|
|
|
|
| 「みずうみの満ちるまで Until the Lake Comes Full」 ★★ ハヤカワSFコンテスト特別賞 |
|
|
|
温暖化による海面上昇と、戦争による荒廃により、住める地域が制約されてしまった近未来が舞台。 富裕層には二つの選択肢があります。一つは、肉体を捨て仮想世界<オルターワールド>に移行し、永遠の存在となる道。 もう一つは、本作の舞台となる施設<ヘヴンズ・ガーデン>に入居して最期の時を選び、遺産全額を難民保護のために寄付する、という道。 一方、難民となった人々はどの地域からも受け入れを拒絶され、かろうじて<ヘヴンズ・ガーデン>のみが条件付きで一部を受け入れているという状況にある。 近未来というと私にとってはハックスリー「すばらしき新世界」が常に基本軸なのですけど、科学に背を向け続けるトランプのような支配者が続けば、こういう未来が待ち受けているんだという確信的な恐れを抱きます。 主人公は元難民で、8歳の時に管理人に救われ、長じて入居者の要望に応えるコーディネーターとなった若い女性=エルム。 そのエルムが、創設者=管理人、庭師のアッシュ、巨額寄付をした入所者のローズ、部外者であるリンクス等の想いを受け止めていくという内容。 総じて、旅立っていく高齢者たちが、こんな世界を残してしまってと謝罪していく姿、絶望しかないという管理人の言葉がとても印象的です。 ヘヴンズ・ガーデンの穏やかで静かな日々は、終末を直前にした刹那的な静けさなのでしょうか。 設定や雰囲気に好感を覚える作品なのですが、最後、主人公は何かを選び、あるいは何かを決意し、そこに救いを見出したのかどうか。その点があやふやであり、釈然としない思いが残ります。 |