3.プラリア パート
「家出」
「やっぱり料理は独創性よね。」
初めて入った酒場で、思いがけなくユニークな料理
に巡り会ったシャラは、得した気分で店主に代金を
尋ねた。
「5シグルスになります。」
「え!?それはちょっと高すぎるんじゃない?」
「・・・お連れさまの分も一緒ですから。」
(連れ...?)
おかしい。今は、一緒に旅をしているミルとは別行
動をとっているのに...?
店主の視線の先には、シャラの長いローブの裾をつ
かんでいる男の子。
「お姉ちゃん、ごちそうさま。ボク、おうちに帰っ
たらお金払います。おうちに帰ったら...。」
男の子の表情がふにゃっとゆがんだ。
「お姉ちゃぁん・・・。」
「ひょっとして迷子?」
とりあえず金を払って店を出た所で、シャラはしゃ
がみこんで男の子に尋ねた。しかし、
「ううん...。」
男の子は首を横に振った。
「それじゃ、ひょっとして...家出?」
男の子の目に、みるみる涙が溜まる。
「あんな家、帰ってやるもんか!」
男の子は、つかんだままのシャラのローブの裾で目
をごしごしこすると、言い放った。
「お姉ちゃん、不良なんだろ!」
たしかに、シャラは、家出をしていらい不良娘にな
ろうと努力している。髪は茶色に染めているし、金
糸銀糸で刺繍をした派手なローブを着込んでいる。
かっこうだけなら立派な不良だ。そしてそう、彼女
自身家出中なのだ。
「ボクも不良になって、家出して、そして冒険者に
なるんだ!」
これを聞いて、シャラは茶パツに染めた頭を抱え込
んだ。「私と同じだ...。」
夕食時の人通りの激しい表通り、その中で、しゃが
み込んで頭を抱え込んでいるシャラと、今にも泣き
出しそうな男の子。しかし、この町ではそんな光景
にも、足を止めたり、振り返ったりする人はいない。
「どうして、おうちに帰りたくないの?」
とにかくなんとかしなければ、そう思ったシャラは
男の子に聞いた。
「だって、父ちゃんはいつも酔っぱらって殴るし、
母ちゃんは...、母ちゃんは、出てっちゃったし。」
とうとう男の子は泣き出してしまった。
「ねぇ...。連れてってよぅ...。」
「そんな根性で不良になりたい、なんて10年早
いね!」
ふいに、シャラは立ち上がると、言い放った。
「それくらいで家出をしよう、なんて奴にかぎって、
旅先で泣き出すんだ。ママーってね。連れてくわけ
にはいかないね!」
男の子はびく、として泣きやんだが、シャラの言葉
を聞くと、また、泣きながらくるりとシャラに背を
向けると、走り去って行った。
「お姉ちゃんのばか〜。」
という言葉を残して...。
男の子が人波の向こうに見えなくなると、シャラ
は、その場にへたり込んで大きなため息をついた。
男の子のことを想ってのこととはいえ、やっぱりシ
ャラは、表面だけでも相手に辛くあたるのは苦手な
のだ。
「これで...これで良かったんですよね、師匠。」
シャラは、彼女の仲間であり、彼女が、憎まれ口の
師匠と(勝手に)心に決めた女性、ミル、の顔を思い
浮かべて思った。
一年前の世間知らずな自分では、とてもこんな対応
は出来なかっただろう。
「自分も少しは成長したかな。」
そう思いながら、シャラも人波の中に消えて行った。
(おしまい)
タ:あ〜っ、これ、ファイナルイベントの、「プラ
イベートリアクションを書こう」で書いたやつ
じゃない。手抜き〜。
シ:しかも、せっかくその時マスターさんにいろい
ろアドバイスを頂いたのに、これ、ほとんど手
直しせずにその時に書いたまんまよね。
テ:てぬきは、いかんな。
み:手抜きですいませ〜ん。時間がなかったんです
ぅ。ほんとは、最終回らしく、キャラやパーテ
ィーのその後、とか書きたかったんですけど。
自分のキャラとNPCしか出てない、他人が読
んでも面白くないプラリアは、載せたくないと
思ってたのに、結局2号続けてそういうのにな
ってしまったぁ!
af5k-myzw@asahi-net.or.jp 宮澤 克彦