本書は、前半の留学中における体験談と、後半アメリカでロイヤーとして
活躍するようになってからのアメリカ観察記と、2つの部分からなります。
何といっても、注目したいのは前半の部分。
読み出してすぐ思い出したのは、同じく作家を父に持つ藤原正彦さんのアメリカ体験記「若き数学者のアメリカ」。
ただ、藤原さんの特攻精神丸出しのような著作に比べ、阿川さんの体験記は人柄でしょう、穏やかなものです。片や何も判らなくて当たり前の留学生、片や1人前の数学者として招かれた研究員、という立場の違いもあると思いますが。
いずれにせよ、アメリカという社会の懐の深さを強く感じざるを得ません。
本書を読んでいると、阿川さんと一緒になって留学を経験するような思いにとらわれます。そこで一番感じるのは、自分の意見をきちんと聞いてもらえる、話も聞かずに門前払いをされることがない、努力したことは正当に評価される、という日本に欠けている良さです。
後半は、阿川さんが知己を得た様々なアメリカの人々が紹介されます。政府高官からタクシー運転手まで。
良くも悪くも彼らすべてがアメリカという国を形成しているのです。自分の努力で今の地位を勝ち得た人の意見というのは、やはり聞くべき価値があるように思います。
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