「青春を返せ裁判」を支援する会 会報 2000年10月・第34号

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青春を返せ裁判高裁逆転勝訴(河田英正)…P.1
青春を返せ裁判 最高裁に向けて(A男)…P.5
その他の主な出来事……………………………P.9
パネルディスカッションの案内………………P.10
第11回総会を11月
12日午後3時15分
から岡山市福祉文
文化会館で開きます

青春を返せ裁判 高裁逆転勝訴

弁護士 河 田 英 正

判決報告集会  新しいことの始まり
 平成12年9月14日広島高等裁判所岡山支部は、元信者が統一協会を相手に提起していた「青春を返せ裁判」に対して原告敗訴の一審の判決を取り消し、被告に対し1725000円の損害賠償請求責任を認めた。請求していた慰謝料100万円全額を認容したものであって、逆転完全勝訴と評価してよい判決である。統一協会の伝道・教化のありかたがついに裁かれた。統一協会は、多くの若者たちの人生を食い物にし、平穏な家庭を破壊してきた。宗教活動の名の下に命を落とすまでの深刻な被害が後を絶たない。今回の判決は、たとえ宗教活動の名の下になされた活動であっても、個人の宗教選択の自由などの人格権を侵害してはならないことを明言した。当たり前のことであるが、このことを裁判の場で明確にすることができた日本で初めての判決である。私たちは、十年以上にわたって、同様の被害の防止といまなお苦しんでいる人々のために戦ってきた。その大きな成果をいま手にいれた。問題が全て解決したわけではない。私たちのしなければならないことは終わりではなく、新しいことの始まりである。

信教の自由と裁判所の判断

 宗教活動の名の下になされた行為であっても、社会的に相当な行為であるか否かが判断の対象になり、それが社会的相当性を逸脱した場合、宗教選択の自由を奪うなどの人格権の侵害があれば、教団に損害賠償の責任があることを明確に示した。原審が「宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審判権を有しない」として宗教が関わることに対して裁判所の判断を極めて謙抑的に捉えていた。これに対し控訴審判決は、「宗教団体が行う行為が、専ら利益獲得等の不当な目的である場合、あるいは宗教団体であることをことさらに秘して勧誘し、徒らに害悪を告知して、相手方の不安を煽り、困惑させるなどして、相手方の自由意思を制約し、宗教選択の自由を奪い、相手方の財産に比較して不当に高額な財貨を献金させる等、その目的、方法、結果が、社会的に相当な範囲を逸脱している場合には、もはや、正当な行為とはいえず、民法が規定する不法行為との関連において違法であるとの評価を受けるものというべきである」と端的に言いきった。原告の人権の侵害はなかったか否かの観点から教義をもどのような役割を果たしていたか積極的に判断した。裁判所の判断が被告の万物復帰という教義に触れることが、直ちに憲法上の信教の自由を侵害することになるとしていたことに対して、控訴審では、被告の行為を組織的一体性と有機的一連の行為として捉え、そうした統一協会からの働きかけによって、原告が図らずも正義の実践として社会的に許されない霊感商法を遂行してきたことを認め、そのことを判断の基礎的な前提事項とした。

教義との関わり

 本判決は、万物復帰という被控訴人の教義の存在と実践が霊感商法を推進させ、 違法な献金などの資金獲得行動に信者を走らせていることを認定した。私たちにの目から見れば客観的な事実として自明の理である事柄であったにも関わらず、教義に触れることは信教の自由を侵害することになると裁判所は故意にこのことから目をそらしてきていた。教義の実践のなかで、信者が違法行為に走っているという実態を認識しないかぎり、霊感商法の組織性と信者の心が操作されて違法な霊感商法に走っている心の状態を理解することは不可能である。控訴審判決はこの教義の存在から「被控訴人自ら、あるいは、少なくともその信者組織において万物復帰の実践のための活動として、霊感商法等違法な商取引を含む系統的・組織的な資金獲得活動をしてきているものと推認するほかない」「一連の勧誘、教化行為あるいは経済活動は、被控訴人自らが指示していると推認してもやむを得ない状況がある」と認めた。被告統一協会の基本的活動分野に対して、明らかに違法であると判断した。

違法な宗教活動

 判決は、教義が事実を指摘して信者の意思決定に及ぼす影響を認め、原告に対する姿を偽っての勧誘、献金、信者となることになるまでの虚偽に満ちた働きかけの一連の行為を詳細に認定している。そして、「一連の行為は、個々の行為をみると、一般の宗教行為の一場面と同様の現象を呈するものと言えなくもないものもあり、また控訴人は主観的には自由意思により決断しているようにみえるが、これを全体として、また客観的にみると、被控訴人の信者組織において、予め個人情報を集め、献金、入信に至るまでのスケジュールも決めた上で、その予定された流れに沿い、ことさらに虚言を弄して、正体を偽って勧誘した後、さらに偽占い師を仕立てて演出して欺罔し、徒に害悪を告知して、控訴人の不安を煽り、困惑させるなどして、控訴人の自由意思を制約し、執拗に迫って、控訴人の財産に比較して不当に高額な財貨を献金させ、その延長として、さらに宗教選択の自由を奪って入信させ、控訴人の生活を侵害し、自由に生きるべき時間を奪ったものといわざるを得ない」と判断した。長い間、被告の組織的犯罪行為と原告ら信者が被害者であることを主張してきた我々の主張を100パーセント認めたものといえる。

マインドコントロール

 私たちは、真面目な若者たちが、伝道・教化されるなかで反社会的な行動に走っていく過程の説明として「マインドコントロール」の概念を使用してきた。これが米国の心理学会までもまきこんだ大きな争点の一つとなった。原審はマインドコントロールについては、「それ自体多義的な概念である」とし、あえて「一定の行為を繰り返し積み重ねることにより相手に一定の思想を植え付けることをいう」と独自の定義をし、「主張の効果があったものとは俄に認められず」「宗教選択の権利を侵害され、人格権を侵害されたということはできない。」と判断した。控訴審においては原告の心を操作されているという状態は「マインドコントロール」という言葉を使用しなければ判断できないことではなく、一定の状態を説明する概念として使用されているものであると規定して、その言葉の定義をあえてする必要はないとした。原審の指摘するとおり「マインドコントロール」という言葉は様々な場面でいろんな意味合いで使用されて学術用語としても常に同じ認識で使用されていたともいえない状況があった。統一した概念で確定することは無理であった。ちょうど、「カルト」という言葉が、使用される場面によって必ずしも統一した概念で語られていないのと同様である。このことを控訴審判決では「マインドコントロール」の概念は「道具概念としての意義をもつもの」 ではなく「説明概念にとどまる」とした。まさに私たちがマインドコントロールとして説明してきた事実そのものを認定したもので、それを違法と判断したのであるから、統一協会の「マインドコントロール」の違法性を認めたものと評価できる。

判決の意義

 霊感商法あるいは違法献金をめぐる統一協会の責任を認める判断は、既に最高裁判決もあり、確定的なものとなっている。本件はさらに踏み込んで、入信していく過程そのものが宗教選択の自由を奪うなど人格権の侵害をした違法なもので、 そのことによる精神的損害を支払えというものである。「青春を返せ裁判」で原告の訴えを認容した初めての裁判所の判断であった。東京地裁、名古屋高裁で原告側の勝利的な和解があいつでなされ、そのような状況が今回の判決を生む大きな力となったといってよい。また、マインドコントロールの議論が様々な分野で進み、論議が深まり、その真理性がかえってあぶりだされてきていた。この議論に火をつけた西田先生、棚村先生らの勇気ある研究に感謝いたしたい。マインドコントロールの啓蒙ビデオ「幻想のかなたへ」は控訴審で検証された。そして、全国弁連の多彩な活動によって裁判所での闘いを確実に前進させることができたことだ。福岡、高松、奈良各地裁での違法献金をめぐる判決、それに連なる高裁、 最高裁の判決、ついには青春を返せ裁判で勝訴的和解に追い込み、日弁連の違法な反社会的活動に対する判断基準の公表など、今回の判決に至る素地が完成してきていた。この判決が出されることに違和感がない状況が生まれてきていたといえる。この判決は、弁連での討議を積み重ね、準備書面を互いに交換しあい、アドバイスを受け、全国の弁護士の知恵と労力の結集の結果として得られたものである。いま、その果実が実ったといえる。今回のこの結果を、私たちの新しい扉を開いたベースとして、被害の根絶と救済に向けてさらなる活動に発展させていきたいものである。そして何よりもこの裁判を身近なところで粘り強く大きな力で支えてくださった皆様方に深く感謝したい。共に、この成果を喜び、新たな運動の力としたい。宗教被害の根絶・被害の完全救済と自由で豊かな人生が送れる社会とするために。

青春を返せ裁判 最高裁に向けて

岡山の原告 A 男

1 原告の訴え
 私が、この裁判において訴えていることは、統一協会員も統一協会によって、脅し、だまされている被害者である。
 統一協会は人々の財産等を奪うために、脅し騙しを平気で行います。紛れもなく統一協会は犯罪組織です。当然、活動する協会員も犯罪人となります。統一協会に関わった人達でないと理解出来ないことかもしれませんが、本来の心であれば決して犯罪行為はしないのに、統一協会の巧妙な手口によって、組織の命令に対しては絶対に逆らえないように心をコントロールされているのです。この裁判で真っ向から統一協会と意見が対立していることは、統一協会側は「あなたは自分の考えで入信し行動していたのではないか。」その証拠に写真等を見せられ、「入信時はこんなに喜んで活動していたではないか。」「統一協会は、決して、拷問や薬を使ったり、首に縄を付けて無理矢理入信させてはいない。」「統一協会はビデオセンターは持っていない。」「信者等が勝手に組織を作り行動していることだ。信者自身に責任がある。」と言っていることです。
 しかし、私に言わせれば、統一協会は、入信や協会の活動をさせるために、周到な準備を積み重ね、組織の名前さえ名乗らない、霊界や神・数多くの占い師・セミナー・嘘の情報・段階ごとの組織等を巧妙に使い、拷問や薬とは比較にならない巧妙な手口で人の心を操る力を持っています。組織の力によって脅し、だましを行いながら、私の心をコントロールした上で、私の全財産を奪っただけでなく、さらに、組織の命令に対して絶対に逆らえないようにしたのは紛れもなく統一協会なのです。今の自分であれば絶対に霊感商法はしません。統一協会と出会わなければ決して行わなかった行動、統一協会によって、したくもない犯罪行為をさせられたのです。統一協会によって、犯罪者として一生を怯え暮らすことになった、耐え難い精神的苦痛を追わされたとして、統一協会を相手に慰謝料を求め裁判を起こしました。
 さらに、裁判の結果において得られることですが、私が統一協会を脱退後に知った事実として、今なお多くの若者が統一協会の巧妙な手口により、取り込まれ続け、若者の人生は想像を絶する悲惨なものとなっています。そして、組織に子供が奪われたことによる数多くの若者の両親、家族の嘆き悲しみを知りました。私はこの事実を見過すことが出来ませんでした。なんとかしたいと思いましたが、当時は、警察・行政・マスコミ・学校もたとえ悪徳団体と分かっていても、宗教団体への入信については全く動いていませんでした。社会は悪徳団体に対して全く無力でした。そこで考えたのが、統一協会は全国各地で信者を獲得していますが、その入信に至る手口は、組織からの命令に対して忠実に従うためパターン化しています。もし、私が受けた手口が違法と裁判で判決が出れば、警察・行政・マスコミ・学校も統一協会に対して恐れずに警戒を促すことができ、新たな入信者は減るのではないかと。
 さらに、現役信者を救えるのではないか。統一協会と直接関わった人達でないと理解できないことかもしれませんが、私の知る末端信者は皆優しい心を持っていました。彼らは自分を犠牲にしてでも世界の平和を願い苦しんでいる人々を救いたい、家族や他人を思いやることのできる優しい心を持っています。しかし、優しい心を持っているが故に統一協会の罠にかかりだまされ引きづり込まされたのです。
 私の場合は家族・職場・牧師等の必死の努力、理解と協力により、運良く脱会することができました。多くの信者は私のように運がいいとは限りません。家族の不理解・関係者の協力体制がないために脱会のチャンスを失っています。彼らは一般社会と断絶し、統一協会のみをより所としているため、よほどのことがないと脱会することができません。この裁判の内容がどこまで統一協会内で伝えられているのか分かりませんが、彼ら自信も相当関心を持っていると思います。この裁判で勝利することができれば彼ら自身の頭で考えられるきっかけになるのではないかと思います。仮に脱会できなくても統一協会の活動を弱めることができれば犯罪も減ります。心優しい彼らにこれ以上犯罪行為をさせたくないのです。

2 裁判が分かりにくい部分
 これらの訴えは、逆にこの裁判を分かりにくくしているかも知れません。「自ら行動したことを組織のせいにするのか。」「責任逃れではないか。」という声も聞きます。責任逃れの裁判ではありません。犯罪行為をしたならば直接行動した人間が責任を取るのは当たり前です。しかし、命令に対して全く逆らえないようにした組織があるならば、その組織も裁かれるべきです。私の心をコントロールした組織が一番悪いと裁いてほしいのです。統一協会と社会との間には加害者と被害者の関係ですが、統一協会と協会員の間においても加害者と被害者というものが存在していることを明らかにしたいのです。全国的に問題となっているいくつかのカルト集団においても裁判が行われています。直接手を下した人間よりも、命令した側の責任や罪は、何十倍、何百倍も重いのです。それは、その組織や命令者がいなければ、出会わなければ、決して、犯罪行為はしなかったと私は断言します。

3 裁判の目的は人々の幸せを守るため
 この裁判は、私個人の慰謝料を求めた闘いだけでなく、社会に浸透するカルト集団の魔の手から人々の貴重な財産や子供達や若者の人生を守る、親子や家族の絆を守る闘いです。もし、この裁判に負けるようなことになれば、統一協会等の活動は正当化されたようなものです。宗教団体の名のもとに脅そうがだまそうが組織は罪にならない。責任は信者に押しつけ、益々、組織の活動は活発化し、被害者は増えます。被害を受けるのは私達です。奪われた財産は取り返せても若者の人生は一度きりです。被害を食い止めるためには、犯罪の根を断たないといつまでも被害は続きます。なぜ、カルト集団の被害が増え続けるのか、それは、無関心・無防備な人々、悪徳カルト集団の存在や活動を許す社会に原因があると思います。もっと多くの人々がこの裁判に耳を傾け、この裁判の判決が如何に重大な意味をなしているかを知るべきだと思います。

4 最高裁での取り組み
 控訴審で統一協会側は負けました。私達は歴史的、画期的な判決を得ることができましたが、統一協会は彼らの死活問題と知っているため直ちに上告しました。彼らは最高裁では死にものぐるいで挑んできます。油断は出来ません。最高裁で勝つためには、私達は、彼らの違法な手口をより具体化し、なぜ、命令に逆らえなかったのか、なぜ、犯罪行為と気づくことが出来なかったのか、宗教を隠れ蓑にした違法な教義等一般の人々にも理解できるように内容を整理する必要があると思います。

5 逆転勝訴の要因
 広島高裁岡山支部で逆転勝利判決を得られたのは、裁判官が私達の訴えに対して真っ正面から向き合い判断してくれたこと。これまで11年間という長きにわたり損得勘定関係なくあきらめず辛抱強く闘って下さった河田先生をはじめとする弁護士の皆様、暖かく励まし支えて下さった支援する会の皆様、そして、全国各地の弁護士、学者、宗教家等の先生方の英知の結晶であり、全国で裁判を闘っている元信者が心の傷をさらけ出し苦痛に耐えながらも確実に勝利を重ねてこられたおかげだと思います。心から感謝申し上げます。

6 最後に
 さて、今度は最高裁での闘いとなりました。私個人ではとても乗り越えることは出来ません。頼りない原告です。引き続きご迷惑をおかけするかと思います。皆さん自身の財産、生命、絆を守る闘いであることをご理解いただき、数多くの皆様のご支援とご協力が必要です。どうかよろしくお願い致します。


その他の主な出来事

4/20.衆院決算行政監視委員会で桧田議員が「拉致監禁に対処を」と発言。
4/22.会報33号発行。
4/24.霊感商法(物品)訴訟で東京地裁が賠償命令。
4/27-9.AFF総会(シアトル)。
5/10.東京地裁の違法伝道訴訟を傍聴し、救援会都本部など訪問。
5/15.統一協会がUPI通信を買収。
5/16.岡山駅前で救援会と共同してビラ宣伝。
6/5.判決日変更の葉書400通発送。
6/7.署名213人分提出(累計6,069人分)。
7/8.判決日再変更の葉書400通発送。
7/18.名古屋高裁の勧告により統一協会幹部が青春を返せ裁判の原告6人に和解
    金630万円を支払う。
6/22.フランス国民議会(下院)第一読会がカルト禁止法案を可決。
7/24.救援会全国大会が岡山地裁に公正判決を求める決議を採択。
8/17.署名325人分を提出(累計6,394人分)。
8/18.判決日再々変更の葉書400通発送。
8/26.保岡法相の秘書官が統一協会員であるとマスコミ報道。
8/31.鳥取地裁は、両親と牧師が「監禁」したとして信者への賠償等を命令。
9/12.署名66人分を提出(累計6,460人分)
9/20.救援会岡山支部が勝利判決のビラ宣伝。
9/23.統一協会が上告。
9/27.幹事会慰労会。
9/29.全国弁連が神戸集会。

パネルディスカッション

カルト被害の救済と根絶にむけて

−カルトをめぐる裁判の動向など−

日時:11月12日(日)午後1時30分〜3時すぎ
会場:岡山市福祉文化会館
(TEL.086-272-7881)
パネラー紹介
・河田英正
さん(岡山「青春を返せ裁判」弁護団長)
・大神周一さん(東京「違法伝道訴訟」弁護人)
・高山正治さん(救出カウンセラー、支援する会代表)

<主催:「青春を返せ裁判」を支援する会>

 総会終了後、支援する会の総会を開きますので、時間のゆるす方はご参加ください。
 またその後に、逆転勝利判決を祝う懇親会を行います。

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