1992年3月18日、岡山地方裁判所で、統一協会によって洗脳された元会員が、損害賠償を求めた「青春を返せ裁判」の第9回公判がひらかれ、前回に続いて原告Aさんへの本人尋問が行われました。
 前回までの証言は、−87年9月にアンケートに答えたことからビデオセンターに誘われ、霊界などのビデオを見せられた。翌年から次々と「占い師」(実は全て統一協会幹部)を紹介され、家系図を書かされ、親族の不幸を挙げて「この家系は潰れてしまう」と言われ、「あなたの先祖は武士で、人を切った。君は死ぬぞ」と言われた。そして、「君はメシア(救世主)=統一協会の文鮮明教祖に協力する使命がある。今このときを逃すと世界が滅びてしまう」と言われ、世界の平和のために働こうと思った。神の子になるためだと言われて全財産を献金した。そして、3日間の修練会(広島市可部)に参加した−という内容でした。
 今回Aさんは、概要次のように証言しました。

鼻水も流して泣いた(修練会)

 修練会での講師は、マイクを握り、心に訴えてくる。疑問は後で班長にしてくださいと言われている。緊迫した雰囲気で私語もできない。「すばらしい所へ来ているな」と思った。くたくたになった夜の九時ごろ、部屋の電気を消し、講師の所だけ明かりをつけ、ある手紙を朗読する。それに合わせてピアノが弾かれる。手紙の内容は、「戦争中、自分と同年代の人をあやめた。戦争後、相手の母に会いに行く。彼女は自分を許してくれ、息子のように可愛がってくれた」というものだ。最初だまって聞いているが、中にぽつぽつ泣き出す人がでてくる。講師が祈る。最初はゆっくり、徐々にボルテージを上げる。「自分たちは何と罪深いのか。それでも許してくれるんだ」という思いで、時には声を出して、鼻水も流しながら泣いた。どこがどう罪深いのかは、分からず。班長に、どうして鼻水を流すまで泣けたのか質問したら「君はまだ分からないだろう。君の先祖が泣いていたんだよ」と言われ、「霊界はある」と思った。 2日目からは更に真剣に聴くようになった。講義の後の面接の中、献身(=出家)しなさいと言われた。職場や親にまだ十分に説明できないので献身できなかった。

協会から職場に通う(新トレ)

 8月初めから2カ月間「新生トレーニング」を受けた。仕事の後、協会に通って2時間位の講義を聴き、そこで寝泊りした。いつも12時半ごろに寝た。朝6時に起き、食事、体操をして職場に行った。夜7時の講義に間に合わす、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」を上司にする、性に関することの禁止、酒・タバコの禁止という制約があった。10万円の給料は、生活費や献金などで8万円を納め、残りの2万円で寮費などを出すと、職場の付き合いができなくなった。

アンケートで誘う(実トレ)

 次に1カ月間の「実践トレーニング」を受けた。仕事が終わってビデオセンターに集まって、出発式をして出る。戸別訪問や路上(中央郵便局の前やビデオセンターの周辺)でアンケートをとってビデオセンターに誘う。夜9〜10時ごろまでして、協会に帰る。帰った後、蕩減条件を果たし、アンケートに答えた人に手紙を書いたりして、睡眠は5時間位になった。統一協会と名乗らないでアンケートでビデオセンターに誘うこと、ウソをつくことについては、それで地獄から救われるのだから、その人をだますウソではないと思っていた。アンケートは全部で20人位とれた。ビデオセンターには3人が入会した。
 また、絵画展も実態を隠してひらいた。誘われる方には展覧会と言うが、協会の方では売るためのものだった。天満屋近くのジョリービルで開き、3日間で1億円売り上げた。お客には「2時間くらい時間をとるように、紹介制である、絵を説明する人がつく、必ず1人で来るように、気にいったのがあったら買ったらいい」と言っておくよう指示があった。罪悪感が全くなく、買うことによって救われると思っていた。

親をだましても罪悪感なし

 心配した人が親に言い、叱られて家に帰らされた。協会の団長に相談して、「すいませんでした。統一協会をやめました」と親をあざむいた。親をだますことにも罪悪感がなかった。
 次は「青年実践部」に入った。青年部と学生部が共同生活する「ホーム」(岡山市津倉の津倉荘)で寝泊りした。職場、ビデオセンター、ホームを回る生活だった。睡眠時間は更に短くなり、深夜、徹夜の講義もあった。昼間は居眠りをし、付き合いも絶たれた。苦しかったけれど、「この道しかない。自分は犠牲になっても世界を救いたい。集められた金で世界を救う活動がされている」と考えていた。

心を乗っ取られていた(脱会)

 89年1月、協会と連絡がとれなくなった。キリスト教の牧師に説教されたが、協会の方が正しいと反発した。これまでは、疑問があっても、協会を疑えば親などが不幸に遭うので考えてはいけない、それはサタンの働きかけだと、すぐに疑問を打ち消していた。度々の説得によって、「協会だけが正しいのではないかもしれない。どちらも疑ってみよう」と思った。「アメリカが統一協会を受け入れている」と教えられていたことでは、通訳を入れてアメリカ人に聞くと、「知らない」と言われた。こうして2週間苦しんだ後、協会が間違いだと思った。ビデオセンターに誘った3人に会って話したら、通わなくなった。
 私自身、自分の納得したうえで行動した、と思っていた。今思えば、自分でない自分が作り上げられていたと思う。心を操作され、心を乗っ取られていた。それが許せない。精神的な損害だ。統一協会の活動を知らされていたら入らなかった。活動している人たちは、ほんとうに世界の飢餓・戦争に苦しんでいる人に役立っていると思っている。うわべだけの見せかけであることを自分自身で確かめてもらいたい。

 次回(6月24日10時30分から岡山地裁の34号法廷で)は、原告Aさんに対する統一協会側からの反対尋問が行われます。


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