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1.かすてぼうろ 2.円かなる大地 |
「かすてぼうろ−越前台所衆 於くらの覚書−」 ★★ | |
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百姓の娘が城の台所に奉公に上がり、やがて台所衆、包丁人となってその料理をもって時代をも動かしていく、という時代ストーリィ。 展開が現実離れしているが故に、言わば、女性料理人を主人公としたファンタジー的な時代歴史&少女の成長物語、という処でしょうか。 でも料理が人の心を動かしていくという処は、楽しいという一言に尽きます。 於くら、13歳になって越前府中城の炊飯場へ下女として働きに出ます。その働き先で於くらは、台所衆の男たちから年中蹴られたり散々な扱いばかり。 ところが、夜半つまみ食いに台所にやってきた茂助と名乗る初老の男に簡単な食べ物を提供して親しくなったところ、何とそれが新しい領主である堀尾吉晴。 その吉晴の要望に応えようと懸命に尽くすうち、於くらも成長。 しかし、関ヶ原の戦い後、堀尾家は松江に転封となり、代わって結城秀康が越前68万石の領主となり、於くらは府中城から北ノ庄城へと移ります。 新領主の秀康も気さくな人物。於くらが身を寄せた城外の煮売茶屋「哉屋」に身分を隠してふらりと現れ、於くらと親しみ、城内においても於くらに次々と注文を出し、於くらはそれに応えていきます。 そしてついには、歴史を動かく重大な現場にも立ち会うこととなり・・・。 於くらが課題を与えられる度に工夫を巡らし料理人として成長していくストーリィに、当時の料理に関する歴史考証の一文が挿入されていることを合わせて、料理ストーリィ好きな人間としては楽しい限りです。 美味しい料理は大事な場面で人を動かすこともある、というのは事実かもしれませんね。 かすてぼうろ/里芋田楽/越前蕎麦/一番鰤/甘う握り飯/本膳料理 |
「円(まど)かなる大地 Longway from Land of Aynu」 ★★ | |
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舞台は室町時代、場所は蝦夷地。 蝦夷地に進出した和人の武家は、先住民であるアイヌの民を侮蔑してその土地から追いやり、アイヌが抵抗すれば武力を持って壊滅するという非道の限りを尽くしていた。 訳有って今は悪党(裏切り者)と呼ばれるアイヌのシラウキは、人喰い羆に襲われようとしていた蠣崎季廣の稲姫を救うが、招かれたその居城にて季廣からアイヌ攻めの口実にされようとしたことから、稲姫を人質に脱出します。 シラウキと行動を共にしたことによってアイヌの惨状を知った稲姫は、<アイヌと和人のとこしえの和睦>を実現するため、仲介者となりうる出羽国・安東氏の元を目指して旅立ちます。 その二人に同行するのは、蠣崎氏家臣であり稲姫の許婚者であった下国師季、アイヌの女傑=小山悪太夫、恐山・圓通寺の僧=俊円、女真族のアルグン。 シラウキと稲の冒険行と並行して、長きにわたって何度も繰り返されてきた和人のアイヌに対する非道、殺戮の様が描かれるとともに、かつては友でありながら今は敵となった蠣崎次郎、鬼瓦という異名をとる凶悪な武人、そして巨躯で凶暴な羆との争いも描かれます。 要は16世紀半ば、北海道の渡島半島において交わされた講和条約=「夷狄商舶往還法度」が締結されるまでの奮闘、冒険を描いた歴史時代エンターテインメント。 開拓者による先住民への非道かつ残忍な振舞いは、アイヌに対するものだけではなく、米国、豪州とあらゆるところで歴史上見られるものですが、日本における身近な歴史として、アイヌに対する和人の非道な振舞いには目を覆いたくなる思いです。 そうした中で、アイヌに対しても公平に向かい合った人たちがいたということに、救われる思いがします。 これまで知らずにいた歴史を知ることができ、良かったです。 序−永正9年(1512)/1.四ツ爪とシラウキ−天文19年(1550)3月/2.シリウチの戦い−天文19年4月/3.エサウシイ−享禄2年(1529)〜天文5年(1536)/4.セタナイへ−天文19年4月/5.宇曽利郷恐山−天文19年5月/6.美しい山の麓−天文5年〜天文6年(1537)/7.浪岡御所−天文19年5月/8.イオマンテ−天文19年5月/終章−天文19年6月〜 |