櫻田智也作品のページ


1977年北海道長万部町生、埼玉大学理学部卒、同大学院修士課程修了。2013年「サーチライトと誘蛾灯」にて第10回ミステリーズ!新人賞を受賞し作家デビュー。21年魞沢泉(えりさわせん)を探偵役としたシリーズの2冊目「蝉かえる」にて第74回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)および第21回本格ミステリ大賞を受賞。

  


       

「失われた貌 Lost Identity ★★   


失われた貌

2025年08月
新潮社

(1800円+税)



2025/09/08



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顔が潰され、両手首が切断、歯も抜かれているという、身元不明の遺体が発見される。
何故そこまでして遺体の身元を隠す必要があったのか・・・。
(身元不明の工作、奇しくも読んだばかりの
川瀬七緒「18マイルの境界線」と似ています。その後の趣向は勿論異なりますが)

事件を追うのは、
媛上警察署捜査係長の日野雪彦警部補
上司に対しても遠慮ないもの言いをする
入江文乃巡査部長にしばしば辟易しながらも、二人で捜査に当たります。
しかし、他にも殺人事件が発生し、担当事件は次々と様相を変えていきます。そして捜査は、
駒根警察署との合同捜査に。しかも主導権を握るのは駒根警察署、柿本主任という具合。

複数の事件に、多彩な事件関係者が登場、ストーリーは複雑化かつ多層にわたる展開を見せ始めます。
そして、新たな事実が見つかる度に事件は様相を変え、どんでん返しの連続。

余りにコロコロ変わるので、事件関係者に対する思い、共感等々が置いてけぼりになり、繰り返され続けたどんでん返しのみが記憶に残った、という観がなきにしもあらず。

一方、二つの警察署の合同捜査という微妙な駆け引き、県警内部での人間関係も露わにされ、私としてはその部分の方が面白かったように感じています。

ミステリ好きの方にお薦め、という警察事件もの。


6月29日-顔のない死体/6月30日-小さな来訪者/7月1日-欠けてゆく月/7月2日-もつれた過去/7月3日-リストの名前/7月4日-死んでいた男/7月5日-破られた約束/7月6日-あるはずの光

           


  

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