UP TeaTime(29)
作成日:2004/06/23

強行突破
(秘密の沿線事情)

ちょっと内容的に路線が分かるとまずそうなので、何線かはご想像にお任せします...

夕方、帰りの通勤時間帯での出来事。
ホームへの階段を駆け上がると発車の音。
すぐそこで口を開けているドアに飛び込むと、そのまま一二歩奥に詰め、反対側のドアあたりに陣取る。
車内は立っている人が疎らにいる程度の混雑さだ。
「発車します。閉まるドアにご注意ください。」
というアナウンスで、ドアがプシュッと音を立てて閉まる...はずが、そこに突進してきた30代後半と思しき黒いスーツの女性がハイヒールの足をグイッとばかりに伸ばして、その閉まるドアにこじ入れる。
いや、確かに一瞬閉まったと思ったんだけどな。
その女性は無表情で慌てず騒がず周囲を見渡しもせずに、ドアにハイヒールを突っ込んだ状態で待っている。
オレだったら、少なくとも周囲にアピールするだろうな、そのままは怖すぎる。
やがてドアが音を立てて開き、何事も無かったかのように(いや実際何もなかったのは確かなんだが)、その女性は乗り込んできた。

それから2呼吸くらい間があいて、再びドアが閉まり始めた、ところに、いきなり階段から50前後と思われるおばちゃんが突進してきた。
今度は足も届かないだろう、と思っていると、手が急に伸びてきて、閉まるドアの中に...「えっ」と思ってよく見たら、巾着が2倍くらいでかくなった袋がドアに挟まれている。
さすがに足は届かない(個人差があるので)と見て、手持ちの袋を飛ばしたらしい。
ただこの袋、口を縛った紐が長い上に、ちょっと細かったらしい。
どうも駅員さんには袋をドアに放り込んで、ドアの前に立っているおばちゃんが紐を手にしているのが見えてない様子。
おばちゃんも、ドアが開くのが当然とばかり自然体で立っていたので、余計に分かりにくかったのかも。

さて、自然体のおばちゃんが当然だと思っているほどには、ドアは忠実ではなかったらしい。
電車は再びドアを開けることも無く走り出してしまった。
紐を握り締めているおばちゃんも、つられる様に(いやっまだ引きずられている訳ではないハズ)三歩四歩五歩六歩...でも電車は止まらない。
どうも勝手が違うと思ったのか、何やら口を動かしている(けど車内には届かない)。
そのうちに、流石のおばちゃんも根負けしたのか手を離した。
後には、ドアの間に挟まり宙に浮いているデカイ巾着袋のみが残された

おばちゃんを置き去りにしたドアの反対側(つまり電車の中)には、母娘(小学校低学年くらい)が立っていた。
その娘は、最初ドアから足(正確にはハイヒール)が生えた時には、少しびっくりしたような顔をしていた(それでもドアが再び開くまでに、自分の足を伸ばして触ってみようとしていた)が、次にドアから大きな布の塊がちょうど目の高さに生えてきたのには、呆然としてしばらく開いた口が塞がらなかった。

その側のドアは次の2駅ほどは反対側が開くので、その娘はしばらく指でツンツンつついていたが(いや、つついたからといっても動かんって)、その3つ目の駅では挟まった側のドアが開くので、その袋は見事にその娘の手の中に。
いやドアが開きそうになって、アッと叫んでいたかと思うと、次の瞬間にはズリ落ちる袋を見事に受け止めたので、思わず拍手しそうになっちゃいましたよ。
で、その娘は自分の手の中に抱えた袋をじっと見つめて固まってしまった。
だけど、その袋はどういたらいいのか教えてはくれない。
発車するためにドアが閉まりかけると、やっと自分が一人ではないことに気が付いたらしく、母親を見上げる。
実は母親も固まっていたらしく、それまで声をかけられなかったようなのだが、見上げられて自分が頼られていることに気がついたらしく、その娘を見つめ返す...おいおい。
で、〜間〜「(それ/お母さん)どうしよう」さすが母娘。見事なハーモニーである。

その後、それまで指でつつく程に興味の対象だった袋は急に嫌われ者に変身したらしく、両手で持ったまま自分から少しでも遠くに離れるように水平に両腕を伸ばしている。
時々思い出したように「どうしようこれ」と呟いていたのでさすがに可哀想になったのか、更に2駅ほど通過して近くに座っていたおじさんが「ここで降りるので、駅員さんに届けてあげるよ」と親切に申し出てくれたので、やっとその娘は袋から開放されました。

さて、あのおばさんは、その後どうしたんでしょうか。
駅員にとどけたのなら、あれだけの駅数を通過したので、確認しに来てもよさそうなものなのに。う〜ん。

ところで皆さん。こういった場合には、ロケットパンチ(および、それに類した行為)は効果がないので止めましょう...って、例えが古すぎるか。


戻る