ア フ リ カ の 夜


私の別府の印象は、海、風、雨の三拍子だった。別府・東京の往復は、疲労度こそそんなに感じはしないのだが、羽田からの移動に時間を要するのと、精神的に休まらないのが実感である。現実と理想の狭間に立っているといった感じであろうか。感情の移り変わりを抑えつつ、安定を求めてしまう矛盾の中で、自分のコントロールを失う。非常に難しい気持ちの入れ換えに、少々戸惑いを感じる。コンピュータを持たない移動は、どこか旅に似ている。フィジカルで物理的な移動は、日常の脳活動とはまた違う活動野を刺激してくる。ふとアフリカの夜と梅干しを思い出した。空港から自宅まで雨の中、暗い一般道を走りながらワイパー越しに見える風景は、エチオピアの集落に似ていた。こんなにも街の灯りが恋しく感じたのは、久しぶりである。雨の夜、初めての道を一人で運転していたのだが、ある時間の間隔で対向車は存在していた。東京の賑やかさとのコントラストが、異様な孤独感を感じさせたのであろう。数年前、暗い高原を月明かりと車のヘッドライトだけを頼りに走ったことがあった。数え切れない星の光を楽しむといえば、少々気障な言い方になるが、対向車も来ない、道らしき車の轍をひたすら目的地の集落の灯りを待ち望んだことが、ここ別府でリフレインしてきたのである。


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