
2014年05月
メディアファクトリー刊
(1300円+税)
2014/07/07
amazon.co.jp
|
「幽」怪談文学賞短編部門大賞を受賞した表題作から始まる、連作短編集。表題作が一番短くて、その後の2篇の方が次第に長くなるというのは思いも寄らぬこと。短編小説と長編小説の違いはあれどまるでデュマ「ダルタニャン物語」の如しではありませんか。
3作を通じての主人公は、京都の種麹屋の家に生まれ 築150年にもなるという古い家で生まれ育った笹岡美代。その家には“そこはかさん”と呼ばれる「あるかないかわからんもん」が存在しているらしい。つまりは“家霊”ということなのですが、悪しき存在か親しみをもてる存在かは、どうも接する側次第という面もあるらしい。
そこは京都が舞台ですからいかにも納得という思いだったのですが、そこから友人の一家が立山に持つ夏の家へ、さらには英国エディンバラにある古い城館へと舞台が広がっていくのですから、面喰う部分が無くもなし。
どの家にも亡くなった人の思いが残っている、というのがコンセプトでしょうか。
そして結局、ストーリィの鍵は○○の存在にあった、ということになるのですが、途中で趣向が変わってしまったように感じるのは私だけでしょうか。その所為もあって、少々こじつけがましいと感じる部分があります
日本の古くからの妖怪話を現代風かつ国際的に語るとこんな風になる、という作品であろうかと思います。
そこはかさん/夏の家/レディ・Dの手箱
|