<雪風>は、大日本帝国海軍の駆逐艦。
幾多の主要な作戦に参加したが、一度も大きな損傷を受けることなく、その機動性を活かして沈没した僚鑑から海に投げ出された将兵たちを数多く救って必ず帰還したことから、“幸運鑑”と呼ばれたという。
本作は、その雪風を舞台にした戦争ドラマ。
多くの方は感動する作品なのかもしれませんが、私が感じたのは怒りです。
何故こんな無謀な戦争を始めたのか。そしてまた、何故なんら成果を見込めない作戦に多くの艦艇と将兵を従事させ、彼らを犠牲にしたのか。
陸軍、海軍、それぞれ徹底的に敗北したからこそ日本は軍国主義から脱却できたのかもしれません。だからといって、戦場そして国内で犠牲にされた命の多さを考えれば、敗北を受け入れるべき時を無視した、と考えます。
元々日本の軍部には、ゼロ戦の構造や、特攻思想を初めとして、人の命を軽んじるところがあったと思っています。
また、海軍上層部においては、日本海軍は米国海軍と戦って勝てるようには作られていない、戦えば負ける、ということがはっきり認識されていたというのに、何故戦争に踏み切ったのか・・・・。
※時代は航空戦へ移り変わっていたにも関わらず、海軍上層部は巨艦大砲主義から脱せられず、時代遅れとなっていました。その点は、自民党保守派の頭の固い議員たちにおいては今も変わらず。
雪風、多数の将兵を救った幸福艦だったのでしょうけれど、一方では、各作戦における敗北をその目で見てきた“生き証人”と言える艦ではなかったのか。
戦って清く散ればいい、などという海軍上層部の自己満足的な思いがそこになかったか。
本映画についても、感動するのではなく、何が問題だったのかを考えてみてほしい作品と思います。
2025.08.15
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