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「世界でいちばん透きとおった物語」 ★★ |
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“高校生に読んでほしい50冊2024”に選ばれた作品とのことで、読んでみました。 主人公の燈真は20歳、実はフリーの校正者である母=藤阪恵美と人気ミステリ作家である宮内彰吾との不倫の子。 ただし、恵美は宮内に迷惑を掛けたくないと、認知請求もせず宮内との関わりを断って、一人で燈真を育ててきた。 2年前、その母親が交通事故に遭って急逝、宮内彰吾も闘病中だった癌で死去したばかり。 そんな燈真の元に、宮内(松方朋泰)の息子である朋晃がいきなり電話をしてきます。父親が最後の作品を執筆していたらしい。ついてはその作品を刊行して印税を受け取りたいからその原稿探しに協力してくれとの申し入れ。 燈真はその話に興味を覚え、母親が懇意だった編集者=深町霧子の助力を得ながら、原稿探しを始めます。 ということで本作はミステリ。 そして同時に、原稿探しは燈真にとって、会ったこともない父親の人物像を知り、最終的に燈真の新しい生活への転機となる行動となります。その辺りが高校生向けなのでしょう。 燈真は宮内彰吾と関係のあった女性たちを訪ね、原稿についてのヒントを得ようとします。 その相手はキャバ嬢、同業作家、女優、ホスピスでの担当ケアラーと多彩。 会う人ごとに燈真、宮内先生そっくりと言われてしまうところが可笑しい。 宮内が執筆していた作品、「世界でいちばん透きとおった物語」という題名であることは皆から分かりますが、果たしてどんな物語なのか。 最後に明らかにされる原稿そして作品の謎、それは絶対に予測不能なもの、という評には納得。 しかしこの謎は分からなくて当然であって、謎解きに興奮することはなし。 ただ、ストーリー展開、そしてそれが燈真へ新たな道を開いていく処は充分楽しめました。 |