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1.ソノリティ はじまりのうた 2.透明なルール |
「ソノリティ はじまりのうた」 ★★ | |
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校内合唱コンクールを背景にした、中学一年生5人の青春譚。 水野早紀は引っ込み思案な性格。それなのに吹奏楽部だからという理由で教師から指揮者に指名されてしまったのですが、クラスをまとめる自信なんか、まるでない。 そんな早紀が一人で歌っている処をふと聴き、その澄み切った声に魅了されたのが、バスケ部員の山東涼万。早紀のためにも練習に協力したいと思うのですが、ついつい声の大きな同じバスケ部員の武井岳に引っ張られてしまう。 岳と保育園以来の幼馴染である金田晴美(キンタ)は女子バスケ部員。合唱の練習に積極的に参加するものの、オンチと岳に笑われたことがトラウマ。 ところがピアノの伴奏者であり、早紀と幼稚園以来の幼馴染みでやはり吹奏楽部員である井川音心(そうる)から、早紀と晴美二人でのソロを提案されたところからやる気をとり戻す。 一方の武井岳、バスケに情熱を燃やしているものの、膝の故障で練習を休まざるを得ず、また合唱練習に非協力的だったことから同級生たちからの疎外感を味わってしまう。 井川音心だけは冷静かつ大人びていて別なのですが、他の4人、自分の欠点にヤキモキしながらも、同級生の長所をきちんと認める良さを持っています。 そんな彼らが、互いに関わり合うことによって各自の良さを発揮していく、そんな本作はとても爽やかで清新です。 また、彼らの健やかで清らかな心根に触れるようで、とても気持ちが良い。 そう感じるのは彼らが、自身に対する評価はともかくとして、他人を素直に正しく評価する目を持っているからでしょう。 全編にわたり、清らかですこぶる気持ち良い作品、お薦めです。 プロローグ/1.涼万の場合−声の矢/2.キンタの場合−彫刻の手/3.岳の場合−玉のしずく/4.早紀の場合−シトラスムスクの香り/5.ソノリティ/エピローグ |
「透明なルール」 ★★☆ | |
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主人公は、中二の佐々木優希。母親が小四の時に病気で死去し、今は父親との二人暮らし。 自己評価が低く、学校では目立つことがないよう、自分らしさを抑えて過ごしている。 しかし、名門と言われる中高一貫校から転校してきた米倉愛がふと放った、「クラスに35人いれば、35通りの心がある」という言葉に衝撃を受けます。・ そして、運動も、人前に立つのも苦手という同級生で同じ生徒会役員の荻野誠、それでも彼は自分を偽ろうとはせず、いつもマイペース。 そんな二人と触れあったことで、優希の心にも変化が生じていきます・・・。 今の中学生たち、グループに入れてもらえないと学校生活がツライ、だから仲間たちに合わせようとする、という気持ちはわかるなぁ。 本作では、“同調圧力”という言葉で語られています。 でもそれを超えて、見えないルールを自ら作ってしまい、自分で自分を縛り付けてはいないだろうか、というのが本ストーリーのテーマです。 自分らしさを出せず、我慢してばかりだったらこんなに辛いことはありません。 伸び伸びと自分らしく成長して欲しい、そういう作者の願い、エールが籠められた作品。 お薦めです。 ※本作に登場する北側という中年男性教師、なんて時代錯誤的な人間かと笑えるほど。一方、優希たちクラスの担任で、教師二年目の女性=辛島、彼女の突然の告白には驚かされました。 |