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11.美森まんじゃしろのサオリさん 12.アリスマ王の愛した魔物 |
【作家歴】、こちら郵政省特別配達課(1)、〃(2)、回転翼の天使、群青神殿、時砂の王、フリーランチの時代、煙突の上のハイヒール、博物戦艦アンヴェイル、トネイロ会の非殺人事件、コロロギ岳から木星トロヤへ、 |
11. | |
「美森まんじゃしろのサオリさん」 ★☆ |
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もはや限界集落寸前の美森町が舞台。 美森町には美森卍社があり、“美森さま”は町の守り神。さらに美森さまには多数の“お使い”がいて、美森さまの手足となって様々に活躍するのだという。 死んだ祖母の家を管理しに来てそのまま居着き「何でも屋」を開業した岩村猛志20歳は、地元民で現在女子大生の貫行詐織21歳から誘い込まれ、町立探偵<竿竹室士>を結成。美森町の住人の間で起きる不思議な事件を解決するために奮闘します。 幽玄的ファンタジー&ミステリ短篇集といった印象でしたが、現代より一歩先に進んだ未来社会に時代設定されているらしく、SF的な小道具がいろいろと登場する処はやはり小川一水さんならではのところ。 一見両立しないような要素が一つストーリィの中に溶け合っている処が本書の面白味です。 冒頭から4篇は、いずれも美森さまの<お使い>の名前を題名として、それにまつわるストーリィ。 但しそれだけでは、それなりに楽しめる連作短篇集で終わりかねないところをステップアップさせて見せたのが最後の章。 詐織が抱えていた秘密を描くと共に、それまでの4篇とは異なり大きく広がる情景を描き出しています。 前4篇があるからこそこの章あり。そして主人公2人の前進章となっている故に、嬉しくかつ楽しい。 小川一水ファンならばこそ楽しめる短篇集と感じる次第です。 まんじゃしろのふしみさん/いおり童子とこむら返し/水陸さんのおひつ抜き/救母ヶ谷の武者烟/美森まんじゃしろの姫隠し |
12. | |
「アリスマ王の愛した魔物」 ★★ |
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最新SF短篇集とのこと。 ・「ろーどそうるず」 現物のバイクM3R3011と、その実走報告をモニターし遠隔サポートするRD16-VPTとの間で交わされる、AI同士のやりとりを綴った篇。人間のすぐ近くにある、見知らぬ世界を覗くような面白さあり。 ・「ゴールデンブレッド」 宇宙戦闘機のパイロットが不時着したのは辺鄙な惑星。最初こそその惑星住民の未開ぶりに不満を重ねていたパイロットですが、次第に・・・。現代世界にも通じるところが面白さ。 ・「アリスマ王の愛した魔物」 星雲賞を受賞したという表題作。 弱小王国のうえに、醜悪な風貌の第六王子であるアリスマが、数字と計算力によって他国を席巻していくストーリィ。でも、それはアリスマ王子にとって幸せだったのかどうか・・・。 ・「星のみなとのオペレーター」 小惑星イダの宇宙港管制室のオペレーター、筒見すみれを主人公とした、愛嬌とスリルとロマンスを盛り込んだストーリィ。 本書中では、最もユーモアもあって楽しい篇。 ・「リグ・ライト−機械が愛する権利について」 本書中、私がもっとも惹き込まれた篇。 死んだ祖父から自律自動車クローと、その自動車付属ロボット?であるアサカを相続したシキミが主人公。 シキミ、アサカとのやりとりを重ねるうち、アサカは感情を持っているのか?と思うようになるのですが・・・。 最後に待ち受けていたのは、意外な事実と意外な展開。 最近、AIはどこまで人間に近づくのか、人間と対等な存在になりうるのか、といったSF小説・映画を多く見かけるようになったと思うのですが、本篇もそのひとつ。 決して絵空事ではないと思えるようになったこの頃だからこそ、魅了されます。 ろーどそうるず/ゴールデンブレッド/アリスマ王の愛した魔物/星のみなとのオペレーター/リグ・ライト−機械が愛する権利について |
13. | |
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」 ★★ |
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人類が宇宙へ広がってから6000年、一部の人類はここ巨大ガス惑星=ファット・ビーチ・ボール(FBB)に至り、その上空である宇宙空間に、16の氏族ごとに都市型宇宙船を浮かべ暮らしていた。 彼らの貴重な金属資源となるのは、FBBの上空で泳ぐ魚のような生物=昏魚(ベッシュ)。 そしてその昏魚を釣るための宇宙船は礎柱船(ピラーボート)、乗り込むのは船の形状を自在に操る<デコンバ>と操縦担当の<ツイスタ>というペア。 ただし、デコンバとツイスタは夫婦という鉄則あり。 上記のような舞台設定にて、主人公となるのは24歳になる長身女性のテラ。コンビとなるツイスタを見つけるため何度も見合いしていますが、一向に相手が見つからず。 そのテラの前に突然現れて、相手が見つかるまでツイスタとしてテラの船に乗せてほしいと名乗り出てきたのが、18歳の小柄な家出少女=ダイオード。 2人は女同士のペアを組んで昏魚釣りに出発しますが、驚くべき漁獲を上げ、一気に注目を集めてしまいます。 そこから始まる波乱万丈のSF宇宙もの冒険譚。 テラとダイオードの2人、最初から意気投合している訳ではありません。それぞれ隠した事情や、自分でも気づかぬ思いが2人の間にはあります。 そこがどう明らかになり、進展していくのかが、本ストーリィの読み処。 小川さんの宇宙SFもの代表作といえば「天冥の標」シリーズですが、私は未読のため本作と比較することはできないのですが、既読作品との比較でいえば、SFファンタジー「博物戦艦アンヴェイル」に連なるノリの面白さだと思います。 ※なお、果たして本作、シリーズものになるのやら・・・・。 |
14. | |
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2」 ★☆
Twinstar Cyclone Runaway 2 |
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恋仲の女子2人が活躍する、波乱万丈のSF宇宙もの冒険譚「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」の続編。 テラ・24歳とダイオード(ダイ)・18歳、2人手を取っていよいよこの星系を脱出しようとしたところで妨害。ダイは故郷のゲンドー士族に拉致されてしまいます。 そんなダイの前に姿を現したのは、因縁の関係にある瞑華。 一方、テラはダイを取り戻そうと潜入計画を立てるのですが、瞑華が大いなる障害として立ち塞がり・・・。 舞台となるこの宇宙世界を思い出すというか、理解するのが結構難物で、前半は今ひとつ。 それでも後半に入ると、舞台となっている宇宙世界が頭に入ってきて、ようやく面白くなってきます。 壮大な舞台に、壮大な活躍。面白いことは面白いのですが、残念だったのは、もうひとつ私自身がストーリィに付いていけなかった処にあります。 しかし、壮大であることはやはり、SF宇宙もの魅力の原点だよなぁと改めて思います。 テラ、ダイオード、2人の新たな旅立ちに幸あれ。 1.採取船にて/2.「芙蓉」/3.ニシキゴイ漁/4.テーブル・オブ・ジョホール/5.精神増圧/エピローグ |
14. | |
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3」 ★☆
Twinstar Cyclone Runaway 3 |
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シリーズ第3弾。 巨大なガス惑星FBBを脱出、インソムニア号で旅立ったダイオードとテラの女性ペアは、いろいろな宇宙、惑星を巡り、苦境に陥っていた人を助けたり、仕事を引き受けたりと様々。 そんなストーリィ構成は真に広大で、理解が付いていくのが困難な程。 とはいえ、宇宙ストーリィはそれなりに多彩で、楽しめます。 しかし、驚かされたのは終盤、ダイオードとテラに衝撃の事実が明かされる場面。 えーっ、そんなことがあるのかッ!という具合です。 本シリーズの世界観にも驚かされますが、主人公におけるこの設定自体、驚き以外の何ものでもありません。 この分だと、本シリーズ、まだまだ続きそうです。 ※高校〜大学時代に読んだスペース・オペラ“スカイラーク”シリーズとか“レンズマン”シリーズとかが、何やら子供っぽく思えてしまいます。 プロローグ.眠れない船の二週間/1.銀涯台/2.インターステラー/3.ツインスター・アピアロンザ・プラネット/4.ツインスター・ギャラクティック・ゴーラウンド/ エピローグ1/エピローグ2 |
15. | |
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ4」 ★☆
Twinstar Cyclone Runaway 4 |
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シリーズ第4弾、最終巻。 どんどん話が膨らんでいき、それなのに私の理解はちっとも付いていけず、もう限界かなと思い始めていた処ですが、やっと最終巻ということでそれなら完走しなければと、読んだ次第。 ようやく最終結末に向かってストーリーもまとまってきて、読みながら一安心。 まずは前半、結末前段階といった展開があり、いよいよテラ&ダイオード対エダ&マギリの対決へと向かっていきます。 最後、思いがけなくもあっけない結末とも言えますが、それなりに得心できる結末であったとも感じます。 4巻読了しての感想としては、すっきりした、という感じ。 なお、セクシュアリティの問題等、現代における社会問題要素も織り込んだストーリーだったと感じます。 Another runaway1/1."飛鉄匠"上/2."飛鉄匠"下/3.藍太盟/Another runaway2/4.ツインスター・デュプレックス・フィードバック/5.大渦巻へ/エピローグ |