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2.MM9 3.詩羽のいる街 4.地球移動作戦 7.トワイライト・テールズ(文庫:−夏と少女と怪獣と−) 9.僕の光輝く世界 10.プロジェクトぴあの |
翼を持つ少女、幽霊なんて怖くない、怪奇探偵リジー&クリスタル、世界が終わる前に、君の知らない方程式、プラスチックの恋人、時の果てのフェブラリー |
1. | |
●「アイの物語」● ★★★ |
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2009年03月
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まず、本作品のストーリィ構成が素晴らしい。 プロローグ、語り部である主人公の青年が、女性アンドロイドのアイビスに捕えられるから始まります。 7つの物語。近未来、遠い未来、ありえない未来という違いはあっても、どれもヒトとAIとの繋がりが色濃く描かれます。 プロローグ/宇宙をぼくの手の上に/ときめきの仮想空間/ミラーガール/ブラックホール・ダイバー/正義が正義である世界/詩音が来た日/アイの物語/エピローグ |
●「MM9(エムエムナイン)」● ★☆ |
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2010年06月
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地震・台風等と同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が災害を最小限に留めるため日夜を問わず警戒と防衛にかけずり回っていた。 昭和40年代の昔、「ウルトラマン」の前に「ウルトラQ」という題名の特撮TVドラマ番組がありました。その番組が小説になって、少し趣向を変えて蘇ってきたような気分です。 特撮TVドラマの専売特許という観ある怪獣をSFジャンルの中に取り込んだ趣向は十分楽しめますが、面白さとしては怪獣負けしていてイマイチ、という感想。 緊急!怪獣警報発令/危険!少女逃亡中/脅威!飛行怪獣襲来/密着!気特対24時/出現!黙示録大怪獣 |
●「詩羽(しいは)のいる街」● ★★☆ |
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2011年11月
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「あの日まで、僕はこの世に奇跡が存在するなんて信じていなかった」という一文から始まる、ストーリィ。 ・「それ自身は変化することなく」は、漫画家を目指している青年が主人公。1日デートをする中で、詩羽が彼に自信を与えていくストーリィ。 人の善意を掘り起こしていく、人と人との繋がりを増やしていくというストーリィはまさに私好みなのですが、本作品はそれだけではありません。 それ自身は変化することなく/ジーン・ケリーのように/恐ろしい「ありがとう」/今、燃えている炎 |
●「地球移動作戦 OPERATION EARTH SHIFT」● ★★☆ |
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2011年05月
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SF小説はめったに読まないのですが、久々に読んだ本作品は、ストーリィ展開といいスケール感といい、登場するキャラクターのポジションといい、得難い面白さでした。 2083年、新天体
2075A観測のため飛立った深宇宙探査船ファルケの乗組員は、その天体が24年後地球に極接近し、その結果地球が壊滅的かつ恒久的な打撃を受けることを発見して愕然とする。 主人公は、移動計画を思いついた天体物理学者=風祭良輔の娘である、天才少女の風祭魅波(みは)。 その上で、中心となる地球移動計画という宇宙空間を舞台にした壮大なスケール感には圧倒されんばかりですし、新天体の地球接近によって引き起こされる地球上の大災害は、文章で読むだけでも中々の迫力。 私をはじめ、ふだんSF小説に馴染みの薄い方にも是非お薦めしたい、傑作SF小説です。 |
5. | |
●「去年はいい年になるだろう」● ★☆ 星雲賞 |
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2012年10月
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2001年09月11日、未来から大量のアンドロイドたちがやって来ます。「ガーディアン」と名乗る彼らの目的は、人間への奉仕、少しでも人間を救うことだという。 本書、SF小説ではあるのですが、もしそうしたことが起きたら人間社会はどうなるのか、いうシュミレーション型ストーリィとも言えます。 結局、幸せとか平和は人間自らが努力して得る他はなく、一方的に与えられてもダメなのだ、という思いを強くします。 |
6. | |
●「MM9−invasion(インベージョン)−」● ★★ |
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2014年05月
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“怪獣災害”に見舞われる日本を描いたSF作品「MM9」の続編。 今回日本を襲うのは、並みの怪獣ではありません。何と宇宙怪獣! 宇宙怪獣との闘いの舞台は、今話題の東京スカイツリー。 ※宇宙怪獣との戦いストーリィ、まだまだ続くらしく、楽しみ。 |
7. | |
●「トワイライト・テールズ Twilight Tales」● ★☆ |
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2015年11月
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「MM9」「MM9-invasion-」に連なる、怪獣を大事にした中篇作品4篇。 「生と死のはざまで」:出現した怪獣によって破壊されたショッピングセンターの地下に閉じ込められた男子高校生と女性自衛隊員。 まぁ好み次第というところですが、「MM9」を面白く読んだ読者なら、ちょっとコーヒーブレイクといった感覚で楽しめる中篇集だと思います。 生と死のはざまで/夏と少女と怪獣と/怪獣神様/怪獣無法地帯 |
8. | |
「MM9−destruction(デストラクション)−」 ★★ |
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2014年07月
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“怪獣災害”に見舞われる日本を描いたSF作品「MM9」〜「MM9−invasion−」の続編。 ヒメ、そしてヒメとテレパシーで通じ合ったことから通訳役となった案野一騎、母親の悠里、一騎に恋人宣言した幼馴染の酒井田亜紀子の4人は、安全を期するためという理由で秘密の場所に移送されます。その場所とは古い神社。不思議なのはその神社を守るのが狛犬ではなく、怪獣のような2つの神像であったこと。 それにしても異星人が操る幾種類もの怪獣神と、地球古来の怪獣神が激突するなどというストーリィ、ウルトラセブンからさらに遡り、小学生の頃に観た怪獣映画「地球最大の決戦」(キングギドラvs.ゴジラ・モスラ・ラドン 1964)さながらです。 ※怪獣神たちの激闘場面、マジンガーZ、ガメラまで連想してしまいました。 |
9. | |
「僕の光輝く世界」 ★☆ |
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主人公は、中学時代からずっとイジメに遭ってきた高校一年生、高根沢光輝。 主人公の光輝が見る虚像と実際との乖離、その乖離により謎が生じることもあれば、それをヒントに光輝が謎を解き明かすこともある、というのが本ストーリィのパターン。 本ストーリィ独特の面白味となっているのは、主人公が恋する少女=神無月夕の人物造形。 なお、第1章は失明経緯、第2章は夕を描き、第3章がつなぎ的で、第4章が本格的ミステリという展開。是非最後の章まで楽しんでください。 |
10. | |
「プロジェクトぴあの」 ★★☆ |
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2020年03月
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「地球移動作戦」の前にある物語、同作に登場した宇宙船のエンジン=“ピアノ・ドライブ”の発明者である結城ぴあのの物語。構想自体は、同作より前にあったそうです。 本書ストーリィの語り手は、物理学専攻の大学生で女装が趣味の“男の娘”である貴尾根すばる(本名:下里昴)。 2025年、そのすばるはアキバで、まるで化粧っ気のない不思議な女の子=結城ぴあのに出会い、その計り知れない科学知識と聡明さに驚きます。さらに驚愕したのは、彼女が少女アイドルグループ“ジャンキッシュ”のメンバーであったこと。 子供の頃から宇宙(それも太陽系外)に行きたいという夢を持ち続け、その実現のための具体的努力に続ける突然変異的天才であると同時にトップアイドルでもあるというキャラクターの造形、そして誰もができる訳がないと思っていたことを何時の間にか現実化していくというストーリィの面白さ、もう楽しくて堪えられません。 本物語の根底にあるのは、子供の頃に抱いた夢を実現したいとの単純な願望、誰もが一度は抱いたであろう宇宙、宇宙旅行への憧れ。如何にもSFらしい要素を取り除けば、ファンタジーな冒険物語といっても良いのではないか。 でも、本書の魅力、面白さはそのSF的要素部分、そして結城ぴあのというミュータント的アイドルの桁違いなキャラクターにあると言って間違いありません(そのセリフは実に痛快!)。 宇宙へ行くための“プロジェクトぴあの”、果たして実現するのか、そしてぴあのは本当に宇宙へ飛び出せるのか。 全篇 500頁余、科学の天才にしてトップアイドルである結城ぴあののSF的魅力をたっぷり堪能できるSF巨編、お薦め! |