「青春を返せ裁判」を支援する会 会報 1999年11月・第31号

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浅見氏証言「カルト問題は人権問題」

−次回裁判は11月26日午後2時から−

 7月23日午後、統一協会の被害をなくそうと元協会員A男さんが訴えた「青春を返せ裁判」の控訴審が、広島高裁岡山支部でひらかれました。
 今回は、宗教学者で、カルト問題を研究している浅見定雄東北学院大学講師が証人として出廷し、河田弁護士の質問に概要次のように答えました。
 −私の研究対象は、第一分野が旧約聖書で、第二分野が新宗教・カルトです。著書『統一協会=原理運動』の中の「いわゆる洗脳の仕組み」が、実質的には日本で最初のマインド・コントロール論でした。訳書の『マインド・コントロールの恐怖』は、山崎浩子さんが、統一協会を脱会するきっかけとなったものです。
 カルトの問題は人権問題であり、宗教問題ではありません。一審判決では、マインド・コントロールについて、一定の行為を繰り返すことによって思想を植え付けることと定義しているが、これなら反復して覚えることがすべてマインド・コントロールということになってしまう。これまでこのような定義はされたことがなく、失笑するような内容です。
 マインド・コントロールについては、「人間の信念体系の変容」として西田論文が書かれてから、日本社会心理学会総会でマインド・コントロールというテーマでシンポジウムを行い、日本心理学会でも同テーマで3回も学会が行われ、心理学会で認められてきました。
 一審で認めている事実、ウソをついてのビデオセンターへの勧誘、手紙や贈り物=これはお返しをしなければならないという状況を作ります、終始にこやかにして信頼関係をつくるテクニック、スリーデイズの音楽の演出とさくらで泣くこと、これらの行為のそれぞれがマインド・コントロールのエッセンスです。
 人間の一生を台なしにするこの問題を、きちんと裁かなくてはなりません。− つづいて、統一協会側の鐘築弁護士が、浅見証人は信者を監禁するよう指導しているのではないか、など偏見に満ちた質問をし、浅見さんは概要次のように答えました。
 −カルトカウンセリングでは、信仰の違いでなく、人権を侵すような行為を組織的継続的に行っている集団について、脱会するようにカウンセリングしています。わたしは信者を監禁や拘束するやり方をとりません。親の真心で子どもを拘束するということはあるかも知れませんが、そういう方法がないほどいいと思っています。 マインド・コントロールは、ある人が自分自身の欲望や野心のために、自分と違う主体である他者の心を、本人には自発的に思わせて捜査するテクニックです。控訴人は、典型的なマインド・コントロールのプログラムに乗せられたと思います。ビデオセンターに行くのをいったんやめても、それまでに受けた影響が整理できていないとフラッシュバックで影響が再現し、未解決で引っ掛かっている問題があるほど、ガイガルニック効果で相手をつなぎ止めることができます。控訴人が60万円献金したのもマインド・コントロールの結果です。−
 次回(11月26日午後2時から)は、統一協会側の証人・増田善彦(鮮文大学・神学大学院長)への尋問が行われます。

 なお、今回の証言には速記官がつきませんでした。後日、書記官が作成した証人調書「陳述の要領」を読んだ浅見証人は、証言内容と調書が異なっているとして、異なる部分の訂正を裁判所に要求しています。


浅見氏講演会に60人参加

 「青春を返せ裁判」を支援する会は7月23日夜、岡山弁護士会館で浅見定雄さんの講演会『ハルマゲドンとカルト宗教』をひらき、支援者や被害者ら約60人が参加しました。
 浅見さんは、日本のマスコミが大々的に取り上げてきた「ノストラダムスの予言」に対し、ノストラダムスの詩と聖書の内容にふれ、「いまは20世紀末だが『終末』ではありません」、「若者がハルマゲドンを信じるのは、夢も希望ももてない日本社会に問題がある」と語りました。
 また、カルト宗教について「日本国憲法で保障されている基本的人権を、宗教を利用して侵すものだ」と指摘しました。

名古屋で西田さん証言

 名古屋高裁で争われている青春を返せ裁判(原告は羽佐田さんら6人)では、マインド・コントロール研究者の西田公昭証人への尋問が6月8日(元信者側の主尋問)と7月27日(統一協会側の反対尋問)に行われました。その証言の概要は次のとおりです。

[6月8日・主尋問に対して]
 静岡県立大学看護学部の講師をしています。社会心理学のなかで、主に個人の内面的心理過程の研究をしています。具体的には、ビリーフと呼びますが、信念とか知識、偏見、信仰とかの形成の過程や変化の過程を研究しています。
 統一協会の信者ないし元信者に対し、30人ないし50人への面接調査、250人ないし260人への質問用紙を用いた調査をし、内部で読まれている雑誌や教義の本などを参照しました。そして、ビリーフの形成と変化の機制についての研究三及び四というタイトルの論文にまとめました。この「三」は、ビリーフを形成するプロセスについて、「四」は、ビリーフをより強いものへと強化し維持するメカニズムについての研究で、「三」では社会心理学会の研究優秀賞をいただきました。主著のなかに、「マインド・コントロールとは何か」、「『信じるこころ』の科学」があり、題材には統一協会の問題をかなり含んでいます。

普通でない統一協会の健康度
 日本脱カルト研究会に参加し、「JDCC集団健康度チェック目録」を作りました。114の質問項目に0点(当てはまらない)、から3点(まったく当てはまる)のなかで自分に近いところに丸印をつけ、その点数を合計します。これは点数が高いほど人権侵害度が大きいということになります。控訴人のうち5人にやってもらったら、306点、314点、231点、247点と215点でした。普通の会社とかボランティア団体であれば、悪くても30点くらいで、30点でもかなり普通とは思えない部分もあるかもしれません。215点から314点というのは、かなり特殊なグループだと判断せざるを得ません。
 オウム真理教の刑事裁判で証人となり、Hさん、Kさん、Yさんについて、マインド・コントロールされていたかどうかということについて証言しました。現在Iさんの鑑定については課題を遂行中です。
統一協会のマインド・コントロール
 マインド・コントロールという言葉は、破壊的カルトが新しいメンバーを獲得したり、メンバーをつなぎ止めておいたりするために使うもろもろの心理操作の技術という意味で使っています。心理学の用語ではないですが、これまでの社会心理学で検討されてきたコンセンサスのある原理を集大成したものがマインド・コントロールです。科学的研究はそのすべてが仮説だとも言えますが、わたしはそれなりの実証的なデータを持って発言しています。人間の意思決定は、五感から得られるボトムアップ情報と頭の中のビリーフなどをトップダウン情報として用いて行いますが、この2種類の情報をコントロールすればマインド・コントロールはできます。統一協会はマインド・コントロールをしています。
 初期の接触する場面では、通りすがりの人に声をかけるやり方と、知人や友人を誘うやり方がありますが、状況の拘束力を用いて断りにくくしてビデオセンターに誘います。例えば、相手を誉めて好意を示し、親切にやさしくして断りにくくしたり、このすばらしいチャンスを逃してはならないぞという気持ちを作ってみたり、いろいろやられます。そのとき、自分たちが宗教団体であることを名乗らない場合が多く、統一協会という名前も隠して別の受け入れやすい名前を名乗ります。
 次の教義を教え込む場面では、生活や社会の問題でその個人の気掛かりなことを見つけて、いま解決しないと大変なことになるなどと言って、その気持ちを増幅させます。それは個人では解決できないので、恐怖心と依存心が生まれます。そこで、因縁があるからだという形で、運勢を切り替えていくにはこの道を進む以外にないんだと教えていきます。相手は、もしかしたらそうなのかなという気持ちができやすいわけです。1人きりのブースでビデオを見せるビデオセンターでは、周りの反応が読めない状態で、内容が理解できなくても記憶の中にとどめることになります。2日間1カ所に人を集めて講義をするツーデイズでは、話が分かりやすく、その反応をスタッフが管理しやすく、集団心理を作るのに役立ちます。相手は、本当なのかなというような気持ちになります。スリーデイズでは、もっと強くなります。何週間か、学校や勤め帰りに一定の場所に通って深夜まで講義を受けるライフトレーニングでは、自分の身に起こった出来事を神様の思し召しであると、統一協会的な解釈の仕方を練習させる場も用意されています。またホーレンソウ(報告・連絡・相談)もさせて、積極的に統一協会的な思考をするように教育されます。4泊4日の合宿セミナーでは、教団名と教祖名、宗教であることが告げられ、教祖の美談や具体的な活動が知らされます。すると、教義に対する現実感が増し、この活動しかないんだという気持ちになります。そして、宣誓式で献身の宣誓をさせ、責任感を植え付けますが、この時点では、合同結婚式のこと、霊感商法のこと、珍身売りや募金集めのこと、ホーム生活のことなど知らされてないので宣誓しやすいのです。ビデオセンターへ行った人のうち3%ぐらいが献身しているという確率というのは、霊感商法などで反社会性や違法性が高いと言われているところに一生をかけるという決断をすることですから、僕は考えられないぐらい高いと思います。
 集団を維持する場面では、新生トレーニングとか実践トレーニングというのが行われて、家族と会わずホームで生活します。その中では、自由が拘束され、教祖以外の異性への感情が抑圧され、慢性的な肉体疲労があり、外部に対して敵視と恐怖感を植え付けられ、協会の指示に沿えば賞を与えられ、反するれば罰せられ、時間がないという切迫感が与えられていました。こうして、協会への帰属意識を高め、集団が維持されます。協会での生活は大変厳しいのですけれど、人間関係も財産も捨てていて帰るところがなく、やめたら不幸になるなどの脅迫的メッセージが入っているため、やめることができず、やめたいと思う自分を責め、協会にはそれだけの価値がある素晴らしいところだと思うようになります。また、心を乱すような情報を遠ざける行動をとります。このような状況が続くことによって、統一協会の教義に沿った行動が習慣化・自動化されます。また、このような肉体疲労や切迫感などの生理的ストレスの高い状態では、落ち着いた意思決定がしづらく、ボトムアップ情報を探索する作業よりも、既に持っているビリーフ・システムで解釈しながら意思決定する傾向が強まります。自分では考えているつもりでも、教義の正誤をあまり吟味することなく行動しているわけです。ホーム生活では、ボトムアップ情報自体も協会から与えられるものしかなくなってしまいます。
 人生にとって重要なときは、できる限り冷静に、時間をかけてゆっくりと、いろんな人の意見を聞いて考えるべきですが、統一協会はすべてその反対の方向にあり、問題だなと思います。

[7月27日・反対尋問に対して]
 静岡県立大学で専任の講師をしています。博士論文は「ビリーフの形成と変化のメカニズムについての社会心理学的研究」でした。
 マインド・コントロールとは、心理学的な手法を用いてメンバーを獲得し、そして心理学的な手法を用いてメンバーを維持あるいは教化することです。かなり広い意味では、一審判決の「一定の行為の積み重ねにより一定の思想を植え付けること」と言えるかもしれないという感じはします。
 「JDCC集団健康度チェック目録」は、日本脱カルト研究会(JDCC)が作成し、私はその中心メンバーとして活動しました。JDCCは、破壊的なカルトの活動を研究したり、そこから脱会した人の心理状態や、その回復のプロセスについて研究したりといった学術的な情報交換を行う目的で結成されたと思います。破壊的カルトについては、そのチェック目録を作って、量的にとらえて、どこからを破壊的カルトというのか日本の人々のコンセンサスを得ていこうと考えています。
 『マインド・コントロールとは何か』では、マインド・コントロールは、だれがそれを行うかという主体と、何のために、だれの了解の下にという3つの要素で意味合いが違ってくると書いています。マインド・コントロールそれ自体では、違法だとか適法だとかといった判断はできないでしょうね。
 JDCC健康度チェック目録は、会社や団体など宗教団体以外に対しても行ったことがあります。控訴人についての統計結果で点数のばらつきがあるのは、その人の経験や判断、感じ方の違いなどがあるので、当然のことです。チェック項目は、問題のある団体にはそういう項目が含まれることがあるということで、1つの項目を取り上げてその点数がどうだというのではなく、100以上の項目が合計された点数が100点とか200点になると、現在の健康度と将来の暴走の可能性としての目安となると考えています。資料の集め方をもっと広く、もっと場合分けできるよう、たくさんの団体がやっていただけると助かります。私の調査研究は、元信者を中心にしてデータを集めましたが、それなりに実証的なデータであり、一研究としては十分成立しています。それが審査されて学会誌に発表でき、賞を得ています。マインド・コントロールは、各場面で見ると大層なこととは思えませんが、それをトータルで動かしたときに効果が生じるのです。
 信者が説得を受けている場面を観察したことがありましたが、縄などで物理的に縛られている状態ではなく、親子の対話だと見ていました。統一協会から脱会させようと、会話の場をもつことは重要かと思います。
 統一協会の信仰を持つようになった人の中には、マインド・コントロールでなく、宗教的回心と言える人がいるかもしれませんが、原告は違うだろうと思いますし、違う人がいるということが問題なんです。霊感商法や婚姻無効の問題が起こっているといった事実を知ったうえで入信したという人がいるのかという意味では、ほとんど難しいんではないかと思っています。

[7月27日・補充主尋問に対して]
 健康度チェック目録の項目は、憲法の基本的人権とか民主主義、自由主義といった視点から、それに当てはまる行動を探していきました。カトリック教徒や禅宗も少数ですが調査に入っています。点数を覚えてはいませんが、少なくとも100点を超えることはありません。
 カルチャーセンターに通う程度の認識でビデオセンターに通いはじめるのですが、そういう人の100人中3人が特定の宗教団体で、無報酬で24時間活動するようになるというのは、かなり多いということです。マインド・コントロールは、1つの手法に対しては、その影響力から逃れられるどうかはケース・バイ・ケースです。でも、最初の影響を受けてしまった人が次の影響を受ける場合にはもっと強い確率でやられてしまいます。ステップ毎にどんどんわずかな作用でもって大きな効果が上がってきます。脱会の説得は、元の自分に気づくよう教えているだけなんで、新しいビリーフを加えるマインド・コントロールとは異なります。情報も、統一協会の教本と聖書などを対照させてやっていると聞いています。統一協会のセミナーでは、本の持ち込みは一切禁止されていると聞いています。それも、あからさまに検閲するのではなく、相手が知覚しない間に、そういうものは見ない方がいい、見てはいけないんだという気持ちに持ち込むのがこのマインド・トロールです。

[7月27日・裁判官尋問に対して]
 集団健康度チェック目録は、1年3カ月かかって、今年3月に完成しました。現役メンバーか元メンバーかなど回答者の立場の違いで評価や答えが違ってくると思いますが、この違いも集団の表と裏の姿の違いとして、これが不健全な集団をあらわすと見ています。この目録は、ある集団を糾弾するのが目的ではなく、その集団の現在と将来の健全度の目安として注意することが目的なんです。同じ属性の人での評価のばらつきは、体験の違いもあると考えられます。


最近の主なできごと

7/14.会報第30号発行
7/19.証人採用と公正裁判を求める署名1,510人分提出。累計は4,810人分に
7/22.中国政府が「法輪功」を非合法団体と認定
7/23.ライフスペースが死亡事故裁判控訴審でも敗訴(大阪高裁)
7/23.広島高裁岡山支部で浅見定雄証人に主・反対尋問
7/23.浅見定雄氏講演会「ハルマゲドンとカルト宗教」に60人参加
7/27.名古屋高裁で西田公昭証人に反対尋問
7/29.リトルエンジェルス米子公演が主催の民団米子支部の会場キャンセルで中止
8/18.東京地裁に福岡・東京の元統一協会員3人が「違法伝道」被害で提訴
9/ 2付『世界日報』が8/30付『琉球新報』のコラムを盗用→9/5謝罪した
9/ 3.ライフスペース第3回裁判で準備書面提出
9/10.全国弁連札幌集会に参加
9/16.福岡地裁で霊感商法訴訟原告36人が勝利和解。原告2人は12/16判決に。
9/23付『週刊宝石』に「トライ」記事
9/25.岡山ユネスコ協会に世界平和女性連合について説明
9/28.名古屋高裁の増田善彦証人(鮮文大学・神学大学院長)への主尋問は延期
10/ 6.日弁連シンポジウム
10/22.ライフスペース第4回裁判
10/25.支援する会幹事会
10/28.証人採用と公正裁判を求める署名523人分提出。累計は5,333人分に。
(ホームページの掲示板には、統一協会に関するいろいろな相談とそれへのアドバイスが毎日のように書かれています)

これからの主な予定

11/18(木)名古屋高裁で増田善彦主尋問
11/26(金)14:00~第4回裁判(増田善彦証人尋問、高裁岡山支部)
11/27(土)18:00~支援する会第10回総会にご参加ください。
 (食事付で参加費4,000円。会場は桃花苑=岡山市駅前町2-3-31)
2000年
3/17(金)13:00~全国弁連集会(東京)
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