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「あんずとぞんび」 ★★ ポプラ社小説新人賞奨励賞 |
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小三の早坂あんずは、離婚した母親との二人暮らし。 それまで仲の良かったきららちゃんから突然イジメを受けるようになり、コンビニでの万引きまで背負わされそうになる。 そんな窮地から助け出してくれたのは、同じアパートにすむゾンビのおじさん。 ※未知のウィルスに感染した人は、肌が薄紫色になり、言葉や動作が鈍くなる。そうした人々はゾンビと呼ばれるようになり、<あぶない方>と<あぶなくない方>がいる、という設定。 本作には、対立と連携が溢れています。 その象徴があんず。学校でイジメを受け、一人ぼっち。でもゾンビのおじさんはじめ、同じアパートの老夫婦とも親しくなり、学校図書室の主である浅川との新たな友情と、彼女の世界は広がっていきます。 一方、ゾンビと彼らを排斥しようとする人々との溝は激しくなり、ゾンビ排斥運動は暴力の域にと達していきます。 そんな状況に、あんずは大きな声を上げて抗議します。何故ならそれは、あんずたちの将来に深刻な影を落とすものだから。 本ストーリーにおけるゾンビを、海外からの移住者に読み替えると現代日本にそのまま当てはまるような気がします。 大人たちがちゃんと考えて行動しないと、不幸な結果を子どもたちにもたらしかねない、本作からはそんなメッセージを受け取ります。 ただ、「ぞんび」という設定は目を引きますが、そんびを引っ張り出す必要があったのか、その割にぞんび部分が弱いように感じられます。その点が、読了後も何となく引っ掛かったまま。 |