
2014年02月
文芸春秋刊
(1300円+税)
2014/02/21
amazon.co.jp
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母親が車にはねられて死に、父親はけがをして入院中のために、主人公の「ぼく」は、母方の叔母さんの元に引き取られる。
その叔母さんは、子供の頃に火のついたてんぷら油をかぶってしまった所為で顔の半分が青黒い。
ぼくは一ヶ月ぶりに父親に会う為、一人で列車に乗ってその病院へ向かおうと、叔母さんの家を出ます。
そこからぼくが辿る道すがら、様々な人たち、様々な奇妙な人たち、そして遂には子供時代の父や母とも出会うこととなります。
何とも不思議な中編小説ですが、何とはなしに哀感を覚えます。
どんな人にもその人なりの生き方があり、それは動物にしても同じこと。さらには、子供から見ると大人は皆最初から大人ですが、そんな大人にも子供時代はあり、子供を経て大人になったという事実がある。
一応はぼくの視点で進みながら、主人公を自在に変え、時間を自由に前後する中で、この短いストーリィが悠遠な時間を騙り上げているような思いに駆られます。
言葉で語るより、それが創り出した世界の中にただ黙って身を置く、という方が相応しい作品のように感じます。
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