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| 「飛上りもん」 ★★☆ | |
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“米将軍”と呼ばれた八代将軍吉宗の治下、還暦を過ぎて吉宗に招聘されて幕府勘定方(旗本)に取り立てられ、治水事業および新田開発に奮闘した、実在のテクノクラート=井澤弥惣兵衛の奮闘を描いた歴史的事業小説。 したがって、そこに武士道や、派閥・権力争いはありません。そこにあるのは最初から最後まで、犠牲者を無くし人々を救うための治水・新田開発にかけた粉骨砕身の姿のみ、です。 主人公は、紀州・溝口村の豪農の家に生まれた弥太郎。洪水を防ぐ案を口にするものの、実現できる訳がない、“飛上りもん”(突飛な行動)と嘲笑されます。 しかし、その言動から第二代藩主の光貞に見出されて勘定方(武士)に取り立てられ、“九州一の治水巧者”と呼ばれる学文路村の庄屋=大畑才蔵と共に、紀州流の治水術を確立、新田開発に成功します。 その後に吉宗から招聘され、農民の出自で幕臣となり、見沼の新田開発等々、歴史に残る功績を残したのですから、その意味でも“飛上りもん”(目覚ましい出世)という評に相応しい。 江戸時代に還暦を過ぎてから大活躍をしたというのが凄い。寿命が延びた現代でも中々し難いことだと思います。その点、伊能忠敬を連想します。 一方、あの時代にそれだけの実力を備えるには、それだけの年数が必要だった、ということが言えるのかもしれません。 なお、弥惣兵衛がそれだけの活躍をした分、家族のことは放ったらかしだった、ということ。本作では、そんな弥惣兵衛を支えた妻女=美織の存在も見逃せません。 弥惣兵衛という人物については上記のとおりですが、実際にどんな苦労、どんな奮闘、そしてどのように事業を成功させたのか、その部分こそが本作の読み処です。 実在の人物の活躍を描いた読み応えある歴史小説。お薦めです。 1.紀州の天狗と友との誓い/2.師とともに描く川の未来図/3.米将軍吉宗が与えし使命/4.豊穣への祈り/5.家康が頼りし伊奈流の先へ |