カルト被害を考える会 会報 2010年7月・第60号
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石井研士教授(宗教学)を迎えて講演会ひらく

石井研士教授  カルト被害を考える会は5月29日、国学院大学の石井研士教授(宗教学)を迎えて、占い・スピリチャルブームからカルト被害を考える講演会を岡山市北区奉還町のオルガで開きました。講演の要約は次のとおりです。

「占い・スピリチャルブームからカルト被害を考える」

 国学院大学の石井です。よろしくお願いいたします。
 私の研究テーマは、現代日本人の信仰や制度なんです。こうしたことに関して戦後の変化を追いかけていきますと、単に統一協会が新たなテクニックを開発してどんどん信者を増やしているとか、あるいは勢力を増しているとかということではなくして、統一協会は何もしなくてもですね、統一協会が活動しやすい、ある意味では何もしなくても先方の方から飛び込んでくるような宗教状況といいますか、文化状況といいますか、そういうものが戦後60年の間に構築されてきていて、おそらくこれからもそうだろうということが見え隠れしてきます。

パワースポットの奇妙な光景
 平成14年ごろからパワースポットのブームが始まるんです。だいたいブームというのは数年で終わるんですが、現在まで続いているどころか、どうも相対的に量が多くなっている、そういうことが分かっております。テレビもしくは週刊誌等で取り上げられる頻度がどうも多くなっている。ところがあちこちで聞いてみますと、どうもとんでもないことが起こっているようだ、ということなんです。
 最初に書いてありますのは「清正井(きよまさのいど)」と読みます。明治神宮に菖蒲園があるんです。その菖蒲園の中に池がございまして、そのまん中に井戸があります。昨年の年末にある芸人がテレビでこう言った。「明治神宮の清正井に行って、井戸の水面を携帯で写真を撮って待ち受け画面にすると願い事がかなう」と言った。そうしたら、それが瞬く間に流布致しまして、多くの若者が並ぶようになったわけですね。 明治神宮の権宮司と話をしていましたら、「いや石井さん、今大変で、混んじゃって」と。どのくらい並んでるのかと尋ねたら、最長5時間だったそうです。しかもそれが一列に並んで、1人が行って撮ったらば、帰ってきて、次に1人が行く。極めて整然と撮影するんだそうです。複数で行ってカシャカシャと撮ればどんどん掃けるのに、それはしないんだそうです。最終的には5時間並んでも、自分と清正井が1対1になって、その写真を撮って待ち受け画面にすることが重要なようですね。権宮司は、「清正井もいいけど、ちゃんと本殿にお参りしてくれる方がいいんだ」と言っておりました。
 レジュメに「大神神社に集まる若い女性たち」と書いておきましたが、これも最近のパワースポットのテレビの特集で取り上げられたんだそうです。大神神社というのは、ご神体が山で、山の上に拝殿とか本殿がないんです。大神神社のふもとに拝殿があるんですが、宮司さんがこう言うんです。「最近、若い女性の参拝者が相当増えている。なぜかわからないけれど増えている」。しかも参拝に来ると、「山に向かって手を挙げてじっとしている」と。こういう方式は、神社の参拝様式にはないですね。それが、若い女性が並んで、山の方に向かって、みんな手を挙げて立っている。「あれは何なんですかね」と言われて考えると、どうもテレビで、情報として大神神社がパワースポットであると紹介されたということがわかりました。エネルギーをもらうために、手を挙げているということのようなんですね。これが巷に広まった。
 伊勢神宮にも例年に増して多くの人々が参拝しているんです。今年は1000万人を超えるのではないかと言われております。あと3年後ですが、式年遷宮という大きなお祭りがございまして、「神社会の広報がだいぶ行き届いている」と言う人もいるんですけれども、違いますね。間違いなくこれは、世界遺産とパワースポットのブームによるものですね。伊勢神宮の神職に聞いたら、「最近参拝の仕方が変だ」というんです。内宮への参道に大きな木があるんです。直径が1.8mとか2mとか。その木に抱きついているんですって。あっちこっちの木に抱きついている人が参拝者にはいる。こんな光景って、私ずいぶん行っていますけど、見たことがないです。どうもその木っていうのが、聖なる木である、パワーがあるという言い方をされているそうで、若い女性がその木に抱きついている。
 どうも伝統的な意味でのお宮の参拝、あるいは信仰ではなくて、パワースポットブームで、形態が違っているようです。しかもこれが大ブームになっているわけですね。どうしてこんなことが起こるのかっていうのは、たいへん不思議ではあるんですが、一応私の中では、解決している問題です。

霊的なテレビ番組はストレートに届く!?
 今の話でもお分かりだと思いますけれども、テレビの影響、雑誌の影響が大きいということが1つあるんですね。ただ考えてみますと、テレビで言われたからすぐそのまま信じるとか、やるということには、必ずしもならない。テレビで私の本を宣伝してくれたら、飛ぶように売れたとか、そういうことはないわけでして、われわれは情報の信憑性を取捨選択しながら、考えてるわけだと思うんですが、どうもパワースポットだとかスピリチュアリティに関しては、ストレートに届いているようです。大神神社に行って手を挙げるとエネルギーがもらえるらしいとか、そういう浅はかな部分が何なのかということを知るためには、日本人の宗教性の変化を考えないといけないと思っております。

日本人の宗教性の変化
 前のページに1つ大きなグラフがあります。見ていただきますと、この質問は「信仰がある」と答えた人の割合です。「あなたは何か信仰をもっていますか」、「あなたは何か宗教を信じていますか」という質問に「はい」と答えた人の割合の変化です。一目瞭然でして、戦後間もなくが一番高いんですね。だいたい6割から8割の間くらいですか。おそらく戦前、さらには戦中ぐらいまではもっと高かったというように思います。これは、信仰があるからと言って、教団に入っていることを意味するわけではありません。ただ信仰があるかと聞かれると「はい」と答える方が多かったということなんですね。
 ところが60年経ちますと、減ってきておりまして、現在は3割を切っているのが実情です。あなたは何か信仰があるかと聞かれて、60年の間に数値が半分になった、あるいは多数派であった人たちが少数派になっているんです。現在は30%を切っている、完全なマイノリティーになっているんですね。これは信仰が「ある」、「なし」なものですから、他にもいくつか見ておきたいと思います。
グラフ1  たとえば次の折れ線のグラフをご覧ください。
 これは、大学もしくは高校を卒業して初めて社会人になる若者、だいたい5000名ぐらい、毎年同じやり方で行なわれている調査の結果です。質問は「宗教は大切だと思いますか」です。「大切だ」、「大切ではない」という答えですね。1980年代の初めは「大切だ」が約40%、「大切でない」が約30%でした。これが1980年代半ばに交差して、1990年代後半からは「大切だ」が約20%、「大切でない」が約60%になっております。「宗教は大切ではない」なんです。
 もうひとつのグラフ、横棒のグラフが並んだのをご覧ください。これは、「次に挙げるような制度・団体を信頼できますか?」という質問です。左側から黄色いところまでが「信頼できる」、「まあまあ信頼できる」というものです。上から見ていきますと、「裁判所関係・司法制度」は、かなり信頼できるようです。「まあまあ信頼できる」まで入れると7割を超えております。「信頼できない」とする方はほんとにわずかです。これが、「学校・教育制度」になりますと、減りまして、でもまだ55%くらい。半数以上の日本人は、「学校教育制度」は「まあ信頼できる」としている。ところが、「企業」になりますと、これが4割ぐらいになります。さらには、「宗教団体」になりますと、32〜3%。「国会」になりますと、もう2割を切っている。今だったら、もっと減っているのではないかと思います。場合によりますと、宗教団体と国会の信頼度が逆転しているデータがあります。「国会」よりも「宗教団体」の方が「信頼できない」ということですね。問題はこの中身ですね。ここでの宗教団体は、一般的には新しい宗教団体を指すことはよく知られております。最近は、この中にお寺が入りつつあります。

かつては生活の中に宗教があった
 先ほどもお話ししましたが、どうもテレビの存在が大きいんじゃないかなということはうすうす感じておりました。というのは、今申し上げましたように、日本人の信仰というのは、戦後弱くなっているようなんです。戦後は「信仰有り」が多かった、6割、7割、場合によると8割ぐらい。「信仰有り」とした人の多くは教団に入っているわけじゃないんです。だけど、われわれの日常生活の中にかなり宗教というのは影響力があったようです。
 太宰治という作家がおりまして、最近また人気になっておりますが、太宰治に『晩年』という作品があります。彼の幼少の頃を書いた半自叙伝ですが、その中にこういう話があるんです。彼は津軽の大地主の息子ですよね。経済的に大変豊かな家に生まれたんです。いろいろ忙しかったんだと思いますが、お母さんに面倒を見てもらうよりも、おタケさんという女中が面倒みていたようです。おタケさんは、太宰治をときどきお寺に連れて行ったそうです。浄土宗系のお寺に行くと、そのお寺に地獄図の屏風が置いてある。おタケさんは説明するわけですね。「坊っちゃん、嘘をついちゃいけませんよ。嘘をつくとこうやって閻魔様に舌を抜かれるんですよ」、「人の物を盗んではいけません。盗むと血の池地獄に落ちるんですよ」と説明する。あるいは、他のお寺へ行って、入口にマニ車があるんだそうです。こういう円いやつで、柱が通っているんです。カラカラと1回まわすと1回お経を唱えたことになる。あれが置いてあって、おタケさんが回すんですね。回して、ピタッと止まると、極楽浄土に生まれかわる。これがカタンと戻ると、その人は地獄に落ちるんだと言われる。おタケさんは何回やってもピタッと止まるんですね。で、「坊っちゃん、私は死んだら極楽浄土に生まれかわるのよ」と言う。太宰治は1人でおタケさんがいないときにそのお寺に行って、マニ車を回してみる。何回やってもカタンと戻る。太宰治は「僕はぜったい死んだら地獄へ落ちるんだ」と思っていた。日常生活の中に、仏教的な信仰というのは生きておりました。あるいは儒教的なものもありましたし、そういうものは広くわれわれの生活の中に生きていた時代があったようです。

戦後、宗教団体に対する批判が強くなった
 そういったものが戦後急速に壊れていった、消えていったという事実があるんですね。しかも、そういった日本人の信仰のあり方が、生活と結びついた信仰が、薄くなっているだけではないんです。なおかつ、宗教団体に対する批判が、極端に強くなってきております。これは、1995年のオウム真理教の事件があっただけじゃないんです。その前から一貫して宗教団体に対する批判というのが強くなってきたという傾向が世論調査で読み取れました。1980年にイエスの方舟事件があって、ワイドショーであれだけ取り上げられて、あれはキリスト教の団体だということを標榜していたわけですけども、何かファナティック(狂信的)だと言われて、で95年にオウム真理教事件があって。4年前ですが、みなさま方覚えていらっしゃいますでしょうか、パナウェーブ研究所。白装束集団というとお分かりになりますか。山肌を布で白く覆って、「スカラー波を受ける」とか、白い車にカタツムリのマークをたくさん貼って、のろのろと隊列を組んで移動していた車を日本人は追っかけまわしたわけですね。オウム真理教事件の時に、あれだけ、TBSが坂本堤さん弁護士一家を殺害する契機となった素材を見せて(早川紀代秀はそれを見て殺害を決意するんですね)、ああいった集中報道が批判されて、反省があったはずなのに、それが数年の後に、高だか隊列を組んでいただけで「オウム真理教の初期に似ている」と警察庁長官が言った。田中優子さんという江戸学の法政大学の教授が「オウム真理教とそっくり」とワイドショーで言った。そういうものを契機にワッと飛びついて、夕方5時50分ぐらいから始まるニュース報道で集中報道したわけですよね、怪しげだと。そういう宗教団体に対する忌避感、嫌悪感というのは非常に強いです。
 100人ちょっとの学生さんがいる講義で話をして、宗教団体のイメージを聞きましたら、99人が、宗教団体は3つの言葉で集約できるという回答でした。「やばい」、「危ない」、「危険だ」、これがレポートの冒頭だったですね。驚きました。たった1人、「宗教はたいへん重要なものだ」と答えたのは、カトリックの信仰をもっている女子学生でした。基本的に日本人は信仰をもっていないわけですから、直接被害に遭っていなくても、危ないとは思っている、危険だとは思っている、最近はどうもその中にお寺も入ってきているようです。

宗教団体の影響力は弱まって、

テレビ・雑誌からの宗教情報を無防備に受け入れる
 では、なぜ統一協会等の被害があとを絶たないのかといところが問題ですね。今の話で、ちょっとお分かり頂けたも知れないんですが、「われわれの生活から宗教に対する影響力が失われている」、「宗教団体に対する嫌悪感がある」、あるいは「お寺、神社との関わりが薄くなっている」―という調査データがたくさんあります。神社にわれわれ行かなくなっているんです。祖先崇拝で、お寺との縁はどんどん遠くなっている。『おくりびと』の映画をご覧なりましたでしょうか。納棺師を主人公にした映画で、アカデミー賞をもらいましたが、あの映画の中に納棺師は出てくるんですが、お坊さんは出てこないんです。あるいは、『千の風になって』。あの歌詞を覚えていらっしゃいますか。冒頭ですよね、「私はお墓の中になんかいません。死んでなんかいません」。仏教界がたいへんな危機感を感じたという歌です。われわれは実は「死」という重大な局面に対しても、もうお坊さんとは関わらなくてもいいという傾向が広がってきているわけですね。
 じゃぁ、いったいどこで、特に若い人たちは、宗教に対する情報を感じて、宗教団体と言われると「ノー」と言うけれども、パワースポット、占い、スピリチュアルというと、無防備に受け入れる、それはどこから入ってくるのか。間違いなくテレビ、雑誌ですよ。つまり、制度・団体としてのお寺、神社、キリスト教、新しい宗教団体の日本人に対する影響力は弱まっているわけです。宗教的に空白状態が生まれている。
 家には仏壇も神棚もないという家がすごくたくさんあるんです。いま神棚、全国平均で神棚があるというお宅は何割ぐらいでしょうか。だいたい4割を切っております。東京で何割ぐらいでしょう、25%を切っています。ですから東京では、神棚がある家は珍しいんです。おそらく5年先に調査すると、2割に近づいていると思います。しかも日本の人口の6割は、南関東―東京を中心としたエリアに集中しているわけです。神棚があるのが多いのは、地方で、第1次産業に関わっていらっしゃるお宅ということがはっきり分かっております。神棚は捨てないけれど、新しくできた核家族とか単身世帯に神棚がないわけです。
 仏壇の普及率は全国平均でどれくらいでしょうか。戦前、戦中までは100%だったといわれています。現在全国平均で6割を切っております。東京で5割を切りました。おそらく、間もなく4割を切るでしょう。神棚も仏壇も見たことがないという子どもさんがたくさんいるわけです。
 そういうお宅にですね、先祖のたたりの話がどこからか入ってくるわけです。これまでの祖先崇拝が存続していれば、祟りなんて言われたときに、「何言ってるんだ」と分かったんだと思いますが、今の若い方々には、祖先崇拝も地域の信仰である氏神崇拝もないんですよ。まっさらなところに、いきなり「先祖の祟り」と言われる。しかもそれは、怪しげな宗教団体から言われたならば、多少はブロックできるかもしれないですけれども、それがテレビで言われるわけです。テレビは今、宗教団体よりも、若い方々に宗教という情報を伝える一大勢力なんですよ。まずこれが一番重要なことですね。

ユリ・ゲラー特集で視聴率25%が出てから
 1974年に日本では宗教に関するある種の情報がテレビで爆発的に増大するんですね。なぜ1974年に急速に増えたかってお分かりになりますか。ある出来事があったからなんです。ユリ・ゲラーの特集があったのが、1974年の2月なんです。あれでわれわれはスプーンを曲げるのを初めて見るわけなんです。私も記憶がありますけれども、「スプーンが曲がる!?えー?!」という感じでした。今でも覚えていますけれども、番組の最後に、「みなさん方のお宅に壊れた時計が1つや2つあるでしょう。持ってきてください。私もテレビ局の方に用意していただいた壊れた時計がここにあります。この腕時計を『動け』と念じるから、皆さんもいっしょに念じてください。動いたら、この電話番号に電話してください」。スタジオに電話のブースが5台とか6台用意されていて、女の子が座っているわけですね。ユリ・ゲラーは手に持って腕時計に「動け」と念じるわけです。「動け」と念じていると、動くわけですよ。そうすると、それを見計らったかのように、全国から電話がジャンジャンかかって、「時計が動いた」、「念力は存在する」ということになって、番組は終わるわけです。
 あれは確率ですよね。動かなくなった腕時計って動くんですよ。古くなった腕時計の故障の原因は、油が固まっているからなんだそうです。だから、あれを手に持って熱をくわえてやると、動くんだそうですね。問題は、それがいつまでずーっと動いているかどうかということで、また止まるわけなんですけれども。電話がかかってくるのも、仕掛けがありますよね。つまり、あの時の視聴率が25%ですか、全世帯の25%が見ていて、その中で動いた人が例えば1%だとしますか、時計を持ってきた人が1%だとします。その1%の中でなおかつ電話をしてきたのが1%だとしても、もう5−600になるんです。実は、日本全体の0.0何パーセントの人が電話して「動いた」と言っているのに、テレビ局のブースにはジャンジャン次から次かかってきてるように見えるというだけですね。テレビ局のことですから、サクラを用意していたということも十分に考えられると私は思っています。
 1974年ですが、超能力、心霊番組、占いの特集が、その年だけで40あります。その前の年は、たった2つです。12月にユリ・ゲラーが来てやった番組が1つ。そのほかに1つあっただけ。1974年から40とか、毎年すごい数の特集番組が組まれて、現在に至るわけです。ちょうどテレビの普及率が90%を超えまして、どのお宅にもテレビがある。つまり一般大衆がテレビを見るようになった段階で、テレビはエンターテイメント(娯楽)として、そういう超能力番組、心霊番組を創り出したということなんですね。繰り返しますけど、その当時は、こちらで笑って見ていりゃよかったわけです。怪しいけど、まぁ面白いから見ていると。
 でも今は状況が違うんですよ。宗教に関する常識は存在しないんです。そこに細木数子さんの番組がバーっと流されて、1週間の全ての番組で最高視聴率をとる。翌週、違うチャンネルで、細木数子さんの特集が流されて、その1週間で、野球とか、ニュースとか、ドラマとか、全ての番組を含んだ視聴率で最高となり、最高の視聴率を2週間続けてとったというようなことが起こる。
 超能力者が大阪で起こった事件を透視する。大阪で朝、出勤する看護婦さんが、通り魔に刺されて亡くなったという事件を覚えていらっしゃいますか。その数日後に、また若い女性が朝、刺されて重傷を負った。目撃情報からすると、自転車に乗った女だということだ、騒然とするわけですね。で、そういった犯人が誰かというのを超能力で探知するという番組をテレビ東京が制作した。有名な霊能者、“この女性はこれまで8000件の事件を解決してきた”という触れ込みでくるわけですね。現地へ行き、そこに残っている残留思念を読むっていうんです。第1の現場、看護婦さんが刺されて亡くなったところへ行って思念を読む。で、2つ目の通り魔のところへ行って残留思念を読むんです。で、その女性霊能者が言ったのは、「これは全く別々の犯行だ。第2の犯行は模倣犯だ」、しかも「これは女装した男だ」と言い切ったんです。ところがその3日後、犯人の女性が捕まりまして、同一犯だと分かるんですね。ところがテレビ東京は、訂正番組を流すわけでもなく、またその霊能者を呼んで、“この女性霊能者は8000件の事件を解決した著名な霊能者”ということで、また別の事件を透視させる。
 こういうことをテレビは繰り返してきたわけです。しかもですよ、これはバラエティ番組なんですよ。情報番組ではないんです。裏付けをとった情報番組ではなくて、バラエティ番組として放送されていくわけですね。しかしこれが、どうも若い人たちにはストレートに通じているようですね。「霊を霊視することのできる超能力者は存在すると思うか」とかですね、いくつか質問したことがあるんですが、かなり肯定回答が高かったですね。  テレビの影響力を直接測定することは非常に難しいんだそうです。マスコミュニケーション論だとかですね、社会学の1分野であるんですけれども、メディア論とか。このテレビの番組を見たからこういう考えを抱いているんだとか、このテレビを見たから事件を起こしたという直接の関係を見いだすことは、調査結果を得ることは非常に難しいんだそうです。ただですね、こういう結果、私がこれから申し上げたような結果を見ると、影響があるんだと思っていただけると思うんです。ちょっと表をご覧ください。詳しいことは書いておりませんが、かなりの学生にやったアンケート調査です。

大学生の宗教観・宗教性に関するアンケート調査
グラフ2
 死後の世界は存在する…54.9%、死後・霊魂は存在する…51.1%、輪廻転生はある…48.8%、祟りはある…52.2%、霊の存在を霊視することのできる霊能者は存在する…82.7%、テレビ番組に出てくる心霊写真は本物だ…59.4%(偽物ですよ、あれ。ディレクターがよく言ってますもの、99%は偽物だと。だけど、これは偽物だと言えない写真がいくつかある。それは、偽物だと言えないだけで、本物だという証拠じゃないんですよ。どうやって撮ったか分からないというだけで、写真、特に普通のフィルムで撮る写真というのはかなり光学的にいろんなことが起こるんだそうですね。どこからか光が入って違うものが写るとか、いろんなこととかがよくあるんだそうですね。なのにこういう数値ですね)、宜保愛子は本当に霊視ができる…15.0%、ユリ・ゲラーの超能力は本物である…29.7%、スプーンが曲がるのは超能力による…10.5%。
 霊魂とか死後の世界、輪廻転生、これは日本にもあったものです。別に仏教の思想ではなくて、日本人の古い霊魂観の中に輪廻転生というのはあるんですよね。例えば子どもさんがたくさんいた時代、1人の女性が5人8人産んだ時代というのが、今から60年ぐらい前にはあるわけですよね。そういう時に、小さい時に病気で亡くすということは頻繁に見られたわけです。そういう場合にお母さんが子供の手とか足とかに墨を塗ったりしたんだそうですね。また子供が産まれてくる。子供の手とか足にあざがある。あっ、この子はあの子の生まれ変わりだということをよく言ったんだそうです。ただ今は、学校で宗教に関して教えない。別に宗教者の方も教えるわけでもない。家庭で教わるわけでもない。にもかかわらず、今の若い方は、「輪廻転生がある」という回答が非常に高く出るんです。
 みなさん方、佐世保でもって、小学校6年生の女の子が同級生を刺したという事件、覚えていらっしゃいますか。毎日新聞支局長のお嬢さんが刺された。私は、気になっていたもんですから、かなり丹念に地元紙もずーっと追っかけて、家庭裁判所審決の記録も持っております。気にしていたのは、謝罪なんですね。なかなか謝罪しないなと思っていたら、1か月後ですか、女の子が謝罪したという記事が載りました。あぁ、謝罪したのかと思って読んだら、感じが違うんです。何かというと、その女の子が、「私が刺して殺しちゃった○○ちゃんに、直接会って謝りたい」と答えていたんです。首かしげたわけですよね。直接会って謝りたいってどういうことなのかと思って調べましたら、こういうことでした。近々、その死んじゃった女の子は、生まれ変わってまた人間になる。だから直接謝れるんだ。これはですね、仏教信仰でも、日本人の古い霊魂観でもありません。まったく新しいものですね。
 これに驚いた長崎県は、長崎県下の小学生と中学生に緊急アンケート調査をいたしました。生と死に関する調査というものでご、その中にこういう設問があるんです。「人は死んでも生き返るか」。これに対して、小学生が15%、人は死んでも生き返ると答えています。驚いたのは中学生で、2割近くが、死んでも生き返ると答えています。小学生はまだ幼いので、生き返ってほしいという願いもあって回答していると、中学生になればもう少し分別が付いて、そういうことは常識で起こんないということなら分かるんですが、そうじゃなくて中学生の方が肯定回答が高いんです。ということは、受けている情報量が多いからですね。その情報はどこから流されてくるのか。テレビですね。考えてみるとテレビでワイドショーなどたくさんやってるんですよ。私が申し上げているのは、心霊番組、それから超能力番組などで、あるいはマンガ、映画などを入れますと相当量あるんです。その佐世保でもって女の子を殺してしまった子供さんですね、その子は韓国系のホラー映画、日本のホラーの小説をたいへん好きで読んでいたということが分かっております。どうも広い意味で、カルトの被害の土壌を作っているのは、テレビなんじゃないでしょうか。

バラエティ番組だったら何を流してもいいのか
 バラエティ番組のそういう内容に対して、規制はかからないんです。はっきり言ってしまえば、私、ディレクターに言ったことがあるんですけれども、「こういう番組ってまずいじゃない」と言ったら、そのディレクター何と言ったと思います?「いや石井さん、いいじゃない。どうせバラエティ番組なんだもの」。バラエティ番組だったら、視聴率が取れれば何を流してもいいんでしょうか。しかもですね、こういう番組に対して無関心なのは、制作者だけじゃないんですよ。制作者が作るのは、視聴率が取れるからなんですよね。見る人間がいるから作るわけなんです。こういったものに無関心なのは、私が具体的に言っておりますのは、まず放送局ですね。制作する側だけではなくて、こういう番組を流していいかどうかというちゃんと基準があるんです、番組放送基準という。放送局には考査というセクションがあるんです。作った番組が放送基準に合うかどうかというのを審査する部局があるんです。それを通っているわけです。さらにですね、外部団体に、そういったものに対する苦情を受け付けるBPOという機関がありますよね。最近、BPOがかなり活躍していて、人権問題に関しては、はっきり「問題がある」ということを言ったりします。だけど、こういう番組に関しては、言わないんです。さらにですね、日本PTA全国協議会というのがございます。PTAの全日本の組織です。この全国PTA協議会が、毎年テレビ番組に関して、ワースト10、ベスト10を出しているんです。これは子供に見てほしい番組、これは子供に見てほしくない番組というのを毎年、もう20年ぐらい公表しているんですよ。ところがその番組に、私、全部調べましたけど、1つとして超能力番組とか、霊視番組とか、占い番組が挙がったことがないんです。だから、お母さん方もこういった番組が危ないと思ったことがないんですね。なおかつ、こういう現代社会の宗教の研究をしている研究者も、こういう番組が危ないと言ったことがないんです。研究者の場合には、だいたいテレビ見ませんので、私もサッカー番組とニュース以外は、ドラマも何もみません。映画も見ません。テレビを見てないんですよ、知り合いに聞いても、だいたい忙しいので。だいたいテレビって馬鹿にしていますから、研究の対象にならないわけですよね。しかし、そうこうしてるうちに、ちゃんとした宗教団体の影響力はどんどん薄れ、残念ながらキリスト教の影響力もどんどん薄れているということが分かっております。家からも神棚、仏壇という非常に一般的な生活の中の宗教が消えていき、一方で、テレビからは、1974年以降、相当まとまった宗教に関する偏った報道がされている。これが危ないということをやっぱり言わなくちゃいけないだろうというふうに思っております。
 このことを知っていただきたくて、手に取っていただきたいということで、新書版を書いたということです。読んでほしいというのが私の思いで、お陰さまでかなり読んでいただいているようです。朝日新聞と読売新聞にこの本を写真入りでかなり大きく取り上げていただきました。この問題に関しては、新聞社には伝わったようです。研究者からも多少反応がございました。宗教団体からも反応がございました。まったく反応がなかった業界が1つございます。テレビ業界ですね。まったく反応がありませんでした。私、どっかの審議会とかなんかから呼ばれて、要約して説明してくれと言われるんじゃないかということを期待していたんですけれど、テレビ関係の業界からは、これまで全く声がかかりません。むしろ、あの業界に一番読んでほしいと思っているんですが、だめでした。しょうがないから、これからはいろいろな機会に“お前ら反省した方がいい”ということを少し言おうと思っているんですが、そういう状況でございます。 レジュメの2ページ目のところに、2003年(平成15年)の番組のタイトルで、どれだけ心霊関係、超能力関係の特集があったかの一覧でございます。これ一覧を作らないと、こんなにあるのかと気がつかないものですから、一覧を作ってみました。かなりあると思いませんか。特集ですから、1時間半から2時間という番組ですよ。ちょっと下の方からお読みになって下さい。「UFO・未確認動物超能力」、「奇跡体験…恐怖スペシャル」、「世界的超能力者…未解決事件…透視」、それから「最強の占い師細木数子」、「魔界潜入…怪奇心霊?ファイル」、「ポーランドから女性超能力者」、「超能力捜査官」。

私スプーン曲げられるんです(省略)

教養番組としての宗教は非常にわずか
 一方で、宗教団体が提供するような宗教の番組は、ほとんど流れておりません。宗教団体は、テレビで放送できないわけではないんです。例えばキリスト教団体がある時間を買い取って番組を流すんです。そうすると、待ったがかかるんです。イエスがですね、「目の見えない人の目を開けた」、「イエスが死者をよみがえらせた」、新約聖書に書いてあります。そういう発言をすると、テレビ局からストップがかかるんだそうです、収録の際に、「そういう非科学的なことは、番組では取り扱えない」と。宗教団体が流そうとすると、ストップがかかるんですよ。
 なおかつ、教養番組としての宗教は、非常にわずかです。NHKが日曜日に放送しております『こころの時代』ですね。聴取率が1%ほどしかございません。ただ、1%といっても、NHKでは100万世帯ですね。『こころの時代』がラジオ放送になっておりまして、ラジオ深夜便で夜中の2時ぐらいから、映像はありませんけど音声だけ流れます。それは聴取率が0.8%ぐらいだそうです。ですから80万世帯。夜中に流れて80万というのは、相当なパーセントだといわれております。そのほかにはですね、民放ではほとんど流れておりません。つい数年前までは、日本テレビで『宗教の時間』という番組をやっておりました。日替わりで宗教団体の方々に割り当てて、放送するという番組でしたが、日本テレビが一方的につぶしました。これは、正力松太郎さんが昭和32年ですね、鳴り物入りで、つまり、テレビ局ってのは公益事業なので、公益性を果たすために宗教家に話をさせた方がいいと判断して、時間を無償で提供する、制作もすべて日本テレビでやるということで放送がずーと続けられていた番組ですけれども、その番組を一方的につぶしました。いまテレビ局は、早朝から深夜まで、ゴールデンアワーだそうです。つまり、無償で提供するのではなくて、その時間を売れば収益になるわけじゃないですか。
 今ですね、教養番組で宗教関係の時間がいちばん多いのは、世界遺産です。モンサンミッシェルであるとか熊野ですとかマチュピチュであるとかが流れます。ただですね、最近の傾向で言いますと、宗教関係の番組は、ほとんどが世界遺産に集約されちゃっているようです。それ以前は、けっこう宗教の特集があったんです。『神々の歌』ですとかですね、いろいろな未発見というのかな、おもしろい宗教に関する、精神文化に関する映像があったんですが、最近は世界遺産を取り上げればOKということのようですね。ですから、世界遺産にならないと取り上げてくれない。宗教文化がたくさんあるのに、それは無視されて世界遺産だけに集約されていくというふうになっています。
 日本テレビは相当量の宗教に関する情報を流している。私、集計したことがあるんですが、バラエティ番組を除いて、ニュース報道の中で宗教に関するニュースは、年間で800時間ほど流れております。相当量の情報ですね。みなさん方ご覧になっている特集番組に換算して、例えば年間100本あったとすれば、もう200時間ですよねぇ。それだけの時間が放送されていて、宗教家の方々がなかなか若い方々に語りかけても、聞いてもらえない。お寺、神社で、お坊さん、神職の話が聞きたいということもない、一方で、こういう番組が、数千時間という時間ですね、総合的に宗教に関する情報が流されていて、そのうちのある部分を日本人や若い人たちは受け取るっていう、こうした状況がずーっと続いているということです。
 ちなみに、現在、バラエティ番組としての宗教番組は消えております。細木数子さんが番組を降り、江原啓之さんが番組を辞めて、いま真空状態なんです。これは、例えば若い方々に影響があるから、放送局が辞めたわけではなくて、放送局の事情で、制作費の事情のようなんですが、放送局の事情で今少しないんです。またちょっとやってみて、血液型の番組が受けたということになれば、血液型の番組がまた、だーっと作られるでしょうね。放送局の都合でなくなったものは、放送局の都合で増えますからね。そういう状態です。
 レジュメ2ページのまん中に、「探しもの」、「不思議現象もの」、「超能力もの」ってあると思います。これがテレビ局でいう、いわゆる私が宗教関連番組として考えているものの内容です。テレビ局では、こういうジャンル分けをしているんだそうです。
 「探しもの」は、雪男、ツチノコ、ネッシーなどのいわゆる未確認生物だそうです。イギリスのですね、ある州では、日本人がネッシーが好きだというのは、たいへんよく知られているそうです。ですから、地元の方々が、また水がバシャーっといったというと日本のテレビ局に連絡が来るんだそうです、「ネッシーが現れた」と。地元としては、テレビ局がやって来て取り上げられると、日本人観光客が来てたいへんよろしいんだそうですけれども。おそらくネッシーはいないでしょうね。一時期日本でも、湖にいると騒がれました。野尻湖のノッシーとかですね、猪苗代湖のイッシーとか、池の平湖のこれイッシーだったかな。やっぱりいないでしょうね。
 それから「不可思議現象もの」。UFO、心霊写真、心霊現象、幽霊の出る家、ミステリーサークル。ミステリーサークルは完全に人為的なものだったということよく知られていますね。学生さん知らないです。ミステリーサークルって、今に近くなるほど模様が複雑化しているんです。早稲田大学にいらした大槻さんが、実際に見に行って、プラズマ現象によるものだと断言したことがありますね。たった1ミリの差できれいに麦が折れているか立っているか、こんなことはプラズマじゃないとできないと言いましたけど、あれを作った張本人たちが、「すみません。僕たちが作りました」と名乗り出ておりまして、だんだん複雑な模様になってきているのは、だんだん作っているうちに技術が向上してくるんですって。それで複雑な模様が作れるようになったようですね。
 「超能力もの」。スプーン曲げ、占い、霊視、予言、気功。占いが宗教かって言われるんですが、宗教学ではれっきとした宗教現象として扱っております。アポロンやデルフォンの神託から始まって、神に対する伺いというのが入っておりますので、これは完全な宗教的行為、呪術的な行為と言ってもよろしいでしょうね。これがテレビでは野放しになっているほか、ジャンルとして確立しているということですね。

占い、超能力番組は放送基準でみると流せない
 レジュメではその後、放送法など抜き書きしておきました。テレビは、国民の健全な精神・文化を養うためになくちゃいけないということで、誰でも、どの企業でも放送できるわけではないわけです。免許制になっておりまして、公益性が担保されなくてはいけないので、競争があまり過度に起こるのを防ぐために、免許制で、極めて少数の者にしか放送は認められていないわけです。だから、公益性・公共性が柱にあるんです。アメリカではその公益性を果たすために、必ず宗教団体に無償で放送を流すような仕組みができております。アメリカでは、宗教放送を流せば、それは国民の公益にあたると認識されているので、そういう番組を作っているわけですね。先ほど言った正力松太郎さんが日本テレビで作ったのも、そういうものが背景としてございます。ところが日本の場合には、そういったものは作らないどころか、公益性を無視してかなり害のあるものを流しているということですね。
 3ページ目の7章をご覧ください。これは民間放送連盟の放送基準です。民放はすべてこの民間放送連盟の基準を基にして自分の局の基準を作っておりますが、これが基になっております。4項目あるんですね。「39項 信教の自由および各宗派の立場を尊重し、他宗・他派を中傷・ひぼうする言動は取り扱わない」、「40項 宗教の儀式を取り扱う場合、またその形式を用いる場合は、尊厳を傷つけないように注意する」、「41項 宗教を取り上げる際は、客観的事実を無視したり、科学を否定する内容にならないよう留意する」、「42項 特定宗教のための寄付の募集などは取り扱わない」。ちなみに、アメリカの宗教団体はすべてこれはできます。アメリカでは、電波は国民のものという意識が強いので、自己責任でこういうものは流して、視聴者の自己責任で見る見ないというのを考える。日本の場合には、電波は国のもので、規制が働くということですね。
 もう少し直接関わる基準があるんですが、この中身を見ますと、実は、占いとか超能力番組って流せないことになっているんです。3ページの一番下をご覧いただけますか。「8章 表現上の配慮」がございまして、「53項 迷信は肯定的に取り扱わない」。で、次のページの「54項 占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」。細木数子さんの番組は、この基準に合わせると放送できないんです。「あなたは私の占いが信じられないの。地獄に落ちるわよ」と言ったのは細木さんでしょ。あれは明らかに脅してるんじゃないですかね。もう霊感商法といっしょですよね。実際、細木数子さんがテレビに出たということでもって、どれだけ莫大な収入を得たのか、ですね。毎月ごとの占いの本が、どの本屋やキヨスクにも置かれるようになって、あれで莫大な費用を獲得したわけですね。あるいは、勉強会で1人1万円取って、特別占いといって1人10万円取って、相当量の金額を挙げたということは分かっているわけです。テレビ局は、いかに細木数子さんのPRになっているかということを十分承知で、レギュラー番組を何本も作って登場させる。それは、言ってみれば、やっぱり統一協会のような行為を助長することとかわらない。さっき私が口頭で言った「手相を見せてください」、統一協会が「これはあなた転換期で、こうしないといけないわよ」と言ってるのといっしょですよね。そういう問題点っていうのをテレビで広く若い方を中心に涵養し育てているんです。
 これは、ぜひ何とかして止めたいと思います。だけど、止める組織・機関がない。私、テレビ局にメールとか電話をして、これはお宅の番組基準からいって絶対放送できないはずだ、正式に回答してくれとまで言いましたけれども、回答があったのは1回です。孫請けの会社に作らせたその孫請けの女性ディレクターが電話してきて、「これは番組に流せないだろう」という言い方をしたときに、いや、自分たちは基準に合っていると思っているという平行線で。「苦情処理をしろ」と言われて、やむを得ず電話してきたということだったようです。何の理論上の進展もなく、平行線で終わって仕方がないということで電話を切る。BPOなどに問い合わせるにしても、人権問題じゃないと取り上げていただけないです。私がそういう番組で人権侵害を受けたということがあればいいんでしょうけども、まBPOでは取り上げられないということです。被害者弁護団の方々が数年前にBPOに対して要望書を出したことの方が、私が数年来やってきていることよりもはるかに影響力がありました。新聞が取り上げました。やはり組織でやらないと、こういう問題の被害は止まらないし、情報がいきわたらないなとつくづく感じました。
 レジュメの1ページ目の一番下のところに(2章)、テレビで流れている宗教に関するものは4種類あると書いておきました。バラバラにお話ししたので、確認しておきたいと思います。
 いちばん宗教的なものから順に挙げますと、「1)宗教団体が提供する番組」。みなさま方、最近、創価学会がコマーシャルを流しているのをご存じでしょうか。あるいは、年末年始になりますと、関東ですと佐野厄除大師をはじめとして、初詣厄除のCMがあるというのをご存じでしょうか。CMの規制条項を読みますと、宗教団体がそうしたCMを流すことを禁じる条項はありません。流したければ流せるんです。ただ、露骨にですね、信者の獲得か寄付の要求はできませんので、なんとなくイメージですね。創価学会も明るくさわやかなっというイメージでCMを流しておりますが、今実はテレビ局が赤字になっている、収益が悪化しているということがございまして、宗教団体に対して、広告会社を通じて、CMを流さないかってアプローチが行なわれているようです。テレビ局の収入が減ったことによって、宗教団体のCMが増えてくると、もしですよ、カルト的な教団が、そこまでまだ被害が分かっていない段階で、イメージ戦略のようなCMをどっと流すということが、起こってくるかもしれません。結果的に被害が現れたという場合に、テレビ局はどう責任をとるんでしょうか。被害が起こってなかった、知らなかったということで済ますんでしょうか。私は、かなり怪しいなあ、いけないんじゃないかなと思ってるんです。
 「2)教養番組としての宗教番組」というのがあるんですが、これは視聴率が低い、制作費がかかる、料金が高い、ほとんど効果がみられないということで、宗教団体はたぶん及び腰で、今ほとんど消えた状態です。
 問題は3番と4番で、4番(バラエティとしての番組)は先ほど申し上げました。「3)ニュース報道の中で流通する宗教情報」を簡単に説明しておきます。ニュース報道の中に、相当量、宗教に関する情報ニュースが流れています。先ほど申し上げましたように、大方年間800時間ぐらい流れているというものです。800時間というのは、毎日2時間の特集番組が1本以上あるという状況です。種類があるんですが、1つは事件報道です。この事件報道の中には、先ほど申し上げましたような白装束集団のような番組もありますし、ワイドショーで取り上げているようなかなりラフでいい加減な、扇情的な番組もございます。あるいは、こういう被害に遭った、訴訟が起こっているというような報道もございます。基本的には、宗教団体は、社会的に悪であるというイメージを植え付けていると私は言っているんです。理由は明らかで、宗教団体が公益的な社会貢献活動したときに、それは取り上げられないわけです。
 1例だけ申し上げますと、1995年、阪神淡路大震災のとき、真っ先に現地に入って、集団でボランティアで多くの活動をして貢献したのは、宗教団体なんです。創価学会も相当量、人と物とお金をつぎ込みました。真如苑も天理教もそうでした、立正佼成会もやった。いろんな教団が、布教目的ではなくて、人道的な活動を行った。しかし、そういう教団が、多くの教団がそういう事をしたという報道は、本当に、地震があってからかなり遅れて、朝日新聞が少し報道したように思いました。なんで他の団体、例えば、ある特定の企業が自分たちの社員を送りだしたという場合には、報道されるのに、10億円以上のお金を投下して、さまざまな物を持って行って、人手を与えてですね、自分の施設を解放して多くの方々を入れたにもかかわらず、テレビ、新聞は報道しないんでしょうか。明らかにメディアは、新しい宗教団体を嫌っているんです。これはバイアスです。宗教団体が一律に悪いわけではないんです。はっきりとわれわれは、特定の団体はまずい。でも社会貢献活動をしている教団もあるということを認知すべきですね。でもそれはマスコミが妨げています。
 それから、もう1つ伝統宗教のニュースが相当量流されております。例えば、7時からのNHKの番組で、ニュースがありまして、その最後の方ですね、天気予報なんかが終わった後です。ちょうど今、どこどこ神社では、秋祭りでこういうものがやられていますとか、どこどこのお寺の境内では、もみじが紅葉で見頃ですとかというニュースをみなさんご覧になったことありませんか。われわれは伝統的な神社・仏閣に行かなくなっているのに、テレビはその期間にどこどこでお祭りがありますという、伝統的な神社やお寺の情報を、われわれに相当時間定期的に与えているんです。われわれは、そういうことで伝統的な宗教に対するイメージを保持している面があります。
 おそらく4つのですね、大きなジャンルに分かれて、相当量の情報が流れている。でも、若い方は、バラエティ番組を中心にした、明らかに偏った内容の映像の影響を受けているでしょうね。あるいは、宗教団体の事件に象徴されるような、宗教団体はヤバイ、お金がふんだくられる、そういうもので殺人事件が起こった、というようなマイナスなイメージでしょうね。これは広い意味で日本人にとって非常にマイナスな問題になるなと思っております。

被害を食い止めるためには
 私は、今被害を食い止めるためには、テレビ局がきちんと、制度として、そういうニュースあるいはバラエティ番組を流すことが、国民にどのような影響を及ぼすのかということを認識すべきだと思っております。その上で、テレビという公益性を持った組織が、率先して、宗教に特化しなくてもいいです、精神的な番組を作る必要があると考えています。そういうことで、カルト的な行為に対応することが可能となる下地が出来上がり、事件がある程度予防できるのではないかと期待しております。弁護士や被害者の方々を中心とした運動は、これまでも広範に行われていて、非常に貴重であることは間違いない。われわれ宗教学者は学生さんに向かって危険性を指摘します。しかし影響力からいうと、バラエティ番組の宗教に負けるんです。1本、細木さんの放送が流されてしまえば、われわれが束になってもかなわないぐらいの影響力というのはあるんです。そういうことをテレビ局は認識して、お母さん方も、そういうものは子供にまずい、影響力があるということを承知していただきたいというふうに思って、本を書いて、いろんなところで話をしているような次第です。
 とりあえず時間の方がまいりましたので、映像を持って来たんですが、一応これで終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。


「ポラリス」(東京)の訪問販売員が特商法違反で逮捕
 7月2日、統一協会の神仏具店「ポラリス」(東京都町田市)の訪問販売員の女が特定商取引法違反容疑で警視庁に逮捕されました。女は「ご主人をがんから救う」などと虚偽説明して、女性に高額な数珠を売りつけたとされています。
 統一協会員の刑事摘発は、2007年11月の沖縄県以降、これで12件・39人が逮捕され、大半が罰金刑ですが、東京では懲役判決が出されています。


2010年度総会の日程きまる
 7月21日、カルト被害を考える会の第3回幹事会が河田法律事務所でひらかれ、同会の2010年度総会の日程と記念講演が決まりました。
 総会は11月6日(土)午後1時から、記念講演は同日午後2時からで、ともに倉敷めぐみ教会でひらかれます。そして、記念講演の講師は、京都の村上密牧師です。

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