●●桐山襲。文学好きであっても、彼の名を知っている人は少ない。書けば書くほど自身の血肉を削っていくような、殉教者の感じすらする作家である。誠実であろうとすれば、そしてそれを一貫したものにしようとすれば・・・。中途半端な優しさや、中途半端な正義感、そして中途半端なリベラリズムは世の中に溢れている。

  『風のクロニクル』、『聖なる夜、聖なる穴』、『スターバト・マーテル』・・・どれも彼の命を削って紡がれた作品達。その中で特にわたしは、『亜熱帯の涙』に何度も何度も涙した。

  この国には育たないと言われる『パルチザン』。しかし、桐山襲の中にこそ、偽物でない真の『パルチザン』の姿を見ることができたのだった。

  わたしの一番好きな作家は、遺作『未葬の時』をもって、10年余の作家生活にピリオドをうった。風化して消えていこうとするあの70年代の『風』に、ただ一人、ずっと向い続けた人だった。●●

桐 山 襲   の   著 書