水の漁港の船長になった」「あの時、君は泣いたな」

「そうよ。あなたは神戸を捨てた。楽しかった二人の生活も捨てた。いつも私は怒ったわね。あなたがなんでも一人で決めてしまうと。でも私はあなたの言いなりになった。本当はそれがとても嬉しかったの。でも今は怒ることもできないわ」「……」

「何も言わないのね。でも意固地を張らないで白川丸に乗ってください」「一つだけ言おう。変わったのは君なんだ」「そんな。確かに私は今はバーのマダムです。あんなに好きだった絵もやめました」「とにかく俺に昔の夢を賭けても無駄だ。もう会わないほうがいいだろう」

源さんは響に素直になれと説教する。「お千加さんはあんたのことが好きなんだ。あの苦労知らずのお嬢さんはお父さんの財産を整理して、ここでバーのマダムをやっているのを知ったとき、俺は涙が出たね。いい加減に一緒になればいいじゃないか」「俺は眠いんだ」「頑固だねえ。この前の開星丸の時だってそうだ。乗組員を助けるためにわざと座礁させた。そういえばいいのに、黙っていたから一年間の免許停止だ。いいかい。船だって港が必要なように、船乗りにも帰るところが必要だ。いい加減に結婚しなよ」「俺は眠いんだ」

第五黒潮丸のボイラーマンである松吉が謎の死をとげる。警察は自殺と見るが、響は松吉が死ぬ前に大金を持っていたことを知る。この事件の裏には何かある、と確信する響は、白川丸に響軍団を引き連れて乗船する。本当は白川丸に乗りたかった響軍団は大喜びする。響は千加に人を介して腕時計を渡す。白川丸に謎の男・兵頭も乗り込む。

響は第一甲板がだいぶ弱っていると山路に報告する。「なにしろ船歴25年の強者だからな。自然摩耗は如何ともしがたい。ところで君たちが連れてきた連中は大人しくしてるかね」「ええ。今のところは」「あの連中を抑えてくれたまえ。それが君の仕事だ」「そうですかねえ。それは船長の仕事だと思いますが」

航海を続ける白川丸。山路は響を監視してくれと白石に頼む。響は積荷のウイスキーの中身が水であったと山路に報告する。荷主が積んだ囮かもしれない、という山路。「航海中、積荷を抜かれることはよくある。それを警戒して手を着けそうな外側の箱だけすりかえるんだ」

しかし響は次々に積荷を破壊する。ウイスキーの中身は全部水だった。信じられんとうめく山路。「荷主がこんなことをするわけがない。社員の誰かが品物を横領して贋物を積み込んだに違いない」「たいした想像力ですな」「このことは私から荷主と会社に報告しよう」

白川丸を台風が襲う。強引な指揮で船員たちを抑えつける山路。船倉で兵頭と会う響。保険会社の調査員だ、と名乗る兵頭。「この船はとんでもないぼろ船だ」「それはわかっている」「この船と積み荷は6億円の保険金がかかっている。くさい、と思って清水に飛んでみると、札付きのあんたたちを雇うという」「首謀者は船長か」「いや。一番臭いのは荷主の藤崎商事。そして船会社の三宅海運。とにかくうまくやろうぜ。成功すれば保険会社からごっそりもらえるぞ」

山路は船員に暴動を起こさせて、そのどさくさに紛れて船を台風のせいで沈没させたように見せかけて、白川丸を爆破させて沈没させる。船員はみんな救出されるが、響一人が行方不明となる。

白石は海難報告書に事実と違うところがあると訴える。「でも、それは山路船長が書いたものだから間違いない」「暴動を起こしたのは響さんだと書いてありますが出鱈目もはなはだしい」白石は響軍団に頭を下げる。「あの人の白川丸での行動はパーフェクト。僕はあの人を誤解していたようです。どうもすみませんでした」

反省する千加。「私はあの人が清水に来て何をやってるか何も知りませんでした。私が知ってるのは、あのサルビア号にあの人は一等航海士で乗っていたころのことだけ。それだけよ。私は魚臭い汚い恰好をしたあの人が嫌いだった。私があの人を拒んでいたんです。あの人はただ海を愛しただけです。変わってしまったのは、私なんです」形見として時計を渡されたことを話す千加。

話し合う響軍団。「大将は船が沈むことを知っていたんだ」「馬鹿野郎。沈むのを知って乗るやつがいるか」「でも、みんなが船に乗りたがっていることを大将は知っていた。危険を感じながらそれを止めることができなかったとしたら」「そうか。俺たちを沈没から守るために」「前もって船が沈むことがわかっているとはどういうことだ」

断定する源さん。「これは沈船計画だ。保険金詐欺だ」憤る響軍団を制する白石。「待ってください。山路船長がそんなことをするなんて信じられない。僕が確かめますんで、みなさんはおとなしくしてください」

響は外国人ヨットマンに助けられ、清水に戻り、兵頭と会う。白石は真相を教えてくれ、と山路に迫る。兵頭は響が生きていることを藤崎商事の社長・藤崎や三宅海運の社長・三宅に連絡する。どうせこんなことだろうと思ったぜ、と兵頭の背後からささやく響。「貴様は金目当てに動く男。藤崎商事や三宅海運を脅して金をとる。それが貴様の計画だったんだ」響は兵頭をぼこぼこにして、藤崎たちのアジトに乗り込む。響軍団も大暴れして、白石を救出する。

わしの負けだ、と響と白石につぶやく山路。「わしは定年になって船を降りることになり、模範船長なんて何の意味もない虚名だ、ということに気づいたんだ。船を降りたらわしには何も残らない。無性に腹が立ってなあ」憤る響。「そのために俺たちを泣きこんだのか。そのために松吉を買収して殺したのか」「確かに買収したのはわしだ。しかし殺すとは思わなかった」窓から飛び降りて自殺する山路。

第六黒潮丸が出航し、千加はそれを見送る。船長の響は航海士の白石に船を出せと命令するのであった。

ロロモ映画評

白川丸の船長の山路(大坂志郎)は30年間無事故を誇り模範船長と言われる男であった。山路はオンボロ船の第五黒潮丸で沈没船長の異名をとる響(石原裕次郎)に一等航海士をやらないかと誘うが、響は断る。その無礼な態度に腹を立てた白川丸の二等航海士の白石(渡哲也)は響に喧嘩をふっかけるが、響に殴られて気を失う。そんな白石を解放するバーのマダムの千加(浅丘ルリ子)。そんな千加に白石は当然好意を持つが、千加はかつての響の恋人だったのであった。

当然、裕次郎が沈没船長であるのはわけありで、本当は素晴らしい船長であることは見る前からわかっていることですが、保険詐欺の沈没事故をめぐって裕次郎の正義の怒りが爆発するという、まあ頭のいい人なら映画が始まって十分くらいで映画の内容がわかってしまう映画でありますが、それでも海洋アクションとしてはなかなかの出来であり、この映画が作られたのは1965年で浅丘ルリ子が一番美人だったころとロロモは思う時代なので、彼女が見られるだけでも満足できえる映画と言え、これから二年もすると彼女は痩せすぎて、いわゆる「いい女」になっていき、ロロモにはあまり関心のない女優となってしまうわけです。

またこの映画は石原裕次郎と渡哲也の初共演映画ということになり、後になるとテレビの世界で「西部警察」や「大都会」でタッグを組む二人ですが、ここでは若々しい渡を貫禄ある裕次郎が圧倒するという構図になっていますが、渡哲也は青山学院大学に通うために淡路島から上京しましたが、在学中に日活が浅丘ルリ子の主演100本記念映画の相手役となる新人「ミスターX」を募集し、弟の渡瀬恒彦や所属していた空手部の仲間が彼に内緒で応募したと言われています。

渡は怒りましたが、就職を希望していた日本航空の整備士の採用試験で不合格となり、「撮影所に行けば、石原裕次郎に会えるかもしれないぜ」と言われて、日活撮影所を訪問し、そのまま1964年に日活入り。日活では彼を新スターとして期待して,翌1965年3月に空手映画「あばれ騎士道」で主演デビューさせ、この年、彼はほかにも「真っ赤な海が呼んでるぜ」「青春の裁き」「星と俺できめたんだ」「赤い谷間の決斗」「拳銃無宿 脱獄のブルース」などに出演。デビューの年から男っぽい映画に出ていたことになりますが、それにしても「ミスターX」はタイガーマスクやプロゴルファー猿といった漫画の世界だけでなく、映画の世界にもいたのかとロロモは驚くのでありました。(2012年12月)

得点 49点

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