イエメン・アデン
大学に来て、初めて個人研究室を与えられた。暗室付きで、最初は勝手がよいように思われた。それはある校舎の四階に位置し、海が望める眺めのよい場所であった。その窓にかかるカーテンが、えも言われぬ情緒を私に与えた。紫外線を強く浴びているせいか、汚れが全体に黄ばんで広がっていて、しかもかなり古いものだと容易に想像がつく。何故なら、すでに布が弱っていてタテにいくつもの裂け目があった。そのカーテンは慎重に扱わないと、サッシの鍵の部分に引っかかるたびに、また一つ裂け目が増えてしまうのである。しかし、そのボロボロのカーテン越しに見る海の風景は、私にイエメンへの旅を思い出させる。アデンのクレーターという街に行ったことがあるが、海抜ゼロに近い、蒸し暑いアデンにどこか似ていた。このボロボロのカーテンと海のコラージュが、私の別府移住を長い旅の一場面のように思わせるのであった。