“木の上の軍隊 ★★★
(2025年日本映画)

監督:平一紘
原案:井上ひさし
脚本:平一紘
出演:堤真一、山田裕貴、津波竜斗、城間やよい、山西惇

 

沖縄本島に近い小さな島=伊江島、太平洋戦争末期、島に上陸した米軍の激しい攻撃に追われ、大きなガジュマルの木の上に身を潜め続け、終戦を知らずに2年間をそこで過ごした二人の日本兵がいたそうです。
本作は、その実話に着想を得た井上ひさし原案に基づく、こまつ座・舞台劇の映画化。

井上ひさしさんの戯曲はひととおり読んだつもりだったのですが、本作については全く知りませんでした。何故?と思った処、芝居を構想し上演も決定していたものの、井上さんが台本を書き上げられず、中止になったもの。その後、別の作家により書き上げられ、こまつ座で上演されたそうです。

アジア・太平洋戦争における過酷な一幕を描いた作品、と言ったら、それで終わってしまいます。
本作を観ながら思ったことは、次のこと。
・軍部がこの島を戦場にすることがなかったら、平和な島でいられた筈なのに、島民の苦渋など軍部はお構いなしだったのだろうな、ということ。
・竹やりとか、本土決戦とか、どう考えても馬鹿げた発想です。そんな思考を植え付けたものは、何だったのか、誰だったのか。
 陸軍には合理的思考が欠けていたとはよく言われることですが、もっと遡るとそれは幕末に尊王攘夷を唱え、お門違いかつ不合理な精神論をかざしてやたら刀を振り回そうとした侍たちに源流があったのではないかと思えてきます。

本土から伊江島に赴任し、島と島民たちを犠牲にすることに何の呵責も抱いていないような上官=山下一雄(堤真一)と、島に育ち島しか知らない新兵=安慶名セイジュン(山田裕貴)の二人は対照的、上記のことを際立たせてくれます。

堤真一さん、山田裕貴さんの二人が好演。 是非お薦めです。

2025.07.25

                  


  

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