目次に戻る

逃した! 空の鬼ごっこ (1998年6月)
  (旭川市 松下弘雄)

 先日、英国から来た冒険野郎、ウルトラライトプレーンで「80日間世界一周」をと云うので激励の意を込めて、当方は当麻町にあるグライダー滑空場を飛び立って千歳空港から来る彼等を留萌上空で待ち受けたのですが、方向か、高度か、時間か… 1時間大空を旋回しても逢えませんでした。でも楽しかったよ。


(事務局)  松下会長からその模様を収録したテープを送っていただきました。ダイジェストで紹介しましょう。

 英国を飛び立った二人組みが千歳空港に舞い降りた。乗ってきたのは「ウルトラ・ライトプレーン」という、操縦席が露出した超小型飛行機。島伝いに日本までやってきて、これからロシアに向かうのだという。

 二人は、ジューヌベルクの小説、「80日間世界一周」に因み、ウルトラ・ライトプレーンで世界を80日で回れるかどうかというかけをしたのだそうだ。まだこんな小さな飛行機で世界を回った例はない。

準 備
 我々はかれらの勇姿をビデオに収めようと空で待ち受けることにした。小型機をチャーターして、ビデオ機材も厳密にチェック。そして航空地図で速度を予測し会合点を割だした。すべての準備が整いいつでも飛び立てる準備ができた。

 だが予定の日になってもなかなか飛び立たない。ロシアの入国査証が降りないらしい。最初はすんなり交付されそうだったのだが、交付価格の交渉をしているうちに許可そのものがあやしくなってきたのだという。




離 陸
 難航したが、ビザが降りようやく冒険野郎旅立ちの時がきた。我々は当麻滑空場に集合した。スタッフは、パイロットとスチルカメラマン、そして僕の三人。これから彼等を留萌上空で待ち受け大空からエールを送る。

 綿密な搭乗前点検のあと我々を乗せた小型飛行機は離陸。旅客機に比べると乗り心地が頼りないが、冒険野郎たちの飛行機はもっと小さい。あんな小さな飛行機で何千キロも旅をしてきたのだ。

 北海道の大地を見下ろしながら留萌上空に向かう。雪を冠した山々の姿が美しい。
 のどかな大空を順調に飛行を続けやがて目的地に来た。彼等が差し掛かる会合の予定時間まで旋回を続ける。その間も見張りは欠かせない。いつくるのか? 高度は? 気になって景色を楽しむゆとりはない。

 予定の時間が過ぎた。まだ英国人の姿は見えない。遅れているのだろうか?

 旋回を続ける。ずいぶん待ったがまだ現れない。遠くに白波をたてる船が見える。視界はよく、遠望が利くので見逃したはずはない。飛び立てなかったのだろうか?

 何回旋回したろうか? 帰りの時間が近づいたが目指す相手は現れない。燃料のこともあるのでいつまでもここにいるわけにはいかない。あきらめるしかない。
 我々は目的を達せずに帰路についた。あとで聞いたら彼等の飛行機はわずか1500メートルの高度を飛んでいたのだそうだ。彼我の高度差がランデブー失敗の原因だったらしい。うまく出会えたら面白い作品をモノにできたのに… 残念。


目次に戻る