3.プラリア  パート

「夢」

  その夢では、自分はいつも決まって幼い頃の自分。
そしていつもの場面の繰り返し...。

  「あのね、おかあさんがね、もうレイラちゃんと
は、あそんじゃいけません、て。」
「なんで?ねえ、なんで?」
「わかんない。ごめんなさい。おかあさんにおこら
れるから。ごめんなさい。」
ばたん!
  仲の良かった友達の家の前。閉ざされた扉。そし
て、彼女のためには二度と開かれる事の無い扉。
「なんで...。」

  「・・・の所の・・・ちゃん、・・・妖魔・・・。」
「まあ・・・だなんて・・・かわいそう・・・。」
  ねえ、おばさんたち、なんの話をしているの?あ
たしのこと?かわいそうってなに?ねえ?

  「あっちいけよ、バケモノ。」
「レイラ、ばけものじゃないもん。」
「おれ、知ってるんだぜ。そのうち正体をあらわし
て、羽根をはやしたバケモノになるんだってな。」
「そんなことないもんっ。」
「うわっ、くるな、たすけて...。」
「なんで逃げるの。」
ふと、強く握りしめた手に落とした眼に入ったのは、
めくれた皮の下からのぞく、黒くざらついた肌。そ
して、背中を突き破って何かが生えてくるおぞまし
い感覚。
「いやぁ〜。」

  「いやぁ〜。」
自分の声で目がさめたレイラは、がばっと上体を起
こした。
「まいったな。この夢、しばらく見てなかったのに
な。」
レイラはそう呟くと、汗にぐっしょりぬれた夜着を
着替えるためにベッドを抜け出た。レイラをいじめ
た子達も、今ではレイラに面と向かって化け物よば
わりはしない。でも、心の中ではどう思っているか..
.。
  ふと、窓から差し込む月明かりに手をかざす。も
ちろん、そこにあるのは、見慣れた繊細で透き通る
ように白い自分の手。
  「ちいさい頃は、本当にいつか自分が化け物にな
っちまうんじゃないかって心配してたっけ。」
それは、実は今でも消える事の無い不安。そして、
レイラがもっと恐れているのは、いつか精神(じぶん)
がはじけ飛んで消えてしまって、衝動のみで生きる
何かに変わってしまうんじゃないかっていうこと。
不安が恐怖に変わり、レイラはふるえながらしゃが
み込む。

  「あー、やめやめ。」
そう言って、軽く頭を振りながらレイラは立ち上が
った。揺れる黒髪が月明かりを反射してきらきらと
光る。そこにいるのは、表面は、いつもの不敵な面
構えのレイラ。でも心の中は?
「考えてもどうしようもない事は考えないって決め
たじゃないか。」
レイラはわざと口に出す。
「人生、心配しながらすごすより、楽しまなきゃな。」
それから、着替えをしたレイラは、カラカラに渇い
た喉を潤すために部屋を出て行った。

  誰にも見せる事の無いレイラのこんな一面。その
一部始終を見ていたのは、風にはためくカーテンに
よって揺らめく月明かりのみ。

                                      (おしまい)

み:「チェンジリング妖魔は、はっきりと差別され
    ているわけでもなく、かといって完全に同化し
    ているわけでもないのです。「精神」の優れた
    人間と割り切ってプレイすることも可能ですが、
    この微妙な部分に気を使ってロールプレイする
    と興味深い経験をできるかもしれません。」
    これは、プレイングマニュアルの、チェンジリ
    ング妖魔の項に書かれていた1文です。ふっ、
    その挑戦受けて立とうじゃないか。というわけ
    でおもいっきりそれらしいキャラを作って、そ
    れらしい設定までこうして創ったでぇ!
レ:ほぉう〜。あたいを不幸な生い立ちにしたのは
    てめぇかっ。
み:ところで、私はドラマが嫌いです。その昔、朝
    の連ドラの「おしん」で、すっかりドラマ嫌い
    になってしいました。なぜって、あれ、いつ見
    ても主人公が不幸なんですよ。最後に幸せにな
    るとはいえ、それはほんのちょびっと。みんな
    そんなに人の不幸を見るのが好きなんか?私は
    思ったね。そして、気付いたんです。ドラマっ
    て、程度の差こそあれ、どれもおんなじだって。
    どのドラマも、なにかハプニングや事件が起き
    て、最後にはそれが解決して幸せになるってい
    うパターンになってる。つまり、最初から最後
    までみんなが幸せ、なんていうドラマはないん
    です(確かに、そんなドラマ、絶対に受けないと
    私も思う)。しかも、最近では、リアリズムか何
    か知らないけど、最後まで不幸なままで終わる
    ドラマもあるし。そんな、人の不幸を見るのが
    嫌いな私が、キャラを創ると、何故不幸な奴を
    創ってしまうんだろう?
レ:なぜだ〜、なぜなんだ〜。えー。
み:う〜ん、あれかな。ネットワークRPGって、
    結局ドラマと言ってもいいんじゃない?そして、
    私が、心の底では、ドラマ=不幸、って考えて
    るからかねぇ。
レ:ちきしょう。こうなったら、絶対に幸せになっ
    てやるぅ!
み:うん、俺もがんばる。レイラを幸せにするのは、
    私の目標だから。私、基本的に、ハッピーエン
    ド以外の物語は認めてませんから。しかし、最
    初から最後まで登場人物がみんな幸せで、しか
    もすごく面白い物語が創り出せるマスターさん
    ってどこかにいないかねぇ...。
レ:むりむり。そんな奴いないって。

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